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クロージング・オークションとは?板寄せによる終値形成の流れも解説
クロージング・オークションとは、ひとことで説明すると“終値を決めるための仕組み”です。2024年11月5日におこなわれる東証の取引時間延長に伴い、新たに導入されます。多くの方にとってなじみがないため「どういう仕組みなの?」と気になっている方が多いのではないでしょうか。
このコラムでは、クロージング・オークションの仕組みと板寄せによる終値形成の流れについて、株初心者向けにわかりやすく解説しています。ぜひ最後まで読んでくださいね。
クロージング・オークションとは?
クロージング・オークションをひとことで説明すると、“多くの投資家から注文を集めて終値を決める方法”です。終値の決定方法は従来どおり「板寄せ(いたよせ)」と呼ばれる方法なのですが、多くの投資家から注文を集めるための時間が用意されている点が特徴となります。
クロージング・オークション導入前、終値は取引終了時刻に取引した人が提示した「買いたい値段」と「売りたい値段」をもとに決められます。その瞬間に取引した人の意見のみが反映されるため、“みんなが納得する終値ではない”可能性があるのです。
この課題を解決するため、東証は2024年11月5日以降「クロージング・オークション」という仕組みの導入を決めました。それでは、クロージング・オークション導入後、どのような手順で終値が決まるのかを説明しますね。
クロージング・オークションの流れ
クロージング・オークションでは、大きく分けて下記の2ステップで終値が決まります。
クロージング・オークションの流れ
- 注文受付時間を設け、多くの投資家から「買いたい値段」と「売りたい値段」に関する意見を集める
- 集めた意見をもとに終値を決定する
この流れを見てもわかるように、多くの投資家から注文を集める時間が用意されます。さまざまな値段の買い注文・売り注文を総合的に考えて終値を決めるので、従来の取引終了時刻に取引した人だけの意見を反映する場合と比べて、納得性が高くなることは誰でもイメージできるのではないでしょうか。
納得性の高い終値を決めるために重要な「注文受付時間」は、取引終了時刻前の5分間(15:25~15:30)となります。この時間は専門用語で「プレ・クロージング」と呼ばれ、この時間中は注文を出しても15:30になるまで取引が成立しないので注意が必要です。
<東証の取引時間(変更前・変更後の比較)>
(出典:SBI証券)
プレ・クロージング中に多くの投資家から意見を集めたあと、「板寄せ」という方法で終値を決定します。それでは、板寄せとはどのような仕組みなのでしょうか。わかりやすく説明しますね。
板寄せとは?
板寄せとは、ひとことで説明すると“投資家から売り注文や買い注文を集めて、その注文をもとに始値や終値を決める方法”です。
板寄せの仕組みについては、以下の部分で詳しく説明しています。かなりむずかしい内容なので、すべてを理解する必要はありません。
板寄せの場合、以下の流れで価格が決定されます。
板寄せによる価格決定の流れ
これだけを読んでもよくわからないと思うので、事例を用いて順番に説明しますね。
① 価格(始値や終値)を仮定する
以下の画像のように、プレ・クロージングでは多くの投資家から売り注文や買い注文を集めるため、売りと買いの注文が交錯した状態になっています。最初のステップとして、この状態から価格(始値や終値)を仮定しなければなりません。
<① 終値を仮定する>
(出典:楽天証券「板寄せでの売買成立とは」)
価格を仮定する際には、売り注文と買い注文それぞれについて、注文の累計を計算することからはじめます。売り注文の場合、まず注目するのは成行注文です。これは「最も安い値段で売りたい」という注文なので、この場合は498円の売り注文400株に加算し、合計1,000株として考えます。
続いて、499円の売り注文が200株あるので、498円の売り注文1,000株に加算して累計1,200株となります。500円以上の売り注文についても同様に累計を計算していくと、先ほどの画像の左側になります。
買い注文も同様です。買いの成行注文400株は「最も高い値段で買いたい」という注文なので、502円の買い注文100株に加算して累計500株とします。次に501円の買い注文が700株出ているので、502円の買い注文に加算して累計1,200株と計算していけばOKです。
売り注文と買い注文の累計を計算し終わったら、価格ごとに売り注文と買い注文の累計を比べましょう。先ほどの事例では、500円以下では売り注文よりも買い注文のほうが多かったのですが、501円になると逆転し、売り注文のほうが買い注文よりも多くなっていますね。
このように、売り注文と買い注文の多さが逆転する部分で価格が決まると仮定します。今回は500円、もしくは501円が始値や終値になると考えれば良いのです。
② 成行の売り注文と買い注文のすべてが約定する
500円で価格が決定すると仮定し、成行の売り注文と買い注文のすべてを約定させます。成行の売り注文は600株、成行の買い注文は400株です。成行の買い注文400株はすべて約定しますが、成行の売り注文は200株残ります。
<② 成行の売り注文と買い注文のすべてが約定する>
(出典:楽天証券「板寄せでの売買成立とは」)
③ 約定値段よりも高い買い注文と、約定値段よりも低い売り注文がすべて約定する
次に、成行の売り注文の残り200株と500円以下の売り注文600株、500円以上の買い注文800株を約定させます。成行注文はすべて約定し、500円より安い売り注文と500円より高い買い注文が消滅します。
<③ 約定値段よりも高い買い注文と、約定値段よりも低い売り注文がすべて約定する>
(出典:楽天証券「板寄せでの売買成立とは」)
④ 約定値段において、売り注文や買い注文のいずれか一方のすべてが約定する
最後に、500円の売り注文400株と買い注文1,000株を約定させれば完成です。なお、売り注文400株はすべて約定しますが、買い注文600株は残ります。
<④ 約定値段において、売り注文や買い注文のいずれか一方のすべてが約定する>
(出典:楽天証券「板寄せでの売買成立とは」)
以上のように、その時点で出されている注文を板に表示し、成行注文から成立させていきます。その次に高い買い注文と安い売り注文をつき合わせていき、株数が合致する株価を決めていきます。こうすることで、みんなが納得する公正で透明性の高い価格を決めることができるのです。
まとめ
クロージング・オークションの概要と、板寄せによる価格形成の流れを解説しました。2024年11月5日以降、取引終了時刻前の5分間(15:25~15:30)に多くの投資家から注文を集めて、それをもとに板寄せで終値を決定します。この5分間に注文を出しても、すぐには取引が成立しないので気を付けましょう。
クロージング・オークションを導入するメリットや東証の取引時間延長については、「東証の取引時間延長はいつから?メリットやクロージング・オークションについてもわかりやすく解説」で詳しく解説しています。ぜひこちらの記事もご覧ください。
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