利益剰余金(りえきじょうよきん)とは?

担当・西尾
利益剰余金(りえきじょうよきん)とは、かんたんに言うと、会社が稼いだ利益の累積額です。貸借対照表に登場する勘定科目で、純資産の株主資本の中に計上されています。毎年しっかりと利益を出している会社は、毎年の利益が積み上がっていくため、利益剰余金が多くなっています。
下の画像は、ニトリホールディングス(9843)の貸借対照表です。純資産の株主資本の中に、利益剰余金が4,728億円計上されています。資産の合計額は6,193億円なので、約80%が利益剰余金で構成されています。

(出典:ニトリホールディングスの貸借対照表)
利益剰余金は、お店や工場の新設、販売する商品の仕入れ、株主への配当金などに使われます。
現金と利益剰余金の金額が一致しない理由
利益剰余金は「会社が稼いだ利益の累積額」なので、会社が持っている現金と同じ金額になると考える人がいるかもしれません。しかし、実際は利益剰余金と現金の金額が一致しない場合が多いです。理由は、利益剰余金を現金のまま持っていても会社が成長できないので、利益剰余金を使って工場設備や店舗などに投資するためです。

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)
上の図は、ニトリホールディングスの流動資産の中身です。「現金及び預金」は1,023億円しかなく、4,728億円あった利益剰余金と比べて少ないのがわかりますね。利益剰余金の一部は、工場や建物などに姿を変えているようです。
なぜ利益剰余金をチェックするのか?
私たち投資家が利益剰余金に注目すべき理由は、次の2つです。
- ①会社が成長するための原動力だから
- ②株主が受け取る配当金の原資だから
1つ目の理由は、「会社が成長するための原動力だから」です。先ほど、ニトリの利益剰余金はお店や倉庫などに変わっているとお伝えしました。ニトリにとっては、お店を増やせば新たな顧客を取り込めるため、売上高が増えます。つまり、利益剰余金が多ければ多いほど、会社をさらに大きく成長させるために積極的に投資できます。
2つ目の理由は、「株主が受け取る配当金の原資だから」です。利益剰余金は、会社の成長投資に使うほか、株主に配る「配当金」としても使われます。そのため、利益剰余金が多ければ多いほど、株主に回せる配当金の額が多くなるのです。
以上の理由から、投資家は利益剰余金をチェックするべきなのです。
優秀な無料ツールで、利益剰余金を分析しよう!
利益剰余金の分析をおこなう上で、貸借対照表のチェックは欠かせません。しかし、実際に見てみると、文字と数字が並んでいるだけで、株初心者にはむずかしく感じます。そこで、貸借対照表の中身をビジュアルで把握できる、GMOクリック証券の『財務分析ツール』がおすすめです。今回は、こちらの財務分析ツールを使って、利益剰余金の分析方法を見ていきます。
※財務分析ツールは、GMOクリック証券に口座開設するだけで、誰でも無料で使えます。
まずは、「利益剰余金とその使い道」を確認しましょう。下の図は、ニトリホールディングスの貸借対照表です。利益剰余金は、貸借対照表の右側にある黄色の部分(株主資本)の中に入っています。株主資本すべてが利益剰余金ではないですが、かなりたくさんの利益を蓄えていると推測できます。

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)
ちなみに、貸借対照表の左側にある水色の部分は現金等を表しています。株主資本と比べて相当小さいので、ニトリホールディングスは利益剰余金を他の何かに投資しているようです。そのほかの項目をチェックすると、緑色の部分(有形固定資産)がとても多くなっているので、家具を作る工場や郊外に持っている大型の店舗に姿を変えていると考えられます。
このように、利益剰余金が含まれる株主資本と、会社が持っている資産を見比べるだけでも、分析している会社が成長のために投資しているか推測できます。
続いて、過去10年分の貸借対照表から「利益剰余金の推移」を追っていきましょう。

(出典:GMOクリック証券の財務分析ツール)
上のグラフを見ると、2010年から2019年にかけて、黄色の株主資本が順調に増えているのがわかります。実は、ニトリホールディングスは2019年2月期の決算時点で32期連続で増収増益を達成しています。そのため、毎年しっかりと利益を蓄積できており、株主資本が増えているのです。
そして、増えた株主資本を使って店舗を増やしているため、さらに業績が伸びていく良いサイクルを回せています。利益剰余金の推移はもちろん、その使い道までしっかりとチェックするのが大切です。
まとめ
利益剰余金は、「会社の成長」や「株主への配当」のもとになるため、投資家にとって大事な指標です。
特に、成長する会社に投資しようと考えている方は、利益剰余金の使い道と利益剰余金の推移を確認しましょう。利益剰余金が毎年増えており、会社の成長のために投資していれば、今後も成長し続ける可能性が高いです。利益剰余金を分析して、成長企業を見つけたいですね。
西尾のプロフィール

・やさしい株のはじめ方の資産運用担当
・ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格あり
・年間200銘柄以上を分析中
Twitter「@kabuotaku758」でも情報発信中です!