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中小企業のM&Aが急増!東海地方で急成長する名南M&AのIR担当者さんに突撃取材しました(後編)

やさしい株のはじめ方編集部担当:やさしい株のはじめ方編集部

最終更新日:2023年1月17日

やさしい株のはじめ方の管理人ひっきーとライターのにしけいが、名古屋を中心に東海地方でM&A事業を展開する名南M&A(7076)(以下、名南M&A社)のIR担当者さんに、事業のおもしろさビジネスモデルの特長などを突撃取材しました!

名南M&A社の事業内容や解決する課題を紹介した前編の記事に続いて、こちらの後編ではビジネスモデルや業績などより具体的な内容に迫ります。会社の知識がゼロの方でも読み進められるように書いていますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。

名南M&A社の儲けの源泉は?収益構造をわかりやすく解説

前編で名南M&A社は「M&A仲介業務」をおこなっていると説明しました。M&A仲介業務は、買収してほしいと考えている企業と、買収したいと考えている企業をマッチングする業務でした。

このように、企業同士を引き合わせるビジネスの場合、「仲介手数料」が主な収益源となります。M&A業界において、仲介手数料には下のような種類があります。

M&A仲介事業の手数料
仲介手数料の種類 概要
着手金 M&Aの仲介依頼を受けたときに顧客から受け取るお金
中間報酬 M&Aの相手が決まり、買い手と売り手の双方で合意したときに顧客から受け取るお金
成功報酬 M&Aが完了したあとに顧客から受け取るお金

名南M&A社の場合、「報酬の大部分を案件成約時に受領する成功報酬型のビジネスモデル」と説明があるので、最後までM&Aの支援をおこない成功させられるかがカギとなります。

したがって、収益構造を計算式で表すと下のようになります。

売上の計算式

売上=成約件数×成功報酬

成功報酬は案件の規模によって変わるため、成約件数をいかに増やすかが、業績成長に必要なこととなります。成約件数を増やすためには、従業員を増やし、M&Aを成功させるための教育を施さなければなりません。

指さしひっきー

実際、名南M&A社では従業員数を増やしており、拠点も新設しています。中長期的に成長するための投資をしっかりおこなっていますね。

名南M&A社の業績と注目ポイントを解説

名南M&A社の収益構造を理解したところで、業績の推移を見ていきましょう。まずは、基本情報として売上高と営業利益の推移を見ていきます。

売上高と営業利益の推移

まずは、売上高と営業利益の推移を、マネックス証券銘柄スカウターを使って見ていきましょう。

青色の棒グラフ売上高赤色の折れ線グラフ営業利益を表しています。左から6年分が過去の実績を、右側のピンク色でハイライトされている部分は今期の予想業績です。

売上高を見ると、過去6年間増加し続けており、今期も成長が見込まれています。

指さしひっきー

成長率が年によって大きくブレているのが気になるかもしれませんが、これは年によって成約する案件の数や案件あたりの売上高が変わるためです。案件次第で売上高の伸び率が変わってしまうので、売上高の成長率に注目するのではなく、成約件数が増えているかに注目したほうが良いでしょう。

また、営業利益は2017年と2021年を比べると増加していますが、2018年と2021年は前年比で減少していて、年によってばらつきがあるようです。

それでは、年によって営業利益にばらつきが出る理由を探るため、名南M&A社の売上原価と販管費について、それぞれ売上高に対する比率を見ていきましょう。売上高に対する原価の比率を「原価率」販管費の比率を「販管費率」と呼びます。

M&Aアドバイザーの推移

営業利益が減少した2018年と2021年に注目しましょう。2018年は販管費率が、2021年は原価率が上昇しています。これが営業利益の減少に影響しているようですね。

指さしひっきー

原価率と販管費率が上昇した理由が何なのか、決算書を使って探っていきましょう!

2018年は地代家賃が増加したため営業利益が減少

まずは、2018年に販管費率が上昇した理由に迫ります。名南M&A社の上場年である2019年に発行された「上場申請のための有価証券報告書(有価証券届出書)」を見ると、販管費の中で「地代家賃」が最も増えているのがわかります。金額にして1,500万円の増加です。

それでは、なぜ地代家賃が増えたのでしょうか。その謎を探るため、「設備投資等の概要」を見てみます。

赤色の下線部分によると、本社のオフィスを移転したようですね。つまり、オフィス移転によって地代家賃が増加し、営業利益の減少につながったと考えられるのです。

ちょうどこの年は従業員数が6名増えており、これまでの増加ペースと比べて高くなっています。

指さしひっきー

従業員数が増えたことと今後の業容拡大に備えて、広いオフィスに移転したと考えられます。会社が成長するために必要な投資なので、悪い減益ではないでしょう。続いて、2021年の営業利益の減少理由を調べていきましょうか!

