オーケーエムの奥村社長に突撃取材!事業内容や今後の展望などをお聞きしました
(オーケーエム 奥村社長)
やさしい株のはじめ方編集部(にしけい)が、工場やビル、船など幅広い分野で使われる「バルブ」を製造・販売するオーケーエム(6229)に突撃取材しました!
今回は、オーケーエムの奥村社長に事業内容や同社を取り巻く国内外の市場環境、決算の注目ポイント、今後の経営戦略などをお聞きしました。
この記事では、株初心者の方がオーケーエムについて理解を深められるよう、わかりやすい言葉でていねいに解説します。ぜひ最後まで読んでくださいね。
バルブとは?
そもそもバルブとは、流れるもの(流体)を「流す」「止める」「絞る (調節する)」 ための機器のことです。一番身近なバルブとして、水道の蛇口を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
バルブは水だけでなく、空気やガス、泥、粉などの流体に対しても使えます。さらに高温や高圧、酸性といったさまざまな状況でも利用可能です。
<バルブとは?>
(出典:オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料[PDF])
事業内容をわかりやすく解説
オーケーエムは「いい流れをつくる。」というパーパス※1を軸に、多様なバルブの開発・設計から製造、販売までワンストップサービスを提供するメーカーです。
※1 パーパスとは、企業の存在意義を指します。
主要製品は「バタフライバルブ」、「ナイフゲートバルブ」、「ピンチバルブ」になります。
バルブの種類 | 概要 |
---|---|
バタフライバルブ | 輪っかの中の円盤を90度開閉することで、水やガスなどの流れるものを流したり止めたりするバルブ |
ナイフゲートバルブ | 鋭いエッジを有するプレートを出し入れすることによって、水はもちろん、泥や粉などを流したり止めたりするバルブ |
ピンチバルブ | ゴムチューブをつぶしたり、解放したりすることによって流体を流したり止めたりするバルブ |
<製品別売上高構成比>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
にしけい
「バタフライバルブ」が会社全体の売上の84%を占めています(2023年3月期現在)。各主要バルブの特徴は、後ほど詳しく説明しますね!
バタフライバルブとは?
オーケーエムの主要製品の一つが「バタフライバルブ」です。輪っかの中の円盤である弁体(配管内の流路を閉じたり開けたりする部品)を90度回転することで、水や空気、ガスなどを止めたり、あるいは絞ることで流量を制御したりできます。流量を調整する機能に優れ、省スペースでも設置できるのが特徴です。
<バタフライバルブ>
(出典:オーケーエム 公式サイト)
同社のバタフライバルブは、建築、発電、造船、各種プラントなど幅広い業界に提供されており、有名どころだと東京ディズニーシーにも使われています。
特に、バタフライバルブの中でも舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置用バタフライバルブである「船舶排ガス用バルブ」では、オーケーエムが世界シェア40%超を獲得するトップ企業です。世界的な環境規制対応船の建造増加に伴い、今後も「船舶排ガス用バルブ」の売上が拡大していくことが見込まれています。
<世界シェアの40%超を占める船舶排ガス用バルブ>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
ナイフゲートバルブとは?
次に「ナイフゲートバルブ」は、鋭いエッジを有するプレートを出し入れすることで、流体を流したり、流体を切りながら止めたりする機能を持ったバルブです。ヘドロや紙パルプなど、固体寄りのドロっとした流体に使われています。
<ナイフゲートバルブ>
(出典:オーケーエム 公式サイト)
ピンチバルブとは?
オーケーエムの3つ目の主力製品「ピンチバルブ」は、ゴムチューブを押し挟んで流路を開閉するバルブです。ナイフゲートバルブと同様、ヘドロや紙パルプなど固体寄りのドロっとした流体に使われています。
<ピンチバルブ>
(出典:オーケーエム 公式サイト)
ここまでの各バルブの説明を整理すると、下の表のようになります。
バルブの種類 | 主な用途 |
---|---|
バタフライバルブ | 流れやすい水や空気、ガスなどに利用 |
ナイフゲートバルブ | ヘドロなどのドロドロしたもの、紙パルプやセメントなど比較的処理がむずかしい流体に利用 |
ピンチバルブ |
オーケーエムはバルブを大量に作り置きして売るというよりも、顧客それぞれのニーズに合わせた「カスタマイズバルブ」を提供していくことが強みになります。
奥村社長
にしけい
顧客のニーズに合わせてカスタマイズしたバルブを作ることで、各業界の特徴を踏まえた製品作りのノウハウも蓄積されていきますね!
