日経平均株価が一時1万7,000円割れ!その原因と今後の日本株への影響は?

日経平均株価が一時1万7,000円割れ!その原因と今後の日本株への影響は?

担当:西尾

担当・西尾

最終更新日:2020年3月23日

2020年3月23日追記)2020年3月23日、日経平均株価は前営業日比+330円超で取引を終えました。東京オリンピックの延期懸念や、前営業日のNYダウ下落があったため、日経平均株価が下がると考えていた方が多かったようです。なぜ予想に反して日経平均株価が上がったのかこちらで解説しています。ぜひご覧ください!

<株価チャート5分足>

日経平均株価の推移

(出典:SBI証券

2020年3月9日、日経平均株価が1年2か月ぶりに2万円割れとなりました。この背景には、主に3つの要因が絡んでいます。

  • 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大懸念
  • 原油価格の急落
  • 上記①と②による円高の進行

これらによって、「新型コロナウイルスによる世界経済の悪化」や「産油国の財政悪化による世界経済の悪化」、「円高による日本企業の業績悪化」が懸念されたのです。

投資家はリスクオフ(リスク回避)の姿勢を取り、株式から資金を引き上げました。引き上げた資金は国債などの安全資産に向かい、国内債券市場では日本国債10年の利回りが-0.2%付近まで低下しています。

<日本国債10年チャート5分足>

新発10年物国債利回りの推移

(出典:SBI証券

さらに、日本時間の3月9日夜に開いた米国株式市場では、ダウ工業株30種平均(NYダウと呼ばれています)の株価が急落し、前週末比で2,013ドル安い23,851ドルで取引が終了しました。下げ幅は過去最大となっています。

<ダウ工業株30種平均(NYダウ)株価チャート5分足>

ダウ工業株30種平均の推移

(出典:SBI証券

また、S&P500種株価指数は取引時間中に急落し、一時7%を超える下げとなりました。これによって、売買を一時中断する“サーキットブレーカー※1”が発動しました。米国でサーキットブレーカーが発動したのは、2013年に現在の制度に改正されてからこれが初めてです。

米国株式市場が大きく下がった理由は、日経平均と同じく「新型コロナウイルスの世界的な感染拡大」と「原油価格の急落」です。特に米国では新型コロナウイルスの感染が広がっているため、トランプ大統領が景気悪化を懸念して経済対策を検討すると発表しました。しかし、その後も新型コロナウイルスの感染拡大による懸念が消えず、株式市場では下落が続けました。

※1 サーキットブレーカーとは、株価の変動幅が大きくなりすぎたときに、売買を一時中断する措置を指します。株式市場では、売りが売りを呼んで下落が止まらなくなることがあるので、投資家に冷静になってもらう目的で導入されています。
日本の株式市場では、先物とオプションのみに適用され、現物株式には設けられていません。

WHOのパンデミック宣言を受けて株価が下落

2020年3月11日、WHO(世界保健機関)が「パンデミック宣言」を発表し、世界的な流行とそれによる混乱が正式に認められました。これを受けて、経済活動の停滞がさらに深刻になるとの懸念が広がり、米国株式市場ではダウ30種工業平均などが大幅下落となりました。明けて2020年3月12日の東京株式市場にも影響が広がり、日経平均株価は一時1,000円安となっています。

米国株式市場の暴落に加えてSQによって株価が暴落

2020年3月13日も、日経平均株価が暴落し、ついに17,000円を下回りました。これは、米国株式市場で2度目のサーキットブレーカーが発動するほどの暴落で投資家の間で不安感が高まったのに加えて、3月13日が「SQ日※2」とよばれる先物・オプション取引の満期日である点が影響しているようです。

そのため、ストップ安の銘柄が130銘柄を超え、日経平均株価を構成する国際石油開発帝石(1605)までもがストップ安となりました。また、一部の銘柄では買い注文がゼロになるなど、すさまじい状況です。急激な株安を受けて、財務省と日銀、金融庁が3月13日の午前11時40分から緊急会合を開きます。どのような政策が出てくるのか注目ですね。

