企業分析方法

アルヒ(7198)

[ 業種:その他金融業 ]

  • 公開日:2019年5月2日
成長性 4.0
割安性 2.0
収益性 3.0
財務健全性 1.5

国内最大手の住宅ローン販売会社であるアルヒ(7198)について、企業分析しました(アルヒの公式ホームページ)。使ったツールは、SBI証券の「会社四季報」、GMOクリック証券の「財務分析ツール」、マネックス証券の「銘柄スカウター」です。(分析担当:西尾)

アルヒ(7198)の注目ポイントは、以下の3点です。

  • プラットフォームを作っている
  • 住宅ローンの審査で優位性を持っている
  • 銀行の住宅ローン事業縮小で競争が減っている

さっそく、順番に見ていきましょう!

注)分析方法や予測、結果などは管理人の個人的な見解です。
銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。

1.基礎情報

1-1.基礎情報

営業収益 税引前利益 当期純利益
204億円 52億円 48億円

※売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は、2018年3月期の実績値です。

時価総額 PER(予) PBR(実) 配当利回り(予)
735億円 17.1倍 3.02倍 2.16%

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

1-2.株価推移 (最近3年間)

株価推移 (最近3年間)

(出典:SBI証券

→最新の株価チャートは、こちら(SBI証券のホームページ)から確認できます。

1-3.事業内容の要約

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

アルヒは、国内最大手の住宅ローン専門金融会社で、フラット35を中心に、さまざまな住宅ローンの貸付と回収をおこなっています。主力商品は、「ARUHIフラット35」で、国内トップシェアを誇っています。中村アンさんを起用したCMも有名ですね。

「ただ住宅ローンを貸し付けているだけ」と思われがちですが、下のような側面も持っています。

  • 住宅ローンを中心としたプラットフォームを作っている
  • ロボット技術を活用した審査・融資システムを開発している

他の金融機関では、住宅ローンを中心としてここまで広くビジネス展開しているところはありません。住宅ローン専門会社ならではの魅力と言えるでしょう。

※ここでいうプラットフォームとは、人や情報、モノ、カネなどが集まる場所のことです。

1-4.直近の業績をチェック

今期進捗状況 - 経常利益

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

※1Q、2Q、3Qの「Q」とは、「Quarter」の頭文字で、日本語に直すと「四半期(3ヶ月)」となります。

業績のチェックポイントは、「経常利益の進捗率」です。この数値は、マネックス証券の銘柄スカウターでチェックできます。会社の業績が、過去よりも好調なのか不調なのかを知ることができます。

2019年3月期3Q決算の経常利益進捗率は、80.6%でした。前年の3Qと比べると、8.5ポイント悪化していますね。『2019年3月期 第3四半期報告書』によれば、人材の確保によって人件費が増え、経常利益が前年比で減ってしまったようです。

将来の成長に必要な費用が先行していると考えられるので、進捗率の見た目は悪いですが、そこまで心配する必要はないでしょう。

目次へ戻る▲

2.なぜアルヒに注目したのか?

アルヒ(7198)に注目した理由は、次の3点です。

1つ目は、『プラットフォームを作っている』ことです。なぜプラットフォームを作っているかというと、人や情報、カネを集めることで、アルヒの価値が上がるからです。アルヒの抱える顧客は、「住宅ローンを借りたいと考えている人」であり、この人たちは「住宅を買いたいと考えている人」や「引っ越し業者を探している人」、「家具を買おうと考えている人」でもあるのです。

このように、「住宅ローンを借りたいと考えている人」は、住宅ローンに関連する多くの悩みを持っています。そこで、アルヒは引っ越し業者と提携したり、家具メーカーと提携を進めています。アルヒにお願いすれば、なんでも解決してくれると評判になり、顧客がさらに集まってくることが想像できますね。

人が集まれば、情報もカネも集まってくるので、プラットフォームを持つアルヒの価値が高まるでしょう。これに合わせて、アルヒの業績も成長すると考えられるので、株価が右肩上がりとなる条件が整います。

