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【新番組】リアルゲイト岩本代表/シェアオフィス業界についてトップエグゼクティブが今後の展望を語る/米WeWork経営危機は日本にも波及する?/日本独自のオフィス戦略とは
リアルゲイト(5532)代表の岩本様が、シェアオフィス業界の展望についてIRTV※1で解説しています。
※1 IRTVとは、IR Robotics社が運営する“投資家と企業をつなぐ上場企業のIR動画メディア”です。決算情報から事業モデル・経営戦略・成長可能性まで、トップ自らがわかりやすく、かつタイムリーに解説しています。
この記事では、IRTVの動画の書き起こしと、動画の内容を受けて当サイトの管理人ひっきーによるコメントを紹介しています。動画の内容を文字で確認したいときに、ぜひご活用ください!
(出典:IRTV for YouTube)
創業のきっかけ
IRTV : 岩本代表が不動産業界の中で、「シェアオフィス※2に注目したきっかけ」を教えてください。
※2 今回の動画では、シェアオフィスの定義として、会議室やラウンジなどの共用部を設置し、スモールオフィスやフリーデスク会員などが入居するオフィスという意味合いで使っていきます。いわゆるフレキシブルオフィスやフレキシブルワークスペースも同じ意味になります。
岩本様 : 20年ほど前になりますが、私はマンションをたくさん作って売っていました。特に、東京の品川や有明といった湾岸エリアで販売していました。その頃、マンションを購入する顧客から、「法人登記に関する問い合わせ」や、「副業・スモールビジネスについての要望」をたくさん受けていたのです。
ただし、マンションは住宅であることから、法人登記が禁止されており、それらの需要に応えられませんでした。それでも、詳しく調べてみると、その頃はiPhoneが販売されたり、株式会社が1円から設立できるように法律が変わったりと、会社がとても作りやすくなった時期でもあります。
環境の変化によって法人登記の需要が高まるのであれば、住宅エリアに法人登記できるスモールオフィスを作ればヒットするのではないかと考えました。これが「シェアオフィスビジネス」の始まりです。
<創業のきっかけ>
(出典:IRTV for YouTube)
岩本様 : お台場で『the SOHO』という物件を作り、400戸ほど販売しました。その後、原宿や青山方面で適正価格のシェアオフィスをたくさん作れば、もっとヒットするのではというアイデアも生まれました。ただし、青山や渋谷などの都心は物件価格が高いため、安価な築古の物件に目をつけてシェアオフィスビジネスをはじめることにしたのです。
<the SOHO>
(出典:IRTV for YouTube)
IRTV : オフィスの需要があり、さらに築古の再生に着目されたのですね。
岩本様 : そうですね。割安な価格で提供したいという狙いがあり、古いビルで事業をはじめました。
オフィス全体の市況
IRTV : 現在のオフィス全体の市況をお聞かせください。日本ではオフィスへの回帰率が回復してきている一方、アメリカはテレワークが定着している印象を受けます。アメリカのオフィストレンドは今後、日本に影響してくる可能性があるのでしょうか。
岩本様 : アメリカではフルリモートでの在宅勤務率が“30%ほど”になると言われていますが、日本では“14%”です。アメリカは日本よりも1年ほど前にはマスクを外し、コロナの影響が落ち着いているにもかかわらず、フルリモートが定着しています。
そのことが、アメリカのオフィス空室率にも表れています。サンフランシスコ、ニューヨークの空室率はそれぞれ28%、17%と、空室率の高さは日本の何倍もあるのです。
<オフィス全体の市況>
(出典:IRTV for YouTube)
岩本様 : このようにフルリモートが定着した影響で、アメリカではシェアオフィスやオフィス自体が大変な状況に直面しています。日本ではフルリモートでの在宅勤務率が現在、14%ほどであり、一部の会社がテレワーク、ハイブリッドワーク※3を実施している状況です。
※3 ハイブリッドワークとは、従業員の業務内容に応じて、柔軟に働き場所を変えられるワークスタイルを指します。
日本はそのようなワークスタイルに対応し、フリーデスクを設けるなど、自由な働き方ができるような貸し方やデザインが求められるようになってきています。そのため、現在はオフィスやシェアオフィスを作るうえで「フレキシブル性」が求められる傾向にあります。
シェアオフィス業界の市況
IRTV : 本題の「シェアオフィス業界」についてお聞かせください。世界中でフレキシブルオフィスを展開する“WeWork(ウィーワーク)の経営危機”に加え、国内では“貸会議室のティーケーピーが連結子会社の日本リージャスホールディングスを三菱地所に売却した”というニュースから、「シェアオフィス業界は儲からないのではないか」という見方もあります。岩本様は、シェアオフィス業界の現状をどのように考えられていますか?