オーケーエムは、幅広い顧客層・市場向けに多様なバルブを提供できることも、特徴の一つとして挙げられます。
当初、バルブを作りはじめたときは、比較的処理がむずかしい流体を取り扱う顧客と取引する機会が多かったため、その際に流体制御のノウハウや情報を蓄積することができました。例えば、1950年代に開発したナイフゲートバルブは、未だに紙パルプ業界の顧客から注文をいただけている状況です。
顧客のニーズに合わせて製品を改良し、顧客から評価していただくことで、その改善点を他の業界に応用したカスタマイズバルブを提供したり、コンサルティングをおこなったりもできます。
にしけい
付加価値の高い製品を販売するだけでなく、コンサルティングサービスも提供することで、顧客満足度を高めつつ、利益率も向上できそうですね!
顧客へのコンサルティングは、用途に応じて最適なバルブや材質を提案することができるほか、顧客とのやり取りを次の開発に活かしたり、顧客への情報提供を強化したりすることにもつなげられるでしょう。
オーケーエムは、顧客が新しいシステムなどを開発している段階からコンタクトを取り、顧客と一緒に開発していくことをモットーとしています。
にしけい
顧客と一緒に開発していくことで、それぞれの業界特有のニーズも把握できるのでしょうか?
そうですね。開発段階から関与させていただくことで、顧客がバルブに求めるニーズを最初の段階で捉えられます。そのような取り組みがすべて成功するわけではないですが、できるだけ最初に開発をして市場に出し、顧客ニーズにマッチすれば、弊社の売上のベースになっていくと言えますね。
奥村社長
顧客層
オーケーエムでは、売上高の半分ほどが造船向けになります。陸用では建築設備、高層ビルの空調設備、化学プラント向けの需要が伸びている状況です。
また、半導体関係、リチウムイオン電池などの2次電池分野でのプラント設備・装置に使われるバルブの需要が増えています。化学プラントに関しても、半導体や2次電池向け樹脂など、それぞれの化学プラントに使われるバルブが伸びている模様です。
にしけい
台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出やラピダスによる北海道での工場建設などが話題に挙がっていますが、半導体市場の拡大は御社にとっても追い風になっているのでしょうか?
そうですね。半導体分野では、工場建屋の空調設備やクリーンガス、純水、排水処理のラインのほか、顧客が材料を加工して製品を作られる際に、原材料の部分に必ず流体があるため、それを制御するためのバルブが必要になります。
奥村社長
にしけい
半導体業界とバルブも密接に関係しているのですね!
セグメント売上高
ここでは、製品別と国別の2つの観点から、売上高の内訳を見ていきます。
製品別の売上高
以下は、オーケーエムの主力製品別の売上高構成比を表したグラフです。
<製品別売上高構成比>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
にしけい
冒頭でも説明したように、水や空気、ガスなどの流体制御に用いられる「バタフライバルブ」が、会社全体の売上高の84%を占めています!
国別の売上高
次に、オーケーエムの国別の売上高を見てみましょう。マネックス証券の銘柄スカウターを使うと、国別の情報が手に入ります。
<国別の売上高>
(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)
にしけい
国内が7割、海外が3割となっています。地盤とする国内だけでなく、海外市場の動向も注視しましょう!
強み
オーケーエムは以下のような特徴を有しています。
オーケーエムの特徴
- 約20種類の型式をラインナップ
- 多様な流体に合わせたカスタマイズは10万種類以上
- 幅広い取扱製品と耐熱温度範囲で、顧客のニーズに細やかに対応
このような特徴を基にした同社の強みは、以下の3つの切り口にまとめられます。
オーケーエムの強み
- 営業・マーケティング
- 製品開発機能
- カスタマイズ製品
それぞれ見ていきましょう!
