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大量保有報告書とは?概要や株価への影響をわかりやすく解説します
大量保有報告書とは、発行済株式数の5%以上を保有した株主が公表する書類です。通称「5%ルール」と呼ばれており、株式投資の判断材料としても使われます。
このコラムでは、大量保有報告書についての説明と確認方法、株価への影響などについて、株初心者向けにわかりやすく解説しています。
大量保有報告書とは?
大量保有報告書とは、発行済株式数の5%以上を保有した株主が公表しなければならない書類です。株式の保有割合が5%を超えた日から5日以内に、内閣総理大臣に提出します。通称「5%ルール」と呼ばれ、株式投資の判断材料としても使われています。
大量保有報告書には、次の3つの種類があります。
書類名 | 概要 |
---|---|
①大量保有報告書 | 発行済株式数の5%以上を保有した場合に提出 |
②変更報告書 | 発行済株式数5%以上を保有する株主が、保有割合が1%以上増減した場合などに提出 |
③訂正報告書 | 大量保有報告書や変更報告書に誤りがあった場合に提出 |
このうち、私たちが注目するべき書類は、「①大量保有報告書」と、「②変更報告書」です。この2つの資料は、株式投資の判断材料として使えます。
たとえば、有名投資家や機関投資家が大量保有報告書を提出したり、変更報告書で保有割合の増加を報告したりした場合、その会社は優良企業である可能性が高くなります。なぜなら、プロが徹底的に分析した結果、「投資に値する」と判断して、大量に株券を買い集めていると考えられるからです。
以上の理由から、投資を考えている会社に対して、「大量保有報告書」や、「変更報告書(保有割合の増加)」が提出されていれば、プロお墨付きの銘柄と言えるでしょう。もちろん、大量保有報告書が提出されているからといって、“100%優良企業”とは言い切れませんが、投資の参考になるのは間違いありません。
大量保有報告書は、投資家が注目する書類なので、株価を動かす要因にもなります。このコラムの後半で、株価が上がる場合と下がる場合に分けて、どんな要因があるのか解説していきます。
大量保有報告書の確認方法
大量保有報告書は、『EDINET※』で確認できます。会社のIRサイトや適時開示情報(TDnet)には掲載されないので、注意が必要です。それでは、EDINETで大量保有報告書を確認する方法を紹介します。
※金融庁が運営・管理している、「有価証券報告書等の開示書類」を見ることができるサイトです。
EDINETで大量保有報告書を確認
-
EDINETを開き、画面上側にある『書類検索』をクリックします。
-
検索画面が出ますので、まず、【書類提出者/有価証券発行者/ファンド情報を指定する】欄に、大量保有報告書を読みたい会社名を入力します。【書類種別を指定する】欄は、大量保有報告書のみにチェックを入れてください。最後に、【決算期/提出期間を指定する】欄では、提出期間を『全期間』にします。すべて入力したら、画面下の『検索』をクリックしてください。
-
検索結果が表示されます。どれを読んだらよいか分からない方は、とりあえず最新の『大量保有報告書』に目を通しましょう。その後、ケースバイケースで最新の変更報告書や、過去の大量保有報告書にも目を通してみてください。
その他の方法
また、大量保有報告書が公表された場合に、速報してくれるTwitterアカウントがあります。「大量保有報告書速報@会社四季報オンライン」です。こちらをフォローしたうえで、通知をオンにしておくと、大量保有報告書の情報をすばやく入手できます。
株価への影響
大量保有報告書に関連した3つの書類は、株価を上下させる場合があります。株価が上がる場合と下がる場合にどんなケースがあるのかを、以下にまとめました。ここで紹介した条件に当てはまっても、必ず株価が上下するとは限りません。あくまで、「その傾向がある」に過ぎないので、参考程度にとどめておいてください。
株価が上がる場合
株価が上がる場合は、次のような要因があります。
- 大量保有報告書を提出(特に、有名投資家や機関投資家)
- 変更報告書で、「保有量が増えた」と発表(特に、有名投資家や機関投資家)
1番目と2番目の、「大量保有報告書の提出」や、「変更報告書で保有量の増加が報告された」場合、特定の投資家が大量に株を取得していることを意味します。特に、有名投資家や機関投資家(例:レオスキャピタルワークス)が、これらの書類を提出すると、プロのお墨付きの銘柄とみなされて、投資家の買いが集まりやすく、株価が上昇するのです。
実際に、有名投資家が大量保有報告書を提出し、株価が上がった事例として、ヤシマキザイ(7677)を紹介します。
提出者 | 保有目的 | 提出前株価 (終値) |
提出後株価 (終値) |
上昇率 |
---|---|---|---|---|
重田光時 | 純投資 | 1,779円 | 1,859円 | 4.5% |
2019年7月12日、光通信創業者の息子である重田光時氏が、大量保有報告書を発表しました。光通信は、通信回線システムの販売などをおこなう通信会社でありながら、日本の中小型株に長期投資している一面も持っています。
このため、光通信の関係者である重田光時氏が投資した銘柄にも、「長期的に投資できる中小型株」と、注目が集まりました。大量保有報告書を提出した翌日の株価は、前営業日比で4.5%(終値)上昇しました。
ただし、紹介した条件にあてはまる銘柄でも、100%株価が上がる保証はありません。“大量保有報告書が提出されたから”という理由のみで株を買い集めるのではなく、自分でその会社をしっかりと分析したうえで、参考にする程度にしましょう。
株価が下がる場合
株価が下がる場合は、次のような要因があります。
- 変更報告書で保有量が減ったと発表
- 証券会社が「商品在庫確保」や「貸借取引」を目的とする大量保有報告書や変更報告書を提出
変更報告書で保有量が減ったと発表された場合、その投資家が現在も大量に株を売っている可能性があり、株価が下がりやすくなっています。また、有名投資家や機関投資家の保有量が減った場合、その会社が何らかの問題を抱えている可能性があります。このような理由から、株価が下がりやすくなるのです。
また、証券会社が「商品在庫確保」や「貸借取引」を目的として、大量保有報告書などを提出する場合があります。貸借取引とは、いわゆる信用買いや、空売りです。このようにして集められた株券は、証券会社を通して投資家に提供され、空売りに使われる場合があります。
つまり、大量保有報告書が提出されたからといって、株価が上がるわけではないのです。証券会社が大量に買い集めた株券を借りて空売りする投資家が現れれば、当然株価が下がります。
ここで、2019年6月19日に野村證券が提出した、KLab(3656)に対する大量保有報告書の事例を紹介します。
提出者 | 保有目的 | 提出前株価 (終値) |
提出後株価 (終値) |
上昇率 |
---|---|---|---|---|
野村證券 | 商品在庫 | 855円 | 863円 | 0.9% |
大量保有報告書が発表された直後は、株価が上がっています。しかし、株価チャートを見ると、株価が右肩下がりになっているのです。
(出典:SBI証券)
真相は不明ですが、野村證券が商品在庫として買い集めた株券が、投資家に貸し出され、空売りされた可能性が考えられます。証券会社が大量保有報告書を提出した場合は、このような事態が起こりうる点に注意が必要です。
まとめ
以上、大量保有報告書の概要と確認方法、株価への影響を紹介しました。大量保有報告書や変更報告書は、株価に影響します。このような書類が提出された場合は、保有目的や株数の増減を確認しましょう。
また、有名投資家や機関投資家による、大量保有報告書が提出された場合は、プロのお墨付きの銘柄とも考えられます。投資の際、ひとつの参考資料として活用したいですね。
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