企業分析方法

アドバンスト・メディア(3773)

[ 業種:情報・通信業 ]

  • 公開日:2020年1月17日

音声認識ソフト「AmiVoice」を開発・販売しているアドバンスト・メディア(3773)について、企業分析しました(アドバンスト・メディアの公式ホームページ)。使ったツールは、SBI証券の「会社四季報」、GMOクリック証券の「財務分析ツール」、マネックス証券の「銘柄スカウター」です。(分析担当:西尾)

アドバンスト・メディア(3773)の注目ポイントは、以下の2点です。

  • 将来の業績拡大が見込める
  • 割高感が解消し投資家に注目されやすい

さっそく、順番に見ていきましょう!

注)分析方法や予測、結果などは管理人の個人的な見解です。
銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。

1.基礎情報

1-1.基礎情報

売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
43億円 7億円 9億円 9億円

※売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は、2018年12月期の実績値です。

時価総額 PER(予) PBR(実) 配当利回り(予)
216億円 33.3倍 2.12倍 0.00%

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

1-2.株価推移 (最近3年間)

株価推移 (最近3年間)

(出典:SBI証券

→最新の株価チャートは、こちら(SBI証券のホームページ)から確認できます。

1-3.事業内容の要約

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

アドバンスト・メディアのメイン事業は、音声認識エンジン「AmiVoice」を組み込んだ、音声認識ソリューションの企画や開発などです。具体例を挙げると、“音声認識を使ってコールセンターのオペレーターをサポートするサービス”や、“会議の内容を文字起こしするサービス”、“翻訳サービス”などを作っています。

これらは、ソフトバンクのコールセンターや東京都議会、東海道新幹線の英語放送などで使われています。このほかにも、名だたる有名企業に音声認識ソリューションを提供しており、同社のブランド力の高さがわかります。どんな企業が使っているか気になる方は、有価証券報告書に下の画像のような導入事例が載っているので、こちらをご覧ください。

導入事例

(出典:アドバンスト・メディア 第22期有価証券報告書)

同社のサービスは、「ライセンス販売型」と「クラウド型」の2種類があります。ライセンス販売型は、家電量販店で売っているような“CDに入っているソフト”のようなものです。クラウド型は、インターネット上でサービスを使う仕組みです。SpotifyやNetflixをイメージするとわかりやすいです。それでは、事業内容を頭に入れたところで、業績を読み解いていきましょう!

1-4.直近の業績をチェック

今期進捗状況 - 経常利益

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

※1Q、2Q、3Qの「Q」とは、「Quarter」の頭文字で、日本語に直すと「四半期(3か月)」となります。

業績のチェックポイントは、「経常利益の進捗率」です。この数値は、マネックス証券の銘柄スカウターでチェックできます。会社の業績が、過去よりも好調なのか不調なのかがわかります。

進捗率をチェックする理由は、会社がリリースした計画に実績が届かない場合、その会社が置かれている状態が悪くなっている可能性があるからです。悪い兆候を早めに察知できるよう、進捗率は四半期ごとにチェックするのがおすすめです。

ポイントは、「2020年3月期2Q(今期)と、2019年3月期2Q(前期)の経常利益進捗率の比較」です。今期の進捗率が前期と比べて良ければ、業績は好調です。しかし、前期と比べて悪ければ、業績が悪化しているかもしれません。経常利益進捗率の比較から、投資を考えている会社の経営が上手くいっているか確認できます。

アドバンスト・メディアの場合、今期の経常利益進捗率は36.3%、前期は34.0%であり、今期の進捗率のほうが高くなっています。その分会社の経営が好調だと考えられるので、実際はどうなのかを2020年3月期2Qの決算短信を使って確認します。

2020年3月期2Q決算短信

(出典:アドバンスト・メディア 2020年3月期第2四半期決算短信)

決算短信によると、CTI事業部(コンタクトセンター向けのサービスを提供する事業部)とビジネス開発センターが大幅に増収したと書かれています。

2020年3月期2Q決算短信

(出典:アドバンスト・メディア 2020年3月期第2四半期決算短信)

さらにその下を確認すると、CTI事業部ではソフトバンクのコンタクトセンターに納入した、と書かれています。ソフトバンクへの納入は、アドバンスト・メディアにとってかなりの大型案件であり、業績を大きく押し上げたようです。このように、進捗率が良かったり悪かったりした場合は、決算短信や有価証券報告書を使って、その理由を探ると良いでしょう。

また、アドバンスト・メディアの2Q時点での進捗率が50%を下回っているので、「本当に大丈夫なの?」と疑問に思うかもしれません。しかし、アドバンスト・メディアは業績が特に4Qに偏る傾向にあるので、2Q時点で進捗率が50%に届いていなくても問題はありません。有価証券報告書によると、「システム開発やライセンス販売が3月に集中するため」と説明されています。

事業等のリスク

(出典:アドバンスト・メディア 第22期有価証券報告書)

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2.なぜアドバンスト・メディアに注目したのか?