オーケーエムの強み①営業・マーケティング
営業・マーケティングの切り口におけるオーケーエムの強みは、高い「営業力」を武器に、70年以上にわたり幅広い業界で顧客基盤を確立していることです。「東京ディズニーシー」や「ユニバーサルスタジオジャパン」、「六本木ヒルズ森タワー」などにもオーケーエムの製品が使われており、大手優良顧客より高い評価を勝ち得ていることがうかがえるでしょう。
<オーケーエムの強み①営業・マーケティング>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
そして、時代ごとに求められるバルブのニーズを捉え、多岐にわたるノウハウを蓄積できていることが、オーケーエムのとても大きな強みです。新しいニーズが出てきたときに、設計・開発にいち早く対応ができることが特徴として挙げられます。
オーケーエムの強み②製品開発機能
2つ目の製品開発機能の切り口における強みは、自社で各種実験プラントを持ち、さまざまなデータを収集・解析することで、世界に貢献する独創的な技術を創造する「製品開発力」を有していることです。
<製品開発機能>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
設計・開発段階において、流体及び顧客の利用環境をできるだけ再現し、バルブが正確に機能するか検証を重ねています。バルブの耐熱温度範囲は「-196~700℃」となり、その環境下で機能を確かめてデータを積み重ねることで、次の開発に活かしたり、顧客の悩みに対して有益な情報を提供したりすることができるでしょう。
オーケーエムの強み③カスタマイズ製品
3つ目のカスタマイズ製品の切り口における強みは、幅広い業界に対応できる製品ラインナップを提供し、顧客の個別ニーズに合わせたカスタマイズバルブを開発・供給する「カスタマイズ力」を有していることです。
<カスタマイズ製品>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
「バタフライバルブ」や「ナイフゲートバルブ」といった型式(機種)は約20機種あり、25ミリぐらいから2メートルぐらいの配管に対応できるサイズのバルブを提供しています。また、水、ガス、固体、液体(酸性の強いもの、アルカリ性の油など)といった流体に適した材質、レバー式、電動式、シリンダ式といった制御方法、さらに開閉を検知するセンサーなどの部品も多種多様です。
型式、サイズ、材質、制御方法、部品の掛け算になるため、オーケーエムが取り扱うバルブは10万種類以上にも上ります。そして、顧客ニーズに合わせてカスタマイズし、組み上げ、短納期で提供していくことが同社の大きな特徴です。
にしけい
納期は製品によって異なってくるのでしょうが、平均的にどのくらいでしょうか?
全体平均では3か月ほどです。短いものでは注文をいただいた当日に作り置きのバルブを提供しています。半製品の状態でストックしておき、顧客ニーズに合わせてモーターを乗せたり、塗装を変えたりして1か月以内に出していくものもあるでしょう。さらに、フルカスタマイズの場合には1年越しで設計、製造して提供するものもあります。
奥村社長
にしけい
在庫の管理も徹底されているのでしょうか?また、業界平均と比較して在庫の回転期間などに特徴はありますか?
部品で置いておくものもあれば、完成品もあるため管理は大変ですが、市場・顧客の動向を読みながら在庫を持つ形になります。
標準的なバルブを大量に販売されているメーカー様と比べると、弊社のほうが回転期間は長く、在庫を多く抱えていると言えるでしょう。リードタイムをできるだけ短くして在庫を少なくするという課題に取り組んでいる最中です。
奥村社長
オーケーエムはこれら3つの強みを活かし、製紙業界では「オーケーエムの名前を知らない会社はない」と言われるほか、造船業界では国内主要造船所の70%以上への納入実績を誇ります。さらに、「船舶排ガス用バルブ」では世界No.1の船用エンジンデザインメーカー「MAN社」と規制対応バルブを共同開発し、メインサプライヤーとしての地位を確立している状況です。
なお、世界的にインフレの環境下において、オーケーエムは去年、一昨年と2回値上げを実施しました。一部、競争が激しい分野においては値上げできていない先もありますが、概ね顧客の理解を得られているようです。ただし、即、値上げを受け入れていただける顧客もいれば、1年越しで実施した先もあります。
オーケーエムの歴史と考え方
ここからはオーケーエムの歴史と考え方をご紹介します。
祖業は鋸(のこぎり)製造所
オーケーエムは、1902年(明治35年)1月、滋賀県蒲生郡蒲生町で奥村清太郎氏が鋸(のこぎり)製造所を創業したことに端を発します。滋賀県は林業が盛んで、甲賀地域は鋸の産地であったという外部環境を活かして鋸製造所を創業しました。
<オーケーエムのはじまり>
(出典:オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料[PDF])
バルブ事業への転換も外部環境に合わせたものです。滋賀県の彦根市近辺はバルブの産地であり、明治30年代からバルブを作りはじめました。現在は彦根市を中心に27社前後のバルブメーカーがあり、さらに70~80社からなる関連企業でバルブ産地を形成しています。
にしけい
彦根市がバルブの産地として発展した要因として土地柄などが影響したのでしょうか?
