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TOPIXの銘柄入れ替えはいつ?見直しの流れや採用銘柄の基準、2024~2025年の進捗・予定を解説
日本株の代表的な株価指標のひとつ「TOPIX(東証株価指数)」の改革に注目が集まっています。現行のTOPIXは東証プライム市場の上場銘柄で構成されていますが、今回の組み入れ基準の変更により、基準に満たない既存の組み入れ銘柄の除外と、スタンダード市場やグロース市場に上場している銘柄の新規採用が予定されています。
TOPIXの銘柄入れ替えは“2段階”で実施される計画です。第1段階の見直しは現在進行中で、2025年1月に完了します。第2段階の見直しは2026年10月からスタートして、2028年7月に完了予定です。特に2026年10月の銘柄入れ替えは株価に与える影響が大きく、投資家の注目度が高くなっています。
このコラムでは、TOPIXの銘柄入れ替えがいつなのか、見直しの流れや採用基準について、株初心者向けにわかりやすく解説します。ぜひ最後まで読んでくださいね。
TOPIXの銘柄入れ替えはいつ?
TOPIXの銘柄入れ替えは2段階で実施されます。第1段階の見直しは現在進行中で2025年1月に完了、第2段階の見直しは2026年10月にスタートして2028年7月に完了予定です。下の表にスケジュールをまとめましたのでご覧ください。
段階 | 期間 | TOPIX銘柄数 |
---|---|---|
第1段階 | 2022年10月~2025年1月 | 約1,700銘柄 (見直し前は約2,200銘柄) |
第2段階 | 2026年10月~2028年7月 | 約1,200銘柄 |
表の右側に載せている「銘柄数」に注目すると、第1段階終了時点では約1,700銘柄に、第2段階終了時点では約1,200銘柄に減る予定です。見直し前は約2,200銘柄だったので、最終的に1,000銘柄ほど少なくなります。
このような大がかりな銘柄入れ替えは、ざっくりとまとめると下の図のような流れで実施予定です。
出典:株式会社JPX総研 | TOPIX等の見直しについて(更新)[PDF]
銘柄入れ替えの詳しい流れ
それでは、第1段階と第2段階の銘柄入れ替えについて、詳しい流れをみていきましょう。
銘柄入れ替えの流れ
第1段階の銘柄入れ替え
第1段階の銘柄入れ替えは、すでに2022年10月からスタートしており、2025年1月に完了する予定です。
この段階の最終的なゴールは「流通時価総額※1100億円未満の銘柄を除外する」こととなります。一気に除外すると株価が急落するおそれがあるため、2022年10月31日から少しずつ減らしているところです。
※1 流通時価総額とは、「流通株式数(市場で取引されている株式数)×株価」で計算できます。流通株式数とは、「上場株式数-(役員が持っている株式数+自己株式数+10%以上の大株主が持つ株式数)」で求められます。
具体的な方法としては、四半期ごとの最終営業日に10段階で構成比率を減らしていき、2025年1月の最終営業日に構成比率がゼロになるように減らす手順が取られています。
第2段階の銘柄入れ替え
第2段階の銘柄入れ替えは、2026年10月からスタートし、2028年7月に完了する予定です。この段階の最終的なゴールは「スタンダード市場やグロース市場の銘柄も組み入れる」こととなります。
今回の変更に伴い、TOPIXに組み入れるための条件が変更され、「年間売買代金回転率」と「浮動株※2時価総額の累積比率」の2つの基準で銘柄が選定されます。詳しい選定基準は下の表のとおりです。
※2 浮動株とは、安定した株主が保有しているのではなく、株式市場で流通している株のことです。
指標 | 追加規準 | 継続基準 |
---|---|---|
年間売買代金回転率 | 0.20回転以上 | 0.14回転以上 |
浮動株時価総額の累積比率 | 上位96%以内 | 上位97%以内 |
それぞれ説明しますね。
年間売買代金回転率
年間売買代金回転率とは、“ある銘柄の時価総額の何割が実際に売買されたか”を示す指標です。下に示した計算式で求められます。
年間売買代金回転率の計算式
売買代金回転率=(期間)売買代金÷(期間)平均時価総額
指標を見る際には「年間売買代金回転率の高さ」に注目しましょう。年間売買代金回転率が高いほど、その銘柄の取引が活発であると考えます。一方、回転率が低い場合は取引が少なく活発でないことを表します。
年間売買代金回転率が「高い」 | 年間売買代金回転率が「低い」 | |
---|---|---|
取引の状況 | 活発である | 活発でない |
