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【防衛関連株・銘柄まとめ】高配当株はある?今後の見通しなどを解説
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- 9月27日投開票の自民党総裁選で、石破茂氏が第28代総裁になりました。石破氏は防衛庁長官や防衛大臣などを歴任しており、安全保障政策に精通していることで有名です。このため、今後は防衛関連株に注目が集まる可能性があります。
防衛関連株は、「防衛省にモノ・サービスを提供する会社の株」です。これらの会社は、艦船や戦闘機、弾薬、レーダーなどの防衛装備品や各種の整備サービスを主に防衛省に納入しています。代表的な防衛関連株には三菱重工業(7011)をはじめとする重工メーカーが挙げられます。
この記事では、防衛関連株の今後の見通しや、関連銘柄10社をピックアップしてご紹介します。
防衛関連株は国策銘柄
防衛関連株は国策銘柄※1です。防衛関連ビジネスの規模やありかたは、国の防衛費、法律や政策によって決まります。
※1 国策銘柄とは国が補助金や施策で支援している分野の株です。建設や半導体、防衛、宇宙関連などが代表的な国策銘柄として挙げられます。
防衛関連ビジネスは防衛費が実質的な売上の上限となり、長いあいだ頭打ちとなっていました。戦争を禁じる平和憲法のもと防衛装備品や技術の輸出が、政府の決めたルールによってきびしく制限されていたからです。
ウクライナ侵攻や中東の軍事衝突で国際情勢が悪化するなか、世界各国は軍事費を増やす方向に舵を切りました。
日本政府は防衛費の目安を長らくGDPの1%としていましたが、2027年度までに2%に引き上げる方針を掲げ、防衛力の大幅強化を約束する防衛力整備計画※2を定めました。
※2 防衛力整備計画は、防衛力のありかたと主な装備について定めた10か年計画です(2022年策定)。
また、不採算を理由に防衛関連から撤退する会社が相次いでいたため、メーカーが得られる最大利益率を改善し、輸出を条件付きで緩和しました。2024年10月には、元防衛大臣で軍事関連に詳しい石破茂氏が新首相に選出され、防衛関連株にはますます関心が高まっています。
防衛関連株・銘柄一覧【高配当株はある?】
防衛関連株の配当利回りは0%~2%台が多いです。高配当と言えるほどではないため、値上がり益を目的とした方がいいでしょう。防衛費の増額は決定事項であるため、特に防衛省向けの比率が高い中小型株の業績への影響は大きいと予想されます。
大型株
防衛関連の大型株を紹介します。
三大重工メーカー
三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、IHI(7013)は防衛関連のシンボル銘柄です。
しかし、各社の防衛省向けの売上比率は数%~10数%にとどまり、軍用が4割~9割の世界の大手軍事会社には及びません。重工メーカーの株を長く保有する際は、各社の主な事業の業績に目を配りましょう。
三大重工メーカーの中でも川崎重工業(7012)は配当利回りが高いのが特徴です。
総合電機メーカー
三菱電機(6503)とNEC(6701)は重工メーカーに次いで防衛省の調達額が大きい会社です。今後はサイバーセキュリティ関連の受注増にも期待できるでしょう。防衛関連銘柄として取りあげられる銘柄ですが、防衛省向けは数%であり業績への影響は大きくはありません。
中小型株
防衛関連の中小型株を紹介します。
火工品メーカーの細谷火工(4274)、各種の砲器を作る日本製鋼所(5631)、機雷を提供する石川製作所(6208)、船舶用機器メーカーの東京計器(7721)、電子部品・機器商社を営む理経(8226)です。
防衛省向けの比率が高い銘柄を選びましたが、大型株に比べると投資家の人気はまちまちです。しかし、中小型株はいったん火が付くと値動きが大きくなるので、値上がり目的には向いていると言えます。
銘柄名 (クリックタップで最新株価) |
事業内容 | 配当利回り |
---|---|---|
三菱重工業(7011) | 重工メーカー首位。防衛省の調達額のトップであり、護衛艦や戦車など多数を提供する。F−15J・F−4EJ戦闘機やペトリオット(地対空誘導弾システム)などをライセンス生産。防衛省向けの売上比率は約1割。日英伊で次期戦闘機を共同開発中。 | 0.97% |
川崎重工業(7012) | 重工メーカー大手。輸送機や潜水艦、誘導弾などを開発・製造している。P−3C哨戒機やMCH−101掃海輸送ヘリコプターをライセンス生産。防衛省向けは約15%で増加傾向。 | 2.14% |
IHI(7013) | 重工メーカーの一角。防衛省向けは売上の1割未満だが急増中。防衛省が使用する航空機のほとんどのエンジンを提供している。F-2戦闘機用の先鋭エンジンをライセンス生産。ドローンの一種である水中無人機にも防衛省の採用実績。 | 1.17% |