<シェアオフィス業界のニュース>
(出典:IRTV for YouTube)
岩本様 : 米国のWeWorkについては、同社自体が経営不振に陥っています。米国のオフィス全体で、リモートワークの定着により空室率が高まっており、シェアオフィスの需要がなくなっているのが原因です。また日本国内では、いろいろな会社がシェアオフィス事業をおこなっています。その中で、ビルの閉鎖や築浅のビルでおこなっているシェアオフィスの撤退の話をよく耳にする状況です。
コロナ禍前までのシェアオフィスは、“ビルの建て替え中に利用する一時的な仮のオフィス”といった役目を果たしていました。しかし、近年は働き方改革やコロナの影響を受け、シェアオフィスのニーズが高まっており、大手各社がこぞって作っています。これは、日本に限らず世界中で同じ傾向です。
大手企業がシェアオフィスを作る場合、資金力があるので、大規模な事業展開を図ります。新築のビルでシェアオフィスを作るため、元々の賃料と比べてとても高額になってしまうのです。
一方、シェアオフィスの借り手は、スタートアップ企業や中小企業が中心です。高額なプランを契約できる“資金が豊富なスタートアップ”は少ないので、大手企業が供給するシェアオフィスの数と資金力のあるスタートアップの需要の間にミスマッチが生じているのが現在の状況だと認識しています。
<シェアオフィス業界の市況①>
(出典:IRTV for YouTube)
IRTV : シェアオフィスが一部閉鎖されているものの、働き方が多様化し、リアルな場所としてのオフィス需要が高まる中、シェアオフィス市場は拡大していく方向でしょうか。
岩本様 : シェアオフィスは誰もが知るオフィスの形であり、オフィスとシェアオフィスを分ける時代も終わっています。オフィスとシェアオフィスを含めて、働く場所は必要なので、市場は拡大していくでしょう。しかし、差別化や商品の作り方、貸し方を工夫しなければ、儲かるビジネスにはならないと考えています。
シェアオフィス業界の差別化ニーズ
IRTV : 業界として、どのような差別化のニーズがあるのでしょうか。
岩本様 : 世界中のさまざまな拠点で使え、柔軟な働き方ができるようにしたいといったニーズがあります。また、住宅の下層部にシェアオフィスが欲しいという声もあります。
IRTV : 貴社の差別化ポイントは何でしょうか。
岩本様 : 私たちの商品は、特定の仕様を決めていません。建物はすべて同じではないため、ビルの特性に合わせて柔軟にシェアオフィス形態を変えています。店舗を入れて収益性を上げる場合もありますし、シェアオフィスではなくフロアで貸すと利益率が高くなる場合もあるからです。また、小割や机貸しなどさまざまなパターンを検討しています。
いま求められているのは、「フレキシブルな対応」です。ありきたりの内装を作るよりも、顧客に合わせてキッチンを作ったり、床の種類を変えたりするほうが喜ばれます。
<シェアオフィス業界の市況②>
(出典:IRTV for YouTube)
岩本様 : 元々、私たちは15年前に物件の運営からはじめた会社であり、ビジネスの正解、不正解は顧客の意見にもとづくと考えています。顧客の意見にもとづいてもクレームや解約理由になることもありますが、それらも分析したうえで最新のニーズをとらえて作るというのが特徴になります。
高い稼働率を支える背景
IRTV : 貴社のシェアオフィスは、高い稼働率を維持していますね。その理由を詳しく教えてください。
岩本様 : 弊社の特徴として、エリアを絞り、顧客が支払える坪単価に見合った物件を取り揃えています。ここ間違えると赤字になってしまうわけです。顧客が支払える坪単価を間違えなければ、そこからシェアオフィスの運営に必要な費用を引き、残った金額が弊社にとっての「物件の仕入値」となります。
つまり、顧客に貸し出す際の坪単価を高く設定すれば、弊社は賃料が高い物件を仕入れることができますし、坪単価を中価格帯に設定すれば、賃料が安い物件を借りなければなりません。私たちは坪単価を中価格帯に設定しているため、できるだけ賃料の安い物件を仕入れています。
