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アイリッジの取締役に突撃取材!ファミマやコスモ石油のアプリ開発受注につながった強みとは?

にしけい担当:にしけい

最終更新日:2023年9月28日

株式会社アイリッジのロゴ画像

(株式会社アイリッジのロゴ画像)

やさしい株のはじめ方編集部(にしけい)が、オンラインとオフラインを融合させた「アプリ開発・運用支援」や「デジタル地域通貨」を提供するアイリッジ(3917)に突撃取材しました!

今回は、アイリッジで取締役を務められている森田様とIR担当の福岡様に、ファミリーマートやコスモ石油など大手企業のアプリ開発受託につながった強み今後の成長戦略などをお聞きしました。

この記事では、株初心者の方がアイリッジについて理解を深められるよう、わかりやすい言葉でていねいに解説します。ぜひ最後まで読んでくださいね。

事業概要や創業エピソードをわかりやすく解説

アイリッジはオンラインとオフラインを融合させた「アプリ開発・運用支援」、「デジタル地域通貨」を展開している会社です。前者はOMO事業、後者はフィンテック事業と定義しています。

<事業領域(サービスラインアップ)>

事業領域(サービスラインアップ)

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

「OMO事業」では、実店舗とECの両方を運営する企業に向けて、アプリの開発と運用支援をおこなっています。この説明を読むだけだと、“私たちの生活にはなじみが無さそう”と感じる方もいるでしょう。実は、身近なところにアイリッジが関わっています。いくつか例を紹介しますね。

1つ目は、大手コンビニチェーン「FamilyMart」の『ファミペイアプリ』です。バーコード決済機能が付いたアプリで、決済とポイント付与・利用がスキャン1回で完結します。また、ファミペイアプリでクーポンが配布されるため、利用者はお得に買い物が可能です。

<ファミペイアプリ>

ファミペイアプリ

(出典:アイリッジ 導入実績

2つ目は「コスモ石油」のアプリです。来店頻度や給油量などに応じて割引率の変わるクーポンが配布される他にも、アプリ内で車検が完了できる機能など、日常的に運転される利用者にとって便利な機能が搭載されています。

<カーライフスクエアアプリ>

カーライフスクエアアプリ

(出典:アイリッジ 導入実績

ファミペイアプリやコスモ石油アプリは、「使ったことがある」方も多くいらっしゃるでしょう。同社は、この他にも多くのアプリを開発しています。

「フィンテック事業」では、地域通貨の成功事例として有名な岐阜県の『さるぼぼコイン』を開発した実績があります。後ほど詳しく紹介しますが、デジタル地域通貨のリーディングカンパニーとして多くの通貨を手掛けています。

指さしにしけい

私たちの身近なところに、アイリッジが関わったサービスが点在しています!

特に、ファミペイアプリやコスモ石油アプリを手掛けた会社だと知ると、親近感が湧いてきますよね!

ミッション

続いて、アイリッジのミッションを紹介します。同社では、ミッションとして「Tech Tomorrow(テクノロジーを活用して、私たちが作った新しいサービスで、昨日より便利な生活を創る。)」を掲げています。

<ミッション>

ミッション

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

当社は「Tech Tomorrow」の実現のため、スマートフォンアプリを活用したさまざまな事業を展開していきます。

例えば、開発したスマホアプリに組み込むことでアプリの効果を高めるマーケティングツール「FANSHIP」の提供や、スマホアプリを活用した業務支援、最近だと、グリーントランスフォーメーション(GX)※1領域においてスマホアプリやWebに組み込めるカーボンオフセットツールの提供などの新規事業を開始しています。

株式会社アイリッジ 福岡様福岡様

※1 グリーントランスフォーメーション(GX)とは、脱炭素社会に向けた取り組みを指します。

びっくりにしけい

スマホアプリ開発に限らず、スマホアプリの活用支援を通じたさまざまなアプローチで「昨日よりも便利な生活」を創ろうとされているのですね!

