日立製作所が日立金属の売却を検討!理由と株価への影響を解説

担当・にしけい
最終更新日:2021年4月30日
(2021年4月30日追記)
2021年4月28日、日立製作所(6501)は上場子会社の日立金属(5486)を、ベインキャピタルや日本産業パートナーズなどの日米ファンド連合に売却すると正式発表しました。同じ日に、日立金属自身もTOBに賛同するリリースを出しました。日米ファンド連合は8,166億円で日立金属株をすべて買い取る方針です。詳しくは、こちらで解説しています。
2020年8月20日の日経ビジネスで、日立製作所(6501)が上場子会社である日立金属(5486)の売却を検討しはじめたと報道がありました。売却先はまだ決まっていませんが、アドバイザーに外資系証券会社を雇い、入札に向けて準備を進めているそうです。
この報道が、Twitter上で話題となっています。
日立金 +10%超 『スクープ 日立、日立金属を売却へ 「選択と集中」が最終段階に』 https://t.co/44jLtdKg8t pic.twitter.com/k69YqB1dkr
— sak (@sak_07_) August 20, 2020
スクープ 日立、日立金属を売却へ 「選択と集中」が最終段階にhttps://t.co/yDmuKcakqb
— ありゃりゃ (@aryarya) August 20, 2020
なぜ日立製作所は日立金属を売却するのか?
このニュースを見て気になるのは、「なぜ日立製作所は日立金属を売却するのか?」ではないでしょうか。その理由は、「選択と集中」です。日立製作所は最近デジタル事業「ルマーダ」に力を入れており、ルマーダと関係性の薄い子会社を売却しています。
ルマーダとは、顧客やパートナーと共同で社会課題を解決していく事業です。例を挙げると、インドにATMを設置して決済サービスを便利に使えるようにしたり、倉庫会社と共同で工場や倉庫のIoT化などをおこなったりしています。
日立製作所では、このルマーダ事業と関係性が薄い子会社「日立化成」、「日立電線」の売却をおこなった実績があります。今回話題に上がっている「日立金属」も、ルマーダとの親和性が低いため、売却を検討しているようです。
株価への影響
<日立金属(5486)の株価推移>
(出典:SBI証券)
こちらは8月20日の日立金属の株価推移です。記事が発表されたのが12時30分ごろだったため、後場がはじまると同時に株価が1,740円まで上昇しました。その後は株価が下がってきていますが、前日終値が1,513円で14時現在の株価が1,620円なので、前日比+7%ほど上昇している計算になります。
<日立製作所(6501)の株価推移>
(出典:SBI証券)
日立金属と同じように、日立製作所の株価も上がっています。報道された直後は3,592円まで上昇しましたが、現在は前日比+1%水準の3,557円まで下がってきています。
ベインキャピタルなど日米ファンド連合への売却を検討
2021年4月7日、日立製作所(6501)は上場子会社の日立金属(5486)を、日米ファンド連合に売却する方針を固めたと、日本経済新聞電子版が報道しました※。売却額は、8,000億円以上になる見通しです。なお、日米ファンド連合には、アメリカの投資ファンド「ベインキャピタル」や、国内系ファンドの「日本産業パートナーズ(JIP)」などが参加しています。
※参考:日立金属売却、ベイン連合が優先交渉権 8000億円超
日立製作所では、ITを軸に事業内容を組み替えています。2021年3月末には、IT事業を強化するために、アメリカのグローバルロジックの買収を決めました。日立金属の売却が完了すれば、IT技術との関連性が薄い事業をすべて手放すことになり、今まで以上にITに集中できるようになります。日立製作所にとって、大きな転換点になりそうです。
2021年4月8日9時30分現在、日立金属(5486)の株価は前日比+5%となっています。売却額8,000億円に対して、2021年4月7日時点の時価総額が7,752億円なので、+3%ほどのプレミアム(上乗せ額)を付けた買収となりそうです。現時点では買収のプレミアム以上に株価が上がっている状態ですが、正式発表後は買付価格付近に株価が落ち着くでしょう。
<日立金属(5486)の株価推移>
(出典:SBI証券)
ベインキャピタルなど日米ファンド連合への売却が決定
2021年4月28日、日立製作所(6501)は上場子会社の日立金属(5486)を、日米ファンド連合に売却すると正式に発表しました。売却額は、8,166億円の見通しで、日米ファンドはTOBによって株式を買い集めます。なお、日米ファンド連合には、アメリカの投資ファンド「ベインキャピタル」や、国内系ファンドの「日本産業パートナーズ(JIP)」などが参加しています。
日立製作所は、日立金属が発行している株式の53%を持っています。そのため、TOBによって売却益が3,280億円計上される見通しです。売却で得た資金は、グローバルロジック買収で膨らんだ有利子負債の返済に使われます。
TOBは2021年11月下旬からはじまる予定で、買付価格は「2,181円」です。この発表を受け、翌営業日の2021年4月30日は、株価が前日比+11.87%の2,120円まで上昇しました。TOBがはじまるまで期間が長いこともあり、買付価格までは上がりませんでしたが、買付価格に近い株価が付いている状態です。
<日立金属(5486)の株価推移>
(出典:SBI証券)
TOBが正式決定したので、日立金属の株主は「①市場で売却する」か「②TOBに応募する」かのどちらかを選ぶ必要があります。TOBに応募すれば「2,181円」で買い取ってもらえますが、TOBの実施はかなり先なので、市場で売却するのもひとつの手です。買付価格よりは多少安くなってしまいますが、そのお金を他の投資先に回せるメリットがあるので、考えてみてはいかがでしょうか。
保有株がTOBになったときの対処法は、TOB(株式公開買い付け)とは?意味や事例をわかりやすく解説しますで詳しく説明しています。
まとめ
2021年4月28日に日立製作所が発表したTOBの正式リリースによって、日立金属の売却が決まりました。TOBが実施されるのは2021年11月下旬からなので、実際にTOBがおこなわれるのはもう少し先になります。このまま行けば、計画通り「2,181円」でTOBがおこなわれるので、現在株式を持っている方は、TOBに応募するか、TOB実施前に市場で売るかのどちらかになります。
また、日立製作所にとって、日立金属の売却は「事業の選択と集中」を進める上で、とても重要なできごとです。今後はより一層、日立が得意な「ルマーダ」に集中できます。業績の成長に期待したいですね。
この記事の執筆者

にしけい
決算書を分析するのが大好きな個人投資家です。毎日たくさんの企業の決算書を分析をし、Twitterなどで情報発信をおこなっています。
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