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インサイダー取引とは?わかりやすく解説します
インサイダー取引とは、ひとことで表すと会社の関係者が会社の内部情報を使って自社株などを取引する行為です。インサイダー取引は、株式投資で絶対にやってはいけない不正行為で、金融商品取引法という法律で規制されています。
このコラムでは、インサイダー取引の意味や規制の理由、インサイダー取引に注意すべき人などを、株初心者向けにわかりやすく解説しています。
インサイダー取引とは?
インサイダー取引とは、会社関係者(内部者)が、株価に影響を及ぼす未公表の情報を利用して、自社株等を売買することを言います。
金融商品取引法という法律で規制されており、インサイダー取引をおこなった場合は、“課徴金(かちょうきん)”と呼ばれる罰金が請求されます。インサイダー取引の手口が悪質な場合は、逮捕されるケースもあります。
インサイダー取引が規制されている理由
インサイダー取引が規制されている理由は、以下の2点です。
- 投資家保護
- 金融商品市場への信頼確保
それぞれについて、説明していきます。
投資家保護
インサイダー取引を許可してしまうと、情報を持っている内部者が利益を上げ、何も知らない投資家が一方的に損失を被ってしまうかもしれません。そのため、インサイダー取引を禁止して、投資家を保護しているのです。
金融商品市場への信頼確保
上記の「投資家保護」と関連していますが、投資家が一方的に損失を被ってしまうと、金融市場への信頼がなくなります。結果的に投資家が減ってしまい、金融市場が縮小するかもしれません。こういった事態を避けるため、インサイダー取引を禁止しているのです。
一般投資家が不利にならないよう、口座開設のタイミングで「内部者登録」が実施されます。詳しくは、口座開設時のインサイダー情報登録画面をご覧ください。
インサイダー取引にならないよう注意すべき人
以下の条件に1つでも当てはまる人は、インサイダー取引とならないように注意しましょう。
- 上場会社とその親会社・子会社で、役員・社員・パートタイマー・アルバイトをしている方
- 上場会社とその親会社・子会社で、議決権の3%以上を持っている株主の方
- 上場会社とその親会社・子会社に対して、許認可の権限などを持っている公務員の方
- 上場会社やその親会社・子会社の取引先、公認会計士、増資の元引受会社、顧問弁護士など
- ②や④が法人の場合、その法人で役員・社員・パートタイマー・アルバイトをしている方
- ①~④の会社関係者から、情報を教えてもらった方
- ①~④の会社関係者のうち、退職してから1年未満の方
インサイダー取引の事例
ドンキホーテ前社長が知人男性に自社株の取引を推奨
ドンキホーテHD(現、パン・パシフィック・インターナショナルHD)前社長が、知人男性に自社株の取引を推奨し、知人男性が利益を手に入れました。これによって、2020年12月3日に前社長が逮捕されました。
前社長が知人男性に取引を推奨したのは、2018年のことです。当時、ユニー・ファミリーマートHD(現、ファミリーマート)がドンキホーテ株の取得を検討していました。この情報を知った前社長は、知人男性にドンキホーテ株を買うように勧めたのです。
知人男性は、TOBが公表される前にドンキホーテ株を4億3,000万円分購入し、TOB発表後に利益を手に入れました。この事例では、上場会社の社長が株価の上昇要因となるTOBの情報を知人男性に漏らし、取引を推奨したため、金融商品取引法違反となったのです。
その他の事例
悪質なケースでない場合は、課徴金と呼ばれる罰金の支払いで済む場合が多いようです。具体的には、下のような例があります。
例1)上場会社の社内会議の結果、業績の下方修正が決定。株価が下がると考えられたので、自分が持っている自社株を市場で売り、損失を回避した。
例2)上司から業務の指示を受ける中で、子会社をTOBする情報を入手。TOBがおこなわれると株価が上がるため、TOBが発表される前に子会社株式を取得。TOB発表後に株式を売り、利益を得た。
このような場合、課徴金として数十万円~数百万円を罰金として支払わなければいけません。なお、課徴金の支払額は、金融庁が定めた以下の計算式で計算されます。
課徴金の計算式
課徴金=(重要事実公表後2週間の最高値×取引数量)-取引価額
口座開設時のインサイダー情報登録画面
証券口座を開設する際、インサイダー情報を入力する画面が出てきます。例えば、松井証券の場合は、以下のような画面が表示されます。
(出典:松井証券)
はじめに、ご自身の職業を登録しなければいけません。「選択肢」をクリックすると、画像のように職業のリストが表示されます。上場企業に勤めている方は、「会社員(上場企業)」または「会社役員(上場企業)」を選ぶ必要があるので、まちがえて未上場企業を選ばないように注意が必要です。
インサイダー情報の登録は、これだけではありません。インサイダー(内部者)とは、インサイダー取引にならないよう注意すべき人で紹介した条件に該当する方を指します。つまり、上場企業に勤めていなくても、上場企業と取引がある方も対象になるのです。そのため、下の画像のような登録画面が用意されています。
(出典:松井証券)
画面に従って入力すればよいのですが、内部者関係区分が少し複雑です。インサイダー取引にならないよう注意すべき人で示した条件ごとに、どれを選べばよいのか整理しました。
内部者 | 内部者関係区分 |
---|---|
① 上場会社とその親会社・子会社で、 役員・社員・パートタイマー・アルバイトをしている方 |
役員、幹部職員、従業員、 関係会社役員、関係会社幹部職員、関係会社従業員 |
② 上場会社とその親会社・子会社で、 議決権の3%以上を持っている株主の方 |
大株主、主要株主 |
③ 上場会社とその親会社・子会社に対して、 許認可の権限などを持っている公務員の方 |
- |
④ 上場会社やその親会社・子会社の 取引先、公認会計士、増資の元引受会社、顧問弁護士など |
契約締結者 |
⑤ ②や④が法人の場合、 その法人で役員・社員・パートタイマー・アルバイトをしている方 |
関係会社役員、関係会社幹部職員、関係会社従業員 |
⑥ ①~④の会社関係者から、情報を教えてもらった方 | - |
⑦ ①~④の会社関係者のうち、退職してから1年未満の方 | 役員退職者、関係会社役員退職者 |
上の表には入っていませんが、内部情報を知る可能性がある「役員の配偶者や同居人」も、内部者として登録する必要があります。この場合は「役員配偶者」、「役員同居者」、「関係会社役員配偶者」、「関係会社役員同居者」などを選んでください。
まとめ
インサイダー取引の概要と注意すべき人、事例などを解説してきました。企業の内部情報を元に投資した場合、課徴金の支払いが求められるほか、悪質な場合は逮捕されます。上場企業に勤めている方はもちろん、取引先などの関係会社に当てはまる場合は、十分注意して取引しましょう。
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