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東証の取引時間延長はいつから?メリットやクロージング・オークションについてもわかりやすく解説

にしけい担当:にしけい

最終更新日:2024年11月14日

2024年11月5日(火)から東京証券取引所の取引終了時刻が30分後ろ倒しとなり、15:00から15:30まで取引可能になります。これに伴い、新たに「クロージング・オークション」と呼ばれる仕組みが導入予定です。東証での取引ルールが変更になるため、注目が集まっています。

このコラムでは、そもそも取引時間を延長するメリットは何か、新たに導入されるクロージング・オークションはどんな仕組みかなど、東証の取引時間延長に関する気になる疑問についてわかりやすく解説しています!ぜひ最後まで読んでくださいね。

東証の取引時間延長はいつから?

東証の取引時間延長は、2024年11月5日(火)から適用されます。従来の取引終了時刻は15:00でしたが、30分延長されて「15:30」となるため注意が必要です。

また、取引時間の延長に合わせて一部のルールも変更されます。下の表に概要を整理しました。むずかしい説明が並んでいますが、後ほどていねいに説明するので「そういうものなんだ」と思って読み進めてくださいね。

東証の取引時間延長に関する概要
項目 内容
取引時間 9:00~11:30、12:30~15:30
(15:25~15:30は「プレ・クロージング」という注文のみを集める時間)
売買成立可能値幅 直前の約定値段等から更新値幅の2倍まで
(現行の大引けの板寄せと同じ)
プレ・クロージング中の
注文の取扱い
(同時呼値注文)
プレ・クロージング中の注文は「同時呼値」扱い
注文の取扱い
(引け条件付注文)
引け条件付注文と不成注文は15:25に板に登録
特別約定
(終値成立機会の向上)
売買成立可能値幅内で板寄せ要件を充足しない場合でも、
当該値幅の上限(下限)値段で
約定処理の対象となる注文が存在する場合は、
当該値段を約定値段として約定処理を実施

最低限抑えておくべきポイントは以下の2点です。

最低限抑えておくべきポイント

それぞれ説明する前に、東証での取引に関連した専門用語を解説します。先にポイントを知りたいという方は、上のリストに設置しているリンクをクリックすると、その解説に飛べます。

東証での取引に関する用語解説

東証での取引に関連した用語の意味を解説します。下の表に整理したので、各用語がどんな意味かをざっと確認してください。一発で理解して覚えるのはむずかしいので、途中で意味を忘れたときは、いつでもこの表に戻って来てくださいね。

用語解説
用語 意味
寄付き
(よりつき)
前場における最初の取引。
引け
(ひけ)
前場や後場における最後の取引。
後場寄り
(ごばより)
後場における最初の取引。
大引け
(おおびけ)
後場における最後の取引。
ザラバ/ザラ場 寄付きと引けの間の時間を指す。語源は「よくある(ザラにある)場」という意味。ザラバでは、売買注文の値段が合致するたびに取引が成立する。
引け条件付注文 前場や後場の取引時間の最後(引け)のみに執行される注文。
不成注文
(ふなりちゅうもん)
ザラバで指値注文が約定しなかった場合の引け成行注文を指す。
始値
(はじめね)
取引時間内で最初についた値段。
終値
(おわりね)
取引時間内で最後についた値段。
板寄せ
(いたよせ)
受付時間内に多くの投資家から売り注文や買い注文を集め、その注文をもとに始値や終値を決める方法。
プレ・クロージング 大引け前の板寄せ時間のこと。2024年11月5日から、15:25~15:30の5分間がプレ・クロージングとなる。
クロージング・オークション 終値を決めるための方法。多くの投資家から注文を集めて、公平に終値を決定する。

用語解説は以上となります。この記事では「大引け」や「ザラバ」、「板寄せ」、「プレ・クロージング」といったワードがよく出てくるので、記事を進めながら少しずつ頭に入れていけばOKです。

それでは、東証の取引時間延長について最低限知っておくべきポイントを解説していきます。

最低限抑えておくべきポイント(再掲)

① 取引時間

東証の取引時間について、変更前と変更後をイラストで紹介します。上の灰色の図が変更前を、下のオレンジ色の図が変更後を表しています。前場の取引時間は変わりませんが、後場の取引終了時刻のみが従来の15:00から15:30に30分後ろ倒しとなっていることがわかりますね。

