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名古屋の長期投資家さんに取材しました(1)

ゆうと担当:ゆうと

公開日:2020年8月

インタビュア:ゆうと

投資歴25年目のベテランバリュー投資家、「名古屋の長期投資家さん」(以下、なごちょうさん)に取材させていただきました。なごちょうさんの投資手法は、インカムゲイン(配当)を重視した、長期にわたる分散投資です。現在、230銘柄(8月25日現在)を持っており、15年以上保有している銘柄は10銘柄以上になるそうです。ツイッターで自分の意見を発信したり、決算書を読むこと自体が楽しかったりと、とても投資が好きな方です。

そんな、なごちょうさんに、“株式投資をはじめたきっかけ”や“投資手法”についてくわしく伺ってきたので、ぜひご覧ください!インタビュアは、ゆうとがお送りします。

なごちょうさんの経歴
西暦 投資に関する主な出来事
1995年 アルバイトで稼いだ50万円で投資をスタート。 はじめて買った株は、富士通(6702)東芝(6502)モスフードサービス(8153)パラマウントベッド(7817)の4銘柄 。
2000年 ネット証券が台頭。ネット証券に移る。
2001年 ITバブルの波に乗れず、影響も受けなかった。
2002年 バリュー投資をスタート。会計の勉強もはじめる。
2006年 オフ会に初参加。バリュー株がメインだったが、その他の投資法や考え方に触れることができた。
2007年 サブプライムローン問題の影響を受けて、2002年以来のマイナス。
2008年 リーマンショックの影響を受けて、バリュー投資をはじめてから1番ひどい成績になる。
2009~2010年 前年比20~30%以上のプラス
2011年 東日本大震災の影響を受けて、うまく立ち回ったものの、若干マイナス。
2012年 成長性があって割安なオンリーワン企業や、業界首位の企業を少しずつ購入。リーマンショック以来の資産高値を更新
2013年 分散投資をしていたにも関わらず、前年比70%以上のプラス
2014~2015年 前年比10%以上のプラス。しかし、相場がよくてほかの投資家が大きく増やしている中、パッとしない成績だった。
2016年 イギリスのEU離脱や米国大統領選のときにうまく立ち回ったため、前年比20%以上のプラス。また、この年にツイッターでつぶやきはじめる。
2017年 前年比40%以上のプラス。年間で増えた資産額としては過去最高になる。
2018年 2008年以来、前年比10%以上のマイナス。
2019年 ポートフォリオを積極的に入れ替えた結果、預け資産が過去最高を更新
2020年 新型コロナウイルスによる暴落の影響を受けて、前年比8%ほどのマイナス。

アルバイト先からもらったボーナス50万円で株式投資をスタート

ゆうと : 株式投資をはじめたきっかけは何ですか?

なごちょうさん : 親の仕事の取引先の人が、任天堂(7974)の株をただずっと持っていただけで、資産数億円になりました。中学生の頃に親からその話を聞いて、「任天堂のような株をずっと持っていたい」と思ったのがきっかけです。

ゆうと : そこからどのように投資をはじめましたか?

なごちょうさん : そんなに家が裕福じゃなかったので、おこずかいも少なかったです。だから、何とかお金を増やそうと思って、高校生の頃から株の入門本を買って読んでいました。ただ、実際にはじめたのは、大学生のころ(1995年の12月)です。アルバイト先からもらったボーナスが出て、50万円からはじめました

ゆうと : はじめからバリュー投資でしたか?

なごちょうさん : 最初は何を買っていいかわかりませんでした。だから、証券会社が推奨していた富士通(6702)東芝(6502)パラマウントベッド(7817)、それから自分の好きなモスフードサービス(8153)の4銘柄を買いました。たった50万円しかないのに、4銘柄に分散していましたから、今の投資スタイルと結構近かったですね(笑)。

ゆうと : いつからバリュー投資をはじめられましたか?

なごちょうさん : 時価会計制度※1導入後の株価低迷に打撃を受けたことがきっかけです。そのときに、とんでもない損が出はじめていたので、もう一度決算書の読み方から勉強しなおしました。その結果、決算書に基づいた投資スタイル(バリュー投資※2に変わりました。苦しかった時だからこそですね(笑)。

※1 時価会計制度とは、「企業の資産と負債を決算期末時点の時価で評価し、財務諸表に反映させる会計制度」のことです。
※2 バリュー投資とは、「株価と業績などから評価して、割安で放置されている株を狙う投資法」のことです。

ゆうと : 現在では多くの資金を運用して成功されているなごちょうさんでも、はじめはわずか50万円からだったんですね。自分に合う投資法(バリュー投資)に出会えたのも、苦しいときを経験したからだと思います。 まずは自分に合う投資法を見つけて、それをやり通すことが大切ですね。

長期投資をする際に注目するポイント

ゆうと : 長期投資をするとき、企業のどういったところに注目しますか?

