企業分析方法

ファーストリテイリング(9983)

[ 業種:小売業 ]

  • 公開日:2019年7月19日

『ユニクロ』や『ジーユー』を運営しているファーストリテイリング(9983)について、企業分析しました(ファーストリテイリングの公式ホームページ)。使ったツールは、SBI証券の「会社四季報」、GMOクリック証券の「財務分析ツール」、マネックス証券の「銘柄スカウター」です。(分析担当:西尾)

ファーストリテイリング(9983)の注目ポイントは、以下の2点です。

  • 安定成長している
  • 製造から小売まで一貫しておこなっている

さっそく、順番に見ていきましょう!

注)分析方法や予測、結果などは管理人の個人的な見解です。
銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。

1.基礎情報

1-1.基礎情報

売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2.1兆円 2,362億円 2,427億円 1,548億円

※売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は、2018年8月期の実績値です。

時価総額 PER(予) PBR(実) 配当利回り(予)
7.4兆円 43.2倍 7.39倍 0.69%

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

1-2.株価推移 (最近3年間)

株価推移 (最近3年間)

(出典:SBI証券

→最新の株価チャートは、こちら(SBI証券のホームページ)から確認できます。

1-3.事業内容の要約

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

ファーストリテイリングのメイン事業は、服の製造『ユニクロ』や『ジーユー』といったお店の運営です。「Life Wear」をコンセプトに、普段着としてシンプルで高機能な服を作っています。たとえば、「ヒートテック」や「エアリズム」などです。多くの方が一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

1-4.直近の業績をチェック

今期進捗状況 - 経常利益

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

※1Q、2Q、3Qの「Q」とは、「Quarter」の頭文字で、日本語に直すと「四半期(3か月)」となります。

業績のチェックポイントは、「経常利益の進捗率」です。この数値は、マネックス証券の銘柄スカウターでチェックできます。会社の業績が、好調なのか不調なのかを知ることができます。

3Q決算後のポイントは、「3Qまでの進捗率と、通期の会社予想業績を比べる」ことです。2019年8月期3Q時点での経常利益は2,472億円で、進捗率は95.1%となっています。つまり、会社が予想している業績のほとんどを、3Qまでに達成してしまったことを意味するのです。

ここで、通期の業績がどうなるか予想してみましょう。はじめに、銘柄スカウターの四半期業績推移から、四半期ごとの傾向を読み取ります。ファーストリテイリングは、4Qの売上高と営業利益が、他の期よりも小さくなっていることがわかりますね。

四半期業績推移

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

仮に、今期4Qの経常利益と、前期4Qの経常利益が同じだったとしましょう。前期4Qの経常利益は520億円だったので、今期3Qの経常利益に足すと2,992億円となります。最新の会社予想は2,600億円なので、通期業績が上振れる可能性が高いと言えるでしょう。

ただし、この計算は「昨年と環境がまったく変わらなかった場合」なので、必ずしもこのとおりになるとは限りません。

前期4Qの経常利益をチェック

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

通期の業績発表が近づいてきたら、進捗率が高くなっていないかチェックするのがおすすめです。もし、いま持っている株や気になっている株の進捗率が高ければ、業績の上方修正が発表されて株価が上がるかもしれません。チャンスを逃さないよう、確認するクセをつけたいですね!

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2.なぜファーストリテイリングに注目したのか?

ファーストリテイリング(9983)に注目した理由は、次の2点です。

1つ目は、『安定成長している』ことです。実は、アパレル業界全体を見渡すと、業績が低迷している会社が多く存在します。その中で、ファーストリテイリングの業績は好調で、年間8%ずつ成長しているのです。

2つ目は、『製造から小売りまで一貫しておこなっている』ことです。そのため、服を作ってから売るまでのムダを省くことができるので、営業利益率は11%と高めの水準を維持しています。

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3.財務諸表分析

3-1.貸借対照表

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

ファーストリテイリングの貸借対照表です。有価証券報告書には数字しか書かれていないので、上に載せたGMOクリック証券の財務分析ツールを使うと、その中身を目でチェックできるので便利です。

