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フォースタートアップスの志水社長に突撃取材!会社を創業した理由や最新決算などを熱く語っていただきました

やさしい株のはじめ方編集部担当:やさしい株のはじめ方編集部

最終更新日:2023年3月24日

フォースタートアップス株式会社 志水社長

(フォースタートアップス株式会社 志水社長)

やさしい株のはじめ方の管理人ひっきーとやさしい株のはじめ方編集部(にしけい)が、スタートアップ企業※1向けの人材紹介やスタートアップ企業のデータベース『STARTUP DB(スタートアップ・データベース)』の運営などをおこなうフォースタートアップス(7089)(以下、フォースタートアップス社)に突撃取材しました!

※1 スタートアップ企業とは、革新的なアイデアを持ち、短期的に高成長する創業数年の企業を指します。

今回は、フォースタートアップス社の志水社長に、事業内容会社を創業した理由最新決算(2023年3月期3Q)、今後の成長戦略の見方をお聞きしました。特に会社を創業した理由について、志水社長に熱く語っていただいたので、「日本を豊かにしたい」という想いからフォースタートアップス社を創業で詳しく紹介しますね。

この記事では、株初心者の方がフォースタートアップス社について理解を深められるよう、わかりやすい言葉で丁寧に解説します。また、最新の業績や注目すべき指標、今後の成長戦略の見方についての説明も載せています。ぜひ最後まで読んでください。

スタートアップの縁の下の力持ち!?フォースタートアップス社の事業内容やビジネスモデルをわかりやすく解説

フォースタートアップス(7089)は、スタートアップ企業向けの人材紹介や採用コンサルティング、スタートアップ企業のデータベース『STARTUP DB』の運営などをおこなっています。大きく分けると次の3つの事業を展開しているので、それぞれの事業について説明していきますね。

フォースタートアップス社が展開している3つの事業

なお、同社ではこれらの3つの事業をまとめて「成長産業支援事業」と呼んでいます。なぜこのように呼ぶのかは、「日本を豊かにしたい」という想いからフォースタートアップス社を創業でご紹介します。順番に読み進めてくださいね。

各事業の説明をする前に、売上高の構成を確認しておきましょう。

<売上高の構成>

売上高の構成

(出典:フォースタートアップス 2022年3月期決算説明資料[PDF])

2022年3月期時点の売上高比率を見ると、92%がタレントエージェンシー、残り8%がオープンイノベーションとなっています。ベンチャーキャピタルの売上はまだゼロです。いまのところは、タレントエージェンシーを重点的に見ていけば良いでしょう。

タレントエージェンシー

タレントエージェンシーは、「人材紹介サービス」と「起業支援サービス」の2つに分けられます。それぞれ説明しますね。

人材紹介サービス

人材紹介サービスは、スタートアップ企業に対して人材を紹介する事業です。フォースタートアップス社に所属する「ヒューマンキャピタリスト※2」が、スタートアップ企業の求める人材の条件を聞き出し、条件に合った人材をヘッドハンティングして紹介します。ヘッドハンティングの際には、管理職や専門職などに特化した転職サイト「ビズリーチ」をはじめとする各社のデータベースを使っています。

※2 ヒューマンキャピタリストとは、人材(ヒューマンキャピタル)を取り扱うコンサルタントです。

人材紹介会社の多くは、求職者の登録媒体を作って求職者を集める「登録型」を採用しています。一方で、フォースタートアップス社は「ヘッドハンティング型」を採用しているのが特長です。

はてなひっきー

ヘッドハンティング型を採用している理由は何ですか?

ヘッドハンティング型のほうが、求人ニーズに合った人材を効率的に発掘できるためです。

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

このほかにも、人材紹介サービスの一環として「採用コンサルティングサービス」も提供しています。具体的には、サービス利用企業に対してのサポートを強め、“ターゲットとする人材設定”などのコンサルティングサービスを提供しています。

人材紹介サービスのビジネスモデルは、同社がスタートアップに紹介した人材が入社した場合に、スタートアップから成功報酬として手数料を受け取っています。また、採用コンサルティングサービスでは、コンサルティングフィーとして固定報酬を受け取っています。