具体的に数値を当てはめて考えてみましょう。時価総額35.4兆円のトヨタ自動車の年間売買回転率が「1回転」だった場合、1年間で35.4兆円の取引がおこなわれたことを意味します。もし年間売買回転率が「0.1回転」だった場合、1年間で取引されたトヨタ自動車の株式は時価総額の10分の1に相当する3.54兆円です。
この例から、年間売買代金回転率は高いほど望ましいことがわかりますね。
今回、TOPIXの第2段階の銘柄入れ替えでは、年間売買代金回転率にハードルが設けられました。新たに追加する銘柄の回転率は0.20以上、すでに追加されている銘柄が採用され続けるには0.14以上の回転率が必要となります。
指標 | 追加規準 | 継続基準 |
---|---|---|
年間売買代金回転率 | 0.20回転以上 | 0.14回転以上 |
この基準を満たさない“取引が活発でない銘柄”は、株価に企業の実態が反映されていない可能性があります。今回このような銘柄を除外することにより、TOPIXの構成銘柄に占める取引が活発な銘柄(=株価に企業の実態が反映されている銘柄)の割合が高まるため、日本経済を反映した株価指数として有用性が高まるでしょう。
浮動株時価総額の累積比率
浮動株時価総額の累積比率とは、大まかに説明すると“市場で取引できる株式(浮動株)の多さについてのランキング”です。下に示した計算式で求められます。
浮動株時価総額の累積比率の計算式
浮動株時価総額の累積比率=
浮動株時価総額が大きい銘柄から累積した浮動株時価総額÷浮動株時価総額の合計
計算式を見ただけでは、意味がよくわからないですよね。学校でおこなわれる「身長測定の結果」を例に、どういう意味なのかを説明します。
30人のクラスがあり、その中で身長が高い順にランキングをつけるケースを考えましょう。この際に「自分が上位何%にいるのか」を考えるのが累積比率です。
例えばクラスで1番身長が高い人は上位3.3%(=1位÷30人×100)に、3番目に身長が高い人は上位10.0%(=3位÷30人×100)にいると計算できます。上位3位と下位3位の累積比率を計算すると、下の表のようになります。
順位 | 累積比率 | 計算式 |
---|---|---|
1 | 上位3.3% | =1位÷30人×100 |
2 | 上位6.7% | =2位÷30人×100 |
3 | 上位10.0% | =3位÷30人×100 |
... | ... | ... |
28 | 上位93.3% | =28位÷30人×100 |
29 | 上位96.7% | =29位÷30人×100 |
30 | 上位100.0% | =30位÷30人×100 |
TOPIXの第2段階の銘柄入れ替えでも、これと同じ考え方が使われています。浮動株時価総額が大きい順にランキングをつけ、そのうち上位96%以内の銘柄のみを組み入れ対象とするのです。つまり、先ほどの身長ランキングでいえば、上位28位までの人がTOPIXに組み入れてもらえることになります。
指標 | 追加規準 | 継続基準 |
---|---|---|
浮動株時価総額の累積比率 | 上位96%以内 | 上位97%以内 |
この基準を設けることで、浮動株時価総額が大きく投資家が取引しやすい銘柄に絞られるのです。先ほどご紹介した年間売買代金回転率と合わせて、取引が活発で株価に企業の実態が反映された銘柄でTOPIXを構成できるため、より日本経済を反映した株価指数として有用性が高まると考えられます。
浮動株時価総額の累積比率は公開されておらず、自分で計算するのも大変です。JPX総研によると「浮動株時価総額の累積比率上位97%以内の最小値は約230億円」とのことなので、時価総額に浮動株比率を掛けた結果が230億円以上であれば、採用基準を満たしていると考えてよさそうです。
出典:株式会社JPX総研 | TOPIX等の見直しについて(更新)[PDF]
浮動株比率はSBI証券で提供されている会社四季報から入手できます。例えばTOPIX組み入れの可能性がある住信SBIネット銀行(7163)の場合、SBI証券の「四季報」タブの中にある「企業概要」画面の下部(赤枠部分)に浮動株比率が載っています。
<住信SBIネット銀行(7163)の浮動株比率>
![住信SBIネット銀行(7163)の浮動株比率](img/img_topix_replace03.png)
ちなみに、住信SBIネット銀行の時価総額は約5,720億円(2024年12月23日現在)であり、浮動株比率は9.5%なので、浮動株時価総額は約543億円(=約5,720億円×9.5%)と計算できます。
浮動株比率は、SBI証券に口座開設すれば誰でも無料で入手できます。まだ口座を持っていない方は、この機会に口座開設しておきましょう!