2018年の貸借対照表について、『①現金等(水色の部分)』と、『②棚卸資産(薄い黄色の部分)』、『③有利子負債(ピンク色の部分)』に注目しましょう。

①現金等が多い理由は、海外展開や買収に備えて現金を蓄えているからだと考えられます。あらかじめ銀行からお金を借りておき、会社内に蓄えておくことで、すぐに行動を起こせるようにしているのではないでしょうか。

棚卸資産(たなおろししさん)が多い理由は、お店に並んでいる服が計上されているからです。また、ファーストリテイリングは自分たちで服を作っているので、服になる前の布地や作っている途中の服なども、棚卸資産に含まれます。そのため、棚卸資産の割合が大きくなるというわけです。

③有利子負債が多い理由は、投資のために銀行から多額のお金を借りているためです。

3-2.損益計算書

過去~現在~未来まで13年分

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、過去~現在~未来まで8年分の損益計算書をグラフ化したものです。売上高の営業利益も右肩上がりとなっています。実は、アパレル業界に属する会社の多くは業績が低迷しています。その中でも業績を順調に伸ばせているのは、ユニクロが機能性を重視した商品展開をしているからです。

最近の服の消費傾向として、デザインやブランドよりも着心地の良さや使いやすさを重視する人が増えているそうです。そのため、おしゃれ着を扱うファッションブランドの業績が伸び悩んでいます。これに対してユニクロは、「エアリズム」や「ヒートテック」など機能が優れた便利な服を売っているので、需要をうまく吸収して売上を伸ばすことに成功しています。

四半期ごとの業績

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、ファーストリテイリングの損益計算書を、四半期ごとにグラフ化したものです。季節要因があり、1Qに売上高が高くなる傾向が読み取れますね。1Qは9月~11月にあたり、この時期は秋冬物がよく売れる時期です。

特に冬物はコートなど客単価が高いものが多いことに加え、ユニクロの売れ筋商品「ヒートテック」の販売量が増えます。このような理由から、ファーストリテイリングの1Qは売上高が高くなるというわけです。

収益性

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、ファーストリテイリングの収益性の変化を表したグラフです。『売上高営業利益率(以下、利益率)』と『ROE』に注目しましょう。今回注意が必要なのは、2013年から会計基準が変更されていることです。そのため、2013年以降で比較していきます。

営業利益率は、2013年から2016年にかけて右肩下がりになっており、2017年から上がっています。営業利益率が右肩下がりになっていたのは、多額の経費がかかっていたためです。2017年以降は、経営の効率化を進めて経費を圧縮したため、営業利益率が回復してきています。

また、ファーストリテイリングは営業利益率11%ほどですが、これは小売業の平均的な営業利益率(3.5%)と比べると高い水準となっています。これは、店舗の販売データを使って在庫を徹底的に管理しているためです。商品の廃棄を減らせるので、コストが下がって営業利益が増えていると考えられます。

他にも、製造から小売まですべて自社でおこなっているので、作業工程のムダを削ることができます。このような理由から、小売業の平均よりも高い営業利益率を維持しているのです。

ROEは、2016年に大きく落ち込みましたが、その後は20%付近に戻ってきています。これは、ROEを計算するときに使う「当期純利益」が大きく減ったためです。理由は、お店の閉店に伴う損失為替の損失が重くのしかかったからです。これはあくまで一時的な減益要因なので、2016年だけ数字が低くなっています。

※ROE=当期純利益÷自己資本×100

3-3.キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー分析(簡易版)

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

上のグラフは、ファーストリテイリングのキャッシュフロー(CF)を表したものです。まずは、最も新しい2018年のキャッシュフローをチェックします。「営業CF:1,764億円、投資CF:▲572億円、財務CF:1,982億円、フリーCF:1,192億円」となっています。

チェックポイントは、営業CFの範囲内で投資や借金の返済をおこなっているかです。つまり、投資CFと財務CFの合計支出額が、営業CFの金額よりも下回っている状態です。このCF計算書を健全型と呼び、会社のあるべき姿をあらわしています。

2018年のファーストリテイリングは、営業CFの金額内で投資と借金の返済をおこなっていますが、社債を発行したため財務CFがプラスとなっています。健全型ではありませんが、積極的に将来への投資をしている状態だと考えられます。