2021年は銀行への案件手数料が増加したため営業利益が減少

次に、2021年に営業利益が減った理由を調べていきます。もう一度、原価率と販管費率のグラフを見てみましょう。

M&Aアドバイザーの推移

2021年は原価率が前年比で9ptほど上昇しており、営業利益の減少につながったと考えられます。それでは、名南M&A社の売上原価の中身を探っていきましょう。

上の画像は、有価証券報告書の中にある「売上原価明細書」です。名南M&A社の場合、2020年と2021年を比べると、経費の金額が3.1億円から5.1億円に急増しているのがわかります。売上原価明細書の下を見ると、経費の内訳が載っているので、そちらを見ていきましょう。

経費の内訳を見ると、「案件紹介料」がほとんどを占めているのがわかります。そして、案件紹介料が2.9億円から4.8億円に増加しており、これによって売上原価が増加して営業利益が減少したと考えられます。

案件紹介料は、ひとことで説明すると「金融機関など、M&A案件を紹介してくれた取引先に対するお礼」です。

2021年は金融機関などからの紹介が多かったため、案件紹介料が急増したようです。

指さしひっきー

金融機関からの案件が多いかどうかで原価率が変化するということでしょうか?

そのとおりです!金融機関からの案件が多いほど営業利益率が下がりやすくなります。金融機関からの案件が多いかどうかは年によって変わるので、営業利益率がブレる点にご注意いただきたいです。

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

ありがとうございます!金融機関からの案件獲得は名南M&A社の重要な戦略のひとつなので、営業利益率の上下に一喜一憂しないほうが良さそうです。それよりも、成約件数を増やして売上高を積み上げられているかに注目して見ていきたいですね。

M&Aアドバイザーの推移

続いて、売上高や営業利益を生み出す原動力となる、M&Aアドバイザーの人数を見ていきましょう。名南M&A社の決算説明資料によると、下のようになっています。

M&Aアドバイザーの人数は毎年増え続けており、2022年9月期は前年比で13人も増加しています。このうち、アドバイザーの人数は前年比で10人増加となっており、これまでで最も多くの人数を採用できています。これは、将来会社が成長するために重要なことです。

名南M&A社の儲けの源泉は?収益構造をわかりやすく解説」で説明したように、M&A仲介業務の売上は、下の計算式で求められます。

売上の計算式

売上=成約件数×成功報酬

M&Aアドバイザーの人数が増えると、その分だけ扱えるM&Aの成約件数が増えるため、同時に売上も増えていきます。つまり、2022年9月期に多くのアドバイザーを採用したことで、今後の成長力が高まったと考えられるのです。

指さしひっきー

M&A業界は転職が多いと言われますが、御社が順調に採用できているのはなぜですか?

当社で働くメリットとして、「M&A案件を最初から最後まで一気通貫で経験できる」点が挙げられます。これは他社では得られないメリットです。

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

そうなのですね!M&Aの引き受けから完了までを経験できるとのことですが、他社はどのような業務体制なのでしょう?

主に大手企業が比較対象となるのですが、大手は基本的に分業体制を敷いています。そのため、営業の人は営業のみを、契約書作成の人は契約書作成だけを担当します。企業側にとっては非常に効率が良い仕組みなのですが、優秀な人ほど達成感が得にくく、一気通貫で案件を担当したいと考える方が多いのです。

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

なるほど!確かに、一気通貫で案件を担当できたほうが、達成感や充実感はより高くなりそうですね。名南M&A社の一気通貫体制は、優秀な人を集めやすい体制と言えそうです。

1件当たり売上高

名南M&A社の決算説明資料では、1件当たりの売上高も開示されています。

最新の2022年9月期の1件当たりの売上高は1,890万円と前年から減っていますが、2016年9月期の1,670万円と比べると増えていることがわかります。

M&A仲介業務の売上は、下の計算式からわかるとおり、成約件数と成功報酬で決まるのでした。

売上の計算式

売上=成約件数×成功報酬

1件当たりの売上高は、このうち「成功報酬」にあたるものです(厳密には、成功報酬の平均額です)。この数字が伸びれば売上も増えますが、獲得した案件の規模次第で成功報酬の金額が変わるため、「増えているほうが望ましい項目」と考えておくのが良いでしょう。

指さしひっきー

2022年9月期は1件当たりの売上高が減ってしまいましたが、長期的な視点では成功報酬の平均額が高まってきているように感じます。この理由として何か考えられるものはありますか?