彦根市は元々城下町であり、鎧などの鉄の加工、錺金具(かざりかなぐ)、仏壇といった細かな板金や刃物を取り扱う職人が多く存在していました。その職人のひとりが、信州の製糸工場で使われる蒸気用カラン(蛇口)を手がけたことを始まりとして、産業の発展と共にバルブ製造が地場産業として定着した歴史を持ちます。
奥村社長
オーケーエムは製材、つまり丸太から板材を切り出す際に使われる大きな鋸を作っていましたが、第二次世界大戦が終わった辺りから、モーターを使った自動鋸が台頭していきました。
そこでオーケーエムは、地場産業としてバルブの製造が盛んであり、戦後の経済成長に伴い水道インフラや工業インフラ需要が大きく伸びていくと見込み、1952年8月に鋸製造所からバルブコック専門工場に転換します。 1962年5月には、オーケーエムの前進となる株式会社奥村製作所を設立しました。
<オーケーエムのはじまり②>
(出典:オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料[PDF])
オーケーエムの祖業が鋸であることも、地場産業として広く「鉄の加工」が盛んだったことに由来しています。鋸は叩いて作る鍛造、バルブは溶かして作る鋳造のため、作り方は違いますが、鉄を扱うという共通性がありました。そして、鋸をまっすぐ平らに作る技術は、「ナイフゲートバルブ」の「ナイフゲート」と呼ばれる板を作るのに応用することができます。
にしけい
元々の祖業の技術が今も脈々と受け継がれていますね!私たちの身近な生活空間においてバルブが使われている事例もご教示ください。
一番身近なバルブは各ご家庭にある蛇口になりますが、弊社では蛇口を作っていません。一般の方が弊社の製品を目にする機会はとても少ないかもしれませんが、例えば、大阪駅にある駅ビルの屋上へ行くと、空調のためのクーリングタワーがあります。そこには水が流れる配管があり、弊社のバルブがついています。
「あべのハルカス」など高層ビルに設置された空調設備の配管、スプリンクラー、消火設備の大元にも使われていますね。また、新幹線のホームの空調設備やホーム下に設置されたスプリンクラーにもバルブが使われています。バルブは見えないところで活躍しているのです。
奥村社長
「三方よし」を重視
オーケーエムは、近江商人発祥の地に根付く企業として、創業以来、三方よし「売り手よし・買い手よし・世間よし」を意識した経営を実践しています。創業当初から今話題の「ESG※2」に近い考え方が根付いていたと言えるでしょう。
※2 ESG(いーえすじー)とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です。企業が長期的に成長するためには、経営においてESGの3つの観点が必要だという考え方を指します。
市場の状況
ここからはオーケーエムを取り巻く市場環境について見ていきましょう。今回は、下の2つのポイントに絞って紹介していきます。
オーケーエムを取り巻く市場環境
①国内市場規模推移
オーケーエムの2024年3月期 第2四半期決算説明資料によると、国内バルブ生産額は2021年度に5,000億円を超え、2022年度は5,700億円程度に増えています。全体の生産額が増えている背景としては、製品の値上げに加え、ステンレスを材料とするバルブの販売、生産が伸びたことが挙げられます。
<国内市場規模推移>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
今後、国内のバルブ生産額が減ることは想定しづらいですが、日本の人口が減り、設備投資が減る場合、国内全体の需要が縮小する可能性はあるかもしれません。ただし、これから先も時代に合わせてニーズが変化すると考えられ、的確にニーズを捉え、製品に反映していければ、伸びる要素は十分にあると言えるでしょう。
建築、発電、造船、各種プラントなど幅広い業界から需要があるほか、「脱炭素化」に伴う新エネルギーへの移行や温暖化ガスの削減といった環境規制対応の需要、半導体工場の建設に伴う需要なども発生する見込みです。
<海運業界を取り巻く主要な環境規制>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
②世界の新造船受注量の推移
さらに、世界の新造船受注量が増えていく見通しであることも、バルブ生産額の拡大に追い風になるでしょう。国土交通省のデータによると、海上輸送量が増えるほか、過去に大量建造された船舶の機器交換の時期もこれから迎えるため、代替需要が増える見込みです。オーケーエムは2020年辺りを底に、建造量、建造数が増えてくると予想しています。
<世界の新造船受注量の推移>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
にしけい
個人投資家には新造船の動向に注目している方が多く、御社も関心を集めているのではないでしょうか?