アイリッジ創業までのできごと

事業の概要とミッションを理解したところで、アイリッジ創業までのできごとを紹介します。

まずは、代表の小田様のプロフィールを確認しましょう。下のスライドをご覧ください。

<小田様のプロフィール>

小田様のプロフィール

(出典:アイリッジ 個人投資家向け会社説明会資料[PDF])

小田様は、大学卒業後にNTTデータへ入社されました。NTTデータでは、情報システム関係の新規事業開発に従事していたそうです。その後、ボストンコンサルティンググループに移り、モバイルインターネット関係の経営コンサルティング業務に従事されました。

2008年に株式会社アイリッジを創業し、小田様のバックグラウンドを活かして事業をスタート。現在に至ります。

はてなにしけい

代表の小田様が御社を創業しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

iPhoneが日本国内で販売を開始したのを見て、「新しいスマホ領域で挑戦したい」と考えたのがきっかけだったと聞いております。

下のグラフをご覧ください。これは「携帯電話所有者におけるスマホ比率の推移」を表しています。創業直後の2010年はガラケーが主流であり、スマホ比率はたったの4%でした。この状況を見て“先行者優位”が獲得できると考え、独立してアプリ開発をスタートしました。

株式会社アイリッジ 福岡様福岡様

<携帯電話所有者におけるスマホ比率の推移>

携帯電話所有者におけるスマホ比率の推移

(出典:NTTドコモ モバイル社会研究所 公表データよりアイリッジ作成)

びっくりにしけい

つまり、日本でスマホが普及する前から、アプリ開発の実績を積み上げて来られたのですね!

そのとおりです。その後、日本国内でもスマホが普及していき、2023年には携帯電話所有者の96%がスマホを保有する状態になりました。

当社はスマホが普及する前から事業を展開しているので、アプリ開発・運用支援のリーディングカンパニーとしての地位を確立できたのです。

株式会社アイリッジ 福岡様福岡様

ひらめきにしけい

「先行者優位」を獲得されたわけですね!御社の強さがよくわかりました!

以上が、アイリッジの概要となります。もう少し理解を深めるために、各事業について深掘りして説明しますね。

OMO事業とは?

OMO事業について説明する前に、OMOとは何かを説明します。Online Merges with Offlineの略語です。アプリ等(オンライン)から店舗等(オフライン)への送客を促したり、オンラインとオフラインの取り組みを融合して、最適な顧客体験を提供したりするマーケティング施策を指します。

アイリッジのOMO事業では、オンラインとオフラインをつなぐためのアプリを開発しています。開発方法には、顧客の要望に合わせてオーダーメイドで開発する「スクラッチ」と、既存のテンプレートを使って開発する「パッケージ」の2種類があり、どちらも提供しています。

同社では、日本でiPhoneが発売された2008年からアプリを開発しており、この領域において「リーディングカンパニー」としての地位を確立しているのが特徴です。

<OMO事業について>

OMO事業について

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

開発受託に留まらず、『APPBOX(アップボックス)』や『FANSHIP(ファンシップ)』と呼ばれるツールも提供しています。このツールは、企業と顧客のコミュニケーションや、顧客エンゲージメントを高めるのに役立つものです。ツールについては、後ほど詳しく説明しますね。

開発したアプリは300以上

アイリッジは、これまで300以上のスマートフォンアプリを開発・運用支援してきました。下のスライドからもわかるように、ファミペイやコスモ石油、東急など、小売・金融・鉄道業界を中心に、各業界を代表する企業のアプリを開発した実績があります。

<アイリッジが開発したアプリ>

アイリッジが開発したアプリ

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

はてなにしけい

御社のアプリ開発実績を見ると、大手企業が名を連ねていますね!大手から開発依頼をたくさん獲得できた理由は何でしょうか?

スマホ黎明期からアプリ開発の実績と信頼を積み上げてきたことが大きいと考えています。

株式会社アイリッジ 福岡様福岡様

びっくりにしけい

これはかなり高い参入障壁ですね!

アプリのユーザー数は8,000万人以上

300以上の大手企業アプリを開発支援していることもあり、アイリッジが提供するプロダクトが導入されたアプリのユーザー数(MAU※2)は8,000万人を超えています。

※2 MAUとは、Monthly Active Usersの略で、日本語では「月間アクティブユーザー数」と呼びます。アイリッジでは、アイリッジのプロダクト導入アプリを月に1回以上起動しているユーザー数をMAUと定義しています。

<当社プロダクト導入アプリのMAUの推移>

当社プロダクト導入アプリのMAUの推移

(出典:アイリッジ 2024年3月期 第1四半期決算説明資料[PDF])

アプリの開発が増えるほど、MAUも増えていく仕組みです。後ほど詳しく説明しますが、同社ではMAUを重要KPI※3に設定しているので、決算を追いかける際に注目しましょう。

※3 KPIとは、Key Performance Indicatorの略語です。日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれ、企業や組織の目標を達成するための評価指標となります。

運用支援の事例

OMO事業について理解を深めるため、運用支援の事例をご紹介しますね。運用支援では、アプリ分析をベースにして、「プッシュ通知」や「クーポン配布」を駆使しながら会員登録率や購買率などを高める提案をおこなっています。

