企業分析方法

翻訳センター(2483)

[ 業種:サービス業 ]

  • 公開日:2019年4月9日

特許・医薬・工業・金融などの領域で、産業翻訳をおこなっている翻訳センター(2483)について、企業分析しました(翻訳センターの公式ホームページ)。使ったツールは、SBI証券の「会社四季報」、GMOクリック証券の「財務分析ツール」、マネックス証券の「銘柄スカウター」です。(分析担当:西尾)

翻訳センター(2483)の注目ポイントは、以下の3点です。

  • 事業環境に追い風が吹いている
  • ストック型ビジネスである
  • 財務健全性が高い

さっそく、順番に見ていきましょう!

注)分析方法や予測、結果などは管理人の個人的な見解です。
銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。

1.基礎情報

1-1.基礎情報

売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
106億円 80億円 81億円 57億円

※売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は、2018年3月期の実績値です。

時価総額 PER(予) PBR(実) 配当利回り(予)
91億円 15.1倍 2.13倍 1.30%

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

1-2.株価推移 (最近3年間)

株価推移 (最近3年間)

(出典:SBI証券

→最新の株価チャートは、こちら(SBI証券のホームページ)から確認できます。

1-3.事業内容の要約

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

翻訳センターの主力事業は、翻訳事業です。特許の翻訳、医薬・工業・ローカライゼーション・金融・法務といった、専門領域の翻訳を得意とします。この事業を中心に、通訳派遣や語学教育、コンベンションといった事業にも取り組んでいます。翻訳を軸に、周辺サービスを提供している、BtoBの企業ですね。

※コンベンションとは、「会議」や「人や情報、知識、モノの集まり」という意味で使われている言葉です。

コンベンション事業では、国際会議や見本市、博覧会などの企画・運営をおこなっています。一見、翻訳センターの本業とは関係なさそうに見えますが、「国際会議や見本市など、多くの国から人が集まるイベントでは、通訳や翻訳のニーズが発生する」という点で、本業とのシナジーが期待されています。

セグメント構成では、翻訳事業が売上高の7割を生み出しています。その次に、派遣事業、通訳事業が続きます。利益率でも、主力の翻訳事業の収益力が大きく、コンベンション事業や語学教育事業の赤字を補っているようです。

1-4.直近の業績をチェック

今期進捗状況 - 経常利益

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

※1Q、2Q、3Qの「Q」とは、「Quarter」の頭文字で、日本語に直すと「四半期(3か月)」となります。

業績のチェックポイントは、「経常利益の進捗率」です。この数値は、マネックス証券の銘柄スカウターでチェックできます。会社の業績が、過去よりも好調なのか不調なのかを知ることができます。

2019年3月期3Q決算の経常利益進捗率は、61.3%でした。前年の同じ期間は、66.8%でしたので、5.5ポイント悪化しています。2019年3月期の決算短信には、「コンベンション事業の受注が減ったため」だと書かれていました。コンベンションは、時期によって、開催案件が多かったり少なかったりするため、業績にブレが生じます。業績が悪い方向にブレたときも、主力の翻訳事業で補えているようなので、心配はいらないでしょう。

続いて、コンセンサスという、“専門家が予想した今期末の業績”に目を通します。2019年3月期通期のコンセンサス予想は、90億円となっていました。コンセンサスも、経常利益が通期で90億円と予想しています。「企業予想どおりの業績になる」、と考えている投資家が多いようですね。

実際の業績がコンセンサスを上回った場合、株価は上がる傾向にあります。コンセンサスと実際の業績を比べれば、株価のゆくえをざっくりと予想できるので、決算ごとにチェックするのがおすすめです。

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2.なぜ翻訳センターに注目したのか?

翻訳センター(2483)に注目した理由は、次の3点です。

1つ目は、『事業環境に追い風が吹いている』ことです。翻訳センターが取引をしているのは、特許や医薬、工業、金融といった企業です。現在、これらの企業は海外進出を進めており、マニュアルを現地の言語に翻訳する需要が高まっています。翻訳センターの受注も増え、業績の成長が見込めそうです。

2つ目は、『ストック型ビジネスである』ことです。翻訳センターが取り扱うのは、企業の機密事項などが載ったマニュアルが含まれています。翻訳を依頼する企業にとっては、機密事項を託すことになります。他の翻訳会社に変更する場合、機密事項を知っている第三者が増えるため、翻訳会社の変更は起きにくいと考えられます。一度でも翻訳センターを使った企業は、今後も続けて翻訳センターに仕事を依頼する可能性が高いのです。