はい、弊社としましても船に関連していろいろ問い合わせをいただくことが増えていますよ。
奥村社長
決算の注目ポイント
続いて、決算の注目ポイントに移ります。個人投資家のみなさんに注目してほしいポイントの一つが、「売上高・受注高・受注残の推移」です。
また、オーケーエムが高い利益率を確保していることも注目に値するでしょう。自社で製品を製造販売して原価率を抑えられることが高収益性につながっています。2019年3月期から年々下がっているものの、それでも競合会社と比較すると高水準と言えるでしょう。
にしけい
これらの注目ポイントは、後ほど詳しく説明しますね!
売上高・受注高・受注残
以下はオーケーエムの売上高・受注高・受注残の推移です。
<売上高・受注高・受注残の推移のグラフ>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
上のグラフに示すように、受注は回復基調にあり、受注残も積み上がってきています。2024年3月期2Qには、受注残が2023年3月期3Q以来の過去最高を更新しました。
にしけい
受注残が増えていれば、将来の売上高が伸びることを意味します!
また、オーケーエムの組立工数が不足したことに加え、外注先の一つが事業縮小したことにより外部委託分の工数も不足していましたが、新たな外注先を確保してすでに立ち上げている状況です。
社内の工数も十分に確保し、工数不足は解消されており、受注回復に向けた活動を展開しています。将来的には、脱炭素に資する新たな製品を投入していく方針であり、更なる成長を期待できるでしょう。
にしけい
受注してから売上に計上されるまでの期間は概ねどれぐらいでしょうか?
受注してから売上高に計上されるまでのタイムラグは「3か月」程度です。
奥村社長
にしけい
受注高が翌四半期の売上高になるイメージですね!四半期決算にも注目しましょう!
営業利益率の推移
営業利益率は時系列では低下していますが、一般的なバルブメーカーより高い水準にあります。
営業利益率が低下している理由は、東近江工場の新設や人材採用、研究開発などの積極的な投資をおこなったことが要因です。
<営業利益率の推移>
(出典:マネックス証券の銘柄スカウター)
次に、営業利益率が一般的なバルブメーカーよりも高い理由についてです。オーケーエムは、計画的に大量生産・大量販売するビジネスモデルを採らず、顧客のニーズを的確に捉え、カスタマイズして販売しています。製品の付加価値を高めた状態で販売できるため、大量に製品を作って販売する一般のバルブメーカーよりも高くなっているわけです。
経済産業省が公表した「2022年企業活動基本調査確報-2021年実績」によると、オーケーエムに関連した「製造業」の営業利益率の平均は約5.7%です。同社の2023年3月期の営業利益率は9.0%であることから、相対的に高い収益性を誇っていることがわかります。
今後の経営戦略
ここからは、オーケーエムの今後の経営戦略を見ていきましょう。
にしけい
オーケーエムの中期経営計画について、投資家に絶対見てほしいポイントは、ずばり「脱炭素」関連の取り組みです!
脱炭素化により段階的にエネルギー転換が進む過程で、各段階に合わせてカスタマイズしたバルブ製品を提供することで業績の拡大が期待できます。後ほど詳しくご説明しますね!