※2 SQについては、「SQ(特別清算指数)ってなんですか?」で詳しく説明しています。

FRBの緊急利下げとその影響

2020年3月16日朝、FRB※3が緊急のFOMC※4を開き、1.0%の緊急利下げを発表しました。2008年のリーマンショック以来のゼロ金利政策で、政策金利(FF金利)は0~0.25%となります。また、米国債などを大量に買う量的緩和政策も復活します。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による経済の混乱を抑えるのが目的です。

また、FRBの緊急利下げを受けて、日銀は3月18日~19日に予定していた金融政策決定会合を前倒しして、3月16日正午に開催すると発表しました。会合の結果次第では株価が大きく動く可能性があるため、投資家は売買をひかえて様子見しているようです。そのため、3月16日午前の日経平均株価は、前週金曜日の終値17,430円付近で推移しています。

日経平均株価は落ち着いた値動きとなっていますが、3月16日朝のダウ工業株30種平均の時間外取引では、1,000ドル以上値下がりしました。これは、FRBがゼロ金利政策を発表したことで、これ以上追加で緩和できなくなる“弾切れ”が意識されたためと考えられます。

目先は、「日銀の金融政策決定会合でどのような政策が発表されるか」に注目が集まっています。会合の内容は、このコラムでもまとめていく予定です。

※3 FRBとは、米国で中央銀行のような役割を果たす組織です。年に8回、FOMCを開催して金融政策を決めています。今回のように臨時でFOMCを開き、緊急の利下げをおこなう場合もあります。

※4 FOMCとは、「Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)」の略で、FRBが開催する金融政策を決める会議です。日本の金融政策決定会合と同じ役割を果たしています。

日銀が金融緩和の強化を発表

2020年3月16日正午、日銀が臨時の金融政策決定会合を開き、会合の結果金融緩和の強化が決まりました。具体的な金融緩和強化の内容は、次の3点です。

  • 積極的な国債買入れとドルオペの実施
  • 企業金融支援
  • ETFとJ-REITの積極的な買入れ

以上の3つに取り組むことで、新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済の悪化を食い止めようとしています。FRBとは違い、今回は利下げをおこなわない方針を取ったのにも注目です。これは、今後さらに景気が悪化した場合に、金融緩和の余地を残しておくためだと考えられます。

①積極的な国債買入れとドルオペの実施では、国債の購入による円資金の供給、そしてドルオペによる米ドル資金の供給をおこないます。ドルオペについては、日本銀行とカナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度、スイス国民銀行と強調しておこなう政策です。

②企業金融支援では、新型コロナウイルスの影響で資金繰りに苦しむ中小企業を支えるため、金融機関に最長1年分の資金を金利0%で供給する政策をおこないます。さらに、大企業が資金調達のために発行するCP(コマーシャルペーパー)や社債も、新たに2兆円の買入れ枠を追加しました。企業が倒産しないよう、資金面でしっかりとサポートする方針です。

③ETFとJ-REITの積極的な買入れでは、ETFは年間12兆円、J-REITは年間1,800億円を上限に、積極的な買入れをおこなう予定です。この政策は株価の下支え効果があるため、投資家の不安を和らげて、市場を安定させる効果があります。

この発表を受けて、日経平均株価は一時300円以上値上がりしましたが、14時30分現在は前日比でマイナスとなっています。

NYダウが過去最大の下げ幅を記録

2020年3月16日の米国株式市場は、FRBが緊急利下げを発表してからはじめての取引でした。取引開始直後に株価が急落し、3度目となるサーキットブレーカーが発動するなど、波乱の幕開けとなりました。NYダウの下げ幅も大きく、3月12日に記録した2,352ドル安を超える、2,997ドル安で取引を終えています。一時下げ幅が3,000ドルを超える場面もありました。

