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SBIホールディングスが新生銀行のTOBを発表!株価はどうなる?

ゆうと担当:ゆうと

最終更新日:2023年11月30日

お知らせ
2023年1月4日、新生銀行はSBI新生銀行に社名変更しました。記事内では当時の名称である「新生銀行」のまま記載しています。

2021年9月9日、SBIホールディングス(8473)が、新生銀行(8303)に対して1株2,000円TOB(株式公開買い付け)をおこなうと発表しました※1。買収総額は1,164億円強になる予定です。また、SBIホールディングスは新生銀行の株式48.00%の所有を目指しているため、TOB成立後も新生銀行は上場を維持します。

※1 参考:株式会社新生銀行株式(証券コード:8303)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ

今回のTOBの目的は?

SBIホールディングスがTOBをおこなう目的は、次の3つです。

  1. 新生銀行との証券分野などでの提携
  2. 現在の役員体制の刷新
  3. 出資する地方銀行との連携

SBIホールディングスは、2019年8月頃から新生銀行と証券分野などでの連携を目指しており、新生銀行に対して子会社化を提案していました。しかし、新生銀行は取締役会から反対が出ていることを理由に提案を拒み続け、2021年1月にマネックス証券との包括的業務提携を発表しました。

その後、SBIホールディングスは、2021年3月末までに新生銀行の持株比率を19.85%まで引き上げて影響力を高め、2021年6月の新生銀行の株主総会では、工藤社長などの取締役選任議案に反対票を投じています。このように、新生銀行がライバルのマネックス証券と手を組んだことにより、SBIホールディングスと新生銀行の関係は一気に悪化することになりました。

また、SBIホールディングスは関係性が悪化した背景に、「企業価値が向上する可能性のある自社の提案を、マネックスグループ出身などの社外取締役が真摯に向き合わなかったことがある」、と考えています。そのためTOBにより経営権を握ることで、現在の役員体制を刷新して関係性を回復することも目的の1つと見られます。

さらには、SBIホールディングスが出資する、複数の地方銀行と新生銀行が連携することも目指しています。新生銀行の持つノウハウで構成 した金融商品を地方銀行で販売することで、収益の底上げにつなげたいのではないでしょうか。

SBIホールディングスがTOBを発表するまでの経緯
2019年 内容
8月 新生銀行との資本業務提携の可能性について検討を開始する。
9月 新生銀行の工藤社長に資本業務提携を提案するものの、賛同することはできないと断られる。
11月 再び新生銀行の工藤社長に資本業務提携を提案するものの、取締役会で反対意見が出ていることを理由に断られる。
2020年 内容
1月 新生銀行株の持株比率が5%超となる。
12月 新生銀行の筆頭株主へ躍り出る(持株比率は13.59%)。
2021年 内容
1月 新生銀行・新生証券が、マネックス証券と包括的業務提携を発表
3月 急速に新生銀行株を買い増して、持株比率が19.85%となる。
4月 新生銀行の主要株主認可※2を金融庁に申請。
6月 新生銀行の株主総会で工藤社長などの取締役選任議案に反対票を投じる
9月 金融庁からの主要株主認可を取得してTOBを開始

※2 銀行法上、事業会社が銀行の株式を20%超取得して主要株主となる場合には、金融庁の認可が必要。

新生銀行の株価への影響は?

今回のTOBは、発行済株式総数の27.68%という上限が設けられているため、TOB価格(2,000円)付近まで株価が推移すると考えられます。発表を受けて、寄り付き前の気配値では、制限値幅上限(ストップ高水準)の1,740円まで株価が上昇しています(2021年9月10日11時30分現在)。

新生銀行(8303)の板情報>

>新生銀行(8303)の板情報

(出典:SBI証券

このように、TOBが発表されると、株価はTOB価格まで上がっていきます。また、今回の新生銀行に対するTOBは、事前に協議をおこなわず同意を得ていない※3ため、敵対的TOBに発展する可能性もあります。その場合は、株価がTOB価格を上回ることも考えられます。

※3 参考:SBI ホールディングス株式会社および SBI 地銀ホールディングスによる当行株式の公開買付けに関するお知らせ [PDF]

新生銀行の株主への影響は?