賃料の安い物件を仕入れようとすると、どうしても古いビルを探さなくてはなりません。古いビルは、耐震性を有していなかったり、エレベーターがなかったり、デザイン性に優れていなかったりするため、弊社側で修理する必要があります。手間がかかるためデメリットにもなりますが、そこにこだわり中価格帯で提供するのが弊社の戦略です。
したがって、他社のように同じ仕様でチェーン展開はできません。“一点物のヴィンテージの車を直して売る”ような商売なのです。顧客の中には、わかりやすくブランドのロゴがついた高い服を求める人がいる一方、ロゴがなくて一点物を好む人も一定数います。私たちは後者をターゲットとしています。
<高い稼働率を支える背景>
(出典:IRTV for YouTube)
IRTV : 一点物が増えていくと、“まちづくり”にもつながっていく認識でよろしいでしょうか。
岩本様 : そうですね。私たちにはもの作りをするときに、こだわりがあります。大きく社名は出ていなくても、おしゃれで、イラストが書いてあるビルであれば、弊社の物件ということで注目を集められます。あえて、会社名を大々的に宣伝しなくても、評判で広まっていくことが、私たちの目指すべきまちづくりになります。
今後のシェアオフィス業界
IRTV : 「今後のシェアオフィス業界の展望」をお聞かせください。
岩本様 : オフィスとシェアオフィスを分ける意味がなくなってきています。現在は、大規模な会社でもフリーデスクで働いたり、さまざまなサテライトオフィスを使ったりしていますよね。シェアオフィスはオフィスのカテゴリーのごく一部であり、生活の中に溶け込んでいく時代になると予想しています。
一部では、在宅ワークによりオフィスの需要がなくなると言われおり、私自身それは事実だと考えています。しかし、「オフィス」という箱自体が消えたとしても、働く場所は必要です。自宅やホテル、郊外のサテライトなど、さまざまな場所にワークスペースが散らばっていくでしょう。シェアオフィスをオフィス内に設けるのではなく、住宅やホテルの中などフレキシブルに作る必要があります。今後は住宅とオフィスの境目、リゾートホテルとオフィスの境目がなくなる時代がくるのではないでしょうか。
<今後のシェアオフィス業界>
(出典:IRTV for YouTube)
IRTV : 時代の変化に合わせて、オフィスも変化していかなければいけないのですね。
岩本様 : そうですね。コロナ禍によって人々の働き方が本来のあるべき姿へと、少し早く進歩したとみています。
日本の法律、特に建築基準法や消防法は40年、50年前に作られ、さほど変わっていません。住宅は法人登記ができず、オフィスは住民票を移せず、ホテルは宿泊施設のため住民票を出せず、縦割りに決められています。今後は、行政でも法改正などをおこない、現実に適した環境を整えていくのではないでしょうか。
IRTV : リノベーションによる再生案件の対象となる築古物件は、時代が進むにつれ増えていくのでしょうか。
岩本様 : 物件は放っておくと古くなり、新築でも20年目には建て替えられなくなってしまいます。大きい開発がおこなわれる場合もありますが、このような開発は埋立地や大きな工場がある場所など、一街区がまとまった場所です。現在はそのような開発が無くなり、個人が持つ小規模なビルが残ってしまっています。こういったビルは、リノベーションで長く使うことが求められるでしょう。
IRTV : そのような時代においては、貴社のフレキシブルワークプレイス事業は、ますます必要とされていきますね。
岩本様 : そうですね。建て替える予算がある人は建て替えを進める一方、建て替えられない人や古くからの建物を大切にしたいという人から、私たちは求められるでしょう。
リアルゲイトの今後の展開
IRTV : 貴社の「今後の展開」についてお聞かせください。
