悪魔の増資!MSワラントとは?仕組みをわかりやすく解説

悪魔の増資!MSワラントとは?仕組みをわかりやすく解説

担当:西尾

担当・にしけい

最終更新日:2021年7月16日

クックビズ(6558)が、2021年7月16日にMSワラントで増資をおこなうと発表しました。増資で得た資金は、アフターコロナに向けた既存事業のバリューアップ投資などに使う予定です。今回のMSワラントによって、1株あたりの価値が最大で21.2%※1希薄化する見込みです。

※1 2021年5月31日現在の発行済株式総数2,262,691株に対する希薄化率です。

このほか、MSワラント発行企業の最新情報はこちらをご覧ください。

上場企業が資金調達をする方法は、一般的に2種類あります。
1つは、新たに株を発行して投資家から資金を集める「公募増資」、もう1つは「銀行からの借り入れ」です。 しかし、赤字が続く企業は信用力が落ちているので、これらの方法では資金調達ができません。そこで、やむを得ず「特典をつけて安くするから、株を買ってください!」といって、買い手(引受先)がお得になる条件をつけた、株を買う権利を発行します。これが「MSワラント」です。

タイトルに「悪魔の増資」と書きましたが、最大の理由は、すでに投資をしている株主が損をする増資だからです。そして、引受先である証券会社などが、確実に利益を得られるようになっています。投資家にとってデメリットが多いので、「悪魔の錬金術」ともいわれています。

MSワラントの仕組み

MSワラントとは、「Moving Strike Warrant(ムービング・ストライク・ワラント)」の略で、日本語に直すと「行使価格修正条項付新株予約権」です。要約すると、「前日の株価終値よりも安い価格で購入できるように、毎日購入価格を修正する新株予約権」となります。

つまり、前日終値が1,000円の日は900円で新株を購入でき、前日終値が900円に下がってしまったときは810円で新株を購入できる、というしくみです。MSワラントを引き受けるのは主に証券会社なので、証券会社にとって有利な条件を付けたものとなっています。

それでは、MSワラントを発行する具体的な手順の例を見ていきましょう。

  • ①株価1,500円の会社が、「発行価格決定日の株価×0.9」で、証券会社に対してMSワラントを発行することを発表
  • ②証券会社はMSワラントで手に入れる予定の新株1,000株分だけ空売りして、MSワラントの発行価格決定日までに株価を1,500円から1,000円に下げておく
  • ③発行価格決定日の株価1,000円をもとに発行価格が900円に決まり、証券会社は900円で新株1,000株を手に入れる
  • ④空売りの返済に、900円で手に入れた新株を充てる
  • ⑤証券会社は、600円(=1,500円 - 900円)×1,000株=60万円の利益が手に入る

このように、証券会社は最終的に60万円分の利益を確実に手に入れることになります。

既存株主にとっては、②のタイミングで株価が1,500円から1,000円に下がるため、1,000株持っていた場合には、500円×1,000株=50万円もの損をします。さらに、証券会社が新株を取得した直後に株式市場で売ってしまうため、株価が下がってしまいます。極めつけには、発行済み株式数が増えることで、「1株あたりの利益」が小さくなってしまう(希薄化する)ため、「1株あたりの利益×市場の期待(PER)」で計算される株価が下がっていきます。

2021年にMSワラントをおこなった銘柄事例

発表日 銘柄コード 銘柄名 割当先
2021/7/16 6558 クックビズ マイルストーン・キャピタル・マネジメント
SCSV1号投資事業有限責任組合
2021/7/15 3939 カナミックネットワーク クレディ・スイス証券
2021/7/14 4572 カルナバイオサイエンス Cantor Fitzgerald & Co.
2021/7/12 2301 学情 いちよし証券
2021/6/18 7578 ニチリョク マッコーリー・バンク・リミテッド
2021/6/18 6577 ベストワンドットコム SBI証券、澤田秀太氏(社長)
米山実香(取締役)
2021/6/10 8068 菱洋エレクトロ 大和証券
2021/6/1 4978 リプロセル SMBC日興証券
2021/5/28 3760 ケイブ マッコーリー・バンク・リミテッド
2021/5/27 2762 三光マーケティングフーズ スターリング証券・平林隆広氏・
神田コンサルティング