例として、下のスライドに載っている『mozoアプリ』の施策を紹介します。このアプリは、愛知県名古屋市にあるショッピングモール『mozoワンダーシティ』のアプリです。ポイント蓄積機能や決済機能が付いています。

mozo側は、アプリを通して利用者(会員)をランク別に管理できます。プッシュ通知やクーポンなどをランク別で配信することで、購買率は2.9倍に、ランクアップ率は3.5倍に大幅向上させた実績があります。

<事例:オンラインマーケティング(アプリ分析・運用支援)>

事例:オンラインマーケティング(アプリ分析・運用支援)

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

OMO事業の特徴

OMO事業の特徴は、「アプリ開発を一気通貫でおこなっている」点です。下のスライドをご覧ください。

実は、一般的なアプリ開発では、プロセスごとに役割が分断してしまいます。例を挙げると、戦略・企画は戦略・ITコンサル・大手広告代理店、設計・開発は大手SIer・クラウドベンダーとなります。

<独自のビジネスモデル>

独自のビジネスモデル

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

アイリッジにアプリ開発を依頼すれば、プロセスごとに複数の企業とやり取りする必要はありません。顧客にとって“手間が省ける”点が大きなメリットとなります。

OMO事業の競合企業

OMO事業には、有力な競合企業がほとんど存在していません。スマホ黎明期からアプリ開発実績を積み上げてきたため、リーディングカンパニーである同社に勝てる企業がいないためです。

はてなにしけい

先ほど、一般的なアプリ開発ではプロセスごとに役割が分断するとご説明いただきましたね。

ITコンサルや大手広告代理店、大手SIerなどが登場していましたが、これらの企業は競合にならないのですか?

<独自のビジネスモデル>

独自のビジネスモデル

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

もちろん案件によっては競合関係になることもありますが、実は彼らと「協働」することが多いのです。

当社は2008年からアプリ開発をしているため、業界内での知名度と信頼度が高くなっています。そのため、ITコンサルや大手SIerなどから「一緒に仕事をしないか」と声をかけていただけている状況なのです。

株式会社アイリッジ 福岡様福岡様

びっくりにしけい

一見すると競合に見える大手企業と、実は協働していたのですね!とても驚きました!

スマホ黎明期からアプリ開発をおこない、実績と信頼を積み上げてきたことが効いているのだなと思いました!

APPBOXとは

OMO事業の特徴や強みについて理解したところで、現在アイリッジが力を注いでいる『APPBOX(アップボックス)』を紹介しますね。

APPBOXは、ひとことで表すとアプリビジネスをサポートするツールです。このツールには、30種類以上の「BOX機能」と呼ばれる“アプリで使う各種機能群(SDK※4)”が含まれています。

※4 SDKとは、Software Development Kitの略です。日本語では「ソフトウェア開発キット」と呼ばれ、Webサイトやアプリの開発に必要なツールを指します。

<「APPBOX」について>

「APPBOX」について

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

APPBOXの導入企業は、APPBOXに含まれる機能を組み合わせてアプリを開発可能です。さらに、既存アプリの機能拡張にも使えます。この場合、アイリッジに開発を依頼したアプリだけでなく、他社が開発したアプリにも対応しているので、多くの企業が導入可能です。

このツールの対象顧客は、「中堅・中小企業」と「小売・金融・鉄道以外の大手企業」です。同社の顧客は小売・金融・鉄道の大手企業が多く、新しい領域の顧客獲得を狙う商材となります。

APPBOXは2023年4月にリリースされ、リリース後3年間で200社の導入を目標に営業活動を展開しています。

はてなにしけい

APPBOXによって、導入企業は自らアプリ開発ができるわけですよね。これによって、御社のアプリ開発が減ってしまう懸念はありませんか?

開発の受託件数が大きく減るとは考えていません。むしろ、「現状獲得できていないジャンルの企業様を獲得できる」ので、顧客が増えて、トータルで見ると業績成長が期待できると考えています。

また、APPBOXはアプリベンダーにも提供予定です。将来的には、APPBOXを使って開発されたアプリが増えていくでしょう。

株式会社アイリッジ 福岡様福岡様

ひらめきにしけい

なるほど!APPBOXは導入企業の効率化を図るだけでなく、「アイリッジの顧客層を厚くする」目的も持ち合わせているのですね!