TOPIX構成銘柄見直しの株式市場への影響
TOPIX構成銘柄見直しは、個別銘柄の株価に影響を及ぼします。具体的には、TOPIXから除外される銘柄には売り圧力が、反対に採用される銘柄には買い圧力がかかります。
株価への影響 | |
---|---|
TOPIXから除外 | 下落圧力 |
TOPIXに採用 | 上昇圧力 |
条件を満たしてTOPIXに新規採用される銘柄は、2026年10月から組み入れがはじまります。2026年10月の段階で、構成比率の75%分が一気に組み入れられる予定です。
例えば、最終的に100億円分の組み入れが決まった場合、2026年10月の時点で75%に相当する75億円分が組み入れられる仕組みとなります。
このため、2026年10月に予定されている組み入れ開始時点で投資信託などの買いが集まり、新規採用銘柄の株価に上昇圧力が加わると考えられるのです。
一方で、除外される銘柄については、2026年10月から2028年7月にかけて、8段階でゆっくりと減らされていきます。株価への下落圧力が一気に加わるわけではないので、安心してください。
以上の説明を踏まえると、新規採用されそうな銘柄に先回りして投資しておき、2026年10月に組み入れられた際の株価上昇を狙うという戦略も、おもしろいかもしれませんね。
スタンダード市場とグロース市場の銘柄に注目
TOPIXの新規採用銘柄に先回りして投資する場合、スタンダード市場とグロース市場の銘柄を狙うこととなります。従来のTOPIXはプライム市場の上場銘柄で構成されており、新規採用銘柄はスタンダード市場とグロース市場から選ばれるからです。
時価総額が大きく流動性の高い銘柄は、TOPIXに新規採用される可能性が高いといえます。採用基準である年間売買代金回転率や浮動株時価総額でのスクリーニングはむずかしいので、各市場の時価総額ランキング上位銘柄の浮動株時価総額を計算して絞り込むとよいでしょう。
TOPIXに新規採用される銘柄候補
最後に、TOPIX新規採用銘柄の候補をご紹介します。先ほどもご紹介したように、年間売買代金回転率と浮動株時価総額の累積比率を使ったスクリーニングはむずかしいので、スタンダード市場とグロース市場における浮動株時価総額の上位銘柄を一部リストアップしました。
あくまで筆者独自の予想であり、下記にリストアップした銘柄が必ずTOPIXに新規採用されるとは限りません。ひとつの参考資料としてご覧ください。
銘柄名 (コード) |
市場 | 時価総額※3 | 浮動株比率 | 浮動株時価総額 =時価総額×浮動株比率 |
---|---|---|---|---|
日本マクドナルドHD (2702) |
スタンダード | 8,244億円 | 46.20% | 3,809億円 |
日本オラクル (4716) |
スタンダード | 1兆8,988億円 | 3.60% | 684億円 |
住信SBIネット銀行 (7163) |
スタンダード | 5,851億円 | 9.50% | 556億円 |
東映アニメーション (4816) |
スタンダード | 7,529億円 | 5.50% | 414億円 |
ワークマン (7564) |
スタンダード | 3,601億円 | 9.30% | 335億円 |
カバー (5253) |
グロース | 1,711億円 | 19.20% | 329億円 |
※3 2024年12月25日時点の時価総額です。
まとめ
TOPIXの銘柄入れ替えの概要と個別銘柄への影響、新規採用で注目すべきポイントなどを解説してきました。
新規採用銘柄は2026年10月に構成比率の75%を一気に組み入れるため、株価に上昇圧力が加わると考えられます。時価総額が大きくて流動性の高い、スタンダード市場やグロース市場の銘柄には投資のチャンスがあるかもしれないので、投資アイデアのひとつとして検討するのもおもしろそうです。
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