企業分析方法

吉野家ホールディングス(9861)

[ 業種:飲食業 ]

  • 公開日:2019年9月6日

牛丼チェーン店「吉野家」を世界中で展開している吉野家ホールディングス(9861)について、企業分析しました(吉野家ホールディングスの公式ホームページ)。使ったツールは、SBI証券の「会社四季報」、GMOクリック証券の「財務分析ツール」、マネックス証券の「銘柄スカウター」です。(分析担当:西尾)

吉野家ホールディングス(9861)の注目ポイントは、以下の2点です。

  • 店舗数を増やして安定成長している
  • 収益性改善に取り組んでいる

さっそく、順番に見ていきましょう!

注)分析方法や予測、結果などは管理人の個人的な見解です。
銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。

1.基礎情報

1-1.基礎情報

売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
2,024億円 1億円 3億円 ▲60億円

※売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は、2019年2月期の実績値です。
※「▲」は「-(マイナス)」と同じ意味です。

時価総額 PER(予) PBR(実) 配当利回り(予)
1,464億円 1,451.6倍 2.96倍 0.89%

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

1-2.株価推移 (最近3年間)

株価推移 (最近3年間)

(出典:SBI証券

→最新の株価チャートは、こちら(SBI証券のホームページ)から確認できます。

1-3.事業内容の要約

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

吉野家ホールディングスは、牛丼チェーン店「吉野家」を中心に「はなまる」や「アークミール」、「京樽」などを運営する会社です。明治時代の東京・日本橋にあった魚市場で、牛丼屋をオープンしたのがはじまりです。

セグメント売上

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の画像は、セグメント別売上を表しています。牛丼チェーン店「吉野家」が売上の50.7%を占めており、吉野家ホールディングスの業績に大きな影響を与えています。

各セグメントの利益率を確認すると、主力の吉野家や海外事業、はなまるの営業利益率が高くなっています。赤字となっているのは、ステーキチェーン店のアークミールとその他です。その他は売上高が小さいので今回は無視するとして、アークミールがどうして赤字なのかは、決算短信や有価証券報告書で調べました。

アークミールが運営している店は、「ステーキのどん」や「ステーキハウスフォルクス」といったステーキ店です。2019年2月期の決算短信を読むと、「ステーキ・しゃぶしゃぶ業態における競争が激化し既存店売上高が低迷した」と書いてあります。この時期は、競合のいきなりステーキが新規出店を加速させているので、こちらに客が奪われたと考えられます。

1-4.直近の業績をチェック

今期進捗状況 - 経常利益

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

※1Q、2Q、3Qの「Q」とは、「Quarter」の頭文字で、日本語に直すと「四半期(3か月)」となります。

業績のチェックポイントは、「経常利益の進捗率」です。この数値は、マネックス証券の銘柄スカウターでチェックできます。会社の業績が、過去よりも好調なのか不調なのかわかります。

まず、赤枠部分に示した、最新の決算の進捗率をチェックします。2020年2月期1Qの進捗率は83.6%と、赤字だった前年同期と比べてかなり良い業績だとわかります。なぜかというと、宅配サービスの開始によって吉野家の売上が増えたからです。このまま行けば、通期の業績が会社予想を大きく上回りそうです。

しかし、会社予想の経常利益をチェックすると、2Qで5.5億円まで減少し、最終的に15億円に戻るシナリオです。つまり、2Q単体では、経常利益が赤字になる見通しなのです。もし2Qの経常利益がコンセンサスを下回っていると、失望感から株が売られるかもしれないので要注意です。

最後に、コンセンサスを確認しましょう。コンセンサスとは、市場の投資家が予想する業績です。通期の経常利益は28億円になると予想しており、会社予想の15億円を大きく上回ると考えているようです。

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2.なぜ吉野家ホールディングスに注目したのか?