新生銀行の株主にとっては、TOBに応募すればTOB価格までの値上がり益が手に入ります。また、TOBに応募しなくても、市場で売れば値上がり益が手に入る状態となっています。株主には次の3つの選択肢があります。

  1. TOBに応募し、当選したら株式を売る
  2. TOBには応募せず、市場で株式を売る
  3. TOBには応募せず、株式を継続保有する

どの選択肢を取るかは個人の好みですが、①と②を取れば値上がり益をほぼ確実に手に入れられます。公開買付け期間は、2021年9月10日から30営業日までです。

TOBの申し込みはSBI証券からできますが、今回は100%すべての株式をTOBするわけではないので、申し込んだとしても当選するかはわかりません。当選した場合、2021年11月1日に株の代金が証券口座に入金されます。

③を選んだ場合、TOBによる値上がり益を確定できません。しかし、今回のTOBが敵対的TOBに発展して、新生銀行が対抗手段を講じれば、より多くの値上がり益が狙える可能性もあります。

新生銀行が買収防衛策を導入すると発表 (2021年9月21日追記)

新生銀行がSBIホールディングスによるTOBに対抗して、買収防衛策を導入すると発表しました。そのため、今回のSBIホールディングスによるTOBは、事実上※4敵対的TOBに発展することになりました。

※4 参考:SBI 地銀ホールディングス株式会社による当行株式に対する公開買付けに関する意見表明(留保)のお知らせ [PDF]

今回の新生銀行の買収防衛策は、一定の条件を満たす場合、「SBIホールディングス以外の株主に新株を無償で割り当てる」、というものです。そのため、買収防衛策が発動されると、SBIホールディングスの持株比率が下がることになります。

過去にも、このような買収防衛策が導入されたケースでは、TOBが撤回されているため、今回の買収防衛策もTOBの撤回を狙ったものと思われます。買収防衛策が発動するケース、しないケースは以下のとおりです。

買収防衛策が発動するケース

  • 臨時株主総会で承認された場合
  • TOB期間を12月8日まで延長しない場合

買収防衛策が発動しないケース

  • 臨時株主総会で承認されなかった場合
  • TOBが撤回された場合
  • 取締役会で株主価値を毀損しないと判断された場合

また、新生銀行は、「株主が十分に判断する時間が与えられていない」として、SBIホールディングスによるTOB期間※5を12月8日まで延長するように求めています。このようなTOB期間の延長要請は、ホワイトナイト※6など、ほかの対抗手段を模索するためとも言えます。

※5 SBIホールディングスによるTOB期間は、2021年10月25日までの予定。
※6 ホワイトナイトとは、「敵対的買収を仕掛けられた会社が、買収者に対抗して、買収や吸収してもらう友好的な第三者」のことです。

一方でSBIホールディングスは、買収防衛策による新株予約権の無償割り当ての差し止めや、新生銀行が開催予定の臨時株主総会で取締役の入れ替えなどを検討しているため、両者の関係は一層悪化したと言えます。

SBIホールディングスが、条件付きでTOB期間を延長すると発表(2021年9月24日追記)

SBIホールディングスは、新生銀行から求められていたTOB期間の延長について、次の4つの条件をすべて守ることを約束した場合、2021年11月24日まで延長すると発表※7しました。

※7 参考:株式会社新生銀行(証券コード:8303)からの「公開買付期間終了日の延長の要請」に対する当社の対応について

  1. 重要性が低い追加質問をおこなわないこと
  2. 臨時株主総会で買収防衛策発動の承認を得る場合は、SBIホールディングスのTOBが株主価値を損なうと判断した根拠を説明すること
  3. 臨時株主総会を開催する場合は、最短のスケジュールで開催すること
  4. 臨時株主総会を開催する場合は、公正な形で開催すること

新生銀行が、これら4つの条件を守ることを2021年9月28日までに発表した場合には、TOB期間が延長されることになります。また、SBIホールディングスは、新生銀行が約束を破った場合は、「買収防衛策の発動の差し止め」や、「新生銀行の取締役刷新」を求める考えを示しています。

