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増資とは?株価にはどう影響する?
- お知らせ
- (2023年5月16日追記)2023年5月16日に、楽天グループ(4755)が約3,300億円の公募増資をおこなうと発表しました。また、正式発表前の15日には「3,000億円規模の公募増資に踏み切る」と報道があり、翌16日に楽天グループの株価が下落しました。
- こちらの記事では、公募増資とは何か、株価にどう影響するかを解説しています。楽天グループの株価の動きが気になっている方は、ぜひお読みください。
増資とは、会社が新しく株式を発行し、投資家からお金を集めることです。増資によって発行済株式数が増えるため、希薄化が懸念されて株価が一時的に下がります。しかし、増資で得た資金を使って成長のための投資をする場合は、その後株価が上がっていくケースが多いです。
このコラムでは、増資の意味や種類、株価への影響を、株初心者向けにわかりやすく解説しています。
増資とは?
増資とは、企業が新規に株を発行して、お金を集めることです。これは株主にとって好材料となるものなのでしょうか? それを知るために、まずは増資の本質を理解しておきましょう。
企業はお金を集めて設備などに投じ、社会に役立つサービスを人々に提供しています。その対価として売上を得ます。その売上から、サービスを提供するのに必要な人件費などの費用をまかないます。そのサイクルが繰り返されているのです。企業はサービスの質を高め、より多くの人の生活を豊かにする使命があります。サービスの質を高めるには、研究開発や設備投資が不可欠です。そのために、お金を集めなければなりません。
資金調達には大きく2つの種類があります。
- デットファイナンス:債券の発行、金融機関からの借り入れなど
- エクイティファイナンス:株式の発行
この2つの大きな違いは、集めたお金を償還(返却)する必要があるかないかです。デットファイナンスは、決められた償還期間までに“借りたお金”と“金利”のすべてを支払います。一方、エクイティファイナンスは、集めたお金を返す必要がなく、必要に応じて配当金を払います。増資は、このエクイティファイナンスに含まれます。
増資の種類を知ろう!
増資には3つの種類があります。
- 公募増資
- 第三者割当増資
- 株主割当増資
1つ目の『公募増資』は、新しく株主を募ることを指します。不特定多数の投資家に対して呼びかけて、買い手を探します。
2つ目の『第三者割当増資』は、特定の企業に株を買ってもらうことです。ベンチャー企業が、ベンチャーキャピタル※からお金を集める際に、よく使われる手法です。他に、取引先や役員などに株を発行することもあります。
3つ目の『株主割当増資』は、既存の株主に買ってもらうことを指します。このパターンだと、株主構成は変わらないことになります。
※未上場のベンチャー企業に出資をして株式を取得する、投資会社や投資ファンドのこと。上場時に売却することで、大きな値上がり益を狙う。
増資をすると、株価にどう影響する?
冒頭で説明したとおり、集めたお金を償還(返却)する必要がないという、企業にとってはメリットの高い資金調達手段です。株主にとっても、投資した企業のサービスが拡大して売上が上がり、配当が増えるのだからメリットが高いように思えます。
しかし、そう簡単な話ではありません。増資をすると、株式が“希薄化”して株価が下がりやすいからです。希薄化とは、市場に出回る株式の数が増えることです。「PER(株価収益率)」という、割安度を測る指標を使って、A社の例を見ていきます。
PERとは?
株価収益率のこと。一株あたり、どれだけの利益を得ることができるか表しています。株価の割安性を測ることができ、数値が低ければ低いほど、株価が割安であるといえます。PER=時価総額÷純利益で計算できます。
A社は、発行済み株式数が1,000万株、株価が1,000円です。純利益は10億円でした。すると、PER=(1,000万株×1,000円)÷10億円=10倍となります。
PERは業種にもよりますが、12~15倍くらいが適正値といわれています。A社の株は、比較的割安といえそうです。A社は海外展開をするためのお金が必要になり、公募増資をおこないました。1,000万株を新しく発行し、市場から100億円を集めました。
発行済株式数 | 株価 | 時価総額 | 純利益 | PER | |
---|---|---|---|---|---|
増資前 | 1,000万株 | 1,000円 | 100億円 | 10億円 | 10倍 |
増資後 | 2,000万株 | 1,000円 | 200億円 | 10億円 | 20倍 |
PERに注目してください。増資後のPERが、20倍に変化しています。増資によりA社のPERは、適正値といわれる15倍を超えて、割高の水準になったのです。すなわち、株式の価値が下がったのです。多くの投資家は、増資が株式の価値が下げることを知っています。ですので、増資前に売ろうとします。そのため、株価は下がりやすいのです。
仮に、投資家が「増資前のPER(10倍)が適正値」だと考えており、それにあわせて株価が下がったと仮定しましょう。
発行済株式数 | 株価 | 時価総額 | 純利益 | PER | |
---|---|---|---|---|---|
増資前 | 1,000万株 | 1,000円 | 100億円 | 10億円 | 10倍 |
増資後 | 2,000万株 | 500円 | 200億円 | 10億円 | 10倍 |
株価は半額になります。これが希薄化による、株式価値の低下です。
実際の増資で株価がどう動いたか見てみよう
実際の増資で、株価がどのように動いたか見てみましょう。
まず、2018年12月5日に公募増資をすると発表したマネーフォワード(3994)を例にとります。この会社は、会計管理ツールの提供などをおこなっています。サービス拡大に必要な、営業・マーケティング費用と開発費に資金を投じるため、250万株の新規株式の発行を決めました。調達総額は最大で90億円となります。公募増資による希薄化は「12.9%」でした。
株価の推移を見てみましょう。
(出典:SBI証券)
増資の発表があった12月5日の終値は4,190円でした。そこから続落しているのがわかります。新規株式の発行価格は、2,946円でした。株価はそれを超えて下がっています。既存の株主が増資を嫌っているのがわかります。
増資はネガティブ材料だけじゃない!
もう一社の例を見てみましょう。増資が悪材料ばかりではないことがわかります。増資は企業が拡大するために、お金を集める手段でした。株式は希薄化しますが、それを見越した上で、「会社が成長する」と投資家が判断した場合、好材料となります。
阪急阪神リート投資法人(8977)は、2018年11月8日に公募増資をすると発表しました。この会社は、イオンやニトリなどの商業ビル、ホテル、オフィスビルなどを開発・所有して利益を得ています。増資により、大阪のグランフロントという2つのビルを所有して、さらなる収益を上げようとしました。2,700株を発行し、74億円のお金を集めました。公募増資による希薄化は「8.9%」です。
株価の推移を見てみましょう。
(出典:SBI証券)
増資の発表があった、11月8日の株価は143,600円でした。翌日は142,000円まで売り込まれたものの、その後株価が上がっている様子がわかります。12日には146,000円の高値をつけました。
ビルを所有することで、売上・利益が上がる可能性が高いです。しかも、ビルを所有するのに、たいした時間はかかりません。投資家は目先の業績が良くなるだろうと判断して、株を買ったと考えられます。増資は、企業が何をしたいのかによって、好材料にも悪材料にもなりえるのです。
まとめ
増資は、集めたお金を償還(返却)する必要がないため、企業にとっては魅力的な資金調達方法です。しかし、やりすぎや不十分な説明で増資をおこなえば、既存株主の反発をかって株価は下がります。増資によって企業が何をしたいのか、見極めた上で投資をしましょう。
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