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【エミン・ユルマズ×シーラテクノロジーズ杉本会長】日本ではなくアメリカに上場した理由

やさしい株のはじめ方編集部担当:やさしい株のはじめ方編集部

最終更新日:2024年3月6日

シーラテクノロジーズ(NASDAQ:SYT)会長の杉本様と、エコノミストのエミン・ユルマズ様の質疑応答をIRTV※1で公開しています。

※1 IRTVとは、IR Robotics社が運営する“投資家と企業をつなぐ上場企業のIR動画メディア”です。決算情報から事業モデル・経営戦略・成長可能性まで、トップ自らがわかりやすく、かつタイムリーに解説しています。

この記事は、IRTVの動画内容を書き起こししたものです。動画の内容を文字で確認したいときに、ぜひご活用ください!

今回は、シーラテクノロジーズ社とエミン様の対談動画の後編です。前編の書き起こし記事とセットで読んでくださいね。

(出典:IRTV for YouTube

アメリカで上場した理由

エミン様 : 日本ではなくアメリカで上場した理由は何ですか?アメリカでは投資家向けの情報開示ルールがきびしく、上場がむずかしい印象があります。

杉本様 : 3年前に上場準備をはじめたとき、日本では我々が手掛ける「Proptech※2(プロップテック)」や「不動産クラウドファンディング」という領域の認知が薄く、市場に理解していただけませんでした。別の理由として、証券会社からの評価が低かった点もあります。

※2 Proptech(プロップテック)とは、「Property(不動産)」と「Technology(技術)」を組み合わせた言葉です。土地や建物といった不動産の活用に、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などを取り入れ、利便性の高い商品やサービスを生み出すことを指します。

一方アメリカでは、不動産クラウドファンディング領域において、マーケットキャップ(時価総額)10億円で資金調達した会社がありました。

アメリカ市場では、我々のサービスが理解しやすいものだったため、その分評価も高くなりました。このため、日本ではなくアメリカの市場で資金調達することで、調達額が5倍程度大きくなるとわかったのです。我々にとってアメリカは、数字面だけで言うと魅力的なIPO市場でした。

<アメリカで上場した理由>

アメリカで上場した理由

(出典:IRTV for YouTube

杉本様 : 最初のIPOとしてアメリカ市場を選んだことは正解だったと思っています。エミン様がおっしゃったとおり、アメリカの投資家の目線はとてもきびしいです。

実際に我々の株価を見ていただくと、乱高下しています。アメリカの投資家の方々に、日本という東洋の島国の不動産会社をご理解いただくのは大変だと肌で感じました。評価していただけるように、諦めずにしっかり努力を続けていきます。

現在の株価水準ですと、実質的にPBR1倍割れしそうなところまで来ている状態です。経営者としては申し上げづらい部分もありますが、安い水準ではないかと推察しています。頑張ってアメリカの投資家にアピールし続けないといけないと思っています。

エミン様 : 全般的には日本への関心が高まっていますので、貴社への問い合わせやIR※3ミーティングの依頼が増えて忙しいだろうと察しています。本当に大変だと思いますが頑張ってください。期待しています。

※3 IR(アイアール)とは、企業が株主や投資家向けに経営状態や財務状況、業績の実績、今後の見通しなどを広報するための活動を指します。

資本業務提携とM&A戦略について

エミン様 : 貴社は、ブラックロックや楽天グループなどとの資本業務提携をうまくやっている印象があります。直近では、リベレステ(8887)との資本業務提携が発表されていましたが、今後どういったシナジーを出していくのでしょうか?

また、プレスリリースの中で、M&Aを今後の中核の戦略として展開すると書かれていました。この件についても説明をお願いします。

杉本様 : リベレステ社の話の前にM&A戦略の話をするとリベレステ社の件が理解につながりやすいと思うので、まずM&A戦略の話からします。

エミン様がおっしゃるとおり、アメリカで株価を作るのは大変でした。我々の事業をアメリカの投資家の方々にご理解いただくため、必死でIRに取り組み、100社を超える機関投資家様を日米で回ってきました。

その中で投資家の方々から言われたのは、日本へ注目していることと、円安基調であるがゆえに為替でも勝てることでした。さらに、日本の上場企業の45%がPBR1倍を割っており、とても珍しい市場である点にも、投資家の方々が注目していたのです。

アメリカでは、PBR1倍を割っている企業はボロボロで、倒産予備軍と呼ばれる企業が多く存在します。一方、日本ではしっかりと利益を出し続けている企業が、PBR0.5~0.6倍になっているのです。IRをしていない、人口が減少している地域でビジネスを展開している、経営者のリスクがあるなど、さまざまな理由でPBRが1倍を割っています。