岩本様 : 従来は、利用されていない古いビルを有効活用したいオーナーの悩みと、古くても洗練されたビルで自由に働きたいというテナントのニーズに応えてきました。最近では「環境配慮」に取り組んでいます。環境に優しいビルを持ちたいオーナーや、そのようなビルで働きたいテナントが増えてきました。
私たちは「古いビルを建て替えずに活用することこそ環境に優しい」と主張してきました。しかし、一部からは新築のビルのほうがランニングコストを抑えられるうえに、木材を使って作れば環境に優しいという意見もあります。
このため、古いビルでもランニングコストが抑えられ、環境にも優しい物件が求められると考えています。環境に優しい内装や設備を使った「環境配慮型ビル」を、今後展開していく方針です。
<リアルゲイトの今後の展開>
(出典:IRTV for YouTube)
IRTV : 環境配慮型ビルについて、具体的なプロジェクトは進んでいるのでしょうか。
岩本様 : 原宿でビルを持っており、来年3月から着工して環境配慮型ビルに作り上げていく計画です。
不動産業界の見え方
IRTV : 最後に、投資目線で「不動産シェアオフィス業界の状況」をお聞かせください。例えば、投資指標としてPER※3がよく使われます。不動産業界では1桁台の企業が多いですが、現状の貴社や業界全体の水準をどのように捉えていますでしょうか。
※3 PERは「Price Earnings Ratio」の略で、株価収益率と表されます。株価が1株あたり利益(EPS)の何倍の価値になっているかを示すものであり、現在の株価がその企業の利益と比べて、割高か割安かを判断するのに使われる指標になります。
岩本様 : 一般的に不動産業界のPERが低い理由は、多くの会社が物件の売買、つまりフロービジネスで成り立っているからだとみています。
現在では、さまざまな不動産会社が出てきています。人工知能(AI)を活用したソリューションや不動産DX※4系、あるいは私たちのようにストック型、つまり何年も継続して安定した収益を積み上げていく事業を展開する会社も出てきています。こういった会社は、軒並みPERが高くなっていますよね。同じ不動産カテゴリーにおいても、“不動産をどのように運用しているのか”まで会社を見ていくことが大切だと考えています。
※4 DXとは「Digital Transformation」の略で、ディーエックスと読みます。企業が大量のデータとAIをはじめとするデジタル技術を活用し、業務プロセスを改善するとともに、製品・サービス、ビジネスモデルを変革し、組織、企業文化、風土をも改革して競争上の優位性を確立することを指します。
<不動産業界の見え方>
(出典:IRTV for YouTube)
IRTV : ありがとうございます。投資家のみなさんはリアルゲイトをはじめ、フレキシブルオフィスの今後にも注目してください。
ひっきー's Eye
IRTVでは、このほかにも上場企業の経営者との対談動画をアップしています。企業の事業内容はもちろん、今後の成長戦略を読み解くヒントがたくさん散りばめられているので、個人投資家のみなさまにぜひご覧いただきたいメディアです!
ディスクレーマー
当記事では、筆者独自の見解を述べることがありますが、証券およびその他の金融商品の売買や引受けを勧誘する目的ではなく、証券およびその他の金融商品に関する助言や推奨をするものではありません。また、個別企業の業績予想や株価予想、投資推奨を提供する予定はありません。投資判断等は、自己責任でお願いいたします。
ひっきー
リアルゲイトの岩本社長との対談書き起こし記事、いかがでしたか?
事業内容だけでなく、シェアオフィス業界の動向について理解を深められる、とても濃い内容でしたね!同社が取り扱うシェアオフィスは、スタートアップ企業や中小企業が借りやすい坪単価を抑えた物件です。自ら修理を施し、おしゃれな物件に仕上げて提供することにより、付加価値を生み出している点もおもしろいですね!
リアルゲイトの将来を考える際に役立つ情報が詰まっているので、この記事だけでなく、IRTVの動画も繰り返し見て理解を深めてください!