3つ目は、『財務健全性が高い』ことです。株主資本比率が高く、有利子負債がほぼゼロです。また、総資産の約半分が、現金で占められています。キャッシュリッチで、倒産しにくい企業だと言えるでしょう。

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3.財務諸表分析

3-1.貸借対照表

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

翻訳センターの貸借対照表です。有価証券報告書には数字しか書かれていないので、上に載せたGMOクリック証券の財務分析ツールを使うと、その中身を目でチェックできるので便利です。

2018年の貸借対照表について、『①現金等(水色の部分)』と、『②有利子負債(濃い赤色と薄い赤色の部分)』、『③株主資本(黄色の部分)』に注目しましょう。

①現金等は、総資産の約半分を占めています。毎年稼いだ利益を、現金のまま貯めているため、現金の総資産に占める割合が、大きくなっているようです。貸借対照表の右側に載っている、買入債務などをすべて返すように言われたとしても、手元にある現金で対応できるため、倒産する危険性はかなり低いでしょう。

②有利子負債は、貸借対照表に載っていません。理由は、無借金で事業を展開しているからです。翻訳事業は、事業展開の際に、大型の設備投資が必要ないと考えられます。今後も大きな環境の変化がなければ、有利子負債を使わず、無借金経営が続くのではないでしょうか。

③株主資本は、総資産の約70%とかなり多くなっています。中身に目を向けると、純資産の約70%が利益剰余金でした。稼いだ利益を着実に蓄積し、株主資本を大きくしているようです。

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

今度は、過去10年分の貸借対照表の推移をチェックしましょう。10年分さかのぼってチェックすることで、「分析している企業が、どのように変化してきたか」がわかります。

2009年以来ずっと、貸借対照表が大きくなっていますね。黄色の『株主資本』が、毎年増えているのも注目ポイントです。本業でしっかり稼ぐことができており、その利益を蓄積できているようです。このような企業は、倒産しにくく、長期保有に向いています。

水色の『現金等』も、毎年増えています。本業で稼いだ利益を、現金のまま持っているためでしょう。事業展開に使うためだと考えられますが、もし余るようなら、株主還元を強化してほしいところです。

また、10年をとおして有利子負債がゼロです。翻訳件数を増やし、事業を拡大してきましたが、すべて株主資本で賄えています。今後も同じ傾向が続くでしょう。

貸借対照表から、とても堅実に経営しており、「安定して業績を伸ばせている企業」だとわかりますね。

3-2.損益計算書

過去~現在~未来まで12年分

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、過去12年分の損益計算書をグラフ化したものです。ほぼ毎年、増収増益となっていますね。この理由として、翻訳事業の受注が増えていることが挙げられます。

過去3年間の年平均成長率(CAGR)を求めると、売上高が6.9%伸びています。企業のグローバル化を背景に、着実に業績を伸ばしています。今後も海外進出する企業が増えたり、外国人労働者が増えたりすると考えられるため、翻訳センターは業績を伸ばすことができるでしょう。

四半期ごとの業績

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、翻訳センターの損益計算書を、四半期ごとにグラフ化したものです。売上高や営業利益が3Qと4Qに積みあがる、下期偏重型の企業だとわかります。この時期は「年度末」にあたるため、取引先企業からの入金が相次ぐのではないでしょうか。

損益計算書についてのまとめです。翻訳センターは、業績が右肩上がりの企業です。「企業のグローバル化」や「外国人労働者の増加」といった、大きなトレンドを追い風に、今後も成長が見込めるでしょう。

3-3.キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー分析(簡易版)

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

翻訳センターのキャッシュフロー(CF)を見ましょう。2018年は、「営業CF:+、投資CF:-、財務CF:-、フリーCF:-」となっています。金額は、「営業CF:6.2億円、投資CF:-6.8億円、財務CF:-1.1億円、フリーCF:-0.6億円」です。営業CFの金額以上に、投資しているようですね。これは、メディア総合研究所やみらい翻訳の株式を取得したためです。事業拡大のための投資なので、良い投資だと言えますね。

フリーCFがマイナスとなっている点が気になりますが、株式取得にともなう一時的なマイナスです。2019年には、フリーCFがプラスに戻ってくるのではないでしょうか。

2017年より前を振り返ると、キャッシュフローは年によってバラバラです。しかし、フリーCFが積み上がっていることから、着実に利益を蓄積できていたと考えられます。投資も、基本的に営業CFの金額内でおこなっており、堅実な経営ができています。

キャッシュフロー計算書についてまとめます。堅実な経営をしている企業です。2018年には、成長のために企業2社の株式を取得したため、フリーCFはマイナスとなりました。しかし、これは一時的なマイナスであり、2019年以降はフリーCFがプラスに戻ってくると考えられます。

