1. ホーム
  2. 株式投資関連のコラム
  3. 株式用語
  4. 自己株TOBとは?ディスカウントの理由や自社株買いとの違いを解説

自己株TOBとは?ディスカウントの理由や自社株買いとの違いを解説

やさしい株のはじめ方編集部担当:やさしい株のはじめ方編集部

最終更新日:2024年2月29日

自己株TOBとは、TOBの特殊なパターンで、企業が自己株をTOB(株式公開買付)することを指します。通常のTOBとは違い、特定の株主からの自己株取得がメインで、市場で取引されている株価よりも割安な買付価格が設定されるディスカウントTOBとなることが多いです。このため、対象銘柄を持っていても、自己株TOBには応募しないほうが良いでしょう。

この記事では、自己株TOBの意味やTOBとの違い、ディスカウントTOBになる理由、自社株買いとの違いを解説します。

自己株TOBとは?

自己株TOBとは、企業が自社の株式(自己株・自社株)TOBすることを指します。通常のTOBの特殊パターンなので、両者を比較しながらどのような点が違うのかを説明しますね。

自己株TOBと通常のTOBの違いを、①公開買付者、②公開買付価格、③買付対象者、④主な目的の4つのポイントに分けて表に整理しました。

  自己株TOB 通常のTOB
①公開買付者 TOB対象企業自身 TOB対象企業以外の
企業や投資ファンドなど
②公開買付価格 市場の株価より安い 市場の株価より高い
③買付対象者 特定の株主
(+一部希望する株主)
不特定多数の株主
④主な目的 特定の株主による現金化など 経営権の取得

通常のTOBは、企業や投資ファンドなどがTOB対象企業の経営権を取得するために実施します。このため、不特定多数の株主から株式を買い集めます。この際の買付価格は、市場で取引されている株価に一定の金額(プレミアム)が上乗せされます。

一方、自己株TOBは特定の株主による現金化や、経営安定化のための自己株取得などが目的です。このため、特定の株主から株式を買い集めることになります。通常のTOBとは違って、市場で取引されている株価よりも安い価格でTOBが実施される“ディスカウントTOB”が多いです。

自己株TOBは特定の株主から株式を買い取ることを目的に実施されますが、他の株主が応募できるよう、買付株数の上限は余裕を持って設定されます。例えば、特定の株主から1,000万株買い取る場合、他の株主にもTOB応募の機会を与えるため、追加で10万株の買い取り枠を設けるなどの対応が取られます。

しかし、自己株TOBは公開買付価格が株価を下回るディスカウントTOBになるため、既存株主がTOBに応募するメリットはありません。自分の保有株が自己株TOBを発表したとしても、応募せず継続保有するか、これを機に現金化したい方は株式市場で売却するのがおすすめです。

自己株TOBがディスカウントTOBになる理由

自己株TOBの公開買付価格が、市場で取引されている株価を下回る「ディスカウントTOB」になりやすい理由は、「経営権の取得を目的としていない」からです。

通常のTOBは経営権の取得が目的なので、公開買付者は「不特定多数の既存株主を説得して、何とかして株式を買い集めなければ」と考えます。

既存株主は、その企業が持つ将来の成長性と株価上昇に期待しています。この期待を上回るメリットがなければ株式を売り渡してもらえないため、株価に一定のプレミアムを上乗せした公開買付価格を提示しているのです。

一方、自己株TOBの目的は「特定の株主による現金化」などです。不特定多数の既存株主を説得して株式を買い集める必要がないため、株価に一定のプレミアムを上乗せする必要がありません。

自己株TOBを実施する企業としても、多くの株主から応募があったら困ってしまいます。魅力的な条件を提示するメリットがないため、株価よりも安い価格で公開買付価格を設定するのです。

自己株TOBと自社株買いの違い

自己株TOBと自社株買いは「誰から自社の株式を買い取るか」が異なります。自己株TOBは特定の株主からの株式取得がメインですが、自社株買いは株式市場で不特定多数の株主から取得します。

また、自己株TOBと自社株買いには共通点もあります。自己株TOBによって発行済株式数が減少するため、自社株買いと同じように株主還元効果があるのです。

例えば、発行済株式数が100万株の会社が、50万株の自己株TOBを実施したとしましょう。自己株TOBで買い取った株数だけ発行済株式数が減少するので、自己株TOB後の発行済株式数は50万株となります。この会社の純利益が1,000万円だった場合、発行済株式数で割って計算できる1株あたり純利益(EPS)は、10円から20円に増加します。

  自己株TOB前 自己株TOB後
純利益 1,000万円
発行済株式数 100万株 50万株
1株あたり純利益
(EPS)
10円 20円

株価はEPSとPERを掛けて計算できます。PERが10倍で一定とすると、株価は100円から200円に上昇するのです。

  自己株TOB前 自己株TOB後
1株あたり純利益
(EPS)
10円 20円
PER 10倍
株価 100円 200円

自己株TOBはディスカウント価格で取引される点が残念ですが、一方で株主還元の効果を持ち合わせています。メリットも覚えておきたいですね。

まとめ

自己株TOBは、TOBの特殊なパターンで、特定の株主から自己株をTOBすることを指します。通常のTOBとは違い、公開買付価格が株価より安くなるディスカウントTOBになるため、ほとんどの株主にとって応募するメリットはありません。

しかし、自己株TOBによって発行済株式数が減り、株価の上昇へとつながります。自社株買いと同じようなメリットがあることも覚えておきましょう。

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会検定会員補を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

ページ上部へ移動