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奥村美里さんに取材しました(2)

調査不足の情報をツイートして失敗

ひっきー : 企業分析に関する失敗談や、苦労話などがあれば教えてください。

奥村さん : 前提を知らないことにより、間違った情報をツイートしてしまったことが失敗談です。とあるtoC※9企業について「預かり金を元手にキャッシュフロー※10を回している」と投稿したのですが、前職がその企業だった方に長文でこっぴどく怒られました。

※9 toCとは、消費者(カスタマー)向けのビジネスモデルのことです。「トゥー・シー」と読みます。BtoCも同じ意味です。
※10 キャッシュフローとは、現金・資金(cash)の収支(flow)のことです。具体的には、企業が営業活動などによって稼いだ現金から、支払った現金を引いて「残った現金」のことを指します。

財務諸表※11やIR資料だけから読み取ると、そう判断してもおかしくないのですが、「ホンマかい」と、そのサービスの法務Q&A等までたどればよかったです。当時はまだフォロワーもそれほど多くありませんでしたが、今となっては発信力も看過できない3万フォロワーを超えているので、より一層気をつけています。

※11 財務諸表とは、企業の状態を知るための健康診断書のようなものです。企業が決算期になると、開示情報として発行します。

企業分析の勉強におすすめの書籍

ひっきー : 初心者の方には、企業分析はハードルが高く感じると思います。どのようにして基礎を学んだのでしょうか?また、師匠のような人はいらっしゃるんですか?

奥村さん : 基礎は本から学びました。コーポレートファイナンスにまつわる本、管理会計がわかる本、会社法がわかる本、、、などなど。どれもP/LとB/Sの違い、限界利益とは、株主総会の決議事項とは、といった初心者向けの内容です。

その中でも、私が初心者の方におすすめしたいのは、以下の3冊です。興味があれば、ぜひ読んでみてください!

①コーポレートファイナンス 戦略と実践

コーポレートファイナンス 戦略と実践

田中 慎一[著]、 保田 隆明[著] 2,860円(税込)

P/LとB/Sの違いって何?ROI(投下資本利益率)とかの指標って何を指しているの?という状態から、読み終える頃には「業価値とはなんたるか」、「自分で企業価値を測るには」...と、ファイナンスの基礎は全て習得できます。よく知っている企業を事例に挙げながら解説してくれるため、頭がこんがらからずついていけます!

②「数字」が読めると本当に儲かるんですか?

数字」が読めると本当に儲かるんですか?

古屋悟司[著]、 田中靖浩[その他] 1,540円(税込)

「売上が上がっても利益は落ちた」というのは、企業がよく陥りがちな罠ですが、このカラクリは財務諸表から直接得られる情報ではありません。実は、普段なじみがない「管理会計」で企業の採算性が測れるのですが、この一冊で管理会計のイロハがわかります。

③世界一楽しい決算書の読み方

世界一楽しい決算書の読み方

大手町のランダムウォーカー[著] 1,540円(税込)

「簿記を習得しても、財務分析ができるようにはならなかった…。」そう、簿記は財務諸表を作るだけであり、読む力は別途訓練が必要です。そんな時は、クイズを解きながら楽しく財務諸表を読む力を補いましょう。本書は、身近な数社を比較することを通じ、財務諸表と実際のビジネスをひも付けるため、生きたP/LとB/Sを学ぶことができます。

ちなみに、師匠はバフェット・コード※12さんです。バフェット・コードさんのサービスには何度も助けられてますし、本人のツイートもスタンスがはっきりしているので、発信の仕方を見習うと良いかもしれません!

※12 バフェット・コードさんは、企業分析のサポートツール「バフェット・コード」を運営している方です。また、経営者や投資家の視点で、企業分析について積極的に発信されています。

ひっきー : たしかに、運営されている「バフェット・コード」は無料で使えて大変便利なツールですよね。 私は、マネックス証券の「銘柄スカウター」や、GMOクリック証券の「企業分析ツール」をメインに使っていますが、最近はバフェットコードさんも使わせてもらっています。

注目している業界と分野

ひっきー : 奥村さんが注目している業界・分野は何ですか?また、それはなぜですか?

奥村さん : ESG※13の分野は注目しています。ESG銘柄というより、各企業のESGの取り組み側です。もう見過ごすわけにはいかないフェーズにきている、というのが理由です。

※13 ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字を取って作られた言葉です。企業や団体が、中長期的に成長するうえで重視すべき要素として、注目されています。

ESGに取り組んでいないことで、機関投資家の投資条件から除外されてしまいます。ポイント制になっており、xx点を超えないと対象外とする機関投資家が増えてきているんです。まるで、センター試験の足切りですね。どんなに業績を伸ばしていても、ESGへの取り組みを怠っていると、機関投資家の足切りに合うので資本コスト※14は上がります。

※14 資本コストとは、「会社が資金調達するときにかかるコストのこと」です。おもに、株式発行による調達や、借り入れなどがあります。

そういう背景で各社一斉に取り組んでいますが、まだダイレクトヒットでESGの取り組みが企業価値に直接貢献した事例は限られているので、今後どうなるかが楽しみです。

ひっきー : ESGについては、株式市場で話題になっていますが、私は全くの無頓着でした…。今後はもう少し意識して見ていこうと思います。

楽しんで続けることが大切です!

ひっきー : 最後に、投資初心者の方に伝えたいことがあれば教えてください。

奥村さん : 株式投資も企業分析も楽しむことが大切です。なぜあの企業は株価が上がっているのか、売上は伸びているのか、その「なぜなのか」を飽きることなく続けていけば、必ずや血肉となります。飽くことなく楽しんで続けましょう!

そして願わくば、共闘できる友人やライバルを見つけましょう。もちろん、TwitterのようなSNS上でも問題ありません。間違いなくお互いの糧になります。

ひっきー : 今回、奥村さんに取材をお願いしたきっかけは、とあるセミナーでのプレゼンテーションでした。 企業に対してここまで詳しく見ているのかと驚き、お声を掛けずにはいられませんでした。この取材では、奥村さんの人となりや歩んできた道についてうかがいましたが、次回は、初心者の方が企業分析する方法など、実践的な内容を教えていただこうと思います。みなさん、ご期待ください!

…奥村美里さんへの取材、いかがでしたでしょうか?最後に、ここまで記事に目を通してくださったみなさんと、この取材を承諾していただいた奥村さんに感謝の意を述べて、終わりとさせていただきます。ありがとうございました!

奥村美里さんのTwitterアカウントはこちら

ひっきー

この記事の執筆者

ひっきー

投資歴18年目の株初心者アドバイザーです。2005年からの投資成績は+2億円を突破しました!2009年に発売した著書『はじめての株1年生 新・儲かるしくみ損する理由がわかる本』は、累計59,000部のロングセラー。その他、数多くの金融系メディアにも寄稿しています。

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