吉野家ホールディングス(9861)に注目した理由は、次の2点です。

1つ目は、『店舗数を増やして安定成長している』ことです。直近決算の2019年2月期には、国内店舗数が約120店舗、海外店舗が約200店舗増えました。毎年継続的に店舗を増やしているので、売上高は年平均で3%ほど成長しています。

牛丼やうどんは低価格なので、店舗が増えても売上高への影響は大きくありません。しかし、着実に成長している優良企業だと言えるでしょう。

2つ目は、『収益性改善に取り組んでいる』ことです。吉野家の収益性を圧迫しているのは「人件費」です。そのため、人件費を削るためにいくつか取り組みをしています。損益計算書の分析で詳しく説明しますが、取り組みが成功すれば収益性が改善するかもしれません。

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3.財務諸表分析

3-1.貸借対照表

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

吉野家ホールディングスの貸借対照表です。有価証券報告書には数字しか書かれていないので、上に載せたGMOクリック証券の財務分析ツールを使うと、その中身を目でチェックできるので便利です。

2018年の貸借対照表について、『①有形固定資産(緑色の部分)』、『②有利子負債(赤色の部分)』に注目しましょう。

①有形固定資産が貸借対照表の半分程度を占めています。これは、2019年2月現在、吉野家ホールディングス全体で3,403店舗あり、その分の建物が計上されているからです。今後も新規出店によって増えていくでしょう。

②有利子負債の割合も高くなっています。これは、店舗を増やすためにお金がたくさん必要だからです。吉野家ホールディングスは海外進出に力を入れているので、今後も有利子負債の割合が高い状態が続くと考えられます。

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

続いて、10年分の貸借対照表です。注目ポイントは、総資産の推移と売上債権です。

総資産の推移を見ましょう。総資産とは、会社が持っている資産すべてを指します。2011年から2013年にかけて総資産が減っていますが、これは不採算店舗を大量に閉店したためです。2014年以降は不採算店舗が減り、海外進出を積極的に進めたため、総資産が増えています。

売上債権の推移にも注目しましょう。グラフのオレンジ色の部分が売上債権です。このグラフだと少し見にくいのですが、2018年以降売上債権が増えています。この理由は、2018年からSuciaなどの交通系電子マネーに対応したためです。

※売上債権(売掛金とも言います)についての説明は、売掛金(うりかけきん)とは?で詳しく説明しています。

3-2.損益計算書

過去~現在~未来まで13年分

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、過去~現在~未来まで13年分の損益計算書をグラフ化したものです。売上高(青色の棒グラフ)は、2013年以降毎年増えていますこれは、新規出店によって売上が積み上がっているためです。営業利益(赤色の折れ線グラフ)は、年によって上下しています。営業利益が減っている年は、原材料費や人件費が多くかかっているようです。

四半期ごとの業績

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、吉野家ホールディングスの損益計算書を、四半期ごとにグラフ化したものです。特に季節要因はなさそうですね。売上高は、四半期ごとに少しずつ右肩上がりで増えています。営業利益は時期によって減っていますが、これは原材料費や人件費が重くのしかかっているためです。

収益性

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、吉野家ホールディングスの収益性の変化を表したグラフです。売上高営業利益率(以下、利益率)とROEに注目しましょう。

営業利益率は、2008年と2019年を比べると減少しています。主な理由は、原材料費や人件費が高くなっているからです。また、営業利益率が1ケタで推移しているのは、牛丼店は低価格で回転率を高める薄利多売ビジネスだからです。吉野家では収益性改善の取り組みを進めているので、営業利益率が上昇するかもしれません。

ROEも低い状態が続いています。こちらも営業利益率と同じく、薄利多売ビジネスならではの特徴です。

3-3.キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー分析(簡易版)

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

上のグラフは、吉野家ホールディングスのキャッシュフロー(CF)を表したものです。まずは、最も新しい2019年のキャッシュフローをチェックします。「営業CF:28億円、投資CF:▲90億円、財務CF:24億円、フリーCF:▲62億円」となっています。

チェックポイントは、営業CFの範囲内で投資や借金の返済をおこなっているかです。つまり、投資CFと財務CFの合計支出額が、営業CFの金額よりも下回っている状態です。このCF計算書を健全型と呼び、会社のあるべき姿をあらわしています。

吉野家ホールディングスは、投資CFと財務CFの合計支出額が▲66億円、営業CFは28億円なので、かなり積極的に投資をしている会社だと言えます。

ここで、投資CFの中身を見ると、ほとんどが有形固定資産の取得となっています。国内はもちろん、海外展開を積極的に進めているためですね。新規出店した店舗の売上が業績に加わるため、今後も売上高が成長していくでしょう。

