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ユニゾHDをめぐるTOBについて、わかりやすく解説!

ゆうと担当:ゆうと

最終更新日:2023年11月30日

2020年4月7日追記
ユニゾHDの従業員によるEBOが成立しました。これで、ユニゾHDをめぐるTOB騒動は完全に終了しました。

※EBOについては、株式用語集の「EBO(イー・ビー・オー)」で解説しています。

ユニゾHD(3258)の2年チャート>

ユニゾHDの株価チャート

(出典:SBI証券

2019年7月から2020年4月まで、ユニゾHD(3258)に対して「TOBをしたい!」と表明する事業会社やファンドが現れ、TOB合戦に発展していました。ユニゾHDがTOBの標的にされている理由は、多大な含み益があるからです。ユニゾHDは多くの優良な不動産を保有しており、不動産価格が取得時よりも大幅に上昇したため、多大な含み益が発生しました(下のグラフ参照)。この含み益を狙って、「①エイチ・アイ・エス(HIS)」、「②フォートレス」、「③ブラックストーン」の3陣営、そして敵対的買収を防ぐため「④ユニゾHDの従業員」がTOB合戦を繰り広げていました。

ユニゾHDの不動産含み益推移

2020年3月18日、ユニゾHDが「従業員によるEBO」を1株5,700円から6,000円に引き上げました。また、ユニゾHDはEBO価格を引き上げることを条件に、大株主のエリオットグループや、いちごグループから応募の契約を取り付けています。ユニゾHDをめぐるTOB合戦のなかで、ユニゾHDの従業員によるEBO価格が最高値だったこともあり、最終的には多くの株主から応募がありました。 その結果、2020年4月3日、ユニゾHDの従業員によるEBOが成立しました。

※EBOについては、株式用語集の「EBO(イー・ビー・オー)」で解説しています。
※ブラックストーンは、ユニゾHDによる同意を条件に1株6,000円でTOBをおこなう意向でした。

TOB合戦を時系列で確認

最初にエイチ・アイ・エスがTOBをおこなったところから、主要な出来事を時系列でざっと見ていきましょう。

日付
(2019年)
内容
7月 エイチ・アイ・エス(9603)が1株3,100円でTOB開始。当時の株価は約2,000円。
ユニゾHDは反対。ホワイトナイトのフォートレスを連れてくる。
8月 フォートレスは、エイチ・アイ・エスのTOBに対抗して、1株4,000円でTOB開始。
同じ月に、エイチ・アイ・エスの敵対的TOBは失敗に終わる。
9月 ユニゾHDは、エイチ・アイ・エスの敵対的TOBを阻止したフォートレスのTOBに対して、賛同から留保に意見を変更。
主な理由は、「フォートレスがユニゾ従業員の雇用を維持しない可能性がある」ことと、「フォートレスの価格以上でTOBをおこなう意向があると、ブラックストーンが提案してきたから」の2つ。
12月 ユニゾHDは、ブラックストーンとの協議を終了し、フォートレスのTOBに対して留保から反対に意見を変更。
ユニゾHDの従業員によるEBOをおこなうと発表。
日付
(2020年)
内容
1月 ブラックストーンが、ふたたびTOBをおこなう意向を示し、フォートレスもTOB価格を引き上げた。
2月 ユニゾHDが、従業員によるEBO価格を引き上げた。
2月 ブラックストーンが、価格を引き上げてTOBをおこなう意向を示した。
3月 ユニゾHDが、従業員によるEBO価格を引き上げて、大株主からEBOへの応募を取り付けた。
4月 ユニゾHDの従業員によるEBOが成立。日本の上場企業で初めての事例。

よりわかりやすく、簡易的にまとめました。TOB関連の出来事と一緒に、そのときのTOB価格や、ユニゾHDがどういう態度を示したのかも載せています。

日付
(2019年)
内容 TOB
価格
ユニゾHDの
態度
7月 エイチ・アイ・エス(9603)がTOBを開始 3,100円 反対
8月 ホワイトナイトのフォートレスが、対抗TOBを開始 4,000円 賛成
  エイチ・アイ・エス(9603)のTOBが失敗に終わる - -
9月 ブラックストーンが、TOBをおこなう意向を伝える 5,000円 -
  フォートレスに、TOB価格の引き上げを要請も合意にならず - 賛成→留保
10月 ブラックストーンと協議をおこなう 5,000円 応諾しない
11月 フォートレスが、TOB価格を引き上げる 4,100円 留保
12月 ユニゾHD従業員によるEBOを開始 5,100円 賛同
  フォートレスのTOBを留保から変更 4,100円 留保→反対
  ブラックストーンと協議を打ち切る 5,000円 協議終了
日付
(2020年)
内容 TOB
価格
ユニゾHDの
態度
1月 ブラックストーンが、ふたたびTOBをおこなう意向を発表 5,600円 -
  フォートレスが、TOB価格を引き上げる 5,200円 反対
2月 ユニゾHDが、EBO価格を引き上げる 5,700円 賛同
  ブラックストーンが、価格を引き上げてTOBをおこなう意向を発表 6,000円 -
3月 ユニゾHDがEBO価格を引き上げる 6,000円 賛同
3月 ユニゾHD従業員によるEBOが成立 6,000円 賛同

まとめ

ユニゾHDをめぐるTOB合戦は、日本の上場企業で初の事例となる、ユニゾHDの従業員によるEBOの成立で、幕を閉じました。2019年7月から2020年4月までの約9ヶ月にもおよび、その間に4陣営によるTOB価格の引き上げが何度もおこなわれました。最終的には、ユニゾHDの従業員が最高値でEBOをおこなったことにより、他の陣営をおさえてEBOの成立にこぎつけました。

一方で、ユニゾHDのEBOは、投資ファンドから資金を借りておこなわれているため、契約上EBOの成立した6ヶ月後に、EBO資金を返済することになっています。返済資金をつくるため、ユニゾHDは急いで不動産を現金化する必要があります。実際に、エイチ・アイ・エスによる敵対的買収がおこなわれる前は、79物件の不動産を保有していましたが、現在では45物件まで減っています。また、ユニゾHDは、虎の子の主要な物件も売却しているため、返済資金をかき集めるのに切羽詰っていたことも想像されます。

ユニゾHDは、今回のTOB合戦を制することができましたが、不動産を売却して規模が大きく縮小しました。また、規模が縮小したことで、相当の数の従業員の雇用継続は難しいと思われます。ユニゾHDや従業員は、敵対的買収者を退けましたが、痛みをともなう結果となりました。

※ユニゾHDの保有するホテルは除いています。

ゆうと

この記事の執筆者

ゆうと 

投資歴8年の資産バリュー投資家です。いつも四季報を持ち歩き、1年の半分は株のことを考えている株オタク。若手投資家同士の交流を目的とした「名古屋若手投資家交流会」を主催しています。

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