指さしひっきー

手数料は、一般的な人材紹介会社と同じで、紹介した人材の年間報酬見込み額の一定割合(35%程度)を受け取っているようです。なお、経営陣などのハイレイヤーを紹介した場合は手数料率が高くなります。

起業支援サービス

起業支援サービスでは、起業しやすい環境を作るために、ベンチャーキャピタル※3(以下、VC)や大学などの研究機関と連携した起業家創出支援をおこなっています。具体的には、次のような支援をおこなっています。

※3 ベンチャーキャピタルとは、未上場のスタートアップ企業などに出資して株式を取得し、将来的にその企業が上場やM&Aをした際に、株式を売って大きな値上がり益を獲得しようとする投資会社や投資ファンドのことです。英語表記では「Venture Capital」となるため、略して「VC(ブイシー)」とも呼ばれます。

起業支援サービスの内容

  • フォースタートアップス社が発掘した起業に資する人材を、提携するVCに紹介する
    (VCは起業サポートや起業後の資金提供をおこなう)
  • 高い技術力をベースにしたアイデアや人材を多く抱える大学などの研究機関に対し、大学系VCと連携して経営陣などの人材支援をおこなったり、起業サポートをおこなったりする

起業支援サービスのビジネスモデルは、VCに紹介した「起業に資する人材」や、大学や研究機関に紹介した「経営陣」が起業に至った場合、VCなどから成功報酬を受け取ります。

さらに、このようにして設立されたスタートアップに対して、継続的な人材支援ができるのも同社の強みです。経営陣や従業員を紹介した場合は、人材紹介サービスの対価として手数料や固定報酬を受け取ります。

指さしひっきー

起業だけでなく、起業後に必要となる人材の支援までしてくれるとは…。起業家にとって、非常にありがたいサービスですね!

ここまで説明した「人材紹介サービス」と「起業支援サービス」のビジネスモデルを図解したものが、下のスライドです。

<タレントエージェンシーのビジネスモデル>

タレントエージェンシーのビジネスモデル

(出典:フォースタートアップス 2022年3月期決算説明資料[PDF])

また、タレントエージェンシーの売上を分解すると、下の計算式のようになります。

タレントエージェンシーの売上の計算式

売上=(人材紹介取引数×手数料)+(採用コンサルティングサービス利用企業数×固定報酬)

上の計算式からわかるように、「人材紹介取引数」や「手数料」が増えれば、タレントエージェンシーの売上も増えます。したがって、業績を確認する際には「人材紹介取引数」と「手数料」の2つをセットで確認しましょう。

オープンイノベーション

オープンイノベーションは、フォースタートアップス社が運営するデータベース『STARTUP DB(スタートアップ・データベース)』を活用し、大手企業や官公庁・自治体とスタートアップ企業の連携を促進する事業です。「資金調達支援」と「データベース課金」、「Public Affairs(パブリック・アフェアーズ)」の3つに区分されます。それぞれ説明しますね。

<STARTUP DB>

STARTUP DB

(出典:STARTUP DBの公式ホームページ

資金調達支援

資金調達支援は、資金調達をしたいと考えているスタートアップ企業に、大手企業などの資金提供元を紹介する事業です。スタートアップが調達した資金規模に応じて、“手数料”を受け取るビジネスモデルになっています。

データベース課金

データベース課金は、フォースタートアップス社が運営するデータベース『STARTUP DB』のデータを法人向けに提供する事業です。法人から“定額利用料金”を受け取るほか、顧客ニーズに合わせたデータ販売によって収入を得るビジネスモデルとなります。

Public Affairs

Public Affairsは、通称「スタートアップ政策支援」であり、競争入札を通じて官公庁や地方自治体によるスタートアップ関連の事業を受託する事業です。こちらは、“受託料”を受け取るビジネスモデルになっています。

ここまでにご説明したビジネスモデルを図解したものが、下のスライドです。

<オープンイノベーションのビジネスモデル>

オープンイノベーションのビジネスモデル

(出典:フォースタートアップス 2022年3月期決算説明資料[PDF])

オープンイノベーションについては、売上高に占める割合が小さくなっています。そのため、ざっくりと「オープンイノベーション全体の売上が伸びているか」を確認すれば十分でしょう。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルは、子会社(フォースタートアップスキャピタル合同会社)が設立したファンドを通じて、タレントエージェンシーの注力支援先に対して投資する事業です。この事業には、タレントエージェンシーとのシナジーを創出し、成長産業支援事業をより強固なものにする目的があります。