上場と過去の実績によって当社の信頼性が高まり大型案件や質の高い案件を獲得できるようになってきているためと考えています!

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

ご説明ありがとうございます!上場によって信頼性が高まったとのことですが、引き続き案件を積み上げていくことで、さらなる信頼性の向上が期待できます。これから1件当たり売上高がどれくらい増えていくのかに注目したいですね!

「アドバイザー数」と「グループ企業」、「専門性」がカギ!名南M&A社の成長戦略をわかりやすく解説

次に、名南M&A社がどのような成長戦略を描いているか、3つのポイントを説明します。

M&Aアドバイザー数を増やして獲得できる案件を増やす

名南M&A社が提供しているM&A仲介業務は、企業1社に対してアドバイザーを1人用意し、M&A支援サービスを提供することで手数料を受け取っています。

この支援サービスの提供には、店舗や工場といった資本は不要ですが、アドバイザーの労働力が必要不可欠です。したがって、今後売上を積み上げていくためには「アドバイザーの増員」が一丁目一番地の取り組みとなります。

指さしひっきー

アドバイザーは年間何名の採用を計画されていますか?

年間10名を目指しています!

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

2022年9月期は計画どおり10名採用できています。アドバイザーの人数は、四半期ごとに開示される決算説明資料の中で公開されていますので、定期的にチェックしたいですね!

グループ企業と協業して顧客を開拓する

名南M&A社は、名南経営グループに属する企業です。前編の「提供するサービス内容の違い」でも紹介したように、名南経営グループには会計支援や税務コンサルティング、経営コンサルティングなどを提供する企業が多く属しています。

そのため、グループ全体で顧客をたくさん抱えているのが特長です。名南M&A社にとっては、グループ会社の顧客の中からM&Aを検討している企業を発掘できるため、営業によって案件を獲得している他社と比べて効率的な案件収集ができます。

数あるグループ企業の中でも、現在協業を進めているのが「名南経営ソリューションズ」です。

名南経営ソリューションズでは、全国の会計事務所向けにクラウドサービス「MyKomon」を提供しており、顧客として会計事務所を多く抱えています。また、会計事務所自体も顧客を多く抱えており、顧客からの要望を受けてM&A仲介をおこなう会計事務所もあります。

このような現状を受けて、名南M&A社では会計事務所向けにM&Aの協業プランを提供しています。会計事務所にM&A仲介のノウハウを提供しつつ、案件を獲得していく戦略です。

指さしひっきー

経営コンサルティングを提供するグループ企業に属しているからこそ使える技ですね!これは強い!

専門性を高めて「選ばれる」M&A仲介業者を目指す

前編「製造業と医療業界のM&Aに強み」で紹介したとおり、名南M&A社は製造業や医療業界のM&Aに強い会社です。特定の業界に特化してM&A実績を積めば、業界特有のノウハウが蓄積されるので、「この会社に任せれば安心!」という状態を作り上げられます。

また、名南M&A社が注力している製造業や医療業界は、M&Aにあたって業界特有の専門知識が必要です。そのため、他のM&A仲介業者にとって参入のハードルが高く、競合から攻め込まれにくいと言えます。

このような特定の業種に絞って事業をおこなうことを「ニッチ戦略」と呼びます。ニッチ戦略は、市場の隙間を狙って小さな市場で高いシェアを獲得する戦い方です。

名南M&A社の場合、競合相手は大手M&A仲介業者となります。幅広い業種の案件を獲得する大手に対抗する戦略として、ニッチ戦略を採用しているというわけです。

指さしひっきー

製造業や医療業界に深く入り込むことで信頼感を高められるので、経営者間で「名南M&A社に頼むといいよ」とお墨付きをもらいやすくなりますね!

そのとおりです!実際、医療業界ではお医者様からお墨付きをいただけているんですよ!

名南M&A株式会社大塚様

名南M&A社によく寄せられる質問を一挙公開!

最後に、名南M&A社に寄せられる質問のうち、よくある質問を3つご紹介します。

どちらも個人投資家からよく寄せられる質問だそうです。「みんなが気になっていること」であり、会社の理解を深めるうえで役立つ質問なので、ぜひ読んでみてくださいね!

名証メイン市場に上場しているが、市場変更の予定はあるか?