NYダウが下がった原因として考えられるのは、次の2点です。

  • 新型コロナウイルスの流行拡大による経済の悪化
  • FRBの緊急利下げによる金融政策の弾切れ感

「①新型コロナウイルスの流行拡大による経済の悪化」は、以前から意識されていることです。しかし、先週末に米国で飲食店の閉鎖(テイクアウトは許可)がおこなわれ、経済活動の停滞が意識されたのが大きかったようです。また、企業が社債やCP(コマーシャルペーパー)で資金調達できないリスクも懸念され、今まで以上に景気の悪化が意識されたようです。

度重なる株価の急落を受けて、VIX指数はリーマンショック級の83.56となりました※5。市場の混乱が高まっているのがよくわかりますね。VIX指数については、「VIX指数とは?」で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

米国株式市場の混乱により、日経平均先物も一時400円超安となるなど、日本の株式市場にも影響が及んでいます。翌日3月17日の東京株式市場では、日経平均株価が一時600円安になる場面がありました。しかし、その後一時500円を超える上げ幅となる場面があるなど、乱高下しています。10:30現在は落ち着いており、前日比プラスで推移しています。

3月16日夜に“国際オリンピック委員会(IOC)が17日に電話会議を開く”というニュースが飛び込んできたので、東京五輪が予定通り開催されないのではないかという懸念が強くなりました。しかし、日銀の金融政策決定会合で発表された、ETFの購入上限の引き上げなどが好感され、日経平均株価が下げ止まっていると考えられます。プラスの要因とマイナスの要因が次々発表されているため、株価の動きが不安定になっているようです。

※5 リーマンショック時のVIX指数は、終値の最高値が2008年11月20日の「80.86」、日中での最高値は2008年10月24日の「89.53」です。終値で比べると、今回のVIX指数「83.56」が過去最高値となります。

日銀のETF買いが意識され日経平均株価が反発

2020年3月23日は、日経平均株価が前営業日比+334.95円で取引を終えました。今朝発表された東京オリンピック延期検討のニュースや、先週金曜日のNYダウの下落といったマイナス材料があったため、多くの投資家が日経平均株価の下落を予想しており、意外に感じる方が多かったようです。

投資家の予想に反して日経平均株価が上がった理由は、「日銀のETF買いが意識された」からです。2020年3月16日に、日銀が臨時の金融政策決定会合を開き、ETFを年間12兆円分買うと発表しました。「12兆円」は当初予定されていた「6兆円」の2倍です。つまり、今まで以上にたくさんのETFを日銀が買うと宣言したのです。

日銀が大量にETFを買うと、ETFに組み込まれている企業の株価が上がります。これは、ETFのもとになる「現物株バスケット」が関係しています。この仕組みはすこし複雑なので、「日銀のETF買いで、ETFに組み入れられている企業の株価が上がる」と理解しておけばよいです。詳しい説明は、「日銀がETFの貸付を決定!株価はどうなる?」で書いているので、ぜひご覧ください。

そのため、投資家は「ETFに組み入れられている企業なら、株価が上がるはずだ」と考え、それらの企業に投資したと考えられます。マイナス材料が多い中でも、日銀のETF買いが安心材料となり、日経平均株価を押し上げたのです。今後もしばらくは日銀のETF買いは続くので、日経平均株価が下がりにくい状態が続くかもしれません

原油価格急落と円高進行の影響が大きい企業は?