APPBOXとFANSHIPの違い

OMO事業とは?」の説明の中で、アイリッジはAPPBOXやFANSHIPといったツールを提供していると説明しました。このツールの違いについて説明しますね。

APPBOXとFANSHIPの違いをひとことで表すと、「開発機能の有無」です。アイリッジのツールを比較した下のスライドからも明らかなように、APPBOXには開発・データ分析・施策活用といった3つの機能が付いている一方、FANSHIPはデータ分析・施策活用の2つのみとなっています。

<APPBOXとFANSHIPの違い>

APPBOXとFANSHIPの違い

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

なお、資料の左端には『popinfo(ポップインフォ)』と呼ばれるツールが載っています。こちらは同社が創業時から提供しているツールで、はじめはガラケーの待ち受け画面に情報のプッシュ配信ができるものでした。docomoのiモードなどで広がり、スマホ対応もしています。

先ほども説明したように、同社では現在APPBOXの販売に力を注いでいます。同社の成長を追いかける際には、APPBOXに注目して見ていきましょう。

OMO事業のビジネスモデル

最後に、OMO事業のビジネスモデルを紹介します。下の画像は、有価証券報告書に載っている事業系統図です。OMO事業では、まず図の右側にいる顧客企業からアプリ開発を受託します。外注を使いながら開発を進め、終わり次第顧客に納品する流れとなります。

<事業系統図>

事業系統図

(出典:アイリッジ 2023年3月期 有価証券報告書[PDF])

ここまでの流れを基に、売上高を分解すると下の式になります。

売上高の分解式

売上高=受託開発の収益+ライセンス料+保守・運用の収益

「受託開発の収益」は、アプリの開発に関する報酬です。同社が顧客から最初に受け取る収益となります。

「ライセンス料」は、同社がアプリの利用者数(MAU)に応じて受け取っているものです。

「保守・運用の収益」は、アプリ開発後のメンテナンスやアップデートに関係する収益です。アプリは開発して終わりではなく、継続的に保守・運用していかなければなりません。

このように、OMO事業の売上高には継続して受け取れる「ライセンス料」や「保守・運用の収益」が含まれるため、“ストック型のビジネス”と言えるでしょう。

指さしにしけい

売上高の分解式のうち、ライセンス料はMAUの増加に合わせて増えていきます。MAUを伸ばせるかが、同社の成長にとって重要です!

フィンテック事業

デジタル地域通貨プラットフォーム『MoneyEasy(マネーイージー)』を運営しています。

<事例:デジタル地域通貨事業(MoneyEasy)>

デジタル地域通貨事業(MoneyEasy)

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

デジタル地域通貨プラットフォームでは、地域の住民や訪日観光客がコインをスマホアプリにチャージし、地域内の加盟店での買い物に使える仕組みを提供しています。

導入事例で有名なものには、岐阜県高山市・飛騨市・白川村で使用可能な『さるぼぼコイン』があります。2017年12月に本格導入しており、デジタル地域通貨のリーディングカンパニーと言えるでしょう。

<フィンテック事業・新規事業について>

フィンテック事業・新規事業について

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

はてなにしけい

デジタル地域通貨プラットフォームは、地域ごとに開発しているのですか?それとも、パッケージとして用意して導入しているのですか?

後者に当たります。パッケージとして用意しているので、そちらを導入していただくケースが多いです。

株式会社アイリッジ 福岡様福岡様

フィンテック事業のビジネスモデル

フィンテック事業のビジネスモデルを紹介します。OMO事業と同じように、有価証券報告書に載っている事業系統図を確認してみましょう。

<事業系統図>

事業系統図

(出典:アイリッジ 2023年3月期 有価証券報告書[PDF])

フィンテック事業もOMO事業と同じで、まずは図の右側にいる顧客企業からデジタル地域通貨の開発を受託します。外注を使いながら開発を進め、終わり次第自治体などに納品する流れとなります。

フィンテック事業の売上高も、OMO事業と同じように分解してみましょう。下の分解式をご覧ください。

売上高の分解式

売上高=初期ライセンス収益+手数料+保守・運用の収益

「初期ライセンス収益」は、デジタル地域通貨などを開発・提供した自治体から受け取る収益です。OMO事業の受託開発の収益と似ています。

「手数料」は、同社がデジタル地域通貨の運用上発生する各種手続きに応じて受け取っているものです。

「保守・運用の収益」は、デジタル地域通貨開発後のメンテナンスやアップデートに関する収益となります。

このように、フィンテック事業の売上高もストック型の構造となっているのがわかりますね。

売上高の構成

OMO事業とフィンテック事業について理解が深まったところで、売上高の構成を確認しましょう。

下の円グラフを見ると、売上高の87%を「OMO事業」が構成していることがわかります。残り13%が「フィンテック事業」という構成です。

<売上高の構成>

出典:売上高の構成

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター

指さしにしけい

現状、売上高への寄与度が高いのはOMO事業ですが、フィンテック事業も急成長しているので要注目です!