<東証の取引時間(変更前・変更後の比較)>

クロージング・オークションが適用される時間帯(15:25~15:30)

上の図には「クロージング・オークション」という言葉が書かれています。こちらについては「東証のクロージング・オークションをわかりやすく解説」で詳しく説明しています。

② プレ・クロージング中の注文の取扱い

プレ・クロージング中(15:25~15:30)の注文の取扱いについて説明します。この5分間は注文を出しても15:30まで取引が成立しません。納得性の高い終値(公正で透明性の高い終値)を決めるため、より多くの投資家から注文を集めるための時間だからです。

なお、投資家からの注文を集めて価格を決める方法を「板寄せ」と呼びます。東証では前場の寄付きと引け、後場の寄付きと引けの4回、この方法で価格が決められています。それ以外の時間帯は「ザラバ」と呼ばれ、売買注文の値段が合致するたびに取引が成立する仕組みです。

<タイミングによって売買の成立方式が変わる>

タイミングによって売買の成立方式が変わる

今回の大きな変更点

終値の決定方法自体は従来どおりなのですが、より多くの注文を集めるために「プレ・クロージング」という注文受付時間が設けられた点が今回の大きな変更点です。

この時間中は、先ほどもご紹介した「クロージング・オークション」が適用されます。仕組みを理解するためにも、クロージング・オークションがどのようなものなのか、わかりやすく説明しますね。

東証のクロージング・オークションをわかりやすく解説

東証が新たに導入する「クロージング・オークション」について、意味や仕組みを解説します。

クロージング・オークションとは、ひとことで説明すると“終値を決めるための仕組み”です。これまでは取引終了時刻に取引した人が提示した買いたい値段、売りたい値段で終値が決まっていたのですが、「みんなが納得する終値ではない」という意見があり、クロージング・オークションの導入が決まりました。

みんなが納得する終値(公平で透明性の高い終値)を決める方法として、より多くの投資家から買いたい値段や売りたい値段を聞き取り調査することが考えられます。イメージとしては、オークションが近いでしょう。

オークションはみんなの意見を反映できる

美術品のオークションを例に説明します。オークション会場に集まった人々は、自分が「買いたい値段」を言い合います。最終的に最も高い値段を付けた人が、その美術品を買うことができるのです。

この場合「50万円なら買いたい」と思っている人はそれ以上の値段は付けませんし、「いくら出しても良いから絶対に買いたい」という人は最高価格を付けるでしょう。落札価格にはみんなの意見が反映されているので、「公正に決められた価格」と言えます。

さらに、落札価格に至るまでの過程を参加者全員が知っています。落札価格の透明性も高いと言えるでしょう。

クロージング・オークションで納得性の高い終値が形成

オークションは公正で透明性の高い価格決定方法なので、株式市場にも導入されています。東証にははじめて導入される仕組みですが、海外ではすでに導入済みです。

東証の場合は、15:25~15:30のプレ・クロージング時間中にクロージング・オークションが適用され、多くの投資家から「買いたい値段」や「売りたい値段」を集めます。これらの意見をもとに「板寄せ」と呼ばれる方法で終値を決めるため、みんなが納得できる公正で透明性の高い終値になるのです。

クロージング・オークションの意味や仕組みについて解説してきました。続いて、クロージング・オークションを導入するメリットやデメリットについて解説します。

クロージング・オークションを導入するメリット

クロージング・オークションを導入するメリットは、終値に多くの投資家の意見を反映できる点です。この説明を読んでもピンと来ないと思うので、従来の株式市場において、どのように終値が決まるかを説明しますね。

従来の株式市場における終値の決まり方

従来の株式市場では、取引が終了する15:00の瞬間の価格で終値が決まる仕組みです。つまり、取引終了の一瞬に取引した人の意見しか反映されていません

例えば、取引終了時点において1,000円で買いたい人と売りたい人の2人が取引したら、その銘柄の終値は1,000円になります。ほかの人の意見は反映されず、その2人の意見だけが反映されているので、必ずしも公正な終値とは言い切れません。

クロージング・オークション導入後の終値の決まり方

クロージング・オークションを導入すると、多くの投資家の意見を反映できます

記事のはじめに紹介したように、15:25~15:30の5分間(プレ・クロージング)は取引を成立させず、注文の受付のみをおこないます。プレ・クロージングの5分間に集まったたくさんの注文をもとに、立会終了の15:30になったら板寄せで終値を決めるため、多くの投資家の意見が反映されるのです。