<ベンチャーキャピタルのビジネスモデル>

ベンチャーキャピタルのビジネスモデル

(出典:フォースタートアップス 2022年3月期決算説明資料[PDF])

この事業の収益は、株式を保有するスタートアップ企業が上場またはM&Aされた際に、株式を売却して得られる「株式の値上がり益キャピタルゲイン)」です。したがって、投資先が上場、またはM&Aされるまでは収益が得られません。2022年3月期に売上がゼロなのは、このような理由があるのです。

はてなひっきー

現在はどのような会社に出資されているのでしょうか?

2023年3月期3Q決算時点では5社に出資しています。

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

ベンチャーキャピタルの投資事例
社名 事業内容
フェズ リテイルテックを注力事業とし小売業界のDXを推進
ユアマイスター サービス産業のIT化プラットフォーム『ユアマイスター』を提供
READYFOR 日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス『READYFOR』等を運営
ポケトーク AI通訳機『POCKETALK(ポケトーク)』を展開
カケハシ 薬局体験アシスタント『Musubi』などを展開

指さしひっきー

人材紹介で支援したスタートアップ企業に投資もされており、まさに「成長産業支援」に全力で取り組まれていることがわかりますね!

現在投資している5社がどこまで大きく成長するのか、そして新しい投資先が増えるのかに注目です!

「日本を豊かにしたい」という想いからフォースタートアップス社を創業

指さしひっきー

志水社長がフォースタートアップス社を創業された理由を教えてください。

日本を豊かにしたい」と考えたのが理由です!

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

<フォースタートアップス 創業の背景>

フォースタートアップス 創業の背景

(出典:フォースタートアップス 2022年3月期決算説明資料[PDF])

日本を豊かにしたいと考えたのは、日本が国際競争力を失っていることに気付いたためです。これは、1989年と2022年の世界時価総額ランキングを見ると明らかでしょう。1989年には上位10社に日本企業が多くランクインしていましたが、2022年はゼロとなっています。

一方でアメリカや中国は、世界時価総額ランキングの上位に入るような、GAFAM※4やBAT※5といった巨大新興企業をいくつも創出し、国力を向上させているのです。

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

※4 GAFAM(ガーファム)とは、Google・Amazon・Facebook・Apple・Microsoftの頭文字を組み合わせた用語です。アメリカを代表する巨大新興企業の総称として使われています。

※5 BAT(バット)とは、Baidu(バイドゥ)・Alibaba(アリババ)・Tencent(テンセント)の頭文字を組み合わせた用語です。中国を代表する巨大新興企業の総称として使われています。

はてなにしけい

アメリカや中国が巨大新興企業をいくつも創出し、国際競争力を高められたのは、どのような理由があるのでしょうか?

成長産業セクターに人と資金を集中させ続けてきたからです。そのため国の価値の半分、新規雇用の半分を成長産業セクターで作れるようになりました。このような国は国際的な競争力を獲得し、雇用を創出して賃金が上がる状況になっています。

日本もアメリカや中国と同じような「国際競争力を持った国」に変えていかないと、未来は暗いままです。明るい未来を創り日本を豊かにするためにも、成長産業に人と資金を供給しなければならないと考えて当社を創業しました!

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

指さしにしけい

このような理由から、「日本の国際競争力を挽回する」という大きな目標を掲げられているのですね!

志水社長がおっしゃるとおり、日本が国際競争を持つためには、成長産業に人と資金を集中的に投じる必要があります。近年は日本政府も“成長産業に対する投資の重要性”に気付いており、国家戦略の重要な柱として「スタートアップエコシステムの強化」が掲げられています。

<フォースタートアップス社のマクロ環境>

フォースタートアップス社のマクロ環境

(出典:フォースタートアップス 2022年3月期決算説明資料[PDF])

このような日本政府の取り組みも、フォースタートアップス社には追い風になるでしょう。

2023年3月期第3四半期の業績は?過年度決算の修正の注意点もわかりやすく解説

フォースタートアップス社の最新の決算(2023年3月期第3四半期)と決算資料を読む際に注目すべき指標過年度決算の訂正について解説します。

最新決算の確認(2023年3月期第3四半期)