新生銀行が求めていた2021年12月8日までの延長には及びませんが、SBIホールディングスがTOB期間の延長する姿勢を見せたことで、臨時株主総会前の買収防衛策の発動という可能性はかなり低くなったと言えます。

一方で、臨時株主総会の普通決議によって、「買収防衛策が発動されるかどうかが問われる可能性が高くなった」ため、大株主で政府系の預金保険機構・整理回収機構の議決権行使がカギになってくるものと思われます。

新生銀行(8303)の株主構成>

新生銀行(8303)の板情報

(出典:SBI証券

預金保険機構・整理回収機構が買収防衛策の発動に賛同するケースでは新生銀行が有利に、買収防衛策の発動に反対・議決権行使をおこなわないケースではSBIホールディングスが有利になると言えるでしょう。

新生銀行が、TOBに対する意見を反対から中立に変更 (2021年11月26日)

新生銀行は、これまでSBIホールディングスによるTOBに対して反対の意見を表明しており、2021年11月25日の臨時株主総会で株主の意思を確認したうえで、買収防衛策の発動を目指していました。しかし、臨時株主総会の前日に、新生銀行は反対意見から中立に変更しました。また、買収防衛策を発動する必要もなくなったとして、あわせて臨時株主総会の開催も中止すると発表しました。

新生銀行は意見を変更した理由として、「TOB成立後も少数株主の利益が侵害される恐れが小さくなったから」だと説明していますが、実際には、「臨時株主総会が実施されれば買収防衛策の発動が否決される可能性が高まったから」だと思われます。

具体的には、香港のヘッジファンドオアシスマネジメントや、旧村上ファンドなどのアクティビストが反対に回る可能性が高く、預金保険機構・整理回収機構も反対する方向だと報じられました。このような反対票とSBIホールディングスによる反対票によって、否決が過半数を上回っていたものと思われます。

新生銀行(8303)の株主構成

そのため、新生銀行は白旗を上げたも同然であり、SBIホールディングスにとってはTOBの障壁がなくなったことで、新生銀行の買収が大きく前進することとなりました。今後はSBIホールディングスによるTOB価格(2,000円)を上回る価格での買収者が現れない限り、SBIホールディングスによるTOBが成立する可能性が高いとみられます。

SBIホールディングスによるTOBが成立 (2022年1月31日追記)

SBIホールディングスによる新生銀行の公開買付期間が終わりました。一時は敵対的なTOBとなりましたが、新生銀行が白旗を挙げた結果、TOBに応募された株式がすべて買い取られ、SBIホールディングスは元から保有していた分も含めると新生銀行の株式の47.77%を保有することになりました

今後、新生銀行はSBIホールディングスの連結子会社になる予定です。また、2月8日に開催する臨時株主総会では新たにSBIホールディングスの意向が反映された取締役が選任される予定であり、現在の経営陣は刷新されるものと思われます。

また、2022年2月8日に開催する臨時株主総会では、新たにSBIホールディングスの意向が反映された取締役が選任される予定であり、現在の経営陣は刷新されるものと思われます。

まとめ

SBIホールディングスによる新生銀行のTOBについて解説しました。SBIホールディングスはTOBによって過半数に迫る株式を保有するようになり、来月には臨時株主総会によって現在の経営陣が刷新され、SBIホールディングスの意向に沿った新しい経営陣が就任する予定です。

今回のTOBのカギとなったのは、新生銀行の大株主である預金保険機構・整理回収機構が買収防衛策に反対すると報じられたことだと思われます。これにより新生銀行は買収防衛策の否決が濃厚となり、白旗を上げることになりました。

今後は新生銀行がSBIホールディングスの傘下に入り、SBIホールディングスが出資する地銀や証券分野などで連携することで収益力を強化できるかが注目されるものと思われます。

ゆうと

この記事の執筆者

ゆうと 

投資歴8年の資産バリュー投資家です。いつも四季報を持ち歩き、1年の半分は株のことを考えている株オタク。若手投資家同士の交流を目的とした「名古屋若手投資家交流会」を主催しています。

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