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親子上場とは?問題点や事例、親子上場銘柄の一覧を紹介

やさしい株のはじめ方編集部担当:やさしい株のはじめ方編集部

最終更新日:2023年11月30日

親子上場とは、親会社と子会社の両方が株式市場に上場することを言います。日本では親子上場している企業が、上場企業の8%ほどあります。よく見られる光景なので、一見すると悪くは見えません。

しかし、親子上場によって、私たち投資家が損をしたり経営上の問題が生まれたりするケースがあります。そのため、最近は親子上場の解消が進められているのです。

では、なぜ親子上場で問題が生まれるのでしょうか?わかりすく解説していきます。

親子上場で生まれる問題点

親子上場によって生まれる問題点を、投資家目線経営者目線で整理します。

投資家目線の問題点

まずは、私たち投資家目線での問題点です。

  • 親会社だけに最適な経営戦略を取り、子会社と子会社の株主が損をする
  • 海外投資家に見放されて株価が上がらない

1つ目の問題点

例えば、親会社と子会社の間で、現金を貸し借りする場合を考えます。親会社の目線に立てば、子会社から低い利回りで現金を借りたいと考えます。対して、子会社の目線に立てば、親会社にできるだけ高い利回りで現金を貸したいと考えます。

親会社の影響力が強いため、子会社は低い利回りで現金を貸すことになるかもしれません。親会社だけに有利な経営戦略で、子会社の株主は利益を増やすチャンスを逃し、結果的に損をしてしまうのです。

2つ目の問題点

実は、海外では親子上場の事例が少なく、1つ目の問題点で挙げたように投資家が損をするため、親子上場はだとされています。そのため、海外の投資家は親子上場している企業に対して、積極的に投資しづらくなっています。日本の株式市場では、海外投資家による影響力が大きく、海外投資家が買った銘柄は株価が上がる場合もあります。

親子上場している会社の株は、株価を引き上げてくれる海外投資家が買ってくれないので、株価が上がらないデメリットがあるのです。

経営者目線の問題点

次に、経営者目線の問題点を紹介します。

  • 子会社の株主を意識しなければならず、子会社の経営資源をグループ全体のために活用しづらい
  • 子会社の独立性を維持しなければならず、リスク管理などを親会社が一括してできない
  • 子会社の独立性を維持なければならず、他の事業とのシナジーを発揮させられない

経済産業省がまとめた「上場子会社に関するガバナンスの在り方」を参考に、親子上場している企業が感じた問題点を3つ挙げてみました。

共通しているのは、子会社の存在を意識して経営しなければいけない点です。子会社が上場している以上、株主に配慮したり、上場企業としての独立性を損なわないように意識したりする必要があります。そのため、経営の意思決定に時間がかかったり、本来発揮できていた力を出せなかったりします。

このようなデメリットがあるため、親子上場している経営者としても、TOBをおこなって親子上場を解消したいと考えているようです。

ここで疑問が生まれます。それは、「なぜ問題点が多い親子上場をしたのか?」です。続いては、この答えとなる親子上場の目的を紹介します。

親子上場のメリット

投資家目線でも経営者目線でも、親子上場には多くの問題があると紹介しました。しかし、日本では親子上場している会社が多いのも事実です。なぜ、問題点の多い親子上場を選んだのでしょうか?

実は、子会社の上場には次のようなメリットがあります。

  • 上場によって、子会社社員のモチベーションが上がる
  • 子会社自身が、上場企業のブランド力を得られる
  • 上場によって、優秀な人材を採用できる

これまでは、問題点にスポットを当てて紹介してきましたが、子会社を上場させるメリットも多いです。また、子会社を上場させて資金調達するという実務的な理由で、上場させるケースもあります。

以上のメリットがあるため、日本では親子上場する会社が多くなっています。ただし、いずれも「上場時に得られるメリット」なので、上場してしまえば問題点が浮き彫りになってくるようです。そのため、TOBによって子会社を上場廃止にする事例が増えています。

