企業分析方法

全国保証(7164)

[ 業種:その他金融業 ]

  • 公開日:2019年4月18日
成長性 4.0
割安性 3.0
収益性 3.5
財務健全性 3.0

住宅ローンの保証をおこなう全国保証(7164)について、企業分析しました(全国保証の公式ホームページ)。使ったツールは、SBI証券の「会社四季報」、GMOクリック証券の「財務分析ツール」、マネックス証券の「銘柄スカウター」です。(分析担当:西尾)

全国保証(7164)の注目ポイントは、以下の3点です。

  • シェア拡大余地が大きい
  • 不況に強い
  • 安定成長している

さっそく、順番に見ていきましょう!

注)分析方法や予測、結果などは管理人の個人的な見解です。
銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。

1.基礎情報

1-1.基礎情報

売上高 営業利益 経常利益 当期純利益
396億円 312億円 320億円 221億円

※売上高、営業利益、経常利益、当期純利益は、2018年3月期の実績値です。

時価総額 PER(予) PBR(実) 配当利回り(予)
2,679億円 11.4倍 2.32倍 2.19%

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

1-2.株価推移 (最近3年間)

株価推移 (最近3年間)

(出典:SBI証券

→最新の株価チャートは、こちら(SBI証券のホームページ)から確認できます。

1-3.事業内容の要約

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

企業情報

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

全国保証は、住宅ローンの信用保証事業をおこなっている企業です。事業内容をかんたんに表すと、「住宅ローンを借りた人から一定の保証料を支払ってもらい、万が一住宅ローンが返済できなくなった場合に、代わりに返済する」という事業です。いわゆる「機関保証」をしてくれる企業ですね。

このような「機関保証」の存在意義は、「住宅を買いたい人が、住宅ローンでお金をスムーズに借りられる」、「金融機関にとっては、確実に住宅ローンを回収できる」という点にあります。住宅を買いたい人も、金融機関も、安心してお金を貸し借りするための大切な存在といえます。

1-4.直近の業績をチェック

今期進捗状況 - 経常利益

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

※1Q、2Q、3Qの「Q」とは、「Quarter」の頭文字で、日本語に直すと「四半期(3か月)」となります。

業績のチェックポイントは、「経常利益の進捗率」です。この数値は、マネックス証券の銘柄スカウターでチェックできます。会社の業績が、過去よりも好調なのか不調なのかを知ることができます。

2019年3月期3Q決算の経常利益進捗率は、55.1%でした。この進捗率は、2019年3月18日の業績上方修正後のものです。上方修正前の予想値「経常利益328億円」での進捗率は、57.8%でした。前年の3Qと比べて、3.4ポイント改善していますね。この理由として、『2019年3月期通期業績予想の修正および期末配当予想の修正に関するお知らせ』では、「与信費用が当初計画を下回ったことなどにより、営業利益、経常利益及び当期純利益は、前回予想を上回ることが見込まれる」と書かれていました。

与信(よしん)とは、文字どおり取引相手に「信用を与えること」で、与信費用は住宅ローンを肩代わりして支払った金額などが含まれます。これを「代位弁済(だいいべんさい)」といいます。2019年3月期は、代位弁済の件数が想定よりも少なかったため、営業利益が押し上げられたということですね。

続いて、コンセンサスという、“専門家が予想した今期末の業績”に目を通します。2019年3月期通期の企業予想は、343億円となっていました。コンセンサスも、経常利益が通期で344億円になると予想しています。「企業予想どおりの業績になる」、と考えている投資家が多いようですね。

実際の業績がコンセンサスを上回った場合、株価は上がる傾向にあります。コンセンサスと実際の業績を比べれば、株価のゆくえをざっくりと予想できるので、決算ごとにチェックするのがおすすめです。

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2.なぜ全国保証に注目したのか?