キーワードは「脱炭素」
世界的な脱炭素化の流れを背景に、オーケーエムにとっても「脱炭素」が追い風になる見込みです。政府も今年8月、2024年度予算の概算要求として、脱炭素に向けたグリーントランスフォーメーション(GX※3)分野に2兆円超を要求しました。
※3 GX(じーえっくす)とは、温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギー中心へと転換し、経済社会システム全体を変革しようとする取り組みを指します。
<脱炭素社会に向けた世界の動き>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
オーケーエムは、2030年辺りからエネルギー転換の動きが活発になり、2050年辺りまでその動きが続くと見通しています。一気に脱炭素化が進むわけではなく、天然ガス、アンモニア、水素へと、段階的に脱炭素化が進み、各段階でバルブ製品を提案することで、業績を伸ばしていく形になる見込みです。
にしけい
御社は今後も中期経営計画を2次、3次と作成していくかと思われますが、脱炭素関連の需要が増えていくのを織り込む認識でよろしいでしょうか?
そうですね。バルブの世界は開発から売上・利益に寄与するまでの期間が長く、一般的に数年、船舶排ガス用バルブでは7年ほどかけて業績に寄与しました。クリーンエネルギーに使われるバルブに関しても、そのぐらいのスパンで取り組まなければいけないでしょう。
また脱炭素関連のビジネスは、今日存在していたニーズが急激に、かつ不連続に変わってくると予測されるため、入念に準備を重ね、その変化を狙っていく方針です。
奥村社長
中期経営計画の計数目標と取り組み
ここからはオーケーエムの成長戦略です。
同社は中長期ビジョン「Create 200」を策定し、2031年3月期に連結売上高200億円を目指しています。現在進行中の「第1次中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)」においては、2025年3月期に売上高124億円、営業利益率8%以上を目指す方針です。
<中長期ビジョンと中期経営計画の位置づけ>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
オーケーエムは中長期ビジョン「Create 200」の実現に向け、以下の4つの戦略を進めています。
戦略 | |
---|---|
Ⅰ | 成長市場に対応できる新商品開発と販売体制を確立する |
Ⅱ | 既存の商品力を強化する |
Ⅲ | 企業風土を変革し、サステナブルに成長・発展する |
Ⅳ | 社員満足度を向上させる |
詳しい内容については、オーケーエムの2024年3月期 第2四半期決算説明資料で紹介されています。基本経営戦略への理解を深めたい方は、開示資料をご覧ください。今回は、基本経営戦略を大まかに理解できるよう、インタビュア(にしけい)が気になった点のうち、まだお話を聞けていない以下の4つについて奥村社長にお伺いしました。
奥村社長にお伺いした4つのポイント
船舶排ガス用バルブの競争環境
にしけい
2024年3月期 第2四半期決算説明資料の49ページに、船舶排ガス用バルブの分野で「海外の競合他社が台頭してきており価格攻勢を受けている」と書かれていますね。競争環境が悪化する中、御社はどのような方針、戦略をお持ちでしょうか?
<船舶排ガス用バルブの競争環境>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
競合他社が台頭することにより、シェアが一定程度減ることはすでに織り込んでいます。ただし、全体のパイは成長しているため、売上は拡大させていけるでしょう。継続的に製品を改良、改善を重ねてコストダウンの取り組みも推進しており、一定程度のシェアを確保できると考えています。
また、製品を軽くする、コンパクトにするといったプラスアルファの価値を提供することで、引き続き顧客より評価をいただいていく方針です。
奥村社長
深堀型営業体制の構築
にしけい
2024年3月期 第2四半期決算説明資料の50ページに、「深堀型技術営業体制の構築」に取り組むと書かれていますね。「深堀型技術営業体制」とは具体的にどのようなものでしょうか?
<深堀型営業体制の構築>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
深堀型技術営業体制とは、顧客に寄り添って製品を開発するだけでなく、営業担当者に属人化してしまう情報を社内で共有し、生産性の向上や見込み顧客の獲得などにつなげていく体制です。さらに、顧客側からコンタクトを取ってもらえるようなコンテンツの拡充も検討しています。
営業、工場、設計担当といった誰もが、どこからでもウェブにアクセスできるインフラを整え、デジタルトランスフォーメーション(DX※4)を推進していく方針です!
奥村社長
※4 DX(でぃーえっくす)とは、デジタル技術を活用して生活やビジネスを変革することを指します。
ESGの取り組み
にしけい
御社のESGの取り組みについて教えてください。
弊社では、サステナビリティ(持続可能性)の考え方、取り組みを創業当時より実践しています。
奥村社長
<ESGへの取り組み>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
にしけい
他社に真似のできない「独創的な技術」をもって、顧客、社員、地域社会、株主に貢献する「三方よし」の実現を目指す想いが社是にも表れていますね!
