【フォースタートアップス】2023年3月期通期決算を志水社長に取材!きびしい事業環境の中で過去最高業績を達成できた理由などをお聞きしました
(フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料)
やさしい株のはじめ方編集部の“にしけい”が、スタートアップ企業※1向けの人材紹介やスタートアップ企業のデータベース『STARTUP DB(スタートアップ・データベース)』の運営などをおこなうフォースタートアップス(7089)(以下、フォースタートアップス社)に突撃取材しました!
※1 スタートアップ企業とは、革新的なアイデアを持ち、短期的に高成長する創業数年の企業を指します。
今回も、フォースタートアップス社の志水社長に、最新決算の手応えや今後の経営戦略、注目ポイントをお聞きしました。
この記事では、株初心者の方がフォースタートアップス社の最新決算について理解を深められるよう、わかりやすい言葉でていねいに解説します。ぜひ最後まで読んでくださいね。
きびしい事業環境の中でも過去最高の業績を達成!2023年3月期決算を解説
まずは、フォースタートアップス社の2023年3月期決算を確認していきましょう。
2023年3月期の決算ハイライト
売上高は前年比+27.7%の29.98億円、営業利益は前年比+19.8%の5.85億円となりました。きびしい事業環境の中にありながら、過去最高の業績を達成しております。
志水社長
<2023年3月期決算ハイライト>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
にしけい
前回取材させていただいた第3四半期決算では、スタートアップ企業の資金調達環境が悪化した影響で採用ニーズが減少しており、御社にとっては逆風の環境だとおっしゃっていましたね。
そうなのです。このため、スタートアップ界隈の方からは、「この事業環境で過去最高の業績達成はすごい!」とお褒めいただきました。
志水社長
にしけい
事業環境に負けずに業績を伸ばせている理由として、下の2つがあると考えておりますが…御社ではどのように捉えていますか?
事業環境に負けずに業績を伸ばせた理由
- 採用難易度の高い「ハイレイヤー層」を中心に、人材紹介サービスを提供している
- これまでに数々の実績を積み上げており、スタートアップ企業からの信頼が厚い
弊社でもそのように捉えております。
志水社長
タレントエージェンシー事業
にしけい
続いて、タレントエージェンシー事業の業績について、ご説明をお願いします。
タレントエージェンシー事業では、「人材紹介サービス」と「コンサルティングサービス」の2つの事業を展開しています。
志水社長
<タレントエージェンシー事業の売上高の推移>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
人材紹介サービスは、堅調な受注を背景に成長トレンドを継続できています。一方で、コンサルティングサービスは外部環境の影響を受けており、前四半期比で減収が続いている状況です。
志水社長
にしけい
ご説明ありがとうございます。次に、人材紹介取引数と単価の推移を見ていきたいのですが、紹介件数・単価は第1四半期の水準に戻っていますよね。
<人材紹介取引数と単価の推移>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
にしけい
また、決定年収比率※1を見ると、第4四半期に「年収600万円以上800万円未満」のミドル層が増えているようです。「足元のスタートアップの採用ニーズの状況には大きな変化はなし」とご説明いただいていますが、多少の変化が起きているように感じました。
※1 決定年収比率とは、フォースタートアップス社が支援した人材の属性について、年収別で比率にしたものです。
<決定年収比率の推移>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
おっしゃるとおり、「年収600万円以上800万円未満」のミドル層が増えています。ただし、決算説明資料でご説明しているとおり、スタートアップ企業の採用トレンドは変わっておりません。偶然、第4四半期(1~3月)に入社した方のうち、ミドル層が多かっただけです。
志水社長
にしけい
偶然だったのですね!
そうですね。ただし、2024年3月期の第1四半期以降のトレンドを見てみないと、確定はできません。
志水社長
にしけい
ご説明ありがとうございました。
オープンイノベーション事業
にしけい
オープンイノベーション事業の業績についても、解説をお願いします。
わかりました!
