1. ホーム
  2. 株式投資関連のコラム
  3. 株式用語
  4. 自社株買いとは?メリット・デメリットや、投資家への影響をわかりやすく解説します

自社株買いとは?メリット・デメリットや、投資家への影響をわかりやすく解説します

やさしい株のはじめ方編集部担当:やさしい株のはじめ方編集部

最終更新日:2023年11月30日

自社株買いとは、会社が発行している株式を、自らの資金を使って市場から買い戻すことです。自社株買いは株価にとってプラスの要因で、自社株買いが発表されると株価が上がりやすくなります

このコラムでは、自社株買いの概要や直近で自社株買いを発表した銘柄、自社株買いのメリット・デメリットなどを、株初心者向けにわかりやすく解説しています。

自社株買いの意味と目的

自社株買いとは、企業が発行している株式を、自らの資金を使って市場から買い戻すことです。そもそも企業が資金調達のために株式を発行するのですが、なぜわざわざ買い戻す必要があるのでしょうか?

主な理由は、「株主還元」と「ストックオプション(従業員などが自社株式を購入できる権利)」の2つです。先に結論を言いますと、自社株買いは株価の上昇に繋がるので、プラスの材料として株主(投資家)に喜ばれます。それでは、詳しく見ていきましょう。

自社株買いは、「配当金」と並ぶ代表的な株主還元

代表的な株主還元として「配当金」がありますが、「自社株買い」も株主が喜ぶ株主還元の1つです。配当金は、実際に株主がお金を受け取るのでわかりやすいですが、自社株買いはそういった金銭の受け取りはありません。

ではなぜ株主還元になるかというと、自社株買いをして“消却”をすることで自社で発行している株式数が減り、その結果「PER」や「ROE」、「PBR」が改善されて株価が上がりやすくなるためです。消却とは、自社が発行している株式の一部を消し去ることです。つまり、100万株発行していた株を90万株に減らすという意味で、売却とは根本的に異なります(売却は他人に売ること)。

自社株買いのメリット・デメリット

自社株買いには、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。それぞれ紹介します。

自社株買いのメリット

自社株買いによってEPS(1株あたり利益)やBPS(1株あたり純資産)が大きくなるので、株価を押し上げる要因となります。そのため、投資家や株主にとっては、自社株買いの発表によって値上がり益が期待できるメリットがあるのです。具体的に、どのようにして株価が上がるのかは、このあと詳しく説明します。

また、自社株買いはEPSやBPSが大きくなるだけでなく、世の中へ「株主の利益をしっかり考えている」というメッセージを広める効果もあります。投資家や株主にとって魅力的が増すので、株価が上がりやすくなるでしょう。

自社株買いのデメリット

自己資本比率の低下が、自社株買いのデメリットです。自社株買いは、株主から株式を買い取る行為です。見方を変えれば、出資してくれた株主に出資金を返しているのと同じになります。そのため、自社株買いした分だけ株主の取り分(純資産)が減ります。その結果、自己資本比率が低下してしまうのです。

ただし、投資家にとっては自己資本比率が下がるデメリットよりも、EPSやBPSが改善するメリットのほうが大きくなります。そのため、自社株買いは株価の上昇要因となるのです。

自社株買いは株価にどう影響する?

自社株買いは、株価の押し上げ要因となります。その理由は、次の3つの株価指標が改善するからです。

  1. 自社株買いをすることでPERが低くなり、株価上昇が期待できる
  2. 自社株買いをすることでROEが向上し、好材料となる
  3. 自社株買いでPBRが低くなり、株価上昇が期待できる(PBR1倍未満の場合)

それぞれ理由を説明します。

自社株買いをすることでPERが低くなり、株価上昇が期待できる

PER」は、利益と株価の関係から割安性を測る指標です。PERの数字が小さいほど割安といえます。自社株買いをすると、このPERが小さくなって割安になることで、需要が増えて株価が上昇する傾向にあります。具体的に数字を入れて見ていきましょう。(→PERの詳しい説明を見る

PERの計算式

PER=株価÷1株あたりの利益

自社株買いによるPERの変化

自社株買いをしたことで、PER20倍がPER18倍まで下がりました。ただ、業績などに関係なく割安になったので、すぐに元の水準まで戻ると考えられます(実際には、自社株買いが発表されたと同時に買いが入り、株価が上昇することが多いので、結果的にPERはそこまで変わりません)。

PERが20倍になる場合の株価は、55.56円×20倍=1,111円です。つまり、元々1,000円だった株価が、自社株買いにより1,111円まで上昇(+11.1%の上昇)するのが期待できます。

自社株買いをすることでROEが向上し、好材料となる

ROE」は、利益と株主資本の関係から収益性を測る指標です。ROEの数字が高いほど、株主資本を効率よく使って利益をあげていることがわかります。自社株買いをすると、このROEが高くなり、投資対象としての魅力が高まります。具体的に数字を入れて見ていきましょう。(→ROEの詳しい説明を見る

ROEの計算式

ROE=1株あたりの利益÷1株あたりの株主資本

自社株買いによるROEの変化

自社株買いをしたことで、ROE50%がROE55.56%まで上がりました。このように、自社株買いでROEが高まる効果があります。

自社株買いでPBRが低くなり、株価上昇が期待できる(PBR1倍未満の場合)

PBR」は、純資産と株価の関係から割安性を測る指標です。PBRの数字が小さいほど割安と言えます。PBR1倍未満の場合に限りますが、自社株買いをすることでPBRの数字がより小さくなり、割安感が増します。その結果、需要が増えて株価が上がりやすくなります。具体的に数字を入れて見ていきましょう。(→PBRの詳しい説明を見る

PBRの計算式

PBR=株価÷1株あたりの株主資本

自社株買いによるPBRの変化

自社株買いをしたことで、PBR0.50倍からPBR0.47倍に下がりました。業績などに関係なく割安になったので、すぐに元の水準まで戻ると考えられます(実際には、自社株買いが発表されたと同時に買いが入り、株価が上がることが多くあります)。

PBRが0.50倍になる場合の株価は、2,111円×0.50倍=1,056円です。つまり、もともと1,000円だった株価が、自社株買いによって1,056円まで上がる(+5.6%の上昇)ことが期待できます。

ただし、自社株買いによってPBRの割安感が増すのは、PBRが1倍未満の場合のみです。PBRが1倍以上で自社株買いがおこなわれると、PBRの数値が上がってしまい、割安感がなくなってしまいます。この場合は、株価が上がる材料にはならないので、注意が必要です。

まとめ

自社株買いとは、会社が発行している株式を、自らの資金を使って市場から買い戻すことです。自社株買いをおこなうと、1株あたりの利益が増えるほか、株価指標が改善するため、株価が上がりやすくなります。また、ビジネスが成熟した会社にとっては、設備投資よりも高リターンの投資先となります。自社株買いは、投資家や株主、会社にとってメリットが大きい株主還元策です。

この記事を見た人は、こちらも読んでいます

  1. 純資産とは?わかりやすく解説します
  2. PERとは?
  3. ROEとは?
  4. PBRとは?

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会検定会員補を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

ページ上部へ移動