<決算ハイライト>

決算ハイライト

(出典:フォースタートアップス 2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

上の決算ハイライトを元に、フォースタートアップス社の最新決算(2023年3月期3Q)をかんたんにまとめます。主要な指標として売上高や営業利益、受注高、社員数の4つが示されており、いずれも前年比で増加しています。

後ほど説明する“過年度決算の修正の影響”や、“外部環境の変化”といったマイナス影響を受けていますが、増収増益を維持できているのはすばらしいですね。

全体像をおおまかに把握したので、タレントエージェンシーやオープンイノベーション、ベンチャーキャピタルの各事業の状況を見ていきましょう。下の一覧表をご覧ください。

各事業の状況
事業 最新決算の概要
タレントエージェンシー ・マクロ環境の不透明さが原因で、一部のスタートアップ企業で採用ニーズが減少した
・人材紹介サービスは、採用ニーズが相対的に強い“有力スタートアップ企業”かつ“経営幹部層・エンジニアなどの需要・難易度の高いポジションの支援に注力した戦略”により堅調に推移した
・採用ニーズの高いクライアントの採用活動をより強力に支援する「採用コンサルティングサービス(旧、採用支援サービス)」の営業強化が功を奏した
オープンイノベーション 成長産業カンファレンスを開催したことによる協賛金収入を計上した(2022年3月期までは4Qに開催していたが、当期から3Qに変更)
・Public AffairsやSTARTUP DBの大企業向けデータベース課金サービスが堅調に推移した
ベンチャーキャピタル ・前年に引き続き“管理費用のみ発生”している
・ポケトークとカケハシへの出資を実行し、投資先は5社になった

以上を踏まえて、今回の最新決算で気になったポイントは次のとおりです。

最新決算で気になったポイント

  • 一部スタートアップ企業で採用ニーズが減少した理由は?
  • 成長産業カンファレンスの開催時期を4Qから3Qに変更した理由は?

この2点について、志水社長にお聞きしました。

一部スタートアップ企業で採用ニーズが減少した理由

はてなにしけい

一部スタートアップ企業で採用ニーズが減少した理由は何でしょうか?

スタートアップの「コストに対する考え方」が変化したためです。2021年から2022年にかけて、下のような変化がありました。

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

コストに対する考え方
コストに対する考え方
2021年 調達した資金を「1年」で使い切ろう
2022年 リセッション(景気後退)に備えるため、調達した資金を1年で使い切るのではなく、「2年」もたせられるよう大切に使おう
(=1年で使えるお金が半分になった

2022年に入ってからリセッションの懸念が出てきたので、VCからスタートアップに「調達した資金を2年間もたせるようにしよう」というお触れが出ました。つまり、スタートアップが1年に使えるお金が「半分」になってしまったわけです。

当然、このような方針転換があると、従来のような「大量採用」はできません。その結果、経営幹部層やエンジニアなどの“需要・採用難易度が高いポジション”の採用に絞って投資をおこなうスタートアップが増えたのです。

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

フォースタートアップス社は、もともと経営幹部層やエンジニアといったポジションの採用支援に力を入れていました。そのため、スタートアップの経営環境の変化に対応でき、厳しい環境下でも増収増益を達成できたのです。

成長産業カンファレンスの開催時期を4Qから3Qに変更した理由

はてなにしけい

成長産業カンファレンスの開催時期を4Qから3Qに変更した理由は何でしょうか?「3Qの売上が減るから移動させたのではないか」と勘ぐってしまいます…。

そのような思惑はありません。前々回の開催(2022年3月期4Q)の時点で、他のスタートアップ関連イベントの開催状況やスポンサー企業の意向を踏まえ、「次回からはもう少し早い時期に開催しよう」と考えていました。次回開催も3Qを予定しています。

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

指さしにしけい

シンプルに企画の問題なのですね!ご説明ありがとうございました。

<オープンイノベーションの売上推移>

オープンイノベーションの売上推移

(出典:フォースタートアップス 2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

はてなにしけい

今後、成長産業カンファレンスが3Qにおこなわれるということは、オープンイノベーションの売上が計上されるタイミングが変化しますよね。従来の「4Qに集中した形」から、「3Qと4Qに集中した形」に変わると考えておけば良いでしょうか?