志水社長
<オープンイノベーション事業の売上高の推移>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
前期からスタートしたSTARTUP DB※2が会員数を伸ばし、売上高は前年比で2倍になりました。また、Public Affairs※3の売上の多くが第4四半期に計上されたことも影響しています。
志水社長
※2 STARTUP DB(スタートアップ・データベース)とは、17,000社以上のスタートアップ情報を集約した、国内最大級の情報プラットフォームです。詳しくは、公式ホームページをご覧ください。
※3 Public Affairsとは、通称「スタートアップ政策支援」であり、競争入札を通じて官公庁や地方自治体によるスタートアップ関連の事業を受託する事業です。詳しくは、「フォースタートアップスの志水社長に突撃取材!会社を創業した理由や最新決算などを熱く語っていただきました」をご覧ください。
<Public Affairsの実績>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
Public Affairsにおいては、全国のスタートアップ関連事業の受託やプログラム参画を進めています。また、スタートアップ・エコシステム8拠点のうち4拠点と連携しました。
志水社長
にしけい
順調に事業の幅を広げられていますね!
ベンチャーキャピタル事業
にしけい
ベンチャーキャピタル事業について、2023年3月期第3四半期の取材からアップデートはございますか?
第3四半期時点からはアップデートはありません。ちなみに、2023年3月期はREADYFOR社、ポケトーク社、カケハシ社の3社に出資しました。この結果、弊社の投資先企業は合計5社となっています。
志水社長
<2023年3月期にて3社に投資>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
キャッシュ・フロー計算書を読む際の注意点
最後に、キャッシュ・フロー計算書を読む際の注意点をご説明します。
キャッシュ・フロー計算書を読む際の注意点
2023年3月期の営業活動によるキャッシュ・フロー(以下、営業CF)がマイナスになっている
実際に、フォースタートアップス社の決算短信を見てみましょう。
<フォースタートアップス社の決算短信>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算短信[PDF])
上の画像の赤枠部分が、営業CFを表しています。2023年3月期は3,500万円のマイナスとなっていますね。
営業CFは、本業による収入と支出の差額です。この項目の合計額がプラスであれば、「本業が順調である」と判断できます。
しかし、フォースタートアップス社の営業CFはマイナスなので、数字だけを見ると「本業が順調とは言えず、何か問題を抱えているのでは?」と疑う方もいるでしょう。
結論を先にお伝えすると、2023年3月期の営業CFは、マイナスでも問題ありません。その理由は、ベンチャーキャピタル事業の出資金が影響しているからです。
営業CFの内訳を確認しましょう。
<フォースタートアップス社の営業CFの内訳>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算短信[PDF])
上の画像の赤線で示した「営業投資有価証券の増加」が、営業CF最大のマイナス要因です。この「営業投資有価証券」とは、主にベンチャーキャピタルが使う勘定科目で、出資先のスタートアップ企業から受け取った株式などを表します。
フォースタートアップス社では、ベンチャーキャピタル事業を展開しており、2023年3月期はスタートアップ企業3社への出資をおこないました。この結果、営業投資有価証券が約3.1億円増加し、営業CFがマイナスになってしまったのです。
にしけい
営業CFはマイナスですが、ベンチャーキャピタル事業の出資によるもののため、経営に問題を抱えているわけではありません!むしろ、先ほど紹介したように、事業環境が逆風の中でも過去最高の業績を上げています。
また、財務活動によるキャッシュ・フロー(以下、財務CF)には、「非支配株主からの払込みによる収入」が約2.7億円計上されています。同社にとっては大きな金額の勘定科目ですが、調べても出てこないので、疑問を抱いた方も多いようです。
<フォースタートアップス社の財務CFの内訳>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算短信[PDF])
にしけい
「非支配株主からの払込みによる収入」とは、どのような取引を表す勘定科目なのでしょうか?
営業投資有価証券と同じで、ベンチャーキャピタル事業に関連した勘定科目となります。これを理解するためには、ベンチャーキャピタル事業のお金の流れをイメージしていただくと良いでしょう。
志水社長
<ベンチャーキャピタル事業のビジネスモデル>
(出典:フォースタートアップス 2022年3月期決算説明資料[PDF])
ベンチャーキャピタル事業でスタートアップ企業に出資する場合、弊社の資金にプラスして外部の出資者からもお金を集めています。この「外部の出資者から集めたお金」が、会計上は弊社の財務CFのプラス要因として計上されてしまうのです。
志水社長
にしけい
なるほど!ベンチャーキャピタル事業ならではの会計処理ですね。
2024年3月期の業績見通し
フォースタートアップス社の2024年3月期の業績見通しをお聞きしました。
2024年3月期は中長期の成長にフォーカス
にしけい
2024年3月期の業績見通しについて、説明をお願いいたします!