市場の状況

アイリッジが事業を展開している市場について、理解を深めていきましょう。下のスライドは、アイリッジが属している市場と、今後進出を予定している市場が描かれています。

<対象・関連市場の規模と潜在性>

対象・関連市場の規模と潜在性

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

現在、アイリッジが属している市場は「アプリ開発+OMOマーケティング」です。市場規模は約1,551億円あり、アイリッジの売上高54.1億円と比べると、拡大余地はかなり大きいと言えます。

また、今後は市場規模が約9,816億円の「オンラインマーケティング+リテールテック」へ進出する予定です。リテールテックとは、小売や外食企業向けのデジタルテクノロジーを表します。これまでは、ファミペイやコスモ石油アプリなど、私たちが日常生活で使うアプリが中心でした。今後は企業の従業員向けのアプリ開発も視野に入れています。

はてなにしけい

「リテールテック」では、どのような製品・サービスを提供できそうですか?

小売や外食向けの業務支援アプリが作れると考えています。また、アプリに留まらず、マーケティングの戦略立案にも手を広げようと検討中です。

株式会社アイリッジ 森田様森田様

ひらめきにしけい

ご説明ありがとうございます!御社が掲げられている「Tech Tomorrow」を実現するために、これまでに蓄積したノウハウを生かして業務効率化にも取り組まれるのですね!

5つの強み

アイリッジの強みは5つあります。

アイリッジの強み

  1. アプリ開発とマーケティングツールの両方を提供
  2. 厚い顧客基盤
  3. ストック型の収益構造
  4. 経験値・スキルの高いエンジニア・PM・デザイナーの人材プール
  5. アプリ開発を一気通貫で提供

指さしにしけい

それぞれ説明します!

アプリ開発とマーケティングツールの両方を提供

アイリッジは、アプリ開発とマーケティングツールの両方を提供しています。これによって相乗効果が出せる点が優位性です。

また、2023年4月にリリースした『APPBOX』は、顧客企業のニーズに合わせてさまざまな機能を組み合わせて使えます。パッケージのアプリとして導入してもらい、後からカスタマイズ開発に以降することも可能です。

<アプリマーケティング市場の競合と当社の優位性>

アプリマーケティング市場の競合と当社の優位性

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

もちろん、マーケティングツールとして機能の単体利用もできるので、企業に合わせて柔軟な使い方ができます。

厚い顧客基盤

厚い顧客基盤を持っている点も、アイリッジの強みです。日本国内でスマホが普及する前の2008年からスマホアプリの開発をおこなっているため、数多くの実績を持っています。

<厚い顧客基盤>

厚い顧客基盤

(出典:アイリッジ アプリ導入実績 ※2023年3月時点)

当然ながら取引企業も多く、同社と同じ領域に企業が新規参入してきたとしても、同社ほどの顧客基盤を作るのには時間がかかります。また、信頼関係の構築も一朝一夕ではできません。同社の参入障壁は高いと考えられます。

指さしにしけい

スマホ黎明期から積み上げてきた開発実績と信頼が、高い参入障壁となっています!

ストック型の収益構造

アイリッジのビジネスは「ストック型」の収益構造となっています。アプリを開発したら終わりではなく、その後の保守・運用支援、追加開発までサポートしているためです。

このため、下のスライドのように、顧客1社あたりの収益が積み上がっていきます。

<ストック型の収益構造>

ストック型の収益構造

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

経験値・スキルの高いエンジニア・PM・デザイナーの人材プール

アイリッジには、経験値やスキルの高いエンジニア、PM(プロジェクトマネージャー)、デザイナーを130名抱えています(2023年3月期 第4四半期時点)。

<期末従業員数の推移>

期末従業員数の推移

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

アプリ開発においては、こういった人材の確保が重要です。優秀な人材の獲得競争が激しくなっており、他社が同じことをはじめようとしても、同社のように100名以上の優秀な人材を集めるのはとてもむずかしいでしょう。

足元でも、オンラインマーケティング関連を中心に、中長期的な事業成長を見据えて、積極的に採用を進めています。

アプリ開発を一気通貫で提供

アプリ開発を「一気通貫」で提供している点も強みです。一般的には、アプリ開発からグロース(成長支援)までの各工程が、複数の企業に分断してしまいます。スタートとなる戦略・企画は戦略・ITコンサル、設計・開発は大手SIer、グロースは大手広告代理店といったイメージです。