全国保証(7164)に注目した理由は、次の3点です。

1つ目は、『シェア拡大余地が大きい』ことです。三菱UFJ銀行やみずほ銀行などの民間金融機関が貸し出してる住宅ローンの金額は、合計すると160兆円あります。しかし、全国保証が保証しているのはたったの12兆円と、市場の7%しかシェアを取っていません。残りの148兆円は、民間金融機関の子会社が保証しています。民間金融機関の子会社が、親会社の住宅ローンを保証するという構図は、貸し倒れを自分たちで保証しなければならないため、あまり意味がありません。

さらに、民間金融機関は、金利が低いことを受けて、利益率の低い個人への融資ではなく、M&Aなどの利益率が高いビジネスに力を入れようとしています。住宅ローンの保証事業は、民間金融機関にとってあまりうま味がないため、撤退する可能性があります。その場合、全国保証に民間金融機関の住宅ローン保証を引き受けるチャンスが回ってくるため、シェア拡大が進むと考えられるのです。

2つ目は、『不況に強い』ことです。住宅ローンと聞くと、不況時に返済できない人が増えるイメージがあるのではないでしょうか。しかし、全国保証に確認を取ったところ、住宅ローンの返済は不況時も貸し倒れが起きにくい特徴があります。理由は、「夢のマイホームを手放したくないと考える人が多く、がんばって住宅ローンを返済しようとするから」なのだそうです。

ここで気になるのが、代位弁済の割合です。全国保証に確認したところ、2019年1月現在の代位弁済割合は、たったの0.1%しかありません。1,000件に1件の割合ですね。しかも、2008年のリーマンショック時でも、0.3~0.4%しか代位弁済がなかったそうです。一見不況に弱そうに見える住宅ローン保証ですが、実は比較的不況に強いビジネスのようです。

3つ目は、『安定成長している』ことです。「3-2.損益計算書」で詳しく説明しますが、売上高が右肩上がりになっています。売上高の成長率も、5年平均で10%ずつ成長してきました。全国保証は、今後も住宅ローンの保証という分野で、シェアを拡大していくと考えられます。これまでと同じように、右肩上がりで業績が伸びていくと考えて良いでしょう。

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3.財務諸表分析

3-1.貸借対照表

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

全国保証の貸借対照表です。有価証券報告書には数字しか書かれていないので、上に載せたGMOクリック証券の財務分析ツールを使うと、その中身を目でチェックできるので便利です。

2018年の貸借対照表について、『①現金等(水色の部分)』と、『②運転資本(濃いピンク色と薄いピンク色の部分)』、『③株主資本(黄色の部分)』に注目しましょう。

①現金等は、総資産の約6割を占めています。現金が多い理由は、住宅ローンを借り入れた人から受け取る「保証料」を、現金のまま持っているからです。万が一、住宅ローンの代位弁済が発生した場合、手元に現金を持っておかないと、民間金融機関に返済ができません。また、民間金融機関の住宅ローン保証契約を結ぶ条件に、内部留保金を一定割合以上持っていなければならない、というものがあるそうです。以上の理由から、現金等の割合がとても多くなっています。

②運転資本も、総資産の6割程度を占めています。この多くは、住宅ローンの機関保証契約を結んだ人から受け取る「前受収益」です。全国保証に機関保証を依頼する場合、住宅ローンの借入人は、全国保証に対して「保証料」を支払います。その「保証料」が、前受収益として計上されているのです。住宅ローン保証の取扱件数が増えると、この「前受収益」も増えていきます。

③株主資本は、総資産の約37%となっています。一般的に、株主資本比率は40%以上あると安全だと言われていますが、その基準を満たしていません。株主資本比率が低くなる理由として、「前受収益」が多くなることがあります。全国保証では、保証期間や保証金額に応じた保証料を、一括で受け取っています。そのため、貸借対照表上の「前受収益」が膨らんでしまい、株主資本比率が小さく見えてしまうのです。

現在、全国保証では、財務体質の強化のために、株主資本を積み増しています。毎年少しずつ株主資本比率が上がっているので、今後も少しずつ財務健全性が増していくでしょう。

貸借対照表

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

今度は、過去10年分の貸借対照表の推移をチェックしましょう。10年分さかのぼってチェックすることで、「分析している企業が、どのように変化してきたか」がわかります。

2011年からずっと、貸借対照表が大きくなっているのがわかりますね。その中でも、水色の『現金等』やピンク色の『運転資本』、黄色の『株主資本』が順調に増えています。住宅ローンの保証件数が増え、その分利益も蓄えられているようですね。