そのように考えていただければ問題ありません。機密上、事業ごとの細かい売上は出していないのですが、3Qには成長産業カンファレンスの売上が、4QにはPublic Affairsの売上が中心に計上されると考えていただければ良いかと思います。

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

以上のように、最新決算で気になったポイントについて、志水社長からご回答をいただきました。続いて、フォースタートアップス社の決算資料を読む際に注目すべき指標をご紹介します。

決算資料を読む際に注目すべき指標

フォースタートアップス社の決算資料で注目すべき指標は、次の4つです。

決算資料を読む際に注目すべき指標

  1. 会社全体の「売上高」
  2. 会社全体の「受注高」
  3. タレントエージェンシー事業の「人材紹介取引数」
  4. タレントエージェンシー事業の「手数料(単価)」

各指標の時系列推移が決算説明資料に載っています。それぞれ見ていきましょう。

会社全体の「売上高」

<会社全体の「売上高」の推移>

会社全体の「売上高」の推移

(出典:フォースタートアップス 2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

青色の棒グラフが「タレントエージェンシー」の売上を、赤色の棒グラフが「オープンイノベーション」の売上を表しています。資料のとおり、2022年3月期3Q(前年同四半期)の売上と比べると、タレントエージェンシーとオープンイノベーションのどちらも増加しています。

オープンイノベーションの売上が2,700万円から1億4,500万円に急増しています。この理由は12月に開催した「成長産業カンファレンス」の協賛金収入があったためです。

しかし、2023年3月期2Q(前四半期)と比べた場合には、オープンイノベーションは売上が増えているものの、タレントエージェンシーの売上は減少しています。

はてなにしけい

タレントエージェンシーの売上減少の理由が気になります。

前提として、タレントエージェンシーの売上は「転職希望者が入社したときに計上する」ものである点をご理解ください。3Qの売上が減少した理由は、季節要因によるところが大きいです。

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

タレントエージェンシーの売上が持つ季節要因
四半期 季節要因
1Q(4~6月) 4月に入社日を設定する人が一定数いるため、2Qや4Qほどではないが売上は膨らみやすい
2Q(7~9月) 6月のボーナスをもらった後に入社する人が多く、売上が膨らみやすい
3Q(10~12月) 他の四半期と比べて入社する人が少なく、相対的に売上が積み上がりにくい
4Q(1~3月) 12月のボーナスをもらった後に入社する人が多く、売上が膨らみやすい

ひらめきにしけい

なるほど!3Qは“入社日を設定するうえで人気のない月”が集中しているため、そもそも売上が少なくなりやすいわけですね。

3Qだけを見ると売上が減少しているため、「業績が悪くなったのではないか?」と思ってしまいます。しかし、あくまで季節要因なので、このデータだけを見て判断してはいけません。次回に発表される4Qとセットで確認するべきです。

もし4Qの売上も減っている場合は、何かマイナス要因があるかもしれません。決算短信や決算説明資料などをよく読んで、原因を特定する必要があります。

会社全体の「受注高」

<会社全体の「受注高」の推移>

会社全体の「受注高」の推移

(出典:フォースタートアップス 2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

受注高は、タレントエージェンシーとオープンイノベーションの受注がどれだけあったかを表しています。つまり、受注高の推移を見れば、将来の売上高がどのように変化しそうかをある程度予想できるのです。

ちなみに、受注高で将来の売上高を予想する際、下記の2点に注意してください。

受注高で将来の売上高を予想する際の注意点

  • タレントエージェンシーの受注高は、翌四半期の売上高に影響する
  • オープンイノベーションの受注高は、売上高として計上されるタイミングがばらばらであり、一概に計上時期を予想できない

オープンイノベーションの売上予想はとてもむずかしいのですが、売上高に占める割合がそれほど大きくないため、タレントエージェンシーの予想をメインにすれば良いでしょう。例えば、上のグラフの場合は、2023年3月期3Qのタレントエージェンシーの受注高6.52億円が、翌四半期(4Q)の売上高になるというイメージです。

続いて、時系列の推移を確認しましょう。資料のとおり、2022年3月期3Q(前年同四半期)と比較した場合には、タレントエージェンシーとオープンイノベーションのどちらも成長していますね。しかし、売上高と同じで2023年3月期2Q(前四半期)と比較した場合には、タレントエージェンシーの受注高が減少しています。

はてなにしけい

タレントエージェンシーの受注高も減少していますね。この理由は何でしょうか?