三菱電機(6503) | 大手総合電機メーカー。地対空・空対空誘導弾などを納入している。F-15戦闘機用レーダーをライセンス生産。防衛省向けは売上の数%だが増加傾向。防衛装備品の3工場に約200億円を投資し生産体制を強化中。 | 2.07% |
日本電気(NEC)(6701) | 大手総合電機メーカー。防衛省向けは1割未満で増加の方向。指揮統制システムや警戒管制レーダー、無線などを提供している。防衛装備品の新工場が2025年3月までに完成する予定。 | 1.01% |
細谷火工(4274) | 化学メーカー。火薬や爆薬を使用した火工品の製造・販売や処分をおこなう。防衛省向けが売上高に占める割合は約5割。救命・救難・訓練用の発煙筒や照明筒などを納入している。 | 0.84% |
日本製鋼所(5631) | 産業機械・鉄鋼メーカー。防衛省向けの割合は約1割。りゅう弾砲、装甲車、戦車の主砲などを納入している。レールガン(電力で弾丸を発射する次世代砲)の開発にも取り組む。 | 1.30% |
石川製作所(6208) | 機械メーカー。主力の防衛機器が売上の6割弱を占める。うち防衛省向けは約4割で、三菱重工業(7011)が主な取引先のひとつ。機雷や地雷、フライトデータレコーダーなどを製造している。 | 0.65% |
東京計器(7721) | 船舶港湾機器・通信機器メーカー。防衛省向けは約15%。戦闘機や艦艇に搭載するレーダー警戒装置や、潜水艦用の慣性航行装置などを納入している。宇宙関連としても注目。 | 1.10% |
理経(8226) | 電子部品・機器をあつかう商社。防衛省向けは4割弱。防衛省を主な取引先とするヘリコプター・航空機・航空部品の輸入販売会社「エアロパートナーズ」を2017年に子会社化した。 | 1.51% |
防衛関連株・銘柄の見通し
防衛関連株の見通しを「良い・普通・悪い」で表すと、「良い」と考えられます。国際情勢の悪化と防衛費の増額に注目が高まっているからです。
プラス材料
防衛関連株のプラス材料を紹介します。
防衛費が増える
防衛力整備計画によれば、防衛費は2023年度から2027年度までの5年間で従来比1.6倍の43兆円程度に増えます。年度ベースの防衛費は2022年度までの5兆円台から11兆円超となる方向です※3。多額の設備投資を必要とする防衛関連は参入のハードルが高いため、増える予算の多くは防衛関連会社が獲得するでしょう。
※3 参考:防衛力整備計画(防衛省)
最大利益率の引き上げ
政府は防衛装備品の想定営業利益率を8%から最大15%へ引き上げました※4。事業撤退に一定の歯止めとなりそうです。
※4 参考:防衛産業の実態(防衛省)
海外輸出が可能に
防衛装備移転三原則※5の見直しで、防衛装備品が条件付きで輸出できるようになりました。
※5 防衛装備移転三原則は、防衛装備品の輸出の禁止・許可・目的外使用および輸出先からの移転に関するルールです。運用指針とともに2023年に改正され、部品およびライセンス生産品のライセンス元国への輸出は解禁、共同開発品や殺傷力がある武器・弾薬の輸出も諸条件付きで緩和されました。
防衛装備品の一部は海外からライセンス貸与を受けて生産しています。輸出緩和を受けて、IHI(7013)はF35戦闘機のエンジン部品の対米輸出を開始し、三菱電機(6503)はレーダー部品を米海軍から受注しました。米政府の意向もあり、ロッキードマーティンやRTXなどの米大手のライセンス生産と輸出は増えていく見込みです。
共同開発品は、日英伊で共同開発中の次期戦闘機が輸出可能となりました。
マイナス材料
防衛関連株のマイナス材料を紹介します。
米国などの海外に流れる防衛費が増える
近年、日本は武器輸入量を増やしていると報告されています※6。輸入量の増加に加え、インフレと円安により取得金額が押し上げられている状況です。
※6 参考:SIPRI年鑑2022(ストックホルム国際平和研究所)
営業利益率15%は高いとは言えない
防衛省調達額上位のNEC(6701)や富士通(6702)では、主力のITサービス事業の営業利益率が10%を超えています。防衛費が売上の天井となるビジネスはさほど魅力的には映らないでしょう。最新の防衛機器や大型の装備品の開発には年月とコストがかかります。政府のさらなる開発支援や今後の輸出の広がりに期待したいですね。
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まとめ
日本の防衛産業が成長段階に入り、防衛関連株は脚光を浴びています。防衛費が大幅に増えるうえ、防衛省に限られていた納入先が海外にも広がりはじめ、防衛関連業界の先行きに期待が高まります。
防衛装備品の輸出はまだ始まったばかりです。軍事会社として知名度が無い日本の会社が生産実績を積み海外に販路を広げるには、海外有名メーカーのライセンス生産や共同開発は有効な手段と言えるでしょう。日本の防衛産業の発展を長い目で見守っていきたいものですね。