1. ホーム
  2. 株式投資関連のコラム
  3. 株式用語
  4. デリバティブとは?わかりやすく解説します

デリバティブとは?わかりやすく解説します

やさしい株のはじめ方編集部担当:やさしい株のはじめ方編集部

最終更新日:2023年11月30日

デリバティブとは、日本語では「金融派生商品」と呼ばれるものです。「派生」と付いているように、株式や債券、為替などから派生した金融商品となります。具体的には、先物取引やオプション取引、スワップ取引と呼ばれるものです。

このコラムでは、デリバティブの意味やメリット・デメリットなどを、株初心者向けにわかりやすく解説しています。

デリバティブとは?

デリバティブとは、株式や債券、為替などの原資産(げんしさん)から派生した金融商品を指します。日本語では、「金融派生商品」と呼ばれるものです。具体例をあげると、先物取引オプション取引スワップ取引が該当します。一見むずかしそうな印象を受けますが、株価が下がった時に、損を小さくしてくれる保険(売り建て時)だと考えておけばOKです。

デリバティブの説明

デリバティブの起源は、江戸時代の日本にさかのぼります。大阪の堂島と呼ばれるところでは、米商人が集まって、米の売買価格を収穫前に決める取引がおこなわれていました。「米の収穫が終わったら、〇〇円で買う」という取引です。

なぜ、米の売買価格を事前に決めていたのでしょうか?その理由は、米の価格は天候や天災などの要因で、常に変化するからです。当然、思わぬ事態が起きると、相場が乱高下して損をしてしまうかもしれません。将来に起きるかもしれない損に対して保険をかける目的で、米の売買価格を事前に決める取引が考えられました。

実は、江戸時代の米取引で見られた「米の売買価格を収穫前に決める取引」は、デリバティブの一種である「先物取引」に当てはまります。デリバティブという名前からは、実体が掴みづらく、私たちの生活からは程遠いものに感じてしまいますが、江戸時代の日本から存在する取引だと知ると、少し身近に感じますよね。

それでは、私たち個人投資家は、デリバティブをどのように使えばよいのでしょうか?その答えは、「株価の値下がりに対する保険として使う」です。もう少し具体的に説明すると、株価の値下がりに備えて、日経平均株価に連動する金融商品「日経225ミニ」を使って保険をかけます。

詳しい事例は、デリバティブの使い方で解説するので、その前にデリバティブの全体像を把握しましょう。

デリバティブの種類

「デリバティブ」とひとことで紹介していますが、実は以下のような商品があります。

中分類 細分類
先物取引 株価指数先物
FX取引
商品先物
オプション取引 株価オプション
通貨オプション
スワップ取引 金利スワップ
通貨スワップ

大きく分けると、先物取引・オプション取引・スワップ取引の3種類があります。すべてを覚える必要はなく、「3種類あるんだ」程度の理解で十分です。この中で、私たち個人投資家に関係してくるのが、先物取引です。そのため、今回は先物取引について理解を深められるよう、詳しく説明していきます。

※オプション取引とスワップ取引については、別の機会に解説します。

先物取引とは、将来の売買を約束する取引です。もう少し具体的に説明すると、将来のある時点で取引する「価格」や「数量」だけを約束しておき、約束の日が来た時点で、決めた価格や数量で取引します。例えば、江戸時代に米商人の間でおこなわれていた、米の売買価格を収穫前に決める取引が、先物取引にあたります。

わざわざ将来の取引を約束するのには、理由があります。それは、将来の価格変動リスクを回避できるからです。将来の価格変動は、誰にも予測できません。取引価格が思ったよりも低くなったり、高くなったりするケースが大いにあるのです。

米の取引であれば、不作によって米の価格が上昇するケースがあります。米を使って商売する餅屋を考えると、収穫前に米の購入価格を確定できた方が、急な価格上昇などに悩まされないので、商売しやすくなります。

また、先物取引では「売り」からはじめる取引もできます。先ほどの米の取引であれば、農家の立場です。農家は秋になれば米を収穫できるとわかっているので、事前に売る約束を結んでおけば、事前に利益を確定できます。

このように、あらかじめ将来の売買を約束し、将来の価格変動リスクを回避し、損益を確定させておく目的で、先物取引が誕生しました。以上の話からも、先物取引が「リスクヘッジの手段」として役に立つとわかりますね。

デリバティブのメリット

デリバティブの特徴として、次の3つが挙げられます。

  1. リスクヘッジ手段として使える
  2. 夜間でも取引できる
  3. 少額から取引できる

それぞれ説明します。

リスクヘッジ手段として使える

デリバティブの中でも、特に先物取引は「リスクヘッジ」の手段として使えます。一般的によく使われるのは、日経平均株価に連動した「日経225ミニ」と呼ばれるものです。

例えば、株式を保有しているとき、相場が下落して損を抱えるリスクがあります。このときに、日経225ミニを売る(売り建てと言います)取引をすれば、相場が下落したときに利益が手に入ります。

このような取引をしておくと、株式で損失が出てしまったとしても、“日経225ミニの売り建て”で得た利益と相殺できるので、損失を減らせます。

夜間でも取引できる

デリバティブは、株式の取引時間以外でも取引できます。株式であれば、9:00~11:30と12:30~15:00が取引時間です。しかし、デリバティブには、次のように取引時間が設定されています。