かんたんに言い換えるなら、プレ・クロージングの5分間は「この価格で買いたい」や「この価格で売りたい」と取引参加者が言い合える時間となります。多くの取引参加者の意見をもとに終値を決めることができるため、公正な終値を決めることができるのです。

<クロージング・オークションが適用される時間帯(15:25~15:30)>

クロージング・オークションが適用される時間帯(15:25~15:30)

このほかにも、クロージング・オークションの導入によって「終値がいくらになりそうか」が予見しやすくなる点もメリットと言えるでしょう。

クロージング・オークションを導入するデメリット

クロージング・オークションを導入するデメリットには、不適切な注文の変更や取消しが合った場合スムーズに終値を決められなくなる可能性が挙げられます。

不適切な注文の変更や取消しとは、終値を大きく変動させかねない注文値段の変更や、大口注文の取消しなどを指します。このような取引がおこなわれた場合、円滑な終値の形成が阻害されるほか、終値がいくらになるかを予見しにくくなってしまうのです。

それでは、不適切な注文値段の変更や大口注文の取消しについて、もう少し詳しく説明しますね。

不適切な注文値段の変更

不適切な注文値段の変更とは、例えば大口の投資家が1,000円で大量の買い注文を出した後、突然900円の買い注文に値段を変更するような場合が考えられます。

このような取引がおこなわれると、1,000円で終値が決まりそうだという大衆の見方から外れて900円で終値が決まる可能性があり、市場が混乱してしまうでしょう。少し極端な例を使って説明しましたが、終値の予見可能性が阻害されてしまうので、不適切だと言われているのです。

大口注文の取消し

大口注文の取消しとは、例えば1,000円で大量の買い注文を出した投資家が、突然その注文を取り下げることです。

取引参加者は、買い注文の多さから大口投資家が示した1,000円付近で終値が決まるだろうと予想します。しかし、その投資家が買い注文を取り下げると、需要と供給のバランスが大きく変わってしまい、予想したよりも安い終値になるかもしれません。

このように、大口注文の取消しもスムーズな終値形成を阻害するため、不適切だと言われています。

不適切な注文の変更や取消しを監視

このデメリットを解消するため、東証ではプレ・クロージングにおける最後の1分間で、不適切な注文の変更や取消しがおこなわれないか監視することになっています。監視に引っかかった場合には、取引参加者に発注の意図を確認したり、投資戦略の確認や発注形態の改善を要請する方針です。

東証の監視があるため、円滑な終値形成ができない状態に陥るとは考えにくいですが、念のため頭に入れておきたいですね。

クロージング・オークションのメリットやデメリットについて解説してきました。続いて、東証が取引時間を延長するメリット・デメリットを見ていきましょう。

取引時間を延長するメリット

取引時間を延長するメリットは、以下の2点です。

それぞれ説明しますね。

① 取引機会が増える

メリット1つ目は、取引機会が増える点です。東京証券取引所の取引時間は世界的に見ても短く、取引機会が多いとは言えませんでした。今回の変更では取引終了時刻が30分後ろ倒しになるだけですが、15:00~15:30に起きたアジアや欧州のニュースをもとに取引する機会が増えます

補足説明として、世界の主要な証券取引所の取引時間を紹介しますね。米国のニューヨーク証券取引所は現地時間9:30~16:00までの6.5時間、英国のロンドン証券取引所は現地時間8:00~16:30までの8.5時間が取引時間です。

主な証券取引所の取引時間
取引所 取引時間帯 取引時間
日本 東京証券取引所 日本時間9:00~11:30、12:30~15:30※1 5.5時間
米国 ニューヨーク証券取引所 現地時間9:30~16:00
(途中休憩時間なし)
6.5時間
英国 ロンドン証券取引所 現地時間8:00~16:30
(途中休憩時間なし)
8.5時間
シンガポール シンガポール証券取引所 現地時間9:00~12:00、13:00~17:00 7.0時間
中国 香港証券取引所 現地時間9:30~12:00、13:00~16:00 5.5時間

※1 取引時間延長後の時間です。

また、取引終了時刻が15:30になることで、主に欧州の投資家が日本株を取引しやすくなる点もメリットといえるでしょう。

海外投資家が日本に投資しやすくなる

イギリスやドイツなど欧州の国を例に紹介しますね。欧州では「サマータイム※2」の時期、日本時間16:00から取引がはじまります。取引時間延長後は15:30まで東証で取引できる状態となるため、欧州の投資家でも日本株を取引しやすくなるのです。

