- ホーム
- 株式投資関連のコラム
- ニュース・その他
- ユニゾHDをめぐるTOBについて、わかりやすく解説!
ユニゾHDをめぐるTOBについて、わかりやすく解説!
- 2020年4月7日追記
- ユニゾHDの従業員によるEBOが成立しました。これで、ユニゾHDをめぐるTOB騒動は完全に終了しました。
※EBOについては、株式用語集の「EBO(イー・ビー・オー)」で解説しています。
2019年7月から2020年4月まで、ユニゾHD(3258)に対して「TOBをしたい!」と表明する事業会社やファンドが現れ、TOB合戦に発展していました。ユニゾHDがTOBの標的にされている理由は、多大な含み益があるからです。ユニゾHDは多くの優良な不動産を保有しており、不動産価格が取得時よりも大幅に上昇したため、多大な含み益が発生しました(下のグラフ参照)。この含み益を狙って、「①エイチ・アイ・エス(HIS)」、「②フォートレス」、「③ブラックストーン」の3陣営、そして敵対的買収を防ぐため「④ユニゾHDの従業員」がTOB合戦を繰り広げていました。

2020年3月18日、ユニゾHDが「従業員によるEBO※」を1株5,700円から6,000円に引き上げました。また、ユニゾHDはEBO価格を引き上げることを条件に、大株主のエリオットグループや、いちごグループから応募の契約を取り付けています。ユニゾHDをめぐるTOB合戦のなかで、ユニゾHDの従業員によるEBO価格が最高値※だったこともあり、最終的には多くの株主から応募がありました。 その結果、2020年4月3日、ユニゾHDの従業員によるEBOが成立しました。
※EBOについては、株式用語集の「EBO(イー・ビー・オー)」で解説しています。
※ブラックストーンは、ユニゾHDによる同意を条件に1株6,000円でTOBをおこなう意向でした。
TOB合戦を時系列で確認
最初にエイチ・アイ・エスがTOBをおこなったところから、主要な出来事を時系列でざっと見ていきましょう。
日付 (2019年) |
内容 |
---|---|
7月 | エイチ・アイ・エス(9603)が1株3,100円でTOB開始。当時の株価は約2,000円。 ユニゾHDは反対。ホワイトナイトのフォートレスを連れてくる。 |
8月 | フォートレスは、エイチ・アイ・エスのTOBに対抗して、1株4,000円でTOB開始。 同じ月に、エイチ・アイ・エスの敵対的TOBは失敗に終わる。 |
9月 | ユニゾHDは、エイチ・アイ・エスの敵対的TOBを阻止したフォートレスのTOBに対して、賛同から留保に意見を変更。 主な理由は、「フォートレスがユニゾ従業員の雇用を維持しない可能性がある」ことと、「フォートレスの価格以上でTOBをおこなう意向があると、ブラックストーンが提案してきたから」の2つ。 |
12月 | ユニゾHDは、ブラックストーンとの協議を終了し、フォートレスのTOBに対して留保から反対に意見を変更。 ユニゾHDの従業員によるEBOをおこなうと発表。 |
日付 (2020年) |
内容 |
1月 | ブラックストーンが、ふたたびTOBをおこなう意向を示し、フォートレスもTOB価格を引き上げた。 |
2月 | ユニゾHDが、従業員によるEBO価格を引き上げた。 |
2月 | ブラックストーンが、価格を引き上げてTOBをおこなう意向を示した。 |
3月 | ユニゾHDが、従業員によるEBO価格を引き上げて、大株主からEBOへの応募を取り付けた。 |
4月 | ユニゾHDの従業員によるEBOが成立。日本の上場企業で初めての事例。 |
よりわかりやすく、簡易的にまとめました。TOB関連の出来事と一緒に、そのときのTOB価格や、ユニゾHDがどういう態度を示したのかも載せています。
日付 (2019年) |
内容 | TOB 価格 |
ユニゾHDの 態度 |
---|---|---|---|
7月 | エイチ・アイ・エス(9603)がTOBを開始 | 3,100円 | 反対 |
8月 | ホワイトナイトのフォートレスが、対抗TOBを開始 | 4,000円 | 賛成 |
エイチ・アイ・エス(9603)のTOBが失敗に終わる | - | - | |
9月 | ブラックストーンが、TOBをおこなう意向を伝える | 5,000円 | - |
フォートレスに、TOB価格の引き上げを要請も合意にならず | - | 賛成→留保 | |
10月 | ブラックストーンと協議をおこなう | 5,000円 | 応諾しない |
11月 | フォートレスが、TOB価格を引き上げる | 4,100円 | 留保 |
12月 | ユニゾHD従業員によるEBOを開始 | 5,100円 | 賛同 |
フォートレスのTOBを留保から変更 | 4,100円 | 留保→反対 | |
ブラックストーンと協議を打ち切る | 5,000円 | 協議終了 | |
日付 (2020年) |
内容 | TOB 価格 |
ユニゾHDの 態度 |
1月 | ブラックストーンが、ふたたびTOBをおこなう意向を発表 | 5,600円 | - |
フォートレスが、TOB価格を引き上げる | 5,200円 | 反対 | |
2月 | ユニゾHDが、EBO価格を引き上げる | 5,700円 | 賛同 |
ブラックストーンが、価格を引き上げてTOBをおこなう意向を発表 | 6,000円 | - | |
3月 | ユニゾHDがEBO価格を引き上げる | 6,000円 | 賛同 |
3月 | ユニゾHD従業員によるEBOが成立 | 6,000円 | 賛同 |
まとめ
ユニゾHDをめぐるTOB合戦は、日本の上場企業で初の事例となる、ユニゾHDの従業員によるEBOの成立で、幕を閉じました。2019年7月から2020年4月までの約9ヶ月にもおよび、その間に4陣営によるTOB価格の引き上げが何度もおこなわれました。最終的には、ユニゾHDの従業員が最高値でEBOをおこなったことにより、他の陣営をおさえてEBOの成立にこぎつけました。
一方で、ユニゾHDのEBOは、投資ファンドから資金を借りておこなわれているため、契約上EBOの成立した6ヶ月後に、EBO資金を返済することになっています。返済資金をつくるため、ユニゾHDは急いで不動産を現金化する必要があります。実際に、エイチ・アイ・エスによる敵対的買収がおこなわれる前は、79物件の不動産を保有※していましたが、現在では45物件まで減っています。また、ユニゾHDは、虎の子の主要な物件も売却しているため、返済資金をかき集めるのに切羽詰っていたことも想像されます。
ユニゾHDは、今回のTOB合戦を制することができましたが、不動産を売却して規模が大きく縮小しました。また、規模が縮小したことで、相当の数の従業員の雇用継続は難しいと思われます。ユニゾHDや従業員は、敵対的買収者を退けましたが、痛みをともなう結果となりました。
※ユニゾHDの保有するホテルは除いています。