“外部環境の変化”が大きな理由です。先ほどご説明したように、スタートアップのコストに対する考え方が変化しました。具体的には、大量採用ではなく、経営幹部層やエンジニアといった“ハイクラスポジション”の採用にトレンドが変わったのです。そのため、どうしても難易度が格段に上がり、受注高は減ってしまいます。

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

タレントエージェンシーの受注高の減少は、外部環境の変化による“スタートアップの採用ニーズの変化”が理由です。

しかし、受注高が減少したことによって、「通期の業績予想が達成できないのではないか」と心配になりますよね。実際このような懸念はあるのかを調べるため、フォースタートアップス社の3Qまでの累積業績と通期業績予想を比べてみましょう。

3Qまでの累積業績と通期業績予想
売上の金額
①3Qまでの累積 22億円
②通期業績予想 28億円
③4Qに必要な売上
(②-①)
6億円

通期業績予想を達成するためには、4Qだけで「売上高6億円」が必要となります。3Qのタレントエージェンシーの受注高は6.25億円でしたね。これが4Qの売上高に変わると考えると、「通期業績予想を達成できなくなる」事態が起きる確率はかなり低いのではないでしょうか。

タレントエージェンシーの「人材紹介取引数」と「手数料(単価)」

<人材紹介取引数と単価の推移>

人材紹介取引数と単価の推移

(出典:フォースタートアップス 2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

青色の棒グラフが「人材紹介取引数」を、赤色の折れ線グラフが「手数料(単価)」を表しています。2023年3月期2Qから人材紹介取引数が減少した一方、単価は上昇しているのがわかります。

このような変化があったのは、スタートアップが大量採用をやめ、経営幹部層やエンジニアといった“ハイクラスポジション”の採用に変化したためです。これによって、人材紹介取引数が減少しました。

また、経営幹部層やエンジニアは“給料が高い”職種であり、スタートアップ各社は手数料率を上げてでも経営幹部層やエンジニアを採用したいというニーズがありました。そのため、年収・平均手数料率が上昇し、フォースタートアップス社が受け取る単価※6も上昇しました。

※6 フォースタートアップス社では、入社が決まった転職希望者の年収に一定の料率を掛けた金額を受け取っています。

このように、スタートアップの採用方針次第で指標の数値が変わります。人材紹介取引数と手数料をセットで確認し、業界の最新トレンドを追いかけるようにしましょう。

過年度決算の訂正について

フォースタートアップス社では、2023年2月14日に「過年度決算の訂正」を発表しました。この件について、わかりやすく説明します。

過年度決算の訂正とは?

過去の決算の内容を修正することです。決算書に誤りが見つかった場合に取られる措置です。具体的には、「売上や費用の計上漏れ」や「棚卸資産の評価ミス」などを修正します。

フォースタートアップス社の過年度決算の訂正

<過年度決算の訂正の概要>

過年度決算の訂正の概要

(出典:フォースタートアップス 2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

フォースタートアップス社の場合は、「転職サイトに対するフィーの支払い漏れ」が見つかったため、過年度決算の訂正がおこなわれました。

同社は、転職サイトを使って転職希望者に採用支援を提供しています。具体的には、下記のような手順で採用をサポートしています。

採用支援の手順

  1. 転職サイト上で、スタートアップで働く適正がある人を探し出し、「スカウト」を送信する
  2. スカウトを送った人から「返信」が届いた場合、転職サイト側からその人の個人情報が開示されるため、支援サービスを提供する
    (転職サイトにとっては“個人情報の開示”が役務となるため、この時点でフォースタートアップス側から転職サイトへフィーの支払義務が発生する)
  3. スカウトを送った人がスタートアップに内定した場合、転職サイト側にフィーを支払う

これだけを見ると「フィーの支払い漏れが起きる」とは考えにくいですよね。支払い漏れが起きる場面としては、「転職希望者が複数の転職サイトに登録している場合」が挙げられます。

スカウトを送る側としても、同じ転職希望者であることが確認できれば問題ありません。しかし、転職サイトでは“スカウトに対する返信がおこなわれた場合に個人情報を開示する”仕組みなので、返信がもらえるまでは誰にアプローチしているのかわからないのです。

したがって、同社の複数の担当者が別の転職サイトから同じ人にアプローチを掛けてしまうケースがあります。この場合、契約状況によっては複数の転職サイトにフィーを支払う必要が出てきます。

しかし、同社は「内定につながった担当者が利用した転職サイトのみにフィーを支払う」という誤った運用をしていたため、フィーの支払漏れが発生してしまいました。

指さしにしけい

規約の誤認に対して、再発防止策は何か講じられましたか?