  • 日中立会:8:45~15:15
  • 夜間立会:16:30~翌日5:30

休日は取引できませんが、平日の夕方~早朝にかけて取引できるのが大きな魅力です。そのため、「海外の為替や株式の動きを見ながら取引できる」メリットがあります。

アメリカやヨーロッパの市場は、日本の夜中に動いています。そのため、海外で事件や災害などが発生した場合、翌日になって日本の株式市場などに影響が及びます。先物取引を使えば、海外市場の動きを見て、日本の株式市場が急落しそうなときに、日経225ミニなどを売り建てて、リスクヘッジが可能です。

少額から取引できる

デリバティブの取引は、数万円~数十万円ほどの「証拠金」と呼ばれるお金を担保として差し入れれば、その数十倍の取引ができます。たとえば、株式投資のリスクヘッジでよく使われる「日経225ミニ」であれば、2020年12月24日現在、14万7,000円の証拠金266万円分の取引ができる仕組みです。

デリバティブの説明

(出典:SBI証券

証拠金を差し入れる理由は、投資家がすばやく損失を支払えるようにするためです。例えば先物を売り買いするときは、最初に取引代金を支払う必要はありません。しかし、損失が出た場合には、損失額を後から支払わなければいけません。

損失額の支払いが滞ってしまうと、取引相手が利益を受け取れなかったり、証券会社が立て替えたりする事態となります。スムーズな取引ができなくなってしまうので、あらかじめ証拠金として一定額を差し入れる仕組みとなっているのです。

このように、先物取引は証拠金さえあれば取引をはじめられるのが魅力ですが、その反面レバレッジがかかっている点に注意しましょう。これは、「証拠金」と「証拠金を元に取引できる金額(取引価額)」を比べると、よくわかります。

実は、日経225ミニは、日経平均株価を100倍した金額が動かせる金融商品です。つまり、日経平均株価2万6,600円のとき、日経225ミニでは266万円(=2万6,600円×100倍)が動かせるのです。

証拠金を取引価額で割ると、18分の1(=14.7万円÷266万円)となります。反対の見方をすれば、日経225ミニは証拠金の18倍の資金を動かせる(=レバレッジ18倍)わけです。資産額が数百万円以上ある方は、日経225ミニを活用すると、相場が下がっているときに、損失を抑えられるでしょう。

投資資金が少ない方(数十万円~百万円程度)は、いきなり日経225ミニを買ってしまうと、こちらの値動きの影響が大きくなりすぎてしまいます。日経平均株価が500円動くだけで、5万円の損益が発生するようなイメージです。資産が「日経225ミニの取引額以上」になってから、活用を考えた方がいいかもしれませんね。

デリバティブのデメリット

デリバティブの特徴として、証拠金以上の損失が出る場合があります。

デリバティブの「3-3.少額から取引できる」でお伝えしたように、証拠金の数倍のお金を動かせるからです。いわゆる「レバレッジがかかった状態」なので、日経平均株価が想定と反対の動きをした場合、損失額も大きくなってしまいます。

デリバティブの使い方

デリバティブの使い方には、次の2つがあります。

  1. リスクヘッジ
  2. 投機

おすすめの使い方は、「リスクヘッジ」です。わかりやすい例として、株主優待や配当金を受け取る目的で、株式投資をしている場合の使い方を紹介します。

株主優待や配当金をもらうためには、権利確定日に株式を持っておく必要があります。そのため、権利確定日の前に株価が下がったとしても、株式を売れません。ここで役立つのが、日経225ミニの先物取引です。これによって、値下がりをカバーしつつ、株主優待や配当金の権利を手に入れられます

投機手段として使うこと自体、間違いではありませんが、損失を抱えるリスクがかなり大きくなります。このため、投機手段として使うのではなく、あくまでリスクヘッジの手段として使うのがおすすめです。

それでは、具体的な事例を紹介します。個別株の先物商品はありません。先物初心者は、日経平均株価の動きに連動した「日経225ミニ」を使うのがおすすめです。具体的な手順は、下のようになっています。

  1. 株価指数先物を売る(ショートポジションを持つ)
  2. 株価が下がった場合、株価指数先物を買い戻す

まずは、「①株価指数先物を売る(ショートポジションを持つ)」段階です。何も持っていないのに「売る」のは違和感があるかもしれませんが、「将来に売る約束をする」と考えればイメージしやすくなります。

先物を売る約束を結ぶ理由は、日経平均株価が下がったときに、約束した相手に売る日経225ミニを、安く仕入れられるからです。相手に売る値段はすでに約束で決まっているので、売値よりも安く仕入れられた分だけが利益となります。もう少し具体的に、コロナショック時の株価を例に考えてみましょう。

2020年の2~3月にかけて、日経平均株価が大幅に下落しました。もし2月上旬の時点で、感染拡大と株価下落を予想していた場合を考えます。仮に、2月最初の取引日だった2月3日に日経225ミニを売り、3月12日に買い戻したとしましょう。

2月3日の日経平均株価(終値)は2万2,971円、3月12日は1万8,559円でした。2月3日に売り、3月12日に買い戻せば、4,412円×100倍=44万1,200円の利益が出ます(手数料などを除く)。

この期間は、相場全体が下がっているので、保有株には損失が出ていた方がほとんどだと思います。日経225ミニを売っておくだけで、損失を最小限に抑えられたかもしれないのです。

まとめ

以上、デリバティブの概要と、代表的な3つの取引について説明してきました。ギャンブル的なイメージが強い金融商品ですが、うまく組み合わせればリスクヘッジ手段として使えます。株式投資に慣れてきたら、デリバティブの活用も考えてみると、おもしろいかもしれませんね!

この記事を見た人は、こちらも読んでいます

  1. 株価が下落する相場で利益を出すには、どんなやり方がありますか?

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会検定会員補を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

ページ上部へ移動