3-4.企業価値評価(株価と理論株価の関係)

企業価値評価

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

※↑具体的な図の見方やツールの使い方などは、こちら(財務分析ツールの紹介)をご参考ください。

(図の見方)
株価理論株価” となっていれば割安です。

「売上成長率」、「営業利益率」、「償却」、「設備投資」は過去3年の値を、「割引率」は推奨値を使って、理論株価を出してみました。ファーストリテイリングの場合、2019年7月12日現在の株価69,810円に対して、理論株価25,328円であり、175%割高であると言えます。

(ツールの使い方〔手順〕)
口座開設(GMOクリック証券) → ログイン → 『株式』 → 銘柄を選ぶ → 『財務分析』

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4.将来予想

4-1.今後のシナリオ(将来予測)

今後も、ファーストリテイリングは業績を順調に伸ばしていくと考えています。その理由は、消費者の節約志向にあります。おしゃれなファッションブランドの服を買わず、機能性に優れた普段着だけ買えば十分という消費者の考えは、これからも続くことでしょう。

また、海外展開を進めているため、新たな市場が開拓できると、売上高も伸びていきます。このような理由から、今後も成長すると予想できるのです。

PER別の株価

ここで、向こう2年間の予想株価を計算してみましょう。予想株価は、「EPS×PER」で計算できます。

まずは、2019年8月期の予想株価から計算してみます。決算短信によれば、2019年8月期の予想EPSは1,616.84円でしたので、ざっくり1,617円とします。2019年7月17日現在のPERは43倍なので、ざっくりPER45倍として計算してみましょう。すると、2019年8月期の予想株価は72,800円となります。

続いて、2020年8月期の予想株価を計算してみましょう。決算短信には、2020年8月期の予想EPSが載っていないため、SBI証券で配信されている、会社四季報の予想EPSを使います。

会社四季報によると、2020年8月期の予想PESは1,852円です。こちらもPER40倍のままだと仮定すると、2020年12月期の予想株価は83,300円となります。

4-2.今後考えられるリスク

今後考えられるリスクは、競合の存在天候や災害です。

競合となるのは、ほかのアパレルブランドです。機能性ではファーストリテイリングが一歩先を行っていますが、デザイン性ではほかのブランドのほうが高くなっています。消費者の好みが機能性からデザイン性に変わったとき、業績が落ち込む可能性があります。

天候もリスクとして挙げられます。ファーストリテイリングが服の原料として使う綿花やカシミヤは、現地の天候次第で必要な量を仕入れることができない場合があります。この場合、計画どおりに服が作れないので、販売する数が減って売上が減ると考えられます。また、雨が長く続いたり災害が起きたりした場合、客足が遠のいて売上が減ることも予想できます。

5.ファーストリテイリングを分析するときに参考にした、無料のサービス

ツール 提供している
証券会社
ポイント
会社四季報 SBI証券 銘柄選択に向いています!
財務分析ツール GMOクリック証券 バリュー投資に向いています!
銘柄スカウター マネックス証券 簡易分析に向いています!

※いずれのサービスも、各証券会社に口座開設していれば、無料で使えます♪

6.まとめ

ファーストリテイリングは、消費者の節約志向と海外展開を追い風に業績を伸ばしていくでしょう

2019年10月には消費税の増税が控えており、増税後はさらに消費者が財布のひもを固くするかもしれません。しかし、生きていくためには衣食住に関係する最低限の出費は必要です。高機能で使いやすい服が安く買えるユニクロは、消費者に選ばれるアパレルブランドとなると予想しています。

また、徹底したコスト管理をしているので、高い営業利益率を維持できると考えられます。成長性以外に収益性も兼ね備えているので、今後も多くの投資家から注目される会社になるのではないでしょうか。

注)ここで紹介している分析方法や結果等は個人的な視点のもので、銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。
注)このページの分析は、2019年7月17日現在の情報に基づいています。同日以降に発表されたIR情報は反映していませんので、あらかじめご了承ください。

西尾のプロフィール

・やさしい株のはじめ方の資産運用担当
・ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格あり
・年間200銘柄以上を分析中

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