※2 欧州におけるサマータイムは、3月最終日曜日1:00から10月最終日曜日1:00までの期間です。

実際に、欧州の投資家からは東証の取引終了時刻を16:00まで延長するように求める声も上がっています。

東京証券取引所と欧州各国の証券取引所の取引時間比較
取引所 取引時間(日本時間)
東京証券取引所 9:00~11:30、12:30~15:30
(取引時間変更後)
イギリス・ロンドン証券取引所 16:00~24:30
(サマータイム)
ドイツ・フランクフルト証券取引所 16:00~24:30
(サマータイム)
フランス・ユーロネクスト証券取引所 16:00~24:30
(サマータイム)
スイス証券取引所 16:00~24:30
(サマータイム)

取引時間の延長で日本株を取引する海外投資家が増えれば、東証の活性化が期待できるでしょう。

② システム障害が発生しても当日中に復旧できる

メリット2つ目は、取引時間延長により、システム障害が発生した場合でも当日中に復旧できる可能性が高まる点です。東証の資料では「システム障害時のレジリエンス(対応能力)向上」と書かれています。

東証がシステム障害を意識している理由は、2020年10月1日に東証の株式売買システム「arrowhead(アローヘッド)」でシステム障害が発生し、売買が終日停止した過去があるからです。

東証ではこの反省を活かして、アローヘッドをアップデート(更改)し、システム復旧にかかる時間を従来の3時間から1.5時間に短縮しました。

仮に後場取引開始時刻の12:30にシステム障害が発生した場合、従来なら復旧は早くても15:30のため、その日のうちに取引を再開することはできません。

取引時間の延長と復旧時間の削減によって、スムーズに復旧できれば14:00には取引を再開できる計算です。もちろん取引終了時刻間際に障害が発生した場合は、その日のうちに再開することは困難ですが、貴重な投資家の取引機会が失われるリスクが少しでも軽減した点は評価すべきではないでしょうか。

新しいアローヘッドは、取引時間延長と同じ2024年11月5日から適用予定です。取引時間延長と復旧時間の短縮によって、万が一システム障害が発生した場合でも当日中にシステムを復旧できる可能性が高まると考えられます。

取引時間を延長するデメリット

取引時間を延長するデメリットには、以下の2つがあります。

取引時間を延長するデメリット

  1. 決算発表時刻が後ろ倒しになる可能性がある
  2. 投資信託の基準価格の算出が遅くなる可能性がある

このうち、株式投資家に影響があるのは「①決算発表時刻が後ろ倒しになる可能性がある」でしょう。今回はこのデメリットに絞って解説しますね。

決算発表時刻が後ろ倒しになる可能性がある

東証の取引時間延長により、決算発表時刻が後ろ倒しになる可能性があります。2024年10月時点では、多くの上場企業が取引終了後の15:00以降に決算を発表しています。なぜ取引終了後に発表するかというと、決算の内容で株価が乱高下しないようにするためです。

このような背景を踏まえると、取引終了時刻が15:30に変更された場合、決算発表時刻も15:30以降にずれると考えられます。数銘柄しか保有していない方やサラリーマン投資家の方であれば、決算発表時刻が15:00でも15:30でもそれほど影響はないでしょう。しかし、保有銘柄が多い方にとっては、30分とはいえ決算発表日にチェックに充てられる時間が減ってしまう点がデメリットになります。

まとめ

東証は2024年11月5日から取引時間を30分延長し、取引終了時刻が15:00から15:30になります。最後の5分間は「プレ・クロージング」という新しい仕組みが導入されるため、その仕組みを理解しておくと良いでしょう。また、株初心者の方は慣れないことが多いと思いますので、無理にプレ・クロージングに参加せずザラバで取引するのがおすすめです。

決算発表時刻が15:30以降にずれるデメリットがありますが、取引機会が増えるメリットもあるので、うまく活用していきたいものです。

にしけい

この記事の執筆者

にしけい

当サイトで上場企業のIR取材記事やコラムを執筆しています。企業分析と経済分析が趣味で、BSテレビ東京『マネーのまなび』や日経ヴェリタス、日経マネー等への掲載歴があります。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)、簿記2級、FP2級の資格を保有しています。

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