アドバンスト・メディア(3773)に注目した理由は、次の2点です。

 

1つ目は、『将来の業績拡大が見込める』点です。1-4.直近の業績をチェックで説明したとおり、アドバンスト・メディアの製品が、ソフトバンクやJR東海などの有名企業に導入されています。“有名企業への納入実績”がブランド力を高め、他の有名企業への導入が決まるケースが考えられます。また、音声認識は業務効率化やインバウンド対応などが追い風となっている点でも、成長が見込める産業です。

 

2つ目は、『割高感が解消し、投資家に注目されやすい』点です。下の図は、アドバンスト・メディアの3年間の株価推移です。株価は2018年6月ごろをピークに下がっており、相対的に見て割安感が出ています。

 
株価推移 (最近3年間)

(出典:SBI証券

さらに、マネックス証券の銘柄スカウターに載っている予想PERの推移をチェックすると、2020年1月現在の予想PERは32倍台と相対的に割安です。成長性が十分あるにも関わらず、株価的にもPER的にも割安感があるので、今後投資家の注目が集まる余地は十分にあるでしょう。

 
予想PER推移 (最近3年間)

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

 

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3.財務諸表分析

3-1.貸借対照表

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

アドバンスト・メディアの貸借対照表です。有価証券報告書には数字しか書かれていないので、上に載せたGMOクリック証券の財務分析ツールを使うと、その中身を目でチェックできるので便利です。

2018年の貸借対照表について、『①現金等(左上の水色の部分)』と、『②長期投資等(左下の水色の部分)』、『③有利子負債(右上のピンク色の部分)』に注目しましょう。

①現金等が多い理由は、新株予約権を行使して資本金が増えたためです。この新株予約権は、アドバンスト・メディアの従業員と役員に対して、中期経営計画達成に向けたインセンティブとして発行されました。新株予約権については別の機会に説明する予定ですが、中期経営計画を達成して株価が上がれば、新株予約権を持っている従業員が株価の値上がり益を手に入れられる仕組みです。従業員のモチベーションを高めて、株価に反映していこうとしているわけですね。

②長期投資等が多い理由は、テック系のベンチャー企業など数社に出資しているからです。出資すると株式がもらえるので、その分が長期投資として計上されています。出資先には、建設業界向けサービス提供の「Rixio」やイスラエルのAIベンチャー「AudioBurst Ltd.」などがあります。今後音声認識ソリューションを展開予定の業界や、音声認識の質を向上させるのに役立つ会社への出資なので、音声認識ソリューションの進化が期待できますね。

最後に、③有利子負債が少ない理由は、単純に巨大な設備投資がいらないからです。アドバンスト・メディアが開発・販売するのは、音声認識のソフトやクラウドサービスです。つまり、パソコンがあれば開発できます。工場などの設備が不要なので、わざわざ銀行から多額のお金を借りてくる必要がありません。この点から、財務健全性がとても高いと言えます。

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

続いて、10年分の貸借対照表です。10年を通して、貸借対照表の構造には大きな変化はなさそうですが、貸借対照表のサイズは2019年に巨大化しました。この理由は、先ほども紹介したとおり、新株予約権の行使によって資本金が増えたためです。

3-2.損益計算書

過去~現在~未来まで8年分

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、過去~現在~未来まで14年分の損益計算書をグラフ化したものです。まずは売上高から確認しましょう。2007年から2009年にかけてリーマンショックの影響から売上が減っていますが、2010年以降は売上高が右肩上がりで伸びています。大手金融機関や学校、大手民間企業などへの導入が進んだためです。

営業利益は、2017年までは赤字の状態が続いていました。開発コストがかさみ、損益分岐点を超えられなかったためと考えられます。しかし、大手民間企業などへの導入が進んだ結果2018年には黒字転換を果たしました。音声認識ソリューションは、製品を売って終わりではなく、ソフトウェアの更新や新機能の追加などが起きやすい“ストック型ビジネス”です。この点で、今後も営業利益は増えていくでしょう。

四半期ごとの業績

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

 

上の図は、アドバンスト・メディアの損益計算書を、四半期ごとにグラフ化したものです。本決算(4Q)に売上高(青色の棒グラフ)と営業利益(赤色の折れ線グラフ)が偏る傾向にあります。この理由は、1-4.直近の業績をチェックで説明したとおり、システム開発やライセンス販売が3月に集中するためです。

収益性

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、アドバンスト・メディアの収益性の変化を表したグラフです。「売上高営業利益率(以下、営業利益率)」と「ROE(自己資本利益率)」に注目しましょう。

アドバンス・メディアは2017年まで営業利益が赤字だったため、営業利益率はマイナスで推移していました。2018年の黒字化後の営業利益率は17%台で推移しており、2019年時点では17.01%でした。

ビジネスモデルの違いが影響するので一概には言えないものの、営業利益率は10%を超えているのが、一般的に良い会社とみなされます。この点から、営業利益率17%はかなり優秀な会社だと言えるでしょう。営業利益率が高い理由は、巨額の設備投資がなくても開発できるサービスであり、一度開発してしまえば、導入先が増えるにつれてどんどん利益率が上がるビジネスだからです。

3-3.キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー分析(簡易版)

