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かんちさんに取材しました(2)

かんち流の企業調査方法を教えます

ゆうと : どのように投資先候補の企業を調べていますか?

かんちさん : 具体的には、次のような手順で調べていくことが多いです。

かんち流企業調査方法

  1. 適時開示情報※10で株主優待を調べる
  2. 株主優待と配当、株価を見て総合利回り(配当利回り+優待利回り)を計算
  3. 四季報で業績や財務を調べる
  4. マネックス証券の銘柄スカウター※11で確認

※10 適時開示情報とは、「株価に重要な影響をあたえる、会社の業務や業績などに関する情報」のことです。
※11 銘柄スカウターとは、「企業分析が短時間でできる、マネックス証券が提供する無料ツール」のことです。

「①適時開示情報で株主優待を調べる」ことは、1週間に1回しています。企業が株主優待を新設していれば検索に引っかかってくるため、それをきっかけとして調べはじめます。

「②株主優待と配当、株価を見て総合利回りを計算」や「③四季報で業績や財務を調べる」については、優待株投資をする際のポイントで説明したように、総合利回り5%や自己資本比率が30%、有利子負債が多すぎないかを調べていきます。問題がなければ、最後に「④マネックス証券の銘柄スカウターで確認」します。

銘柄スカウターは、四半期業績が確認できるところが一番良いですね。四季報で確認した時よりしっかり四半期業績を見て、投資先として問題がないかを判断します。あとは、有利子負債の推移も見ていきます。有利子負債の推移では、純有利子負債※12が減ってマイナスになっているのが良い企業だと思っています。マネックス証券の銘柄スカウターは、このような企業分析が短時間でできるので、とても重宝しています。

※12 純有利子負債とは、「有利子負債から現金・預金を引いた、企業が返済しなければならない有利子負債の額」のことです。

ゆうと : かんちさんが良いと思う「割安な優待株」の基準ってなんでしょうか?

かんちさん : 具体的には、次のような基準になります。

割安な優待株の基準

  1. PER※1310倍以下
  2. PBR1倍以下
  3. 総合利回り(配当利回り+優待利回り)5%以上
  4. 株主優待の内容が魅力的なもの

※13 PERとは、「会社の利益と株価を比較して割安性を測る指標」のことです。

今期(2021年)は、コロナウイルスの影響で通期予想を開示していない企業が多いです。そのため、そのような企業のPERは算出不可になっています。コロナウイルスの影響で生活様式が大きく変わる可能性もありますが、騒動が落ち着いたときにどれくらいのPERになるかを見た方がいいと思います。

株主優待の内容で、よくクオカードを採用している企業があります。このような株主優待は導入しやすい一方で、簡単に廃止することもできます。そのため、クオカードを株主優待にしている企業は注意が必要です。長く株主優待が継続しやすいのは、飲食企業ですね。よっぽど業績が悪くなれば改悪・廃止しますが、結構出し続けてくれます。

ゆうと : かんちさんの調査方法はポイントがわかりやすく、短時間で投資に値するかを見極められるのが魅力です。ただ、今期(2021年)はコロナウイルスの影響で、多くの企業が赤字になる可能性があり、PERが使えないことが多いため少し注意が必要ですね。また、クオカードなどの株主優待を出している企業は、業績がきびしい状況であることから、改悪や廃止をおこなう可能性があります。

投資を検討するうえで特に注意すること

ゆうと : 投資を検討するうえで、特に注意することって何ですか?

かんちさん : 次の2つに当てはまる会社は注意しています。

投資を検討する際に注意する基準

  1. 利益剰余金※14赤字
  2. 直近の2~3期が赤字

※14 利益剰余金とは、「会社が稼いだ利益の累積額を表す指標」のことです。

この2つに当てはまっていると、株主優待の内容が良かったとしても買いたくないですね。なぜなら、疑義注記(継続企業の前提に関する注記)※15が付く可能性があるからです。監査法人から危ない会社と評価されると株価が下がるため、そういう銘柄は投資対象から外すようにしています。

※15 疑義注記とは、「継続して業績が悪いので、この会社は危ないですよという注意喚起」のことです。

さらに業績が悪化すると、最悪の場合倒産することもあります。一瞬で自分の資産が紙くずになってしまうので、倒産するような企業は絶対に避けなければなりません。

ゆうと : 注意すべきポイントの「利益剰余金の赤字」は、以前に取材させていただいた名古屋の長期投資家さんも指摘していたポイントです。成功している2人の投資家が注意すべき点にあげているため、避けたほうが良いと強く感じました。

投資をしてきて一番苦しかった時

ゆうと : いままで投資をしてきて、一番苦しかったときはいつでしょうか?