<アプリ開発を一気通貫で提供>

アプリ開発を一気通貫で提供

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

同社はアプリの戦略・企画から設計・開発、グロースまでをすべて引き受けられます。スマホ黎明期からアプリ開発実績を積み上げてきたからこそ、各プロセスの進め方を熟知しているのです。同社だからこそ提供できる価値と言えますね。

決算の注目ポイントをわかりやすく解説

アイリッジの“決算の注目ポイント”をわかりやすく解説します。売上高売上総利益営業利益といった基礎的な数値だけでなく、決算説明資料で開示されている重要KPIに注目するのがおすすめです。今回は下の3つのポイントに絞って、おすすめのチェック方法を紹介しますね。

決算概要(売上高・売上総利益・営業利益)

決算が発表された際、まず確認しておきたいのは「決算概要」です。同社の決算説明資料には、下のスライドのように売上高と売上総利益、営業利益が一覧で紹介されています。

<決算概要>

決算概要

(出典:アイリッジ 2024年3月期 第1四半期決算説明資料[PDF])

このスライドでは、次のポイントに注目するのがおすすめです。

決算概要の注目ポイント

  • 売上高や売上総利益、営業利益の伸び具合
  • 業績の背景

2024年3月期 第1四半期においては、売上高11.17億円(前年同期比+8.8%)ですが、売上総利益は2.45億円(同▲27.5%)、営業利益は▲2.08億円(前年同期は▲4,500万円)となっています。

同社によると、売上総利益が前年同期比マイナスとなったのは、一部の案件で開発が遅れたためです。これは一過性のものであり、2024年3月期 第3四半期以降で挽回を見込んでいます。

営業赤字が続いている理由は、2023年4月にリリースした『APPBOX』の先行投資をしているからです。

指さしにしけい

将来に向けた投資をおこなった結果、営業利益がマイナスになっています。悪い赤字ではないので、悲観する必要はないでしょう。足元で投資した分、しっかりと事業を伸ばせるかに注目ですね!

重要KPI①MAUの推移

次に、重要KPIを見ていきましょう。2つの指標が重要KPIとして公開されており、そのうちの1つが「当社プロダクト導入アプリのMAUの推移」です。MAUとは「Monthly Active Users」の略で、アイリッジのプロダクト導入アプリを月1回以上起動しているユーザー数を表します。

<当社プロダクト導入アプリのMAUの推移>

当社プロダクト導入アプリのMAUの推移

(出典:アイリッジ 2024年3月期 第1四半期決算説明資料[PDF])

同社がMAUを重要KPIに設定している理由は、MAUが増えれば増えるほど売上高が増えていくからです。「OMO事業のビジネスモデル」で説明したように、この事業の売上高は下の計算式で表せます。

売上高の分解式

売上高=受託開発の収益+ライセンス料+保守・運用の収益

このうち「ライセンス料」は、MAUの増加に合わせて増える仕組みです。以上の理由から、同社はMAUを重要KPIとしています。

2023年4-6月にMAUが減少した理由

MAUの推移を見ると、2023年4-6月(2024年3月期 第1四半期)にMAUが減少しています。

<当社プロダクト導入アプリのMAUの推移>

当社プロダクト導入アプリのMAUの推移

(出典:アイリッジ 2024年3月期 第1四半期決算説明資料[PDF])

はてなにしけい

MAUが減少したのはなぜですか?

これは、一部アプリ解約によるものです。解約した顧客が抱えていたユーザー数を除いて計算した前年同期比の伸び率は3.1%と増加しました。

株式会社アイリッジ 森田様森田様

重要KPI②ストック型収益の推移

重要KPIの2つ目は「ストック型収益の推移」です。ビジネスモデルの部分で説明したように、アプリは開発して終わりではなく、継続して収益を受け取るストック型のビジネスモデルとなります。

<ストック型収益の推移>

ストック型収益の推移

(出典:アイリッジ 2024年3月期 第1四半期決算説明資料[PDF])

つまり、同社が成長していくためにはストック型収益の積み上がりが大事です。投資家が定点観測しやすいように、決算説明資料の中で開示されています。

今後の成長戦略

最後に、アイリッジの今後の成長戦略をご紹介します。下のスライドは、アイリッジの「中期的な財務目標」をまとめたものです。

<中期的な財務目標>

中期的な財務目標

(出典:アイリッジ 2024年3月期 第1四半期決算説明資料[PDF])