今期(2024年3月期)もきびしい事業環境が続くと予想していますが、中長期の成長にフォーカスし、「未来を育む種まきの1年」とする予定です!
志水社長
<2024年3月期のキーメッセージ>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
にしけい
具体的には、どのような「種まき」をされるのでしょうか?
中長期を見据えた採用活動を継続するとともに、既存社員の育成を強化していきます。2023年3月期と2023年4月の新卒入社で社員が急増しました。新しく入っていただいた社員を育成し、独り立ちできる状態に持って行きます。
志水社長
<人材育成の強化>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
にしけい
市場環境が改善したときに備えるための1年というイメージでしょうか?
そうですね。このため、2024年3月期は人件費が増加し、営業利益は前年比でマイナスになる予定です。
志水社長
<2024年3月期の営業利益計画の分解>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
市場環境
にしけい
市場環境はどうなると予想されていますか?
今期も市場環境に変化はないと予想しています。2023年3月期第3四半期決算でもお伝えしたように、スタートアップ企業の資金調達金額が伸び悩んでいる関係で、採用コストを抑制する流れが続いていきそうです。
志水社長
<スタートアップ企業の資金調達市場の動向>
(出典:フォースタートアップス 2023年3月期決算説明資料[PDF])
にしけい
引き続き我慢なのですね…。
そうですね。しかし、日本政府が国家戦略として「スタートアップ支援」を掲げている点は、引き続き私たちに追い風です。
志水社長
<なぜスタートアップなのか>
(出典:経済産業省 スタートアップの力で社会課題解決と経済成長を加速する[PDF])
経済産業省が2023年4月に公表した資料を見ると、「日本を代表する電機メーカーや自動車メーカーは、戦後直後に若者が創業したスタートアップだった」と説明しています。経済産業省としては、日本に戦後と同じ「創業ブーム」を起こそうとしているのです。
志水社長
にしけい
経済産業省の本気度が伝わってきますね。
ですよね。弊社としても、日本経済をけん引しグローバルに活躍するスタートアップ企業を多く支援していく計画です。もちろん、その結果として弊社も成長していけるように頑張ります!
志水社長
個人投資家にひとこと
にしけい
最後に、個人投資家へのメッセージをお願いいたします!
繰り返しにはなりますが、日本政府は戦後と同じ「創業ブーム」を起こすべく、国策としてスタートアップ企業の支援をおこなっています。弊社としても、イノベーションを起こすポテンシャルを秘めたスタートアップ企業を支援することで、今後も成長していく計画です。スタートアップ業界は金融引き締めの影響もあり「冬の時代」と言われていますが、中長期では成長が見込めます。ぜひ、長い目で温かく応援していただけますと幸いです!
志水社長
にしけい
この度も取材にご協力いただきありがとうございました!
まとめ
フォースタートアップス社の2023年3月期決算取材は以上となります。同社を取り巻く市場環境は、今期(2024年3月期)もきびしい状態が続きそうです。しかし、国策としてスタートアップ支援がおこなわれており、経済環境が落ち着けば再び成長していくでしょう。
短期的には「冬の時代」となりそうですが、中長期的な目線を持って、応援していきたいですね!
こちらの記事では、最新決算の状況のみを紹介してきました。当サイトでは、フォースタートアップス社の事業内容や今後の成長戦略をわかりやすく解説した記事も作成しています。フォースタートアップス社について理解を深めたい方は、ぜひお読みください。
フォースタートアップス社では、志水社長がTwitterでの情報発信に力を入れていらっしゃいます。ぜひ志水社長のTwitterをフォローして、最新情報を見逃さないようにしましょう!
ひっきー
当サイトでは、上場企業に取材させていただき、事業内容や成長戦略などを株初心者向けにわかりやすく解説した“企業紹介記事”を公開しています。こちらで記事の一覧を公開していますので、ぜひご覧ください。株初心者の方が企業を知るきっかけになれますと幸いです。
また、当サイトの取材を希望される上場企業の担当者様は、お問い合わせフォームからご連絡をお願いいたします。ご連絡をいただいた担当者様に、企業紹介記事の企画概要資料をご送付するほか、取材のご案内をいたします。
ディスクレーマー
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にしけい
2023年3月期決算の総括をお願いいたします。