奥村美里さんに取材しました(1)
(奥村美里さん)
インタビュア:ひっきー
企業分析のインフルエンサー、「奥村美里さん」に取材させていただきました。奥村さんは、とあるスタートアップ※1のファイナンス室で勤務をしています。社会人二年目ながら、企業分析に関する質の高い情報発信を継続しており、なんとTwitterのフォロワー数は3万人超(2021年7月現在)。
※1 スタートアップとは、「まだ世の中にはない革新的なアイデアで新たな価値を生み出し、市場を開拓する企業」のことです。
そんな奥村さんに、“企業分析をはじめたきっかけ”や、“企業分析をする際に注目するポイント”などを詳しくうかがってきたので、ぜひご覧ください!インタビュアは、ひっきーがお送りします。
西暦 | 主な出来事 |
---|---|
2016年 | 早稲田大学に入学。学生時代は商学部だったが、勉強の楽しさを見出せずにいた。当時は、B/S※2とP/L※3の違いすらもわからない状態だった。 |
2019年 | Twitterを開始。 |
2020年 | 新卒でスタートアップに入社。「すぐ戦力になるには、知識を入れなければいけない」という焦りから、企業分析を勉強しはじめる。 |
2021年 | 企業分析に関する質の高い情報発信を続けることで、Twitterのフォロワー数は3万人を突破! |
※2 B/Sとは、貸借対照表のことです。会社が事業資金をどうやって集めて、どのような形で保有をしているかを表しています。
※3 P/Lとは、損益計算書のことです。期間ごとの経営成績を表しています。
フォロワーを増やすために意識している3つのこと
ひっきー : いきなりですが、ツイッターのフォロワー3万人は本当にすごいですね!何かフォロワーを増やすコツのようなものはあるのでしょうか?
奥村さん : 私が意識していることは、「①投稿し続けること」、「②その投稿のためにインプットをし続けること」、「③インプットしたものに対し“なぜ”の深度を深めていくこと」、の3つです。
「①投稿し続けること」については、毎日投稿しないとフォローされにくい体質になってしまうからです。 例えば、私が3日くらいツイート投稿を怠けてしまうと、Twitter上で存在を思い出してもらうために1週間、いや、2週間はかかると思います。
発信をしてないからという理由で、フォロワーの方にフォロー解除されるのは言わずもがな、何より発信を怠ると、Twitterのタイムラインに表示されにくくなるので、一度怠ると成長軌道に乗せにくいです。
「②投稿のためにインプットをし続けること」については、常に“それは知らなかった”のサプライズ情報を提供することを心がけている、という意味です。投稿するにも下手な投稿を1つでもすると、フォロワーの方に「なんだ、そんな情報知ってるよ」と一蹴されてしまいます。常にサプライズのあるツイートをしなければ、「この人はフォローすべきだ」と思われないので、そのためのネタ集めには時間をかなり確保しています。
「③インプットしたものに対し“なぜ”の深度を深めていく」については、インプットした内容を1mmも無駄にせず投稿するためです。例えば、私はネタ集めで本を読むのですが、一冊読み切るのに時間がかかります。
一冊読み切った後に「何もネタが残らなかった」となると、読んだ時間が無駄に終わるので、その本を読んでいる最中にわからない用語や事例があれば、すぐGoogle検索にかけます。そこから派生情報が得られれば、それもツイートに生かしております。
ひっきー : 3万人のフォロワーというのは、途方もない数字ですよね!日々取り組まれていることをうかがうと、フォロワーさんが増えるのも納得です。「継続は力なり」を、しっかりと実践されているからこその結果ですね。
「すぐ戦力になりたい」という焦りが、企業分析をはじめたきっかけ
ひっきー : 企業分析と出会ったきっかけや、奥村さんのように突き抜ける秘訣があれば教えてください。
奥村さん : スタートアップに就職することを決めており、「すぐ戦力になるには、知識を入れなければいけない」という焦りが、企業分析をはじめたきっかけです。新卒では、打席に立てる頻度が高いから(成長機会が多いから)という理由でスタートアップ企業に入社する方も多いかと思います。
しかし私は、「それじゃダメだ」と思っていました。わざわざ経験もない新卒を入れてくれた会社に貢献するには、中途を超える戦力を目指さなければ、という使命感に駆られました(笑)。営業力やマーケティングノウハウは、もちろん中途の方にかないっこないので、「経営の根幹を勉強してしまえ」と思い、さまざまな上場企業のIR※4資料を読みはじめるようになりました。
※4 IRとは、Investor Relationsの略で、投資家向け広報と訳します。投資家にとって、売買判断に重要な書類が揃っています。
最初は焦りからIR資料や本を読んでいたわけですが、次第に、「なんでこんなこともわからないの」と、読めば読むほど次の知らないことが増えてきて・・・それに悔しくてまた次の本を読む、というサイクルが続きました。そんなことを続けて早一年半、まだまだ知らないことばかりです。
企業分析は、一種の短編小説かもしれない
ひっきー : 奥村さんにとって、企業分析の魅力ってなんですか?
奥村さん : 資本市場のガチンコバトルの行く末を見守ることができる点です。 どの企業でもめちゃくちゃ頭いい人たちが戦略を練って、それを開発して、営業して、ときにはM&A※5をして、、、、を繰り返します。
※5 M&Aとは、Mergers(合併) & Acquisitions(買収)の略で、企業の合併や買収のことです。
その結果が決算で公表された時に、サプライズで株価が上がる時もあれば、すでに株式市場内では織り込み済みで株価が上がらなかったりすることもあります。大袈裟な表現かも知れませんが、無料で小説を読んでる状態と似ているかも知れません。あ、そうそう!そういう意味では、企業分析は一種の短編小説かも知れません。
ひっきー : 「短編小説」とは、すごい表現です!奥村さんが、どっぷりと企業分析の魅力にとりつかれている姿が目に浮かびます(笑)。
企業分析の際に押さえておきたい注目ポイント
ひっきー : 企業分析の際に、ここは押さえておきたいという注目ポイントを教えてください。
奥村さん : 各企業の担当者には失礼ですが、「IR資料は疑ってかかれ」、です。 例えば、IR資料は売上の構成要素、構成要素のKPI動向等が書かれていますが、1Q※6では開示されていたのに2QではあるKPI※7だけ非開示になった、ということもたまにあります。
※6 3月決算の場合、第1四半期(4~6月)のことです。2Qは、第2四半期(7月~9月)になります。
※7 KPIとは、「Key Performance Indicators」の略で、重要業績評価指標のことです。売上高などの達成目標に対して、進捗を評価します。事業によってKPIの意味は異なります。
他の数字が順調でも、「あれ、本来ならこのビジネスはこのKPIも重要なはずだけど、なぜ開示されてないのだろう」と、読んでみると面白いかも知れません。 あとはTAM※8などもそうですね。xx兆円みたいなものは絵にかいた餅なので、自らの手で「単価はxx円で、この商品を実際に買ってくれるのは他社の類似商品に鑑みてyy人だろう」と、検討してみることも良い手だと思います。
※8 TAMとは、「Total Addressable Market」の略で、とある市場で獲得可能性のある最大の市場規模を指します。
ひっきー : 「IR資料は疑ってかかれ」…たしかに、そう思うことはありますね。自社に有利な情報と言うか、有利に見えるような見せ方をしている資料はあります。特に、決算説明資料のようなテンプレが決まっていない資料には、その傾向が見られます。
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