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利益剰余金とは?意味や分析方法などをわかりやすく解説します
利益剰余金(りえきじょうよきん)とは、会社が稼いだ利益の累積額です。貸借対照表の純資産の中に計上されています。毎年継続して利益を出している会社は、利益剰余金の金額が右肩上がりで増えていくので、分析の際は利益剰余金の推移に注目です。
このコラムでは、利益剰余金の概要や分析方法について、株初心者向けにわかりやすく解説します。
利益剰余金とは?
利益剰余金とは、かんたんに言うと、会社が稼いだ利益の累積額です。貸借対照表に登場する勘定科目で、純資産の株主資本の中に計上されています。毎年しっかりと利益を出している会社は、毎年の利益が積み上がっていくため、利益剰余金が多くなっています。
下の画像は、ニトリホールディングス(9843)の貸借対照表です。ニトリホールディングスは、34期連続で増収増益を続けている超優良企業です。そのため、毎年利益を積み上げていて、2021年2月期時点では約6,100億円もの利益剰余金が計上されています。資産の合計額は約9,300億円なので、約65%が利益剰余金で構成されているのです。
<ニトリホールディングス(9843)の貸借対照表>
蓄えられた利益剰余金は、お店や工場の新設、販売する商品の仕入れ、株主への配当金などに使われます。
会社は内部留保金を吐き出すべき?
時々、「会社は内部留保金(利益剰余金)をたくさん貯め込んでいるから、株主還元などで吐き出すべきだ」といった意見を見かけます。みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。実は、これは正しくありません。
確かに内部留保金を“現金”のまま持っていて、今後何も使い道が見いだせない状態であれば、株主還元をしたほうが良いのは間違いありません。しかし、内部留保金は現金のまま存在しているとは限らないのです。
例えば、先ほど紹介したニトリホールディングス(9843)が現金をいくら持っているか調べてみましょう。
<ニトリホールディングス(9843)の貸借対照表>
上の図は、ニトリホールディングスの流動資産の中身です。「現金及び預金」は約1,600億円しかなく、約6,100億円あった利益剰余金と比べて少ないのがわかりますね。つまり、利益剰余金は現金のまま持っているのではなく、何か別の資産に形が変わっていると考えられるのです。
2021年2月期の有価証券報告書に記載の「設備の新設、除却等の計画」を見ると、物流センターへの投資計画が載っています。このことから、ニトリホールディングスは利益剰余金を物流センターや店舗などの資産に投資していると推測できるのです。
<ニトリホールディングス(9843)の設備の新設、除却等の計画>
したがって、内部留保金(利益剰余金)をたくさん持っている会社が、株主還元を迫られてしまうと、店舗や倉庫などを売却して現金化しなければなりません。もし店舗や倉庫などを売ってしまうと、ビジネスができなくなって、最悪の場合倒産してしまいます。株主還元を強化すべき会社は、利益剰余金をたくさん持っている会社ではなく、使い道のない現金を持っている会社です。混同しないように気をつけたいですね。
投資家が利益剰余金に注目すべき2つの理由
私たち投資家が利益剰余金に注目すべき理由は、次の2つです。
- 会社が成長するための原動力だから
- 株主が受け取る配当金の原資だから
それぞれ説明します。
3-1.会社が成長するための原動力だから
先ほど、ニトリホールディングスの利益剰余金はお店や倉庫などに変わっているとお伝えしました。ニトリホールディングスにとっては、お店を増やせば新たな顧客を取り込めるため、売上高が増えます。つまり、利益剰余金が多ければ多いほど、会社をさらに大きく成長させるために積極的に投資できます。
3-2.株主が受け取る配当金の原資だから
利益剰余金は、会社の成長投資に使うほか、株主に配る「配当金」としても使われます。そのため、利益剰余金が多ければ多いほど、株主に回せる配当金の額が多くなるのです。
以上の理由から、投資家は利益剰余金をチェックするべきと言えます。
優秀な無料ツールで、利益剰余金を分析しよう!