貸借対照表から、着実に住宅ローン保証件数を増やし、利益の蓄積ができている、堅実な企業だとわかりました。

3-2.損益計算書

過去~現在~未来まで12年分

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、過去8年分の損益計算書をグラフ化したものです。ほぼ毎年、増収増益となっていますね。営業収益が右肩上がりとなっている理由は、低金利で住宅ローンが借りやすい状態が続いており、住宅ローンの保証件数が増えているからです。

保証債務残高と保有契約件数の推移

(出典:全国保証株式会社 野村IR資産運用フェア2019 説明会資料より作成)

上のグラフは、全国保証の「保証債務残高と保有契約件数の推移」を表したものです。2015年3月以降、営業収益の源泉となる保有契約件数の増加に合わせて、保証債務残高が増加していることがわかりますね。この「保証債務残高の増加」が、営業収益の増加につながるため、全国保証の業績成長を予想する上で大切な指標となります。

「保証債務残高」とは、住宅ローンを借りた人から受け取る「保証料の合計額」のことをいいます。全国保証では、この「保証料の合計額」を小分けにし、毎年少しずつ営業収益(売上高)として計上しているのです。小分けにした保証料は「収入保証料」と呼ばれており、有価証券報告書の中身を見ると、営業収益の99%を「収入保証料」が占めています。つまり、全国保証の営業収益が伸びるためには、収入保証料が増えなければならず、収入保証料が増えるためには、保証債務残高が増えなければならない、ということになります。

営業収益の中身

(出典:全国保証株式会社 第38期有価証券報告書

また、2012年から2015年にかけて、営業利益が4倍近く増えています。この理由として、代位弁済金額の減少があげられます。下の図では、2012年以降の代位弁済金額と完全失業率をグラフにしてみました。代位弁済件数は2013年をピークに毎年減っていることがわかりますね。これは、良好な雇用環境が続き、完全失業率が下がっていることと関連しています。完全失業率が減れば、住宅ローンを払えなくなる人も減るので、結果的に代位弁済件数も減るというわけです。

代位弁済金額と完全失業率の推移

(出典:全国保証株式会社 野村IR資産運用フェア2019 説明会資料より作成)

四半期ごとの業績

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)

上の図は、全国保証の損益計算書を、四半期ごとにグラフ化したものです。売上高や営業利益が4Qに積みあがる、4Q偏重型の企業だとはっきりわかりますね。1-4.直近の業績をチェックで経常利益の進捗率を確認する際は、3Qまでは見かけ上の進捗率が悪い(25%、50%、75%という順調な進捗をしない)点に、注意が必要です。必ず、過去の四半期ごとの進捗率と比べて、好調か不調かを判断しましょう。

損益計算書についてのまとめです。住宅ローン保証のシェア拡大によって、売上高が伸びてきました。また、安定した雇用環境を背景に、与信コストが低下して、営業利益率も高まっています。事業環境が大きく変わらなければ、これまでと同じように、売上高が増えて営業利益率が上がっていくと考えられるでしょう。

3-3.キャッシュフロー計算書

キャッシュフロー分析(簡易版)

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

全国保証のキャッシュフロー(CF)を見ましょう。2018年は、「営業CF:+、投資CF:-、財務CF:-、フリーCF:+」となっています。金額は、「営業CF:349億円、投資CF:-292億円、財務CF:-43億円、フリーCF:57億円」です。投資CFと言えば、設備投資などに使った分マイナスになるイメージが強いのですが、全国保証の場合は、その内訳が他の企業とは異なります。

投資CFの中身は、「定期預金の預入による支出」や「有価証券の取得による支出」、「金銭の信託の取得による支出」、「投資有価証券の取得による支出」が多くを占めていますこのように、金融資産への投資が多い理由は、住宅ローン保証事業で受け取った保証料を、金融資産で運用しているためです。ディスクロージャー誌によれば、国債や高格付けの社債への投資が中心となっています。

2017年より前を振り返ると、営業CFは右肩上がりとなっており、財務CFは毎年の配当金の支出によってマイナスが続いています。今後もこの傾向が続いて行くでしょう。投資CFは、その年の保証料の運用状況によってブレが生じており、その結果フリーCFもブレが大きくなっています。突然フリーCFがマイナスになる、ということが考えられますが、営業CFが減っていない限りは、保証料の運用状況によるものなので、心配はいらないと考えられます。

