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コロワイドが大戸屋ホールディングスのTOBを発表!株価はどうなる?
2020年7月9日、コロワイド(7616)が大戸屋ホールディングス(2705)のTOB(株式公開買い付け)※を発表しました。TOBをかんたんに説明すると、投資家から株式を買い集めて、会社の経営権を手に入れることです。
今回のTOBでは、コロワイドは大戸屋ホールディングス株式51.3%の取得を目指しています。なぜ51.3%なのかというと、過半数の株式を持っていれば、経営に関する意思決定を自由にできるからです。買収する目的は、大戸屋ホールディングスの経営立て直しです。コロワイドの子会社にして食材や配送を共通化し、業績を立て直していく考えとなっています。
実は、2020年にコロワイドは大戸屋ホールディングスの株主総会で株主提案を出したのですが、その時は否決されています。このような経緯があるため、今回は敵対的TOB※になる可能性があります(2020年7月20日、敵対的TOBに発展)。
現在、コロワイドは大戸屋ホールディングス株式を19%持っています。保有割合を51.3%にするためには、市場から32%ほど買い集めなければいけません。大戸屋ホールディングスは、個人投資家から人気の企業なので、株主の多くは個人株主です。そのため、TOBが成立するかどうかは、個人株主にかかっています。
※ TOB(株式公開買い付け)、敵対的TOBについては、TOB(株式公開買い付け)とは?意味や事例をわかりやすく解説しますで詳しく説明しています。
大戸屋ホールディングスの株価への影響は?
基本的には、TOB価格まで株価が上がります。買付価格は3,081円なので、TOBが実施されるまではこの価格付近で株価が推移すると考えられます。なぜなら、今回のTOBには上限が設けられるため、TOBに応募しても外れる可能性があるからです。
下の画面は、大戸屋ホールディングス(2705)の気配値(2020年7月9日11:00時点)です。TOBを受けて買い注文が殺到し、ストップ高買い気配となり値が付いていません。このように、TOBが発表されると、買収価格に向かって株価が上がっていくのです。

(出典:SBI証券)
また、今回のコロワイドのTOBが、敵対的TOBに発展した場合は、株価がTOB価格を上回ると考えられます。大戸屋ホールディングスが、ホワイトナイトなどの対抗をすると、市場が先回りすると考えられるからです。
大戸屋ホールディングスの株主への影響は?
大戸屋ホールディングスの株主にとっては、TOBに応募すれば買付価格までの値上がり益が手に入ります。TOBに応募しなくても、市場で売れば値上がり益が手に入る状態となっています。
株主には次の3つの選択肢が迫られます。
- TOBに応募し、当選したら株式を売る
- TOBには応募せず、市場で株式を売る
- TOBには応募せず、株式を継続保有する
どの選択肢を取るかは個人の好みですが、①と②を取れば値上がり益をほぼ確実に手に入れられます。
公開買付け期間は、7月10日から30営業日までです。また、TOBの申し込みは、SBI証券の申し込みフォームからできます。今回は100%すべての株式をTOBするわけではないので、申し込んだとしても当選するかはわかりません。当選した場合、9月1日に株の代金が証券口座に入金されます。
③を選んだ場合、TOBによる値上がり益を確定できません。しかし、今回のTOBが敵対的TOBに発展して、大戸屋ホールディングがホワイトナイトなどの対抗手段を取ったり、コロワイドがTOB価格を引き上げたりしたときは、もっと多くの値上がり益が狙えるかもしれません。
ただし、今回のTOBにはリスクもあります。それは、TOBが不成立となった場合に株価が下がることです。コロワイドが発表した資料によると、買付予定数の下限である25.84%に満たない場合は、すべての株式の買付が中止となります。この場合、投資家の期待が裏切られるため、株価が下がります。
オイシックス・ラ・大地との業務提携を発表(2020年8月17日追記)
大戸屋ホールディングスは、コロワイドによる敵対的TOBの対抗策として、オイシックス・ラ・大地との業務提携を選びました。 オイシックス・ラ・大地は、有機野菜などを販売する通販サイトを運営しています。今回の業務提携により、両者の顧客に対して冷凍総菜などの販売をおこなう事業を立ち上げる予定です。 新しい成長の柱を個人株主にしめすことで、コロワイドによる敵対的TOBに応募するのをふせぐことが狙いです。
コロワイドがTOB成立条件の変更と期間の延長を発表(2020年8月26日追記)
2020年8月25日、コロワイドは、大戸屋ホールディングスに対するTOB成立の下限を引き下げ、公開買付け期間を2020年9月8日まで延長すると発表。また、TOB成立の下限を25.84%から20.84%に引き下げることで、株主から集める株数が少なくなっています。これで、TOB成立のハードルが一層低くなりました。
コロワイドによるTOBを時系列で確認
最初にコロワイドが、大戸屋ホールディングスに対して株主提案をおこなったところから、主要な出来事を時系列でざっと見ていきましょう。
日付 (2020年) |
内容 |
---|---|
4月14日 | コロワイドが、大戸屋ホールディングスに対して株主提案を発表。大戸屋ホールディングスは、株主提案に反論。 |
5月25日 | 大戸屋ホールディングスは、コロワイドによる株主提案に反対を表明。また、同時に株主優待の拡充を発表。 |
5月26日 | コロワイドは、前日の大戸屋ホールディングスの反対表明の内容に、注意喚起を呼びかける。 |
6月25日 | 大戸屋ホールディングスの株主総会が開催。コロワイドの株主提案は否決。 |
7月9日 | コロワイドが、1株3,081円でTOB開始。当時の株価は2,113円。 |
7月20日 | 大戸屋ホールディングスが、コロワイドのTOBに反対を表明。敵対的TOBに発展。 |
8月14日 | 大戸屋ホールディングスと、オイシックス・ラ・大地が業務提携を発表。 |
8月25日 | コロワイドが、大戸屋ホールディングスに対するTOB成立の条件変更と、公開買い付け期間の延長を発表。 |
9月8日 | コロワイドによる大戸屋ホールディングスのTOBが成立。 |
よりわかりやすく、簡易的にまとめました。TOB関連の出来事と一緒に、そのときのTOB価格や、大戸屋ホールディングスがどういう態度を示したのかも載せています。
日付 (2020年) |
内容 | TOB 価格 |
大戸屋 ホールディングスの 態度 |
---|---|---|---|
7月9日 | コロワイドが大戸屋ホールディングスにTOBを開始 | 3,081円 | - |
7月20日 | 大戸屋ホールディングスがTOBに反対を表明 | 3,081円 | 反対 |
9月8日 | コロワイドによる大戸屋ホールディングスのTOBが成立 | 3,081円 | - |
まとめ
コロワイドによる大戸屋ホールディングスの敵対的TOBが成立しました。コロワイドが十分なTOBプレミアム(+45.81%)をつけたことや、途中で買付下限の株数を引き下げたことが決定打となりました。大戸屋ホールディングスは、オイシックス・ラ・大地と業務提携を発表したり、個人株主にTOBへ応募しないよう呼びかけたりして抵抗しましたが、有効な対策を打ち出すことができずに力尽きてしまいました。
日本における敵対的TOBの成立は珍しく、特に外食産業の敵対的TOBの成立事例はありません。外食業界は中小規模の上場企業が乱立している状況です。コロナウイルスによる影響を受けてきびしい収益環境に立たされているため、業界の再編につながる可能性もあります。