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12月の日銀金融政策決定会合の結果が発表!マイナス金利解除は見送り

にしけい担当:にしけい

最終更新日:2023年12月28日

お知らせ
(2023年12月28日追記)12月の日銀金融政策決定会合の意見をまとめた「金融政策決定会合における主な意見」が公表されました。マイナス金利解除がいつ実施されるのかを考えるヒントが書かれているので、その内容をこちらでわかりやすく解説しています。

2023年12月18日~19日、日本銀行(以下、日銀)の金融政策決定会合が開催されます。植田総裁をはじめ日銀関係者が「マイナス金利※1解除」を連想させる発言をおこなったため、12月の会合で何らかの発表があるのではないかと憶測を呼んでいます。

※1 マイナス金利とは、銀行が日本銀行に預けているお金に対して付く金利がマイナスになる状態をいいます。マイナス金利時にお金を預けた場合、銀行はマイナス金利分の利子を日本銀行に払うことになります。

このコラムでは、12月の日銀金融政策決定会合の見通しや、12月会合の傾向についてわかりやすく解説します。

12月の日銀金融政策決定会合の見通し

2023年12月18日~19日に開催される12月の日銀金融政策決定会合(以下、12月会合)では、「マイナス金利解除」が行われると予想されています。

このように予想されている理由は、日銀の植田総裁や氷見野(ひみの)副総裁が、金融政策の修正を連想させる発言をしたためです。どのような発言をしたのか、表にまとめてみました。

日銀関係者の発言
関係者名 発言内容
植田総裁 チャレンジングな状況が続いている。年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になるとも思っている。
氷見野副総裁 ・賃金と物価の好循環の状況をよく見極めて、出口のタイミングや進め方を適切に判断することだろう。
・出口を良い結果につなげることは十分可能。

植田総裁と氷見野副総裁の発言を見ると、確かに金融政策の修正を考えているとも取れる内容です。実際に日銀内でどのような議論がおこなわれているかは不明ですが、金融政策の出口(=マイナス金利の終了)を意識しているかもしれません。

また、日本国内でもインフレが進んでいます。下のグラフは、全国消費者物価指数(CPI)の過去5年間の推移です。2021年は前年比0%程度で推移していましたが、2023年10月には前年比+3.3%となっており、物価が上昇している様子がわかりますね。

<全国消費者物価指数(CPI)>

全国消費者物価指数(CPI)

(出典:マネックス証券)

日銀をはじめ中央銀行は「インフレファイト」が仕事です。インフレを抑制するためにも、日銀はマイナス金利解除を検討しているのではないでしょうか。

12月の日銀金融政策決定会合では重要な決定が下される傾向

ここ数年、12月会合では重要な決定が下される傾向にあります。2020年から2022年までの12月会合の決定内容を表に整理してみました。

12月会合の決定内容
決定内容
2020年 金融緩和の点検をおこなうことを決定
2021年 新型コロナ対応の資金繰り支援策について、大企業向けの縮小と中小企業向けの延長を決定
2022年 YCC修正、10年物国債の変動幅を±0.25%から±0.5%に引き上げ

「必ず12月会合で重要な決定が下される」わけではありませんが、これまでの傾向から考えると、今回の会合で何か重要な発表があっても不思議ではないでしょう。

先ほどご紹介した植田総裁と氷見野副総裁の発言も踏まえると、「マイナス金利解除」に行きつくのも納得はできますね。

マイナス金利を解除するなら今

筆者自身は「マイナス金利を解除するなら今しかない」と考えています。政策修正のタイミングを後ろ倒しにすると、FRBをはじめとする他国の中央銀行の金融政策との兼ね合いで、マイナス金利解除がむずかしくなると考えられるからです。

日本時間2023年12月14日午前4:00、12月FOMCの結果発表がありました。その中でFRBは、2024年に3回の利下げをおこなうことを示唆しています。FRBが利下げすると、他の中央銀行も利下げに転じるでしょう。この状況で日銀のみが利上げするのはむずかしいと予想できます。

また、FRBの利下げ開始時期は不明ですが、FedWatchによると市場では3月FOMC(2024年3月19日~20日)と予想されています。

下の図表は、市場参加者が予想する政策金利の誘導目標です。FOMCは年8回開催され、各回で誘導目標が発表される仕組みとなっています。

FRBの利下げ開始時期予想

出典:FedWatch Tool | CME Group

市場のコンセンサスである水色の部分を追いかけていくと、1月FOMCの誘導目標は、12月FOMC時点と同じ5.25~5.50%ですが、3月FOMCには5.00~5.25%に下がっているのがわかりますね。

仮にこの予想が正しいとして、日銀がマイナス金利を解除する可能性が考えられるのは、3月FOMCの前に開催される今回の12月会合と2024年の1月会合、3月会合の3回です。今回の12月会合での政策修正があっても、不思議ではないでしょう。