2020年3月9日に起きた日経平均株価の下落は、新型コロナウイルス以外にも原油価格の急落や、円高の進行の影響が大きいと考えられます。そこで、今回のコラムでは、原油価格の下落や円高の進行がプラスに働く企業と、マイナスに働く企業をまとめて紹介します。

日経平均株価が大きく下がっていると、どの企業を買ってもだめだと考えがちです。しかし、中には原油価格の下落や円高の進行が追い風となる会社もあります。

※下記に掲載する企業は、あくまで原油や為替の影響のみを考慮した場合であり、新型コロナウイルスによる業績への影響は考慮していません。

原油価格の下落が「プラス」に働く企業

銘柄コード 銘柄名
9201 日本航空
9202 ANAホールディングス
9143 SGホールディングス
9511 沖縄電力
9531 東京瓦斯

いずれも原油などの燃料を使う企業です。原油価格が下がると燃料の調達コストが下がるので、「航空・運輸・電力・ガス」などは、これまでよりも業績が良くなると考えられます。

原油価格の下落が「マイナス」に働く企業

銘柄コード 銘柄名
1605 国際石油開発帝石
5019 出光興産
5020 JXTGホールディングス
8031 三井物産
1963 日揮ホールディングス

原油価格の下落でデメリットを被るのは、原油を精製して石油を作っている石油元売などです。原油価格が下がると各社が持っている原油の在庫の価値が減り、損失が発生します。

円高が「プラス」に働く企業

銘柄コード 銘柄名
9503 関西電力
9843 ニトリホールディングス
9532 大阪瓦斯
9202 ANAホールディングス
2001 日本製粉

原材料を海外から輸入するメーカーや、円高によって日本人の海外旅行需要が取り込める航空会社などが含まれます。

円高が「マイナス」に働く企業

銘柄コード 銘柄名
7203 トヨタ自動車
5020 JXTGホールディングス
6981 村田製作所
7751 キヤノン
2914 日本たばこ産業

主に、商品を海外に輸出する企業がマイナスを被ります。円高の場合、海外の売上高を日本円に換算したとき、日本円の売上高が目減りするからです。

今後の日本株はどうなる?

株価下落のきっかけとなったのは、次の3つの要素でした。

  • 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大懸念
  • 原油価格の急落
  • 上記①と②による円高の進行

これらの懸念がなくなれば、株価が元に戻ると考えられます。しかし、日本国内では新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。イベントの中止や消費活動の自粛が起きており、経営に苦しむ企業も出てきました。さらに、東京オリンピックの開催も危ぶまれており、オリンピックによる経済の押し上げ効果が消えてしまうことへの不安感も、日本株の下落につながっているようです。

世界的にも新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、世界全体の景気が悪化するかもしれません。各国が経済政策を検討していますが、どこまで効果があるかもわかりません。このように、将来どうなるか誰も見通せないので、投資家たちもリスクを取らず株式市場から資金を引き上げています。しばらくは株価の低空飛行が続くと考えられます。

株価が元に戻るには、「新型コロナウイルスの感染拡大スピードが緩やかになる」、「ドル円が円安方向に進む」などの条件が必要となるでしょう。日々のニュースをチェックして、株価が元に戻る兆しがないか確認したいですね。

まとめ

今回の下落で、保有株の損失が増えた方も多いのではないでしょうか。しかし、あせってはいけません。長期的に見れば、この株価下落は一時的なものです。

株価が大きく下がったため、PERなど指標面で割安感が目立つ企業も増えてきました。しかし、単純に「割安だから買い」と考えてしまうと、判断を間違える可能性があります。なぜなら、新型コロナウイルスの感染拡大によって、企業の成長シナリオが崩れているかもしれないからです。そのため、注目企業の成長シナリオを点検し、シナリオが崩れていないとわかった場合にのみ、投資を考えるべきでしょう。

また、新型コロナウイルスの感染拡大や原油価格急落による悪影響が、株式市場にすべて織り込まれているとは考えにくいです。不確実な要素が多く、投資家がしっかりとリスクを判断できないため、もう一段株価が下がる可能性も残っています。これらを視野に入れつつ、慎重に優良株に投資していきたいですね。

西尾のプロフィール

・やさしい株のはじめ方の資産運用担当
・ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格あり
・年間200銘柄以上を分析中

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