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かんちさんに取材しました(1)

ゆうと担当:ゆうと

公開日:2020年10月

インタビュア:ゆうと

投資歴40年目のベテラン投資家「かんちさん」に取材させていただきました。かんちさんの投資手法は、優待株、バリュー株、高配当株をメインにした長期にわたる超分散投資です。現在、700銘柄(9月30日現在)を持っており、その多くは優待株になるそうです。

そんなかんちさんに、“株式投資をはじめたきっかけ”や“優待株の投資手法”についてくわしく伺ってきたので、ぜひご覧ください!インタビュアは、ゆうとがお送りします。

かんちさんの経歴
西暦 投資に関する主な出来事
1980年 社会人になってから100万円で投資をスタート。はじめて買った株は、日本製鉄(旧 新日本製鉄)(5401)・住友金属工業(5405)※1
1988年 日本製鉄(5401)・住友金属工業(5405)を約5倍で売却。売却したお金で三菱電機(6503)伊藤忠商事(8001)丸紅(8002)を購入。
2000年 ネット証券が台頭。ネット証券に移る。
2002~2003年 りそな銀行の実質国有化や足利銀行の経営破綻など、銀行業界に逆風が吹くなか、大きく下落していたみずほフィナンシャルグループ(8411)に集中投資。
2005年 みずほフィナンシャルグループ(8411)への集中投資が成功。運用資産が大幅に増える
2008年 リーマンショックの影響を受けて、今までで一番ひどい成績になる。
2011年 東日本大震災で、多少の影響を受けたものの、すぐに回復。
2013~2018年 アベノミクスがはじまり、リーマンショック前の資産高値を更新
2020年 新型コロナウイルスによる暴落を受けて、前年比6%ほどのマイナス。

※1 住友金属工業は、新日本製鉄と合併して2012年9月26日に上場廃止。

おこづかいやアルバイトで貯めた100万円で株式投資をスタート

ゆうと : 株式投資をはじめたきっかけは何ですか?

かんちさん : きっかけは、両親や祖母が株式投資をしていて、身近だったからです。そのため、「投資=ギャンブル」というようなイメージはありませんでした。

ゆうと : そこからどのように投資をはじめましたか?

かんちさん : 実際に投資をはじめたのは20歳のときです。おこづかいやアルバイトで貯めた100万円からはじめました。ただ、何を買ったらいいかわからなかったので、まずは父親にアドバイスを求めました。私が投資をはじめた1980年代は、バブル相場で全般的に株価が高く、1単元が1,000株単位だったので、「買えるのは鉄鋼株くらいだ※2」と言われました。そこで、父親のアドバイスを受けて日本製鉄(旧 新日本製鉄)(5401)や住友金属工業(5405)を買いました。

※2 当時、円高になっていたことなどが要因で、鉄鋼株の株価は大きく下がっていました。

ゆうと : はじめての投資は、その後どうなりましたか?

かんちさん : その後、鉄鋼株がウォーターフロント銘柄※3としてもてはやされて、2桁だった株価が1,000円くらいまで急騰しました。私は1,000円まで持ち続けられませんでしたが、一気に資産が増えてラッキーでした(笑) 。そこからはなかなか資産が増えなかったものの、給料を入金して三菱電機(6503)伊藤忠商事(8001)丸紅(8002)などの株を少しずつ買い増していきました。振り返ってみると、当時から長期で持つことを前提に分散投資でしたね。

※3 再開発によって地価が高騰した東京湾岸に、土地を持っている銘柄のことです。

ゆうと : 現在では多くの銘柄を持っているかんちさんでも、はじめは少額からのスタートだったんですね。給料の一部を入金して、コツコツと株を買い増していくスタイルは、現在の投資手法である「長期投資・分散投資」に通じているように感じました。かんちさんのように一貫して投資を続けるためには、投資についてしっかり理解することが大切ですね。

優待株投資をする際に注目するポイント

ゆうと : かんちさんと言えば優待株ですが、投資をする際は企業のどういったところに注目しますか?

かんちさん : 優待株投資では、「利回りで判断する優待株」と「成長性で判断する優待株」で、注目するポイントが違います。まずは、利回りで判断する優待株について説明します。

利回りで判断する優待株のポイント

  1. 総合利回り(配当利回り+優待利回り)が5%以上
  2. 自己資本比率※430%以上
  3. 有利子負債※5が利益剰余金※6の数倍もないか
  4. 配当が安定して出ているか

※4 自己資本比率とは、「企業の財務の健全性を測る指標」のことです。
※5 有利子負債とは、「利子(金利)をつけて返さなければならない負債(借金)」のことです。
※6 利益剰余金とは、「会社が稼いだ利益の累積額を表す指標」のことです。

「①総合利回りが5%以上」は、利回りで判断する優待株投資するときに、一番はじめにチェックします。この水準がクリアできていれば、四季報を見て買えるかどうかの判断に入ります。

「②自己資本比率30%以上」や「②有利子負債が利益剰余金の数倍もないか」の2つは、株主優待を出し続けられる体力がある会社かどうかをチェックするために確認します。ただし、この2つの基準は業種によって平均的な数値が異なるため、絶対ではありません。例えば、飲食業界のように日銭が入ってくるビジネスだと、もう少し低くても大丈夫です。

また、総合利回りが高くても、利益剰余金がマイナスの会社ははずします。利益剰余金がマイナスということは、長年ビジネスをしていても儲かっていないという証拠だからです。「④配当が安定して出ているか」は、配当がしっかり支払われているかどうか、四季報で過去数期分チェックします。ただ、優待利回りが高い会社の場合は、配当がほとんどなくても買うこともありますね。

続いて、成長性で判断する優待株について説明します。

成長性で判断する優待株のポイント

  1. 売上高※7・営業利益※8が0~20%成長を続けている
  2. グレアムのミックス係数※9が15以下
  3. 総合利回り(配当利回り+優待利回り)2%以上

※7 売上高とは、「業務での収入すべてを合計した額」のことです。
※8 営業利益とは、「売上総利益から、給料や家賃などの、会社を維持したり売上を上げるために使った経費を差し引いた額」のことです。
※9 グレアムのミックス係数とは、「バリュー投資の創始者であるベンジャミン・グレアムが提唱した、割安度を図る指標」のことです。PER×PBRで計算できます。

かんちさん : 「①売上高・営業利益が0~20%成長を続けている」ということは、ゆるやかに成長している企業でも買うということです。0~10%くらいの低い成長率でも、業績が伸び続ければ株価は上がっていきます。私は長期保有するつもりで株を買うので、このような成長株投資家が買わないような企業でも、株主優待がついていれば買っていきますね。ただ、株価が評価されるまで時間がかかるので、そこが欠点です(笑)。

「②グレアムのミックス係数が15以下」は、割安な企業を探すために見ます。グレアムのミックス係数とは、PERとPBRをかけ合わせたものです。この数値が低いと割安と言えると思います。

「③総合利回り2%以上」は、それくらいあれば十分という感じです。そのため実質的には、「①売上高・営業利益が0~20%成長続けていること」と、「②グレアムのミックス係数15以下」を満たしていればOKだと思っています。これらの基準を満たしている企業は、割安で成長している企業だと評価します。

ゆうと : 優待株投資では、一般的に利回りや優待の内容を重視する投資家が多いです。そのよう中でかんちさんは、優待株を「利回り」と「成長性」の2つにわけて評価しています。割安で成長する優待株を見つけることができれば、株主優待を受け取りながら値上がり益も狙えるわけですね。

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