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第三者割当増資とは?わかりやすく解説します
第三者割当増資とは、特定の第三者に新株を買ってもらい、資金を集める方法です。特定の第三者とは、取引先や金融機関、自社の役員などが当てはまります。第三者割当増資がおこなわれると、株価に影響が出ます。そのため、保有株が第三者割当増資を発表したときは、株価の動きに注意が必要です。
このコラムでは、第三者割当増資の仕組みや目的、株価への影響について、株初心者向けにわかりやすく解説しています。
第三者割当増資とは?
第三者割当増資とは、会社が資金を調達する方法の1つで、特定の第三者に新株を買ってもらい、増資する方法です。割当先となる“第三者”の多くは、取引先や金融機関、自社の役員などで、会社が指定します。
第三者割当増資がおこなわれると、株価に影響が出ます。株価が上がる場合と下がる場合があり、第三者割当増資の目的によって左右されます。中でも、MSワラント※1による第三者割当増資の場合は、株価が大幅に下がる場合が多く、注意が必要です。株価への影響については、このコラムの後半でわかりやすく説明しています。
※1 MSワラントについては、MSワラントとは?仕組みをわかりやすく解説しますで詳しく解説しています。
第三者割当増資がおこなわれる理由と目的
第三者割当増資は、次のような理由・目的でおこなわれます。
- 会社を成長させるための投資資金が欲しい
- 他社との関係を強化したい
- 資金繰りがうまくいっていない
- 敵対的買収を回避したい
このように、第三者割当増資にはさまざまな理由・目的があり、理由や目的によって株価が上がったり下がったりします。第三者割当増資が発表された場合は、その中身をチェックすることが大切です。事例を見ていきましょう。
株価への影響
こちらでは、株価が上がる場合と下がる場合に分けて、事例を解説します。
株価が上がる場合
下の条件に当てはまる場合は、株価が上がる傾向にあります。
- 第三者割当増資の目的が「新事業立ち上げ」や「規模拡大」など、将来の成長が見込める
- 割当先に指定した会社との相乗効果が見込める
- 第三者割当増資によって上場廃止の懸念がなくなる
実際に、第三者割当増資で株価が上がった事例として、医師向けの専門サイト「m3.com」を運営する、エムスリー(2413)の株価推移を見てみましょう。
株価チャートの左端の矢印(2019年2月28日)のあたりで、第三者割当増資を発表しました。その後の株価推移を見ると、右肩上がりで株価が上がっている様子がわかります。
投資家たちは、「成長につながる増資だ」とみなしていると考えられます。エムスリーの発表資料を元に、増資の目的を見ていきましょう。
(出典:エムスリー 第三者割当による新株式発行に関するお知らせ)
増資の目的として最も大きいものは、「事業基盤の獲得・拡大を目的としたその他のM&Aに伴う株式取得費用等」です。実は、エムスリーはこれまでも、医師データベースを持っている海外の会社や、医療機関向けのソフトウェア開発会社などをM&Aしてきました。この狙いは、医師向けのサービスを手厚くして、エムスリーをより多くの医師に使ってもらうためです。
このようなM&Aの結果、エムスリーの売上高は右肩上がりで上がっています。過去におこなったM&Aによる成長戦略は成功と言えるでしょう。
(出典:エムスリー 2020年3月期決算発表資料)
以上から、第三者割当増資で得た資金を使って積極的にM&Aを進めていけば、エムスリーは成長すると考えられます。過去の実績による裏付けがあり、投資家による信用が蓄積されていたため、第三者割当増資を発表した後も株価が上がったのです。
株価が下がる場合
下の条件に当てはまる場合は、株価が下がる傾向にあります。
- 第三者割当増資の目的が「運転資金の確保」や「財務体質の改善」など、将来の成長に結びつかない
- 第三者割当増資による株式の希薄化率が高い
- 割当先への有利発行
以上に当てはまる場合は、株価が下がる傾向にあります。株価が下がるのは、第三者割当増資によるマイナス要因を、将来の成長で打ち消せないときです。
また、割当先への有利発行では、MSワラント※2と呼ばれる悪質な方法が取られるケースがあります。MSワラントについてかんたんに説明すると、新株の発行価額が株価よりも安く設定されており、発行価額は株価の動きに合わせて上下する仕組みです。つまり、増資によって株価が下がったとしても、割当先は常に有利な価格で株を買えます。
※2 MSワラントについては、MSワラントとは?仕組みをわかりやすく解説しますで詳しく解説しています。
MSワラントは、割当先だけが儲かる仕組みです。投資家から最も嫌われる増資方法で、MSワラントが発行されると株価が大幅に下がります。実際に、MSワラントを発行した会社の株価推移を見てみましょう。例として、貸しオフィスを運営するティーケーピー(3479)を使います。
ティーケーピーは、右側の矢印付近(2021年1月14日)にMSワラントを発表しました。発表当日の終値は2,693円でしたが、翌日の終値は2,193円と、株価が大幅に下がっているのがわかりますね。その後、持ち直してきていますが、投資家が失望した様子が伝わってきます。
(出典:ティーケーピー 第三者割当による行使価額修正条項付第7回及び第8回新株予約権の発行に関するお知らせ)
上の画像は、ティーケーピーがMSワラントで調達した資金の使い道です。主な目的は、「財務基盤強化を目的とした有利子負債の返済」となっています。同社は、ビジネスモデルの特性上、有利子負債が多くなっています。コロナ禍で貸しオフィスの利用が減り、財務体質が悪化する可能性が高まったため、有利子負債を返済して財務健全性を高めようとしているわけです。
今回のMSワラントは、どちらかというと仕方のない部類に入ります。しかし、調達した資金の主な使い道が借金返済なので、将来の成長につながるとは考えにくく、投資家が失望して株を売ったようです。
第三者割当増資と他の増資方法の違い
最後に、第三者割当増資と他の増資の違いの説明です。増資には3つの方法があります。それぞれの特徴を一覧表にまとめました。
増資の種類 | 割当先 |
---|---|
公募増資 | 不特定多数 |
株主割当増資 | 既存株主 |
第三者割当増資 | 特定の第三者 |
「公募増資」、「株主割当増資」、「第三者割当増資」は、それぞれ割当先が違います。第三者割当増資は「特定の第三者」に割り当てます。特定の第三者とは、取引先や取引金融機関、自社の役員などで、会社が指定します。公募増資や株主割当増資とは違い、特定の人物や組織に出資を依頼するので、株式市場で付けられている株価よりも安い値段※3で発行されるケースがあります。
※3 これを「有利発行」と言います。
第三者に有利な値段で株を割り当てるため、スムーズに資金調達できるメリットがあります。そのため、秘密裏に計画を進めなければいけない、M&Aの資金を集める目的で使われるケースが多いようです。第三者割当増資にはこのような利点がある反面、その資金が成長に結びつかない限り、投資家に失望されて株価が下がります。
とにかく、第三者割当増資が発表されたら、資金の使い道が成長につながるかを確認しましょう。
まとめ
第三者割当増資の概要や理由・目的、株価への影響などを説明してきました。保有銘柄や監視銘柄が第三者割当増資を発表した場合、将来の成長につながる増資なのか確認するのが大切です。
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