キャッシュフロー計算書についてまとめます。金融業のため、投資CFの変動理由が他の企業とは異なることに、注意が必要です。全国保証の場合は、「営業CFがきちんと積み上がっているか」を毎年確認することで、事業が好調なのか不調なのかを判断できます。投資した際は、毎年欠かさず確認しましょう。

3-4.企業価値評価(株価と理論株価の関係)

企業価値評価

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)

※↑具体的な図の見方やツールの使い方などは、こちら(財務分析ツールの紹介)をご参考ください。

(図の見方)
株価理論株価” となっていれば割安です。

「売上成長率」、「営業利益率」、「償却」、「設備投資」は過去3年の値を、「割引率」は推奨値を使って、理論株価を出してみました。全国保証の場合、2019年4月9日現在の株価3,835円に対して、理論株価5,024円なので、23%割安です。

(ツールの使い方〔手順〕)
口座開設(GMOクリック証券) → ログイン → 『株式』 → 銘柄を選ぶ → 『財務分析』

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4.将来予想

4-1.今後のシナリオ(将来予測)

今後は、低金利によって住宅ローン保証から撤退する民間金融機関が増えてくると考えられます。こうなった場合、全国保証の保証債務残高が増え、住宅ローン保証のシェアを拡大することができるでしょう。また、人手不足なので、景気が悪化しない限り、雇用環境は安定すると考えられます。全国保証にとっては、与信費用が低くなるというメリットがあり、営業利益率が上昇していくでしょう。

PER別の株価

ここで、向こう2年間の予想株価を計算してみましょう。予想株価は、「EPS×PER」で計算できます。

まずは、2019年3月期の予想株価から計算してみます。決算短信によれば、2019年3月期の予想EPSは328.67円です。現在のPERを11倍として計算すると、2019年3月期の予想株価は3,600円となります。

続いて、2020年3月期の予想株価を計算してみましょう。決算短信には、2020年3月期の予想EPSが載っていないため、SBI証券で配信されている、会社四季報の予想EPSを使います。

会社四季報によると、2020年3月期の予想PESは351.9円でした。こちらも現在のPER11倍で計算してみると、2020年3月期の予想株価は3,900円となります。

4-2.今後考えられるリスク

今後考えられるリスクは、景気や金利の変動です。

全国保証では、住宅ローンの保証をおこなっている関係で、住宅ローンを借りる人の経済的事情に左右されます。景気が悪化したり、金利が上昇したりした場合は、住宅ローンを借りる人が減ってしまい、新規の保証件数が減る可能性があります。その場合、業績が伸び悩むと考えられます。

5.全国保証を分析するときに参考にした、無料のサービス

ツール 提供している
証券会社
ポイント
会社四季報 SBI証券 銘柄選択に向いています!
財務分析ツール GMOクリック証券 バリュー投資に向いています!
銘柄スカウター マネックス証券 簡易分析に向いています!

※いずれのサービスも、各証券会社に口座開設していれば、無料で使えます♪

6.まとめ

全国保証は、住宅ローン保証事業でのシェア拡大によって、今後の成長が見込める企業です。中期経営計画でも、2020年3月期までに、住宅ローン保証残高で業界トップを目指しており、業績が伸びていくと考えられます。

投資する際は、「保証債務残高が前年と比べて減っていないか」や「代位弁済金額が前年と比べて増えていないか」、「完全失業率が前年と比べて上昇していないか」に注目しておく必要があります。

これらの条件の当てはまった場合は、どういう原因があったのかを調べるようにしましょう。一時的な原因なら良いですが、事業環境に逆風が吹きはじめているかもしれません。今後の成長への悪影響が大きそうであれば、投資を続けるかを考え直したほうが良さそうですね。

注)ここで紹介している分析方法や結果等は個人的な視点のもので、銘柄を推奨するものではございません。投資判断等は自己責任にてお願いいたします。
注)このページの分析は、2019年4月10日現在の情報に基づいています。同日以降に発表されたIR情報は反映していませんので、あらかじめご了承ください。

分析担当 西尾のプロフィール

・やさしい株のはじめ方の資産運用担当
・ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格あり
・年間200銘柄以上を分析中

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