3-4.企業価値評価(株価と理論株価の関係)

企業価値評価

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

※↑具体的な図の見方やツールの使い方などは、こちら(財務分析ツールの紹介)をご参考ください。

(図の見方)
株価理論株価” となっていれば割安です。

「売上成長率」、「営業利益率」、「償却」、「設備投資」は過去3年の値を、「割引率」は推奨値を使って、理論株価を出してみました。吉野家ホールディングスの場合、2019年9月2日現在の株価2,278円に対して、理論株価▲220円であり、割高であると言えます。

このように、理論株価がマイナスとなっているのは、有利子負債がとても多いためです。吉野家ホールディングスは、海外を中心に店舗を増やすため、多額の借金を背負っています。しばらくは新規出店のために借金が多い状態が続くので、理論株価はあまり参考にならないでしょう。投資判断を下す際は、今後の成長性で判断するのが良さそうです。

(ツールの使い方〔手順〕)
口座開設(GMOクリック証券) → ログイン → 『株式』 → 銘柄を選ぶ → 『財務分析』

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4.将来予想

4-1.今後のシナリオ(将来予測)

吉野家ホールディングスでは、今後の経営方針として以下の2点を掲げています。

  • ①店舗オペレーションの効率化
  • ②新規出店による売上拡大

まずは、①店舗オペレーションの効率化についてです。具体的には、従業員が牛丼を客の元まで運ぶ方式から、客が自分で牛丼を席に運ぶ方式に変えます。こうすることで、少ない人数で店舗を運営でき、人件費が削れるので、営業利益率を高められます。

続いて、②新規出店による売上拡大についてです。吉野家では現在、アメリカやアジアにもお店を出しているのですが、今後はアメリカを中心に店舗数を増やす方針です。海外は未出店エリアが多く、新規出店すればするほど、売上高が増えていくと考えられます。

そのほかにも、店舗の改装や不採算店舗の見直しなどを進め、新たな客層を取り込んだり、収益性を改善させたりするそうです。

4-2.今後考えられるリスク

今後考えられる大きなリスクとして、競合の存在コスト上昇があります。

まずは、競合の存在についてです。牛丼店やうどん店の競合はもちろん、持ち帰りでコンビニなどと競合しています。消費者の好みが変化した場合、競合に客が奪われるかもしれません。

また、吉野家ホールディングスは、原材料費や人件費が高騰した場合に大きな影響を受けます。営業利益率の低下や、場合によっては利益が赤字になるかもしれません。株価にも影響が及ぶので、注意が必要です。

5.吉野家ホールディングスを分析するときに参考にした、無料のサービス

ツール 提供している
証券会社
ポイント
会社四季報 SBI証券 銘柄選択に向いています!
財務分析ツール GMOクリック証券 バリュー投資に向いています!
銘柄スカウター マネックス証券 簡易分析に向いています!

※いずれのサービスも、各証券会社に口座開設していれば、無料で使えます♪

6.まとめ

吉野家ホールディングスをしっかりと分析するまでは、業績が伸びているイメージがなく、人件費高騰で苦しんでいるイメージしかありませんでした。しかし、分析を進めるうちに、苦しい中でも売上を伸ばす取り組みや、利益率を高める取り組みをしているとわかりました。

大きく業績は伸びないものの、安定的に少しずつ成長する会社だと考えられます。「ご飯が安く食べられる」イメージが消費者にも染みついているので、居酒屋などと比べて不況時でも業績が落ちにくいでしょう。

投資する際は、毎月公式ホームページで発表される、月次売上データを確認するべきです。既存店の売上高が100%以上を維持できていれば、年間の売上高が前年よりも成長する可能性が高くなります。しっかりと成長できているか、毎月チェックしましょう。

注)ここで紹介している分析方法や結果等は個人的な視点のもので、銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。
注)このページの分析は、2019年9月4日現在の情報に基づいています。同日以降に発表されたIR情報は反映していませんので、あらかじめご了承ください。

西尾のプロフィール

・やさしい株のはじめ方の資産運用担当
・ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格あり
・年間200銘柄以上を分析中

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