親子上場を解消した事例

親子上場が解消した事例として、2020年9月に発表された、NTTによるNTTドコモのTOBを紹介します。

今回の親子上場解消は、次の2つの目的でおこなわれました。

  1. 迅速な経営判断をおこない、NTTグループ各社との連携を強化するため
  2. 稼ぎ頭のNTTドコモを完全子会社化することで、利益を取り込むため

まさに、経営者目線の問題点で説明した、「子会社の経営資源をグループ全体のために活用しづらい」、「他の事業とのシナジーを発揮させられない」に当てはまりますね。

親子上場解消を目的としたTOBの場合、すべての株式が取得されて完全子会社化となります。そのため、株価はTOB価格付近まで上昇するケースがほとんどです。

実際にNTTドコモの株価チャートを見ると、TOBが発表された9月29日以降、TOB価格の3,900円付近まで上昇しています。

NTTドコモ(9437)の株価推移(1か月)>

NTTドコモ(9437)の株価推移(1か月)

(出典:SBI証券

2020年には、例として挙げたNTTドコモを含む合計15件の親子上場解消がありました。前年は15件だったので、今年に入ってから親子上場解消が加速している様子がわかりますね。

この背景には、2つの要因があると考えられます。

  1. 新型コロナウイルスの流行
  2. 市場の投資家からの圧力

① 新型コロナウイルスの流行

親子上場解消と関係がなさそうな話題ですが、コロナ禍では、事業環境が大きく変わった企業がたくさんあります。その中で、コロナ禍を乗り切るため、グループ会社全体でベストな経営戦略を作ろうと考える企業が増えたのです。

親子上場している会社の場合、親会社は子会社の株主を考えて、経営戦略を練らなければいけません。この場合、グループ全体にはプラスになるものの、子会社にはマイナスになる選択肢を取らざるを得ないケースもあるでしょう。

このような場合、意思決定がスムーズにできなかったり、子会社を意識したベストではない選択肢を選ぶことになったりします。会社の生き残りをかけているのに、ベストな選択肢が取れないのは痛手です。

以上の理由から、子会社をTOBで上場廃止にし、迅速な意思決定ができるようにする会社が増えているのです。

② 市場の投資家からの圧力

以前からあった動きですが、コーポレートガバナンスを意識する投資家が増えており、上場会社として独立性を維持しづらい親子上場を問題視する声が上がるようになりました。

そのため、親子上場を解消しようと考える会社が増えているのです。当然、投資家もこの流れを意識するため、親子上場になっている銘柄に注目が集まっています。

親子上場銘柄一覧

最後に、2020年10月時点で親子上場している企業を紹介します。かなり多いので、すべての事例は紹介できませんが、その中から有名どころを5社ピックアップして紹介します。

上場子会社 親会社 備考
イオンモール(8905) イオン(8267) 総合スーパー(GMS)で大手の企業。イオンモールやマックスバリュなど複数の子会社が上場
プリマハム(2281) 伊藤忠商事(8001) プリマハム以外にも、伊藤忠エネクスや伊藤忠食品など複数の子会社が上場。2020年に子会社のファミリーマートをTOB
壱番屋(7630) ハウス食品グループ本社(2810) カレールウで国内首位の会社。壱番屋にカレールウを販売
かんぽ生命保険(7181) 日本郵政(6178) 子会社のかんぽ生命保険とゆうちょ銀行が上場
ローソン(2651) 三菱商事(8058) ローソン以外にも、子会社の中央化学や千代田化工建設、三菱食品などが上場

まとめ

親子上場の問題点と解消事例、親子上場となっている企業事例を紹介しました。コロナ禍で事業環境が大きく変わる中で、コーポレートガバナンスを意識した経営が、より意識されるようになってきています。

近年、親子上場を解消するケースが増えています。今後も、親子上場を解消する企業が増えるかもしれませんね。この場合、TOBによる上場廃止となるケースが多くなっています。

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会検定会員補を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

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