以上が、2021年にMSワラントを発行した企業の直近銘柄です。MSワラントといえば「バイオ企業のお家芸」といわれるほど、バイオ企業が乱発するイメージがあります。赤字の会社が多いため、通常の資金調達方法をおこなえないからです。最近はバイオ企業に限らず使われているようです。これらの会社は、既存株主に平気で損をさせる会社です。決して手出しをしないようにしましょう

上記以前にMSワラントを発行した企業については、MSワラント発行企業リストにまとめました。詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

「MSワラント」と「公募増資」の比較

MSワラント 公募増資
既存株主にメリットがある
発行企業が確実に
資金調達できる

MSワラントと公募増資を比較しました。

一番の問題は、MSワラントをおこなうと、公募増資をおこなったときよりも株価が下落することです。理由は、MSワラントの場合、株を取得したら保有せず、すぐに市場へ売ってしまうからです。市場に出回る株数が増えるため、株価が下落します。

さらに、資金調達にも差がでます。

例えば、企業が100株発行したとします。公募増資の場合、株価が1,000円だと10万円の増資となります。しかし、MSワラントの場合、株価が1,000円でも「1割引」の特典をつけていたら、9万円分しか増資できません。

MSワラント 公募増資
増資額 9万円
(=株価1,000円×100株×0.9)
10万円
(=株価1,000円×100株)

※公募増資は、増資があった直後は株式の希薄化が起きるため株価が下がります。そのため、短期的にみれば既存株主に損がでます。しかし、企業は公募増資で調達したお金を使って投資をするため、長期的に見て、その投資がうまく行けば、企業の価値が上がっていき、株価上昇にもつながります。

MSワラントを発行した企業の、株価チャートの動き

リミックスポイントの株価推移

(出典:GMOクリック証券

今回は、2020年1月21日にMSワラントの発行を発表した「リミックスポイント(3825)」の株価チャートを例にとります。

これを見ると、MSワラントの発行を発表した2020年1月21日以降、株価が下がり続けています。発表日当日に株価が大きく下がっているのは、これまでリミックスポイント株を持っていた株主が一斉に売ったからです。

そのあとの下げは、リミックスポイントのMSワラントを引き受けたリバイブ投資事業組合が、MSワラントを行使して新株を手に入れるたびに株式市場で売り続けたことが影響しています。

さらに、4月27日に再びMSワラントを発行すると発表しました。割当先は、1月21日と同じリバイブ投資事業組合です。追加のMSワラント発行により、さらにリミックスポイント株の売り圧力が強くなりました。

その結果、リミックスポイントの当期純利益を発行済み株式数で割った「1株あたりの利益」が小さくなってしまい、「1株あたりの利益×市場の期待(PER)」で計算される株価はどんどん下がっていくことになりました。

この期間中にリミックスポイントの株を持っていた既存株主は、損失が大きく膨らみました。8月24日の終値は99円、MSワラントの行使が発表された1月21日の終値は184円なので、既存株主は100株あたりおよそ8,500円を損している計算になります。

まとめ

MSワラントは、発行した企業の既存株主が損をする「悪魔の錬金術」です。

MSワラントが発行されると、

  • ①MSワラントを嫌気した株主の売りが出る
  • ②発行済株式数が増えることで「1株あたりの利益」が希薄化する
  • ③MSワラントを引き受けた証券会社の空売りで株価が下がる

によって、株価が大幅に下がってしまいます。

過去に一度でもMSワラントを発行したことがある企業は、既存株主をないがしろにしています。今後も発行する可能性が高いので株式を買わないようにしましょう

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この記事の執筆者

にしけい
「やさしい株のはじめ方」の資産運用担当です。ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格を保有しています。年間200銘柄以上を分析中。

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