財務目標のポイントは下の2つとなります。

財務目標のポイント

  1. 2026年3月期の連結売上高133億円
  2. 2021年3月期以降の中期的な売上高成長率はCAGR※525.0%以上

※5 CAGRとは、Compound Annual Growth Rateで、日本語では「年平均成長率」となります。詳しくは「CAGR(年平均成長率)を使えるようにする」をご覧ください。

目的を達成するため、当面は採用費用や新規事業への先行投資費用の増加が見込まれます。これは販管費の増加要因となりますが、適切にコントロールをおこない、連結営業利益は毎期着実に増益させる計画です。

はてなにしけい

売上高成長率25.0%として計算すると、2026年3月期の売上高133億円の達成はむずかしいように感じます。どのようにして達成しようと考えていますか?

次に紹介する2つの取り組みにより、売上高目標の達成に向けて取り組みます。今後成長スピードを加速させる計画です。

株式会社アイリッジ 森田様森田様

今後の成長戦略のポイント

  1. 新プロダクト「APPBOX」の市場浸透促進や、フィンテック事業の収益基盤確立のための投資を継続する。
  2. OMO事業・フィンテック事業に続く第三の収益の柱となる新規事業の創出や、M&Aによる売上高拡大も推進する。

<中期的な財務目標に対する進捗>

中期的な財務目標に対する進捗

(出典:アイリッジ 2024年3月期 第1四半期決算説明資料[PDF])

この中でも重要度の高い「①APPBOXの市場浸透促進」と、「②新規事業の創出やM&Aによる売上拡大」について説明しますね。

①APPBOXの市場浸透促進

今後の成長戦略で特に大切なのが「APPBOXの市場浸透促進」です。「APPBOXとは」で説明したように、このツールには会員証やニュース、プッシュ通知といったアプリで使う各種機能群(SDK)が含まれています。

<「APPBOX」について>

「APPBOX」について

(出典:アイリッジ 事業計画及び成長可能性に関する資料[PDF])

APPBOXを導入したアプリ開発会社は、開発工数を軽減でき、利益率の向上が見込めます。これによって、従来よりも安価にアプリ開発が可能です。さらに 、他社開発アプリの機能拡張に使える点も特徴となります。

したがって、これまでは開発の費用が高くて手が出なかった「中堅・中小企業」や、他社がアプリ開発をしているため顧客として囲い込めていなかった「小売・金融・鉄道以外の大手企業」に対して、アイリッジが関われるのです。

顧客獲得について補足で説明しますね。先ほど説明したように、APPBOXは“他社開発アプリの機能拡張”にも使っていただけます。つまり、これまで接点を持っていなかった業種の大手企業に導入できるのです。

アプリは一度開発したら終わりではありません。将来のどこかで追加の機能開発に加えて、フルリニューアルすることもあります。その際、「機能拡張でAPPBOXを導入しているから」という理由で、当社をご指名いただける可能性も狙っています。

株式会社アイリッジ 森田様森田様

ひらめきにしけい

APPBOXの市場浸透促進は、将来の顧客獲得に向けた取り組みでもあるのですね!

APPBOXの市場浸透促進は、将来的な顧客獲得へとつながります。導入件数がどのように増えていくのか、要注目ですね!決算資料においても、どのように開示されるのか楽しみです。

②新規事業の創出やM&Aによる売上拡大

アイリッジでは、新規事業の創出やM&Aによる売上拡大にも取り組む計画です。まずは、新規事業の創出について見ていきましょう。

新規事業の創出

同社は現在、新規事業として主に下の2つの事業とその他の新サービスを運営しています。

アイリッジの新規事業

  1. デジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」
  2. クラウド型工数管理サービス「Co-Assign(コーアサイン)」

今後は、事業規模の拡大収益基盤の強化を目的に、MoneyEasyやCo-Assign、新サービスの展開に積極的に取り組む方針です。しばらくは人材採用やシステム開発のコストが発生するため、新規事業の赤字が続くと予想されます。足元では売上高を積み上げられているかに注目して、応援したいですね!

M&Aによる売上拡大

新規事業だけでなく、M&Aによる売上拡大にも取り組んでいく計画です。M&Aとひとくちに言っても、目的によって2つに分けられます。

M&Aの2つの目的

  1. 既存領域を強化する
  2. まったく新しい領域に進出する

はてなにしけい

M&Aには上で挙げた2種類がありますが、御社ではどちらのM&Aに力を入れるご予定ですか?