3-4.企業価値評価(株価と理論株価の関係)

企業価値評価

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

※↑具体的な図の見方やツールの使い方などは、こちら(財務分析ツールの紹介)をご参考ください。

(図の見方)
株価理論株価” となっていれば割安です。

「売上成長率」、「営業利益率」、「償却」、「設備投資」は過去3年の値を、「割引率」は推奨値を使って、理論株価を出してみました。翻訳センターの場合、2019年3月28日現在の株価2,696円に対して、理論株価2,159円なので、24%割高です。

(ツールの使い方〔手順〕)
口座開設(GMOクリック証券) → ログイン → 『株式』 → 銘柄を選ぶ → 『財務分析』

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4.将来予想

4-1.今後のシナリオ(将来予測)

翻訳センターは、企業のグローバル化外国人労働者の増加によって、成長していく企業です。2018年には、メディア総合研究所やみらい翻訳の株式を取得しているため、2019年以降の売上高が底上げされるでしょう。年平均成長率6.9%程度で、着実に成長していくのではないでしょうか。

PER別の株価

ここで、向こう2年間の予想株価を計算してみましょう。予想株価は、「EPS×PER」で計算できます。

まずは、2019年3月期の予想株価から計算してみます。決算短信によれば、2019年3月期の予想EPSは178.1円です。現在のPERを15倍として計算すると、2019年3月期の予想株価は2,700円となります。

続いて、2020年3月期の予想株価を計算してみましょう。決算短信には、2020年3月期の予想EPSが載っていないため、SBI証券で配信されている、会社四季報の予想EPSを使います。

会社四季報によると、2020年3月期の予想PESは193.5円でした。こちらも現在のPER15倍で計算してみると、2020年3月期の予想株価は2,900円となります。

4-2.今後考えられるリスク

今後考えられるリスクは3つあります。

  • 参入障壁が低く、価格競争に巻き込まれる
  • 人件費が高騰する
  • 機密情報が漏れ、信用がなくなる

まずは、「参入障壁が低く、価格競争に巻き込まれる」というリスクがあります。翻訳業界は、翻訳する人材を確保できれば、事業をおこなうことができます。参入障壁が低いため、競合が増えると、受注競争や価格競争に巻き込まれる可能性があります。業績が悪化することが考えられるため、競合の存在には常に注意を払う必要があります。

「人件費が高騰する」ことも考えられます。翻訳事業は成長産業であるため、翻訳会社は翻訳者・通訳者を大量に囲い込んで、業績を伸ばそうとするはずです。そのため、人材確保のためにお金をかけざるを得ず、人件費が膨れ上がってしまうでしょう。利益を圧迫する要因ともなるため、人件費の推移には注意が必要です。

「機密情報が漏れ、信用がなくなる」ことも、大きなリスクです。翻訳センターでは、企業の特許技術の翻訳や、内部で使うマニュアルの翻訳を任されています。万が一、機密情報が漏れた場合は、信用がなくなる可能性があります。この場合、受注が減って、業績が大幅に悪化するかもしれません。

5.翻訳センターを分析するときに参考にした、無料のサービス

ツール 提供している
証券会社
ポイント
会社四季報 SBI証券 銘柄選択に向いています!
財務分析ツール GMOクリック証券 バリュー投資に向いています!
銘柄スカウター マネックス証券 簡易分析に向いています!

※いずれのサービスも、各証券会社に口座開設していれば、無料で使えます♪

6.まとめ

翻訳センターは、企業の海外進出や外国人労働者の増加によって、今後も成長が見込めます。2018年には、事業を強化するため、2社の株式を取得しました。これまでと同じように、今後も地道に業績を伸ばしていくのではないでしょうか。

投資する場合は、「受注実績が前年と比べて増えているか」を、毎年チェックするべきです。受注の伸びが鈍化した場合、マイナス成長となった場合は、競合が激化して生き残り合戦となっているかもしれないので、注意しましょう。

また、機密事項を含む翻訳を取り扱うため、翻訳を依頼する企業にとっては乗換コストが高く、ストック型ビジネスとして顧客を囲い込むことができています。財務健全性も高いため、知名度が上がれば、投資家からも高く評価される企業ではないでしょうか。

注)ここで紹介している分析方法や結果等は個人的な視点のもので、銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。
注)このページの分析は、2019年3月29日現在の情報に基づいています。同日以降に発表されたIR情報は反映していませんので、あらかじめご了承ください。

西尾のプロフィール

・やさしい株のはじめ方の資産運用担当
・ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格あり
・年間200銘柄以上を分析中

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