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YCC(イールドカーブコントロール)をわかりやすく解説!撤廃されると株価はどうなる?

やさしい株のはじめ方編集部担当:やさしい株のはじめ方編集部

最終更新日:2024年3月19日

お知らせ
(2024年3月19日追記)2024年3月の日銀金融政策決定会合で、日銀はマイナス金利政策YCC(イールドカーブコントロール)ETF/REIT買入れ撤廃を決定しました。事前の報道通りの結果です。

日銀の総裁が黒田氏から植田氏に交代し、金融政策の変更が意識されています。その中で注目が集まっているのが「YCC(イールドカーブコントロール)撤廃」です。

2023年6月16日開催の日銀(日本銀行)の金融政策決定会合では、このYCCの撤廃があるかに注目が集まっていました。そこでこのコラムでは、YCCとは何か撤廃されると株価はどうなるのかを株初心者向けにわかりやすく解説します。

YCC(イールドカーブコントロール)をわかりやすく解説

YCCYield Curve Control、イールドカーブコントロール)とは、中央銀行が国債の利回り(Yield)をコントロールする金融政策を指します。

国債には2年物や10年物などさまざまな種類があり、種類によって利回りが異なります。これらの利回りをグラフに書き込み、線でつないだものが「イールドカーブ」です。イールドカーブは、岡三オンラインの下の画像がわかりやすいでしょう。

イールドカーブ

出典:岡三オンライン「株式・証券関連用語集」

なお、YCCは日銀が導入していることで有名ですが、経済大国アメリカでは「副作用が大きい」という理由から導入が見送られています。

ちなみに、アメリカでは第2次世界大戦前後の1942年から1951年にかけて、YCCを導入していた過去があります。このときの経験から、採用を見送ったようです。

YCCの手順

ここでは、日銀が導入したYCCの手順について、かんたんにご説明します。

YCCの手順

  1. 長期金利の誘導水準を定める
  2. 1の水準になるよう、国債を買い入れる

なお、日銀では長期金利の誘導水準を下記のように設定しています。

2022年(令和4年)12月の金融政策決定会合においては、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため、長短金利操作の運用を一部見直すこととしました。具体的には、「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。」という操作方針を維持したうえで、国債買入れ額を大幅に増やしつつ、長期金利の変動幅を、従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大することなどを決定しました。

出典:日本銀行「金融市場調節方針の変遷を教えてください。」

YCCのメリット

YCCのメリットは、下記の2つです。

YCCのメリット

  1. 金利水準を安定させられる
  2. 経済活動の活発化が期待できる

低金利の環境を維持できるため、経済活動にプラスの効果が期待できます。

YCCのデメリット

一方で、YCCのデメリットには下記の2つがあります。

YCCのデメリット

  1. 金融市場にゆがみが生じる
  2. インフレが進む

YCCのために中央銀行は大量の国債を買い込みます。その結果、資産に占める国債の割合が高まっていくため、含み損を抱えるリスクが大きくなってしまうのです。

また、金利を低く維持するため、経済活動が活発化するのですが、その反面「インフレ」が進むリスクが高まります。

指さしにしけい

中央銀行が大量の国債を抱えている状態で金利が上がってしまうと、持っている国債の価格が下がっていき、含み損を抱えることになります。

6月16日の日銀金融政策決定会合ではYCCの修正なし

2023年6月16日、日銀の金融政策決定会合が開催されました。今回の会合でも「大規模緩和の維持」が決定され、YCCの修正はありませんでした

しかし、日本国内でも物価が上昇してきており、近いうちにYCCの修正・撤廃がおこなわれるかもしれません。これによって株式市場にどのような影響が及ぶのか、わかりやすく解説しますね。

7月28日の日銀金融政策決定会合でYCCの運用を修正

2023年7月28日、日銀の金融政策決定会合が開催され、YCC運用の柔軟化が決定されました。具体的にどのように修正されたのか、説明します。

今回決定された内容は、「長期金利の上限を0.5%に据え置くものの、市場の動きを見ながら0.5%を超えることを認める」というものです。また、10年物国債を毎営業日購入する「連続指し値オペ」の利回りを1.0%に引き上げる決定もされました。

いままでは10年物国債を購入して、長期金利が0.5%を超えないようにブロックしていました。しかし、今回の決定後は0.5%でブロックされなくなるため、長期金利は0.5%を超えて推移すると考えられます。ただし、連続指し値オペの利回りが1.0%となるため、長期金利が1.0%を超えることはないでしょう。

なお、マイナス金利政策やETF買入れは「現状維持」となりました。

YCC運用の柔軟化の決定を受けて、2023年7月28日現在、日経平均株価は下落しています。

<日経平均株価の推移>

日銀の金融政策決定会合を受けて日経平均株価は下落した

(出典:SBI証券

YCCが撤廃されると株価はどうなる?

YCCが撤廃されると、株式市場に下落圧力がかかりやすくなります。この理由は、利上げが連想されて景気の悪化が意識されることと、高PER銘柄はもちろん、株式自体の割高感が意識されるためです。

景気の悪化が意識される

YCCが撤廃されると、将来的な利上げが連想されます。利上げがおこなわれると、銀行からお金が借りにくくなるため、企業は設備投資を控えます。これによって、企業の成長が鈍化するとともに、世の中の金回りが悪くなるため、景気が悪化すると予想されるのです。

このため、株式市場には下落圧力がかかると考えられます。下の記事では、この理由について詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

株式に割高感が出る

先ほどもご説明したように、YCCの撤廃で将来的な利上げが意識されます。金利が上昇すると、PERの逆数である「株式益回り」で見た株価に割高感が出てくるのです。このため、株式市場には下落圧力がかかります。

景気が悪化する理由と同じく、下の記事で割高感が出る理由を詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

まとめ

YCCについて、株初心者向けに解説してきました。YCCが撤廃されると株式市場には下落圧力がかかるため、今後の日銀の金融政策に注目していきましょう!

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会検定会員補を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

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