当社では両方のM&Aに力を入れます。

株式会社アイリッジ 森田様森田様

M&Aが決まった際には、同社のIRページでリリースが出されます。どのような企業をM&Aするのか、楽しみに待ちましょう!

OMO事業の中長期的成長方向性

最後に、アイリッジの主力事業である「OMO事業」の中長期的な成長方向性について説明します。下のスライドをご覧ください。

<OMO事業における中期的成長方向性>

OMO事業における中期的成長方向性

(出典:アイリッジ 2024年3月期 第1四半期決算説明資料[PDF])

アイリッジは現在、上のグラフの左下にある「アプリを中心としたOMOソリューションカンパニー」領域にいます。今後は「業務向けアプリ・ソリューション」などを提供し、小売・金融・鉄道以外の顧客を獲得しながら成長していく計画です。

さらに、APPBOXを使うことで顧客接点データを蓄積し、マーケティングを上流から提供する方針です。これにより、業界の拡大や業界ごとのノウハウ蓄積を進めていきます。

最終的には、「リアルチャネル保有企業向けのDXソリューションカンパニー」への進化を目指しています。またアプリ開発だけでなく、コンサルティングや広告代理店のような業務もおこなう予定です。

やったーにしけい

アイリッジが今後どのように進化していくか、目が離せません!

個人投資家へのメッセージ

指さしにしけい

ここまで事業内容や今後の成長戦略など、詳しくお話をうかがってきました。最後に、個人投資家へのメッセージをいただけませんか?

2023年4月にAPPBOXをリリースし、現在は販促に力を注いでいます。魅力的なプロダクトなので、APPBOXの将来にぜひ期待してください。

また、新規事業においては、デジタル地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」だけでなくクラウド型工数管理サービス「Co-Assign」もあります。

さらに、生成AI領域やDX領域でも新規事業をスタートさせています。ぜひ、そちらにも興味を持って応援していただけるとうれしいです。

株式会社アイリッジ 森田様森田様

指さしにしけい

熱いメッセージをありがとうございました!

アイリッジへの取材は以上となります。“アプリ開発会社”と聞くと、どうしても私たちの日常生活からは距離があるように感じてしまいますよね。『ファミペイ』や『コスモ石油アプリ』、『東急線アプリ』などを開発しており、実は私たちの手元にあるスマートフォンを通じて密接な関わりがある企業なのです。

この他にも、デジタル地域通貨を全国各地で開発したり、新規事業でさまざまなサービスを開発したりしています。今後も私たちの日常生活での接点が増えていきそうですね。

今後の成長戦略では、2023年4月にリリースした『APPBOX』の販促に力を注ぐ方針です。中堅・中小企業だけでなく、アイリッジがこれまで顧客として囲い込んでいなかった領域の大手企業も、顧客にできるプロダクトとなります。同社が大きく飛躍する起爆剤となりそうなので、APPBOXの展開に要注目ですね!

アイリッジでは、noteを活用してIR情報を発信しています。決算の注目ポイントやリリースの総括、APPBOXの魅力解説にいたるまで、さまざまな記事が掲載中です。この記事を読んでさらに理解を深めたいと考えている方は、ぜひアイリッジのnoteをフォローして、定期的に情報を追いかけてみてください!

<アイリッジの公式note>

アイリッジの公式note

(出典:アイリッジの公式note

指さしひっきー

当サイトでは、上場企業に取材させていただき、事業内容や成長戦略などを株初心者向けにわかりやすく解説した“企業紹介記事”を公開しています。こちらで記事の一覧を公開していますので、ぜひご覧ください。株初心者の方が企業を知るきっかけになれますと幸いです。

また、当サイトの取材を希望される上場企業の担当者様は、お問い合わせフォームからご連絡をお願いいたします。ご連絡をいただいた担当者様に、企業紹介記事の企画概要資料をご送付するほか、取材のご案内をいたします。

ディスクレーマー

当記事では、筆者独自の見解を述べることがありますが、証券およびその他の金融商品の売買や引受けを勧誘する目的ではなく証券およびその他の金融商品に関する助言や推奨をするものではありません。また、個別企業の業績予想や株価予想、投資推奨を提供する予定はありません。投資判断等は、自己責任でお願いいたします。

にしけい

この記事の執筆者

にしけい

社内の余裕資金を運用するファンドマネージャーです!当サイトで上場企業のIR取材記事やコラムを執筆しています。企業分析と経済分析が趣味で、BSテレビ東京『マネーのまなび』や日経ヴェリタス、日経マネー等への掲載歴があります。日本証券アナリスト協会検定会員補(CCMA)、簿記2級、FP2級の資格を保有しています。

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