市場変更は「未定」です。

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

ご回答ありがとうございます!名証メインだと出来高が小さくて取引しにくいのが難点だと思います。ぜひ東証への上場も検討していただけるとうれしいです!

アドバイザーの人数は今後どれくらい増やす予定か?

アドバイザー数は年間10名前後、増やしていく予定です!

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

2022年9月期はちょうど10名増員となっており、目標は達成されていますね!来期以降も楽しみです。ちなみに、M&A業界は転職が多いとおっしゃられていましたが、転職の理由にはどのようなものがありますか?

理由は大きく3つあります。

名南M&A株式会社大塚様

転職理由

  1. M&Aアドバイザーとして独立して仲介業務をおこないたい
  2. 入社前に想定していた業務内容と違った
  3. 個人の都合で退社したい

指さしひっきー

理由を教えていただきありがとうございます!独立を希望する方もいらっしゃるんですね。

そうですね、当社でM&A仲介業務をひととおり身に付けたあと、すべて自分の裁量で挑戦したくなって独立される方もいらっしゃいます。一部の方とは独立後も協業していますよ!

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

そうなのですね!貴重な情報をありがとうございます。独立後も協業できるほど、信頼関係が構築できているのは良いですね!

東京や他の地方に進出する予定はあるか?

まずは東京への進出についてお答えします。ズバリ、東京進出は「ない」です。

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

そうなのですね!グループ会社が東京に支社を構えているのに、とても意外です。

実は、弊社が大阪や静岡に進出した理由には、そこに提携している金融機関や行政機関があるからなのです。彼らから「拠点を作ってくれれば、もっと多くの案件を紹介できる」と言われたため、拠点を開設することにしました。

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

つまり、東京には提携している金融機関や行政機関はないということですか?

そうなります。逆に考えると、他の地方で金融機関や行政機関とのつながりができれば、その地方の案件を担当したり、拠点新設の打診があれば支社を作ったりします。

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

そうなのですね!ちなみに、他の地方の金融機関や行政機関とのつながりは、どのようにして作られるのでしょうか?

「提携金融機関を募集している」とリリースを出しています。リリースを見た金融機関から面談の依頼をいただけるので、そこで情報交換しながら関係性を構築しています!

名南M&A株式会社大塚様

個人投資家にひとこと!名南M&A社からのメッセージを紹介します

弊社は「短期的な急成長を目指していない」点をご理解いただきたいです。

名南M&A株式会社大塚様

名南M&A社の経営スタイル

顧客に寄り添い、共存共栄しながら成長していく

この経営スタイルにあるとおり、共存共栄が弊社のモットーです。そのため、M&A案件を短期間でたくさんこなし、毎期営業利益を刈り取っていくスタイルではありません。したがって、「爆発的な利益を上げました」という決算は出ないと考えていただきたいです。

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

なるほど!確かに案件ごとにアドバイザーが専任で付くので、1人が担当できる案件にも限りがありますよね。

そうなんです。ただし、顧客と信頼関係をじっくり構築していった結果、M&A案件を紹介してもらえたりするので、中長期で見ると業績がしっかり積み上がっているはずです。ぜひ、長い目で応援していただけるとうれしいです!

名南M&A株式会社大塚様

指さしひっきー

メッセージありがとうございました!

まとめ

この記事では、名南M&A社のビジネスモデルや財務数値などを紹介してきました。売上高の分解から、「アドバイザー数を増やせるか」が今後の決算での最重要ポイントとなります。四半期ごとに開示される決算説明資料の中でアドバイザー数が紹介されているので、忘れずに定点観測していきましょう。

専門性を武器に地方のM&A需要を獲得しながら、今後どのように成長していくのか注目ですね!

指さしひっきー

当サイトでは、上場企業に取材させていただき、事業内容や成長戦略などを株初心者向けにわかりやすく解説した“企業紹介記事”を公開しています。こちらで記事の一覧を公開していますので、ぜひご覧ください。株初心者の方が企業を知るきっかけになれますと幸いです。

また、当サイトの取材を希望される上場企業の担当者様は、お問い合わせフォームからご連絡をお願いいたします。ご連絡をいただいた担当者様に、企業紹介記事の企画概要資料をご送付するほか、取材のご案内をいたします。

ディスクレーマー

当記事では、筆者独自の見解を述べることがありますが、証券およびその他の金融商品の売買や引受けを勧誘する目的ではなく証券およびその他の金融商品に関する助言や推奨をするものではありません。また、個別企業の業績予想や株価予想、投資推奨を提供する予定はありません。投資判断等は、自己責任でお願いいたします。

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会検定会員補を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

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