2つ目は、『住宅ローンの審査で優位性を持っている』ことです。具体的には、住宅ローンを販売している金融機関で唯一、審査にRPAというIT技術を導入することで、審査時間を短縮しました。住宅ローンをはじめとして、金融機関からお金を借りる際は、審査に時間がかかるイメージがあります。アルヒは、そのイメージを取り除くため、積極的にIT投資をおこなうことで、他社では実現できない早さで審査を済ませ、差別化しています。

3つ目は、『銀行の住宅ローン事業縮小で競争が減っている』ことです。現在、銀行は住宅ローン事業にお金を回すことができない状態にあります。なぜなら、低金利で本業の貸し付けによる金利収入が少なくなっているからです。その結果、メガバンクであるみずほ銀行や三菱UFJ信託銀行が一部の店舗で撤退をはじめました。

しかし、住宅ローンの貸し手が減っていっても、住宅ローンを借りたい人は一定数存在します。その人たちの受け皿となるのが、アルヒやネット銀行だと考えられます。

住宅ローン事業は成熟産業ですが、その中でアルヒが存在感を高められれば、シェアを拡大して業績を伸ばすことができます。このように考えると、本業は地味でも、しっかりと業績を伸ばしていける企業だと言えるのではないでしょうか。

目次へ戻る▲

3.財務諸表分析

3-1.貸借対照表

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

アルヒの貸借対照表です。有価証券報告書には数字しか書かれていないので、上に載せたGMOクリック証券の財務分析ツールを使うと、その中身を目でチェックできるので便利です。

2018年の貸借対照表について、『①棚卸資産(薄い黄色の部分)』と、『②長期借入金(濃いピンク色の部分)』、『③無形固定資産(薄い緑色の部分)』に注目しましょう。

①棚卸資産の多くは、営業貸付金です。営業貸付金は、銀行などの金融機関が顧客にお金を貸し付けた場合に計上される勘定科目となっています。アルヒの場合は、フラット35などの住宅ローン融資に使ったお金が、こちらに含まれています。

②長期借入金の多くは、借入債務です。これは、2017年に現在のアルヒが旧アルヒを吸収合併した際、その資金をまかなうために銀行借り入れをおこなったことと、住宅ローン融資のお金を借入金で賄っていることが原因です。

③無形固定資産の多くは、のれんです。のれんとは、企業の買収や吸収合併のときに生まれるもので、「買った金額 - 買った企業の純資産額」を指します。②長期借入金の理由と被りますが、2017年に現在のアルヒが旧アルヒを吸収合併したときに発生したものです。アルヒはIFRSという会計基準を使っているので、のれんの償却(価値を減らす処理)を毎年おこなう日本基準とは違い、定期的にのれんを償却しません。つまり、のれんがずっと残っているということです。

そのため、将来になって価値が下がってしまうと、のれんを一度に償却することになります。のれんの償却は、損益計算書で「特別損失」として計上されるため、突然多額の赤字となるリスクがあります。

貸借対照表についてまとめます。アルヒは、住宅ローン融資による営業貸付金が多く、2017年の吸収合併による借入債務とのれんが多い特徴があります。注意すべき点は、のれんの多さです。のれんは会計基準の影響で減っていきません。万が一、のれんの価値が低下すると、一度に多額の特別損失を計上することになり、利益が圧迫されてしまうため、注意が必要です。

※IFRSとは、「国際会計基準(International Financial Reporting Standards)」のことをいいます。世界共通の会計基準であり、世界への進出を目指す企業や、海外投資家から投資を受けたいと考える企業が使っています。

3-2.損益計算書

過去~現在~未来まで12年分

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、過去3年分と2019年3月期(予想値)の損益計算書をグラフ化したものです。気になるのは、2018年3月期の売上高です。前年よりも売上高が減っていますね。理由は、2017年に高まった住宅ローン借り換え需要が落ち着いたためです。

なぜ2017年は借り換え需要が高まったかというと、2016年ごろから、住宅ローンの固定金利が低下しており、借り換えたほうがお得になる人が増えたからです。アルヒは、住宅ローンの融資手数料が売上となるため、融資件数が増えることが業績成長の条件となります。しかし、2018年春ごろには、借り換えが一通り終わったため、融資件数が減って業績が落ち着いてきました。

