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羽根英樹さんに取材しました(2)

需給に注目した投資手法があるのを知ってほしい

ゆうと :  羽根さんが本を出版された理由は何ですか?

イベントドリブントレード入門 価格変動の要因分析から導く出口戦略

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(パンローリングの販売ページへ移動します)

羽根さん : 今出ている投資本の多くは、テクニカルやファンダメンタルズに基づくものしかなく、需給に注目した投資手法があるのを知ってほしいという思いがあったからです。

また、人と違ったやり方をやって欲しいというのも大きな要素でした。相場はどんな場合でも、少数派より多数派の方が不利だからです。だから本の最後にも書きましたが、「あまのじゃく」というのは誉め言葉だと思っていますね(笑)。

ゆうと : バリュー投資家※15の視点で読ませていただくと、羽根さんの本はかなり学ぶところが多いなと感じています。

※15 バリュー投資とは、資産や業績などから評価して、株価が割安で放置されている株を狙い、適正な価格になるのを待つ投資法のことです。

羽根さん : 確かに、バリュー投資家からの反応が多かったですね!

ゆうと : このようにバリュー投資家からの反応が大きかった理由は、バリュー投資の弱点を補うようなカタリスト(株価を動かすきっかけとなるイベント)や、出口戦略について書かれていたからではないかと思っています。

羽根さん : バリュー投資家からの反応が多いのは、バリュー投資家の方がTOBを実施する会社を買っていることが多いからだと思っていました。ただ、確かにカタリストや出口戦略を求めているというのが大きいのかもしれませんね

ゆうと : 私もファンダメンタルズやテクニカルに注目した投資本を多く読んできましたが、需給に注目した投資本はほとんどなく、新鮮味がありました!たーちゃんさんも以前の取材で注意喚起をしていましたが、バリュー投資家はバリュートラップ※16に陥りやすい傾向にあります。そのため、特にバリュー投資家にとっては、カタリストや出口戦略を考えるうえで非常に参考になるでしょう。

※16 バリュートラップとは、「割安な銘柄が、割安なまま放置されている状態」のことです。

 

イベントドリブントレードをする上で大切な2つのポイント

ゆうと : イベントドリブントレードをする上で大切なこと、必要なことを教えてください!

羽根さん : 大切なポイントは2つあります。1つ目は、「常にアンテナを張っておく」ことです。食わず嫌いがあると、その分野について知らないままになり、イベントにも気づきにくくなってしまいます。そのため、例えば勉強会に出席したり、本や雑誌を読んでみたり、ニュースに敏感になってみたりすると良いでしょう。

2つ目は、「検証とルールの設定」です。イベントドリブントレードは、正直これに尽きると思っています。具体的には、先にも挙げたような株主優待の先回り買いや、TOBの過去の事例のデータを収集して、どのような傾向があるかを探して売買のルールを決める感じです。

また、イベントドリブントレードに限りませんが、謙虚になることは大事だと思っています。やはり自分1人でできることや知識には限りがありますし、勉強会などで他の投資家さんの経験などのお話をうかがうことで、勉強になったり参考になったりすることが多いからです。

ゆうと : 羽根さんが挙げた2つのポイントは、イベントドリブントレードの基本であり、どんな投資手法でも大切です。また、謙虚な姿勢が自分自身を成長させる原動力となるため、株初心者に限らず、ベテラン投資家にも必要な要素と言えるでしょう。

 

自分の中の疑問がイベントに結びつく

ゆうと : どのようにイベントを見極めたり、探したりしていますか?

羽根さん : 先ほどもお伝えしたように、まずはアンテナを張っておくことです。アンテナを張っておくと、自分のトレード内容や勉強会での会話、普段のニュースからでも疑問に感じることがあると思います。例えば、勉強会で他の人の考え方をおうかがいすることで、新しいイベントのアイデアが得られたり、ニュースで見た「ガソリン価格が高くなっている」という話題から、石油会社の株価と連動しているかを調べるきっかけになったりします。

次に、そうやって得られたイベントのアイデアを検証することが重要です。実際に検証してみると8割くらいは関連がなかったり、あるかないかわからなかったりしますが、結構使えるイベントが見つかることもあります。このように地道に検証して見つけたイベントは、他に誰も気づいていないことが多いので、結構効果が続きますね。

ゆうと : イベントのアイデアの検証は地道な作業であり、実際には関連していないことが多くあります。このように、検証作業は一見すると徒労に終わることが多いですが、検証した結果として、「イベントが効かない」、「わからない」ということが「わかる」ことも、自分の引き出しになって大事です。そのため、これからイベントドリブントレードをはじめる方は、イベントの検証をたくさん重ねてみてください!

 

イベント投資を検討する際に注意するポイント

ゆうと : イベントドリブントレードをするときは、どういったところに注目しますか?