なごちょうさん : 特に、以下の3つを注目しています。

  1. 業界内でのポジション
    国内1位、2位・世界シェア1位
  2. 営業利益率※3
    製造業では10%以上・非製造業のネット関連は同業他社と比較
  3. 財務状態
    自己資本比率※4は同業他社と比較・流動比率※5は100%以上

※3 営業利益率とは、「企業の本業で稼ぐ力を測る指標」のことです。
※4 自己資本比率とは、「企業の財務の健全性を測る指標」のことです。
※5 流動比率とは、「1年以内に返さなければいけない借金(流動負債)を、1年以内に現金化できる資産(流動資産)でまかなえるかどうかを測る指標」のことです。

「①業界内でのポジション」は、その業界のトップや国内2位、できれば世界シェア1位のような会社かどうかを見ています。「②営業利益率」は、業種にもよりますが、製造業では10%以上あるかどうかを見ています。10%以上というのは、何か優位性がないとむずかしいからです。

逆に、非製造業のネット関連は、もともと営業利益率が高いことが多いです。そういった会社は、業界全体や同業他社と比較して、営業利益率が高いかどうかを見ています。 「③財務状態」は、自己資本比率や流動比率を見ています。自己資本比率は業種によって大きく違うため、同業他社との比較が必要ですが、会計制度によっても違ってくるため注意が必要です。

あと、流動比率は100%以下だと買いたくないですね。ただ、多額の資金を集めてる事業形態の金融や、外食などの日銭が入ってくるビジネスでは、もう少し低くてもよいと思っています。財務状態は、ケースバイケースなので、結局、総合的に見ています。

ゆうと : 長期投資では、企業の競争力の高さや、生き残れる体力があるかが大切で、そのような優位性が維持されるかどうかを見極める必要がありますよね。特に今期(2021年)は、コロナウイルスの影響で、多くの企業がリーマンショック以来の危機にあります。長期投資に値するかどうかは、今期の業績が参考になるかもしれません。

銘柄をスクリーニングする際の条件

ゆうと : 証券会社などのツールで銘柄をスクリーニングするときは、どのような項目を使いますか?

なごちょうさん : あまり条件を絞りすぎると出てこないのですが、よく以下の7条件で調べます。

銘柄スクリーニングの7条件

  1. 2期連続の売上高増減率 5~20%
    マイナス成長でもなく、急成長でもない企業
  2. 営業利益率 8~20%
    一定の利益率を確保していること
  3. PBR※6 0.5~2倍
    0.5倍より下でもよいが、最大でも2倍くらいまで
  4. ROA※7 5~10%
    一定の効率的な経営ができていること
  5. 配当利回り※8 2.5~4%
    一定のインカムゲインがあるか
  6. 株主優待の有無
    条件に入れたり入れなかったり
  7. 自己資本比率 30~70%
    あまりに低すぎると財務不安があり、高すぎると経営効率が悪いといえるため

※6 PBRとは、「企業の持っている株主資本(純資産)から見た株価の割安度がわかる指標」のことです。
※7 ROAとは、「数値が高いほど、収益性が高いと判断できる指標」のことです。
※8 配当利回りとは、「株を買った価格に対して、1年間でどれだけ配当を受けることができるかがわかる指標」のことです。

ただ、どういった会社を買いたいかによって、組み合わせも変えていきます。同じ条件でスクリーニングをしても、相場の状況によっては、ゼロだったり、たくさん出てきたりします。ゼロに近いときは、相場が過熱してきているので買うのをやめたほうがいいですし、逆にたくさん出てくるときは、買い時なのかなと思っています。

このように、スクリーニングは相場を測る指標にもなっています。だから、スクリーニングの条件は、証券会社の設定に取っておいて、暴落時に活用したりもしています。暴落しているときは、きびしめに条件を設定してもたくさん銘柄が出てきますが、普段スクリーニングで見かけない銘柄を買ったほうがいいですね。そういったことを知っておくためにも、普段から定期的に同じ条件でスクリーニングをしておく必要があります。

<銘柄スクリーニングの7条件で、実際に検索してみました(2020年8月21日現在)>

銘柄スクリーニングの7条件で実際に検索

(出典:SBI証券

ゆうと : スクリーニングで気になる銘柄があったときは、そこからどのように調べていきますか?

なごちょうさん : 最初は、四季報でざっくりと売上高や財務状態をチェックします。この段階で投資できそうかを判断したあと、企業のWEBサイトで事業内容をじっくりと理解していきます。その理解が正しいかどうかを、有価証券報告書※9と突き合わせて確認していく感じです。また、企業の業績はセグメントごと(事業別)にも見ていくようにしています。補足としては、新卒採用ページを見たり、決算説明資料を見たりもしながら、投資を検討する感じです。

※9 有価証券報告書とは、「企業の事業内容や、財務状況などが記載されている報告書」のことです。

ゆうと : なごちょうさんのスクリーニングは、良い企業を見つけることができるだけではなく、相場観を測る指標のひとつにもなりますね!また、気になる銘柄を調べるときは、新卒採用ページなど、あまり投資家が見ない視点でみることで、より深く企業を理解できると思いました。このように、1つ1つの企業をしっかりと調べつくす姿勢は、私も見習っていきたいです。

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