<4つの社是>
(出典:オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料[PDF])
さらに、2022年にはパーパスを策定したほか、サステナビリティへの取り組みを効率的かつ計画的に進めるために、以下のような3つのマテリアリティを特定しました。現在は「サステナビリティ委員会」を設置してESGの取り組みを推進しており、ESGの考え方を中期経営計画にも盛り込む方針です。
奥村社長
<3つのマテリアリティ>
(出典:オーケーエム 個人投資家向けIRセミナー資料[PDF])
にしけい
創業時からサステナビリティの企業風土を持っているのは興味深いですね!
はい、今後もESGを経営の根幹に据えて事業を展開していきます!
奥村社長
社員満足度の向上
にしけい
「社員満足度の向上」では、ワーク・ライフ・バランスの推進を掲げられています。具体的にどのような取り組みをされているのか教えてください。
弊社では仕事と子育ての両立や多様な労働条件を整備し、働きやすい職場環境を整えるべく、福利厚生サービスの充実化や自己申告書を活用した三者面談などを実施しています。
奥村社長
<社員満足度の向上>
(出典:オーケーエム 2024年3月期 第2四半期決算説明資料[PDF])
にしけい
ありがとうございます。実は、事前に打ち合わせをさせていただいた際に、IR担当の森川様が育児休暇を取られたとお話を伺いました。実際に取得されてどうでしたか?
育休の取得に関しては、弊社では数年前より製造部の複数の男性社員が育休を取得していたこともあり、製造部を含め各部が育休を取得しやすい雰囲気にあると認識しています。
社内報に掲載するために育休を取得した男性社員2名にインタビューをしましたが、同僚が育休を取るように勧めてくれるような雰囲気作りができている状況です。
また、私自身は元々1人で広報IRを主に担当していました。2人目の子どもが生まれるため育休を取得したい旨を伝えたところ、上司が人員の補充を働き掛けていただき、業務の引き継ぎもスムーズに進み、復帰もしやすかったと感じています。
多様な社員が多様な働き方ができる環境整備という点では、まだまだ完成されていないと認識しているため、各制度を含めてブラッシュアップが必要だと考えています。
森川様
個人投資家へのメッセージ
にしけい
最後に、個人投資家へのメッセージをお願いいたします!
弊社は流体制御に対する顧客の細かいニーズにお応えし、カスタマイズ製品を持続的に提供することで、着実に企業を成長させていきます。そして、その成長を通じて社員、顧客、株主、社会に貢献していく方針です。
「脱炭素」に向けて不連続に変化するニーズを捉えて成長していくので、ぜひ注目してください。ビジネスモデル上、中長期的に業績拡大を図っていくため、中長期での応援をいただければと考えています。
奥村社長
にしけい
この度は取材にご協力いただき、ありがとうございました!
オーケーエムへの取材は以上となります。縁の下の力持ちとも言える「バルブ」やオーケーエムの歴史と強みについて理解が深まりましたね。足元では新造船需要が、中長期的には脱炭素が追い風です。今後の成長が楽しみですね!
同社では、決算説明資料の中で「売上高・受注高・受注残」のデータをグラフで公表しています。今後の業績を占う上で重要な情報なので、四半期決算ごとにチェックしていきましょう。
ひっきー
当サイトでは、上場企業に取材させていただき、事業内容や成長戦略などを株初心者向けにわかりやすく解説した“企業紹介記事”を公開しています。こちらで記事の一覧を公開していますので、ぜひご覧ください。株初心者の方が企業を知るきっかけになれますと幸いです。
また、当サイトの取材を希望される上場企業の担当者様は、お問い合わせフォームからご連絡をお願いいたします。ご連絡をいただいた担当者様に、企業紹介記事の企画概要資料をご送付するほか、取材のご案内をいたします。
ディスクレーマー
当記事では、筆者独自の見解を述べることがありますが、証券およびその他の金融商品の売買や引受けを勧誘する目的ではなく、証券およびその他の金融商品に関する助言や推奨をするものではありません。また、個別企業の業績予想や株価予想、投資推奨を提供する予定はありません。投資判断等は、自己責任でお願いいたします。
にしけい
バルブは工場や高層ビル、空港、駅、船、遊園地など多くの場所で使われています!