羽根さん :  とにかく需給を意識しています。先ほどから検証の大切さについてお話しさせて頂きましたが、需要と供給を意識しないとただの数字遊びになってしまい、ノイズを拾ってしまう恐れがあります。

例えば、為替の変動が株価に影響を与える銘柄を探しているときに、「米ドルと円の為替相場」の動きに合わせて株価が上昇・下落している銘柄を見つけたとします。しかし、その会社が内需銘柄※17の場合、為替の動きは関係なく、たまたま株価が変動しただけである可能性が高いです。

※17 内需銘柄とは、国内の需要動向が業績に影響を与える銘柄のことを指します。特に飲食や不動産などの内需銘柄は、業務に輸入や輸出が発生せず、国内で完結するので、業績や株価は為替相場の影響を受けにくいです。

ゆうと : 相関があったとしても、なぜそのような相関になったのかを、キチンと落とし込まないといけないということですね!

羽根さん :  そうですね。程度の問題はあると思いますが、なぜそのような相関が見られるか大元のところは確認しておく必要があると思います。

また、最近では「月末に株価が下がる」というような月末アノマリー※18が言われていますが、それはほんの1年以内の話なんです。それより前は、むしろ月末は上がる日のほうが多かったように、過去のデータの取り方次第で全然違うものが見えてくることもあるため、注意が必要です。

※18 アノマリーとは、理論や法則では説明できず、まったく根拠がないものの、相場予測が当たりやすい経験則のことです。

ゆうと : 羽根さんのおっしゃるように、イベントの検証をおこない相関があったとしても、なぜそのような相関になっているのかといった背景を、キチンと把握する必要があります。また、イベントを調べるなかで数字遊びのように陥ってしまうことや、直近の結果に引っ張られて相関関係と全然違う結果が得られることがあるため、注意が必要です。

 

トレードをしてきて一番苦しかったとき

ゆうと : 今までトレードをしてきて、一番苦しかったときはいつでしょうか?

羽根さん : 私は、どうしていいかわからないときが1番苦しいと思っています。具体的には、今のポジションを明日損切りするか、維持するか、買い増しするか、どれがもっとも良いかがわからないようなときです。

だからこそ、過去のデータを検証して、ルールを設定して売買することが重要になってきます。また、仮に期待値のあるルールどおりやって損失が出たとしても、たまたまだと割り切ることができるので、精神的にも変に苦しくなることはありません。まさに「勝っておごるな、負けて腐るな」という精神です。

ゆうと : 繰り返しになりますが、やはり「イベントの検証」と「ルールの設定」に尽きるでしょう。しっかりと期待値のあるトレードを続けられれば、1回1回のトレードに感情が伴うこともありませんし、仮に損失が出ても割り切ることができます。まずは検証とルールの設定をおこない、期待値のあるトレードを続けていくことで、自然と苦しいと感じるようなトレードは減っていくと思います。

 

説明できないポジションは取らない

ゆうと : 最後に、これから投資をはじめる方へのアドバイスをお願いします。

羽根さん : すごく単純で基本中の基本だと思うのですが、説明できないポジションは取ってはいけないということです。もし持っているポジションの理由を説明できないようなら、いますぐ売却する必要があるでしょう。このように考えていれば、思い付きで売買をおこなうことを防げますし、検証を経てトレードをおこなうため、期待値のあるトレードができるようになります。

また、そのようなポジションを持ち続けてしまうのは、含み損になっているからだと思うのですが、やっぱり塩漬けにするクセがついてしまうと、資金拘束がもったいないですし、いつまでもうまくならないと思います。

例えば、テーマ株として買ったのに、そのテーマが終わってしまってもまだ持ち続けてしまうような状態です。このような方は結構いるかなと思うのですが、それはすでにテーマが終わってエッジが無くなっているので、ギャンブルと変わらない状態と言えるでしょう。

ゆうと : そういえば羽根さんの著書の最後にも、同じようなことが書かれていましたね!

羽根さん : そうですね。本の最後に書いた「売買べからず集」は、初心者の方がはまりやすい落とし穴に、どうしたら陥らないかを書いていますので、ぜひ読んでみてください。

ゆうと : 説明できないポジションを持たないのは、非常に重要です。説明できないということは、期待値のあるトレードかどうかわからないからです。こういったトレードは、もはやギャンブルであるため、すぐに売却する必要があるでしょう。一度自分の投資理由をキチンと説明できるか、紙に書き出だして確認してみてください。 また、羽根さんの著書の最後にはこのような売買をおこなううえで、重要な22の要素がまとまっています。これらは、イベントドリブントレードをおこなわない投資家にとっても、非常に大切な要素であるため、ぜひチェックしてみてください!

羽根英樹さんのTwitterアカウントはこちら

ゆうと

この記事の執筆者

ゆうと 

投資歴8年の資産バリュー投資家です。いつも四季報を持ち歩き、1年の半分は株のことを考えている株オタク。若手投資家同士の交流を目的とした「名古屋若手投資家交流会」を主催しています。

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