※2016年ごろから、住宅ローンの固定金利が低下しました。その結果、変動金利の人が固定金利に借り換えたり、固定金利の人がより安い固定金利に借り換えたりしました。

四半期ごとの業績

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、アルヒの損益計算書を、四半期ごとにグラフ化したものです。上場して間もないので、2年分しか比較できるデータがありませんが、1Qと3Qは売上高が多くなる傾向にありそうだ、ということは読み取れます。

損益計算書についてのまとめです。アルヒの場合は、住宅ローンの金利が動くと、業績も連動して動く特徴があります。日本銀行は2020年春ごろまでは金利を変えないと発表しているので、この記事が世に出てから向こう1年ほどは、業績が大きく動くことはないでしょう。もし仮に、固定金利が上がることになれば、その前の駆け込み需要でアルヒの業績が伸びるでしょうし、反対に固定金利が下がることになれば、新たな借り換え需要が生まれて業績が伸びると考えられます。

3-3.キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー分析(簡易版)

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

アルヒのキャッシュフロー(CF)を見ましょう。2018年は、「営業CF:+、投資CF:-、財務CF:-、フリーCF:+」となっています。金額は、「営業CF:24億円、投資CF:▲4億円、財務CF:▲46億円、フリーCF:20億円」です。健全型のキャッシュフローのように見えますが、営業CFが減っている点が気になります。

営業CFが減っている理由を探りましょう。有価証券報告書に載っているキャッシュフロー計算書によれば、多額の「貸付債権流動化関連収益」を、営業CFから差し引いているためだとわかりました。

「貸付債権流動化関連収益」は、貸し付けた住宅ローンを証券化して販売することで得られる収益です。アルヒでは、販売した住宅ローンを証券化して投資家に売っています(これによって、アルヒはずっと住宅ローン融資という負債を抱えなくてよくなります)。その際に出た利益は、本業の収益とは別物なので、営業CFから差し引いているようです。

以上の理由から、営業CFの額が小さくなっていると考えられます。

3-4.企業価値評価(株価と理論株価の関係)

企業価値評価

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

※↑具体的な図の見方やツールの使い方などは、こちら(財務分析ツールの紹介)をご参考ください。

(図の見方)
株価理論株価” となっていれば割安です。

「売上成長率」、「営業利益率」、「償却」、「設備投資」は過去3年の値を、「割引率」は推奨値を使って、理論株価を出してみました。アルヒの場合、2019年4月26日現在の株価1,982円に対して、理論株価▲247円なので、かなり割高です。

理論株価がマイナスとなっている理由は、理論株価を計算するのに必要な事業価値の元となる、フリーCFがマイナスだからです。フリーCFは、下の式で表されます。

「フリーCF=営業利益-法人税+減価償却費-設備投資-運転資本増減」

営業利益と減価償却費は、かんたんに言うと「会社に入ってくるお金(=営業CF)」であり、法人税と設備投資、運転資本増減は「会社から出ていくお金(=投資CF)」だと言えます。つまり、フリーCFがマイナスになるには、営業CF<投資CFとなる必要があります。アルヒは、事業の運営に多くの投資資金が必要なので、フリーCFがマイナスになってしまうのです。

「事業をおこなうと出費が増える」状態なので、出費を抑えるか収入を増やすかしてフリーCFをプラスにしなければなりません。アルヒがコスト削減をおこなってフリーCFを黒字にできるか、見守っていきたいですね。

(ツールの使い方〔手順〕)
口座開設(GMOクリック証券) → ログイン → 『株式』 → 銘柄を選ぶ → 『財務分析』

目次へ戻る▲

4.将来予想

4-1.今後のシナリオ(将来予測)

今後のシナリオとして、大きく分けて3つあると考えています。

1つ目のシナリオは、住宅ローン業界のプラットフォームの運営者となることです。住宅ローンの販売だけでなく、「家を買いたい人」と引っ越し業者や家具メーカーとのマッチングをおこなうことで、アルヒのプラットフォームの価値が上がっていくでしょう。これに合わせて、アルヒが販売する住宅ローンの価値が高まるので、業績が成長すると考えられるのです。