利益剰余金の分析をおこなう上で、貸借対照表のチェックは欠かせません。しかし、実際に見てみると、文字と数字が並んでいるだけで、株初心者にはむずかしく感じます。そこで、貸借対照表の中身をビジュアルで把握できる、GMOクリック証券の『財務分析ツール』がおすすめです。今回は、こちらの財務分析ツールを使って、利益剰余金の分析方法を見ていきます。
※財務分析ツールは、GMOクリック証券に口座開設するだけで、誰でも無料で使えます。
まずは、「利益剰余金とその使い道」を確認しましょう。下の図は、ニトリホールディングスの貸借対照表です。利益剰余金は、貸借対照表の右側にある黄色の部分(株主資本)の中に入っています。株主資本すべてが利益剰余金ではありませんが、株主資本が増え続けていることから、利益剰余金が積み上がっていると考えられます。
<ニトリホールディングス(9843)の貸借対照表>
(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)
また財務分析ツールでは、貸借対照表のすぐ下に業績の推移も載せています。
<ニトリホールディングス(9843)の業績推移>
(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)
財務分析ツールでは、最大で過去10年間の業績推移が追えます。ニトリホールディングスは、売上高も利益も増加トレンドとなっていました。利益剰余金を分析するときに注目したいのは、オレンジ色の純利益の推移です。純利益は会社が売上高からすべての費用を支払ったあとに残る利益で、貸借対照表の利益剰余金に計上されるからです。
ニトリホールディングスは、この純利益が右肩上がりで増えており、さらに貸借対照表の株主資本も右肩上がりで増えています。したがって、ビジネスでしっかりと利益を生み出し、それを蓄えられているとわかるのです。GMOクリック証券の財務分析ツールを使って利益剰余金が増えているかを確認するときは、株主資本と純利益の両方が増えているかをチェックしましょう。
利益剰余金がマイナスのとき
利益剰余金がマイナスの会社は、経営がうまく行っていない可能性が高いでしょう。例えば、債務超過が解消できず上場廃止が決まっているオンキヨーホームエンターテイメント(6628)は、利益剰余金がマイナスになっています。
<オンキヨーホームエンターテイメント(6628)の貸借対照表>
(出典:オンキヨーホームエンターテイメントの2021年3月期決算短信)
利益剰余金がマイナスになる直接的な原因は、純利益がマイナスだからです。利益剰余金は純利益の蓄積額なので、純利益がマイナスになると、その分だけ利益剰余金が減ってしまいます。それでは、オンキヨーホームエンターテイメントの業績推移を確認してみましょう。
<オンキヨーホームエンターテイメント(6628)の業績推移>
(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)
特に注目すべきは、純利益の推移です。過去10年間の推移を見ると、純利益はほぼ毎年マイナスとなっています。このように、純利益のマイナスが続いた結果、利益剰余金がマイナスになってしまったわけですね。それでは、利益剰余金のマイナスが続いた場合はどうなるのでしょうか?もう一度オンキヨーホームエンターテイメントの貸借対照表を見てみましょう。
<オンキヨーホームエンターテイメント(6628)の貸借対照表>
(出典:オンキヨーホームエンターテイメントの2021年3月期決算短信)
赤枠で囲んだ部分を見ると、純資産がマイナスの「債務超過」になっているのがわかります。債務超過とは、資産をすべて売っても借金を返済しきれない状態です。債務超過を解消できない場合は、破産手続きをしたり、上場企業は上場廃止になったりします。会社経営が続けられない可能性が高いと考えられるので、注意が必要です。
まとめ
利益剰余金は、「会社の成長」や「株主への配当」のもとになるため、投資家にとって大事な指標です。
特に、成長企業に投資しようと考えている方は、利益剰余金の使い道と利益剰余金の推移を確認しましょう。利益剰余金が毎年増えており、会社の成長のために投資していれば、今後も成長し続ける可能性が高いです。利益剰余金を分析して、成長企業を見つけたいですね。
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