アメリカの投資家との会話では、よく「日本はお宝探しができる市場だ」、「トレジャーハンターになれる市場だ」という話がたびたび出ていました。

<日本の市場について>

日本の市場について

(出典:IRTV for YouTube

杉本様 : 今回、我々が筆頭株主になったリベレステ社は、実はPBR0.8倍前後の会社です。M&Aの際、デューデリジェンス※4をしていく中で、かなり含み益があることがわかりました。50年経営を続けてきた企業なので、長らく保有している不動産については、かなり大きな含み益が出てきています。

※4 デューデリジェンス(Due Diligence)とは、投資対象企業の価値やリスクを調査することです。

バランスシート上でも、我々が一緒になることで、非常に健全で安定的なバランスシートに変えることができます。

また、我々は東京都区部の中心エリアと神奈川県川崎市、横浜市で事業を展開しています。リベレステ社は埼玉県と東京都北部エリアで事業を展開しており、事業エリアがまったく被っていません

リベレステ社は、我々も展開している建築のゼネコン事業を展開しています。ゼネコン事業においては、建築費が1年半の間に20%ほど高騰しており、どのデベロッパーも利益が出ない状況となっています。

本来、我々がゼネコンに工事を依頼すると、10%程度の利益を抜かれます。もし自前で工事できれば、ゼネコンに抜かれる利益がなくなります。近い将来、我々はすべてに物件を自社施工に変える予定です。すべての物件の利益率が上がり、自社管理のためクオリティの担保もできるようになります。

<資本業務提携について>

資本業務提携について

(出典:IRTV for YouTube

杉本様 : ゼネコン事業の拡大にはリスクが伴います。しかし、工事を内製化していくことは、利益率や品質向上の面で大きなメリットがあります。こういった背景から、リベレステ社と資本業務提携を結びました。

シーラテクノロジーズ社の成長戦略について

エミン様 : 貴社の説明資料の中で、クラウドファンディング市場は2032年までCAGR※550%以上の成長が見込まれると書かれていました。

※5 CAGRとは、Compound Annual Growth Rateの頭文字を取ったもので、日本語では「年平均成長率」と言います。

これに関して、2032年までの貴社の成長戦略は、どこに重点を置いているのかを教えてください。また、利回りくんのネクストステージについても説明をお願いします。

杉本様 : 重点を置いているのは、不動産クラウドファンディング事業です。一番成長性が高いことと、市場の状況については前述してきたとおりとなっています。

<成長戦略について>

成長戦略について

(出典:IRTV for YouTube

杉本様 : 不動産クラウドファンディング事業のすごさは、すでに40億円を超えるエクイティを集めて市場で運用していることです。

これは、40億円分のもう1つのバランスシートで不動産を売買し、投資家の方々からお金を集めて、別の新しい物件を売買できている状況となります。

我々も、ポータルサイトとして多くのお客様から物件を受け付けるだけではなく、倒産隔離をしながらも自社のバランスシートの一部だと考えて運用していかなければいけません。

一方で、昨年度末にエクイティを集めつつ、銀行から借入をおこなってファンド運用ができる新しい免許を取得しました。

これにより、不動産クラウドファンディング事業の規模がさらに倍になり、追加で40億円ほどのエクイティが集まると予想しています。

対外的に強気な数字を出すのは良くないのですが、社内的にはファンドの規模が3倍のスピードで拡大していくと予想しています。これは無茶な予想ではなく、的を得た予想だと考えています。

また、日本の不動産市場の成長とともに、ゆっくりとデベロッパー事業も成長していくでしょう。

お宝探しができる最後の時期

杉本様 : もう1つは、前述したM&A戦略です。現在は、お宝探しができる最後の時期だと考えています。東京証券取引所からPBR1倍割れ企業に対する改善要請が出ているため、上場企業の経営者の方々は危機感を持って経営に取り組むようになりました。

したがって、M&Aによるアービトラージ※6で奇跡を起こせる最後のチャンスだと思っているのです。

※6 アービトラージとは、裁定取引とも言い、同一の価値を持つ商品の一時的な価格差が生じた際に、割高な方を売り、割安な方を買い、その後、両者の価格差が縮小した時点で各々の反対売買をおこなって利益を獲得しようとする取引のこと。

<M&Aによるアービトラージ>

M&Aによるアービトラージ

(出典:IRTV for YouTube

杉本様 : 我々が調達した資金は、良い会社のM&Aに使います。決して、数字遊びをしているわけではありません。ビジョンや目標を同じくして一緒に働ける仲間であれば、我々の仲間に加えていきたいと思っています。

特に地方で展開しているデベロッパー企業は、我々が取り組んでいるDXやテクノロジー力がまったくないパターンもあります。今回、資本業務提携したリベレステ社にもさまざまな刺激を与えることができているのではないでしょうか。

リベレステ社では、全社員が据え置きのデスクトップPCを使っており、ノートPCがない状態でした。「社員が移動しながら仕事できるようにする」や「Web会議用のカメラを導入する」など、生産効率を上げていこうという考えのもと、我々のDX力をどんどん取り入れていただいています。