かんちさん : リーマンショックのときが一番苦しかったですね。私は暴落相場のときに、騰落レシオ※16移動平均乖離率※17、年初来更新銘柄数などを見て、底値に近いと思ったところで信用取引※18を使って買い向かうことがあります。リーマンショックのときは、これらの指標が底値を表していたので信用取引を使って株を買いました。

※16 騰落レシオとは、「市場の買われすぎや売られすぎを見る指標」のことです。
※17 移動平均乖離率とは、「株価が移動平均線からどれだけ離れているかを数値化した指標」のことです。
※18 信用取引とは、「自分の資金や株式などを担保(たんぽ)にして、持っているお金以上の取引ができる手法」のことです。

しかし、そこからさらに下がったため、リーマンショックの前とくらべると40%ほど資産を減らしてしまいました。専業投資家になろうと考えているときだったので、苦しかったですね…。私は信用取引をするときにルールを決めています。それは、証券会社に預けている現金よりも、信用の評価損(含み損)が多くなったら損切りするというものです。

このルールを決めていたことで、現物株を売らなくても済みました。このルールを守ると最悪でも現物株は残るので、退場することはありません。信用取引は、現物株の取引とルールが違うので注意が必要です。 使う場合は、仕組みをしっかり理解してからにしてください(→信用取引とは?)。

ゆうと : 大きな損失を目の前にすると、適切な行動ができなくなったり、無茶になって損失を取り返そうとしたりして、傷口を広げてしまうことがよくあります…。だからこそ、かんちさんのように前もってルールを決めておき、そのルールを守り抜くことが大切ですね。

少しでも勉強して、まずは小額から投資をはじめよう!

ゆうと : これから株式投資をはじめる初心者は、まず何をしたらよいと思いますか?

かんちさん : まずは、少しでもいいので勉強してからはじめたほうがいいと思います。今はネットや本で、いくらでも調べられる環境が整っています。知識が無い状態で株式投資をはじめるのは、お金をドブに捨てるようなものですから。

また、最初はどういった投資手法が自分に合うのかわからないと思うので、小額から少しずつ買っていくのがいいでしょう。 それから、株式投資に投じるお金は余裕資金にしたほうがいいです。無くなったら困るお金や使い道が決まっているお金で投資をすると、株価が気になりすぎるのでやめたほうがいいでしょうね。

最後に、初心者からすると株式投資はむずかしい用語がたくさんあると思います。そのような中でも、一番かんたんなのが「利回り」です。配当金と株主優待を足して株価で割るだけです。わかりやすいという意味でも、株主優待投資は初心者におすすめです。ぜひチャレンジしてみてください!

ゆうと : 優待株投資は、最低単元(100株)の利回りが一番良いことが多いです。そのため、無理のない範囲で少額からはじめたい初心者にとって、ピッタリな投資手法と言えます。まずは、株式投資の基本をしっかりと勉強して、理解していくところからはじめましょう(→株式投資の基本)!

…かんちさんへの取材、いかがでしたでしょうか?最後に、ここまで記事に目を通してくださったみなさんと、この取材を承諾していただいたかんちさんに感謝の意を述べて、終わりとさせていただきます。ありがとうございました!

かんちさんのTwitterアカウントはこちら

ゆうと

この記事の執筆者

ゆうと 

投資歴8年の資産バリュー投資家です。いつも四季報を持ち歩き、1年の半分は株のことを考えている株オタク。若手投資家同士の交流を目的とした「名古屋若手投資家交流会」を主催しています。

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