2つ目のシナリオは、住宅ローンの審査で優位性を持っていることです。アルヒの住宅ローン審査は、RPAの導入によって早いことが有名です。今後はAIを導入して、さらなる高速化を図っていくでしょう。他の金融機関は、審査システムにRPAやAIを導入していません。この点で、住宅ローンを借りたいと考えている人にとって、すぐに融資を受けられるのは魅力の一つだと言えます。また、金融機関の審査業務を、アルヒが代行することも考えているようです。もし実現すれば、新たな収益源を確保できるでしょう。

3つ目のシナリオは、銀行の住宅ローン事業縮小でアルヒの融資件数が増えることです。全国保証のやさしい企業分析で書きましたが、金融機関は低金利で融資による収入が少なくなっており、住宅ローン事業から撤退する金融機関が出てきました。そうなると、金融機関から住宅ローン融資を受けようと考えていた人がアルヒに流れてくるため、融資件数が増えて、業績が伸びていくと考えられます。

PER別の株価

ここで、向こう2年間の予想株価を計算してみましょう。予想株価は、「EPS×PER」で計算できます。

まずは、2019年3月期の予想株価から計算してみます。決算短信によれば、2019年3月期の予想EPSは120円です。現在のPERを15倍として計算すると、2019年3月期の予想株価は1,800円となります。

続いて、2020年3月期の予想株価を計算してみましょう。決算短信には、2020年3月期の予想EPSが載っていないため、SBI証券で配信されている、会社四季報の予想EPSを使います。

会社四季報によると、2020年3月期の予想PESは133円でした。こちらも現在のPER15倍で計算してみると、2020年3月期の予想株価は2,000円となります。

4-2.今後考えられるリスク

今後考えられるリスクは、のれんの減損損失です。

アルヒでは、2017年の吸収合併の際に、多額の「のれん」が発生しました。そして、アルヒではIFRSという会計基準を使っているため、日本基準のようにのれんを定期的に償却する(減らす)ことができません。そのため、ずっと貸借対照表上にのれんが残り続けるのです。

しかし、吸収合併した企業(今回は旧アルヒ)の価値が下がった場合、下がった分だけ特別損失として計上しなければなりません。その結果、株価の構成要素である1株あたり利益が減って、理論上は株価が下がってしまいます。このように、現在のアルヒは「特別損失が発生するかもしれない爆弾を抱えている状態」とも言えるため、注意が必要です。

5.アルヒを分析するときに参考にした、無料のサービス

ツール 提供している
証券会社
ポイント
会社四季報 SBI証券 銘柄選択に向いています!
財務分析ツール GMOクリック証券 バリュー投資に向いています!
銘柄スカウター マネックス証券 簡易分析に向いています!

※いずれのサービスも、各証券会社に口座開設していれば、無料で使えます♪

6.まとめ

アルヒは、住宅ローンのプラットフォーマーになること住宅ローン審査で優位性を持っていること銀行の住宅ローン事業縮小によって、住宅ローンの融資件数を増やすことができるでしょう。ただし、貸借対照表に多額の「のれん」が計上されているのが懸念点です。会計基準がIFRSなので、いきなり特別損失が発生することがあります。一時的に株価が下がる可能性があるので、注意が必要です。

アルヒの住宅ローンに興味をお持ちの方は、グループサイト「やさしい住宅ローン比較ガイド」の「ARUHI(アルヒ)フラット35のメリット・デメリット」をご覧ください

注)ここで紹介している分析方法や結果等は個人的な視点のもので、銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。
注)このページの分析は、2019年5月2日現在の情報に基づいています。同日以降に発表されたIR情報は反映していませんので、あらかじめご了承ください。

分析担当 西尾のプロフィール

・やさしい株のはじめ方の資産運用担当
・ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格あり
・年間200銘柄以上を分析中

Twitter「@kabuotaku758」でも情報発信中です!