このように、旧態依然としたデベロッパー企業と一緒になることによって、両者の良いところを活かしつつ、我々のテクノロジー力を導入していくのが1つの戦略となっています。

AIの導入について

エミン様 : AIの導入について、具体的な取り組み事例を教えてください。

杉本様 : 直近では、AIに不動産情報を集めさせて物件評価を付けています。具体的には、各物件に対して「A+」から「E-」までの10段階で評価しているのです。

その中で「A+以上」と評価された優良物件だけを人力で精査し、買うか買わないかを決めています。これにより、とても生産性が高まりました。

また、我々の規模の不動産デベロッパーでも、年間5万件の物件情報が寄せられます。この数をすべて人力でチェックすることはできていません。

信頼できる業者から得た情報やエリアで絞り込んでチェックしていたので、おそらく半分以上の物件情報を捨てていました。しかし、AIのOCR※7技術を使うことで、すべての情報の中から1%程度に物件情報を絞り込んでいます。

※7 OCR(オーシーアール)とは、「Optical Character Recognition/Reader」の略で、日本語では「光学的文字認識」と呼びます。画像内の文字を認識し、データに変換する技術です。

<AIの導入について>

AIの導入について

(出典:IRTV for YouTube

杉本様 : AIを使うことで、人が判断すべき部分だけを残して、情報を絞り込むことができます。このように、生産性・効率性を高めることができる分野でも活用しています。

また、顧客情報をクリックすればお客様がどのような物件を持っているか、ローンの残債がいくらか、家賃上昇率がどれくらいか、物件の価格査定をするといくらになるかが表示されます。

例えば、30歳で不動産をご購入いただいたお客様で、購入から7~8年経っている場合があります。お客様の年収は購入時よりも上がっていると考えられるので、「もう1軒買えるのではないか」といったことも打ち出してくれます。

今後は、節税シミュレーションができるようにするなど、AIで顧客情報を取り出し、戦略的な提案ができるレベルまで引き上げていきます。

現在、ちょうど社内でシステムを大規模修繕しています。将来のビジョンを持って取り組んでいます。

エミン様 : ありがとうございます。とてもわかりやすい説明でした。私も日本の不動産を含めたリスク資産の動きは初動だと思っています。

今後の不動産市場の成長と全般的な日本の資本市場の成長にも、貴社は大きく貢献できるのではないかと期待しています。今後ともよろしくお願いします。

杉本様 : こちらこそ、よろしくお願いいたします。

最後に

IRTV : 改めまして、杉本会長とエミン様、ありがとうございました。最後にエミン様からシーラテクノロジーズ社に今回いろいろ質問したご感想をいただけますか。

エミン様 : いろいろと気になる点を聞く中で、評価している点が2つあります。1つは、大手企業と資本業務提携を結んでいる点です。楽天グループやブラックロックといった大手企業は、信用がなければ付き合ってもらないからです。今後も似たような提携がありそうなので、とても期待しています。

<大手企業と資本業務提携>

大手企業と資本業務提携

(出典:IRTV for YouTube

エミン様 : もう1つは、杉本社長がおっしゃるように「日本はお宝探しができる」点です。私たちは3か月に1回発売される「会社四季報」を隅から隅まで読んでいますが、やはり日本の株式市場は宝の山だと感じます。

理由は、アメリカでは倒産し上場廃止になるような企業に付けられるPBR0.5倍やPSR0.2倍といった水準で、日本には利益をしっかりと出している企業が存在しているからです。

これらの企業は、シンプルな改善に取り組むだけで、生産性や利益率が大きく上昇すると考えています。貴社もそのような点に注目しているとのことで、着眼点が似ていると感じました。

IRTV : ありがとうございます。次に杉本会長、いかがでしたでしょうか。

杉本様 : M&A戦略などを発表させていただき、センシティブな時期でもあるため、言いたいことをすべては言えず、もどかしい思いもしました。エミン様が聞きたいことに対し、もっと踏み込んでお話したかったです。

我々の会社は、成長意欲が旺盛ですばらしいメンバーが集まっています。投資家の皆様には、ぜひ長期的にご支援・応援をいただきながら、地に足を付けて一歩一歩着実に成長を続けていきます。よろしくお願いいたします。

IRTV : ありがとうございました。投資家のみなさん、シーラテクノロジーズ社に注目してください。それでは、高評価、コメント、質問などお待ちしています。今回は杉本会長、エミン様、ありがとうございました。

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ディスクレーマー

当記事では、筆者独自の見解を述べることがありますが、証券およびその他の金融商品の売買や引受けを勧誘する目的ではなく証券およびその他の金融商品に関する助言や推奨をするものではありません。また、個別企業の業績予想や株価予想、投資推奨を提供する予定はありません。投資判断等は、自己責任でお願いいたします。

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

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