弊社内で「ガイドライン」を作成しました。ただ、弊社のみで内容を決めるのはリスクが高いため、各転職サイトとガイドラインを共有し、OKをもらって業務を進めています。

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

なお、今回起きた「フィーの支払漏れ」によって、過去の業績に影響が出ています。

<影響額について>

影響額について

(出典:フォースタートアップス 2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

フィーの支払漏れを過去の決算にさかのぼって修正した場合、支払い漏れの純額は1.18億円となります。過年度の売上原価総額比で約6%にあたり、各年度の営業利益率を約1.5%押し下げる計算です。

指さしにしけい

今回、過年度決算の訂正がありましたが、意図的に決算書の数値を良く見せようとしたわけではなく、あくまで規約を誤認していたことが原因とのことです。転職サイトとも良好な関係性を維持できていますし、ビジネスモデルや将来の見通しが崩れているわけではないと考えられます。

今後の成長戦略をわかりやすく解説

フォースタートアップス社では、今後の成長戦略をわかりやすく図解しています。

<中長期の考え方>

中長期の考え方

(出典:フォースタートアップス 2023年3月期第2四半期決算説明資料[PDF])

今後の展開としては、「ハイブリッドキャピタル」となることを目標としています。現在は「ヒューマンキャピタル」であり人材紹介をメインに事業を展開していますが、今後は人材紹介に加えて資金支援も手厚くしていく計画です。

最終的には、成長産業の支援インフラとなるべく、スタートアップ企業に対してさまざまな支援を提供する未来を描いています。

<中長期の財務目標>

中長期の財務目標

(出典:フォースタートアップス 2023年3月期第2四半期決算説明資料[PDF])

財務数値の目標として、同社は売上高を開示しています。2022年3月期時点の売上高は23.5億円で、2025年3月期に50億円となるのが目標です。

以上の目標を達成するためには、人材の確保が必要となります。そのため、同社では2023年3月期に従業員を50名増員する計画です。

<人材確保目標に対する進捗状況>

人材確保目標に対する進捗状況

(出典:フォースタートアップス 2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

2023年3月期第3四半期時点では、前期末比で37名の増員となりました。第4四半期で残り13名を採用できれば「前期末比50名増員」という目標は達成となります。上のスライドによると、3Q末時点の入社予定ベースで前期末比50名増加の見通しが立っているようです。このまま行けば、計画を達成できそうですね。

個人投資家へのメッセージ

指さしひっきー

最後に、個人投資家へのメッセージをお願いいたします!

当社が展開している「成長産業支援事業」は国策になっており、長期的に見れば産業化されると考えています。この市場はいま話題のDX※7市場よりも大きく、年平均成長率80%と成長性の高い領域です。この市場には注目したほうが良いですし、私たちの子供世代の未来はここにしか賭けられないと考えています。

成長産業支援という領域で、過去6年間で最大人数のチームに拡大し、その先の未来をつかむために努力しているフォースタートアップスは、必ず日本の未来を変えます!

フォースタートアップス株式会社 志水社長志水社長

※7 DXとは、「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略語です。AIやIoT、ビッグデータなどのデジタル技術を使って、業務フローを改善したり新しいビジネスモデルを創出したりする取り組みを指します。また、このような取り組みによって、従来のシステムからの脱却や企業風土の変革をおこなうという意味も含んでいます。

指さしひっきー

熱いメッセージをありがとうございました!

フォースタートアップス社への取材は以上となります。同社が展開する「成長産業支援事業」は、日本の明るい未来を創るために必要な産業といえます。日本の未来を支える縁の下の力持ちであるフォースタートアップス社から、目が離せませんね!

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指さしひっきー

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やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会検定会員補を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

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