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

上のグラフは、アドバンスト・メディアのキャッシュフロー(CF)を表したものです。まずは、最も新しい2018年のキャッシュフローをチェックします。「営業CF:7.3億円、投資CF:▲30.5億円、財務CF:30.1億円、フリーCF:▲22.7億円」となっています。

チェックポイントは、営業CFの範囲内で投資や借金の返済をおこなっているかです。つまり、投資CFと財務CFの合計支出額が、営業CFの金額よりも下回っている状態です。このCF計算書を健全型と呼び、会社のあるべき姿をあらわしています。

アドバンスト・メディアは、投資CFと財務CFの合計支出額が▲0.4億円、営業CFは7.3億円なので、健全な会社だと判断できますね。

なお、2019年は投資CFが大きくマイナスに、財務CFが大きくプラスとなっています。投資CFがマイナスになったのは「無形固定資産を取得したため」であり、財務CFがプラスになったのは「長期借入金を実施したため」です。

3-4.企業価値評価(株価と理論株価の関係)

企業価値評価

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

※↑具体的な図の見方やツールの使い方などは、こちら(財務分析ツールの紹介)をご参考ください。

(図の見方)
株価理論株価” となっていれば割安です。

「売上成長率」、「営業利益率」、「償却」、「設備投資」は過去3年の値を、「割引率」は推奨値を使って、理論株価を出してみました。アドバンスト・メディアの場合、2020年1月15日現在の株価1,169円に対して理論株価452円であり、158%割高です。

(ツールの使い方〔手順〕)
口座開設(GMOクリック証券) → ログイン → 『株式』 → 銘柄を選ぶ → 『財務分析』

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4.将来予想

4-1.今後のシナリオ(将来予測)

ソフトバンクやJR東海をはじめとする、有名企業への納入実績を武器に、引き続きアドバンスト・メディアの製品を導入する企業が増えると考えられます。また、人手不足による業務効率化需要やインバウンド需要などから、アドバンスト・メディアの製品に追い風が吹いています。長期的に業績がよくなる可能性が高いでしょう。

また、株価やPERが過去と比べて割安になってきています。投資家からの注目が集まる可能性もあるでしょう。

PER別の株価

ここで、向こう2年間の予想株価を計算してみましょう。予想株価は、「EPS×PER」で計算できます。

まずは、2020年3月期の予想株価から計算してみます。決算短信によれば、2020年3月期の予想EPSは35.58円でしたので、ざっくり36円とします。2020年1月15日現在のPERは32.9倍なので、ざっくり33倍として計算します。すると、2020年3月期の予想株価は1,200円となります。

続いて、2021年3月期の予想株価を計算してみましょう。決算短信には、2021年3月期の予想EPSが載っていないため、SBI証券で配信されている、会社四季報の予想EPSを使います。

会社四季報によると、2021年3月期の予想PESは44.3円なので、ざっくり44円とします。こちらもPER33倍のままだと仮定すると、2021年3月期の予想株価は1,500円となります。

4-2.今後考えられるリスク

今後考えられるリスクは、中期経営計画が未達となるリスクや、不景気の影響を受けるリスクがあります。

アドバンスト・メディアでは、2026年3月期までに売上高が年平均30%で成長、営業利益率30%を目標として経営しています。十分達成できると見込んで計画が立てられていますが、音声認識市場の拡大が思ったより遅かったり、アドバンスト・メディアを上回る競合が現れたりすると、計画通りに業績が伸びないかもしれません。そのような場合、投資家が失望して株価が下がる可能性があります。

また、過去にリーマンショックの影響から、売上高が減少しました。音声認識ソリューションは、売り切り形のビジネスではなくストック型のビジネスに近いものの、景気が悪化したときには業績が伸びなかったり、最悪の場合、売上高が減ったりする可能性があります。こちらも株価が下がる原因となるので、注意が必要です。

5.アドバンスト・メディアを分析するときに参考にした、無料のサービス

ツール 提供している
証券会社
ポイント
会社四季報 SBI証券 銘柄選択に向いています!
財務分析ツール GMOクリック証券 バリュー投資に向いています!
銘柄スカウター マネックス証券 簡易分析に向いています!

※いずれのサービスも、各証券会社に口座開設していれば、無料で使えます♪

6.まとめ

アドバンスト・メディアは、ソフトバンクなど有名企業への導入がきっかけとなり、導入企業をどんどん増やしていくと考えられます。これによって業績が右肩上がりで伸びていくでしょう。中期経営計画どおりになるとしたら、売上高は年平均で30%成長、営業利益率は30%に近づいていき、成長性が高く収益性も高い超優秀な企業となるかもしれません。

現在、成長フェーズにある企業なので、投資を検討する際は、売上高の成長率営業利益率の上昇をチェックするのがおすすめです。

注)ここで紹介している分析方法や結果等は個人的な視点のもので、銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。
注)このページの分析は、2020年1月16日現在の情報に基づいています。同日以降に発表されたIR情報は反映していませんので、あらかじめご了承ください。

西尾のプロフィール

・やさしい株のはじめ方の資産運用担当
・ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格あり
・年間200銘柄以上を分析中

Twitter「@kabuotaku758」でも情報発信中です!