12月の日銀金融政策決定会合ではマイナス金利解除を見送り

2023年12月19日に、日銀金融政策決定会合の結果が発表されました。市場予想に反して、マイナス金利解除は見送りとなりました。このほか、YCC(長短金利操作、イールドカーブ・コントロール)やETF買入れも現状維持となっています。

金融緩和が維持されることから、結果発表直後に日経平均先物は370円程度上昇しています。

<日経平均先物の推移>

日経平均先物の推移

(出典:SBI証券

また、日銀がマイナス金利解除を見送ったことにより、日米金利差の拡大懸念が後退しました。このため、ドル円は円安が進み、1ドル143円台で推移しています。

<ドル円の推移>

ドル円の推移

(出典:SBI証券

日銀が発表した「当面の金融政策運営について」では、マイナス金利解除に関する言及はありませんでした。一方で、国内の物価上昇率の高まりについて、前回よりもていねいに説明されている印象です。

予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。

(中略)消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が残ることなどから、2%を上回る水準で推移するとみられる。(中略)その後は、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。

出典:当面の金融政策運営について | 日本銀行

この文面だけでは判断がむずかしいものの、筆者としては、少しずつマイナス金利解除に向けた布石を打っているような気がしています。アメリカをはじめとする他国が利下げに転じる前にマイナス金利解除をおこなう可能性は高く、2024年1月か3月の会合で政策修正に踏み切るのではないでしょうか。

12月の日銀金融政策決定会合における主な意見

2023年12月27日、日銀が12月会合の意見をまとめた「金融政策決定会合における主な意見」を発表しました。この書類には、経済情勢や物価、金融政策運営に関する意見がまとまっています。日銀がマイナス金利をいつ解除するのかを考えるうえで役立つ資料です。

今回は、“日銀のマイナス金利解除(政策修正)”に関連した部分を抜粋して追いかけていきます。12月会合の意見をかんたんにまとめると、日銀内では「政策修正を急ぐ必要はない」という意見と「政策修正を検討するべきだ」という意見で割れています

まずは、「政策修正を急ぐ必要はない」という意見を1つご紹介します。

これまで賃金上昇率が物価上昇率に追いついてこなかったことを考えると、来春の賃上げが予想よりかなり上振れたとしても、そのために、基調的な物価上昇率が2%を大きく上回ってしまうリスクは小さい。現在、慌てて利上げしないと、ビハインド・ザ・カーブになってしまう状況にはなく、少なくとも来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くはない。

出典:金融政策決定会合における主な意見(2023年12月18、19日開催分) | 日本銀行

12月会合後に開かれた記者会見で、植田総裁は「もう少しデータを見たい」という趣旨の発言をしていました。その内容に近い意見です。ちなみに、「ビハインド・ザ・カーブ」とは、物価への対応が遅れることを指します。

続いて、「政策修正を検討するべきだ」という意見を紹介します。

2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現の確度は更に高まってきており、金融正常化のタイミングは近づいている。拙速はよくないが、「巧遅は拙速に如かず」という言葉もある。物価高が消費の基調を壊し、物価安定目標の実現を損なうリスクを避けるためにも、タイミングを逃さず金融正常化を図るべきである。

出典:金融政策決定会合における主な意見(2023年12月18、19日開催分) | 日本銀行

他にも複数の意見が載っているので、一度「金融政策決定会合における主な意見」をご覧いただくことをおすすめします。

以上のように、日銀内では政策修正に関する意見が分かれています。意見を統一するのにも時間が掛かりますし、何より植田総裁自らが「データを見たい」という発言をしているので、12月会合直後に筆者が予想した「2024年1月か3月の会合で政策修正に踏み切る」可能性は低くなったと言えるでしょう。

ただし、FRBが2024年の3月FOMCで利下げに転換すると仮定した場合、日銀にとって政策修正しやすいのは2024年1月と3月の会合と考えます。意見が変わる可能性もゼロではないので、次回の1月会合でどのような議論が展開されるかに注目したいです。

まとめ

12月の日銀金融政策決定会合では、市場の予想に反してマイナス金利の解除が見送られました。YCCやETF買入れも現状維持となっています。また、12月27日に公開された「主な意見」では、日銀内部で意見が割れていることが明らかになりました。

次回の日銀金融政策決定会合は、2024年1月22日~23日に開かれます。そこでどのような議論が展開されるかに注目したいですね。

にしけい

この記事の執筆者

にしけい 

社内の余裕資金を運用するファンドマネージャーです!当サイトで上場企業のIR取材記事やコラムを執筆しています。企業分析と経済分析が趣味で、BSテレビ東京『マネーのまなび』や日経ヴェリタス、日経マネー等への掲載歴があります。日本証券アナリスト協会検定会員補(CCMA)、簿記2級、FP2級の資格を保有しています。

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