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うるるの近藤様に突撃取材!事業内容や中期経営計画の達成確度などをお聞きしました

やさしい株のはじめ方編集部担当:やさしい株のはじめ方編集部

最終更新日:2023年6月2日

株式会社うるる 近藤様

(株式会社うるる 近藤様)

やさしい株のはじめ方の管理人ひっきーとやさしい株のはじめ方編集部(にしけい)が、入札※1情報速報サービス「NJSS(エヌジェス)」などのSaaSサービスを提供するうるる(3979)(以下、うるる社)に突撃取材しました!

※1 入札とは、国や地方自治体などの公的機関が民間企業に向けて業務を発注する際の制度です。公的機関が業務を発注する場合、その財源は税金によってまかなわれます。したがって、より良いものをより安く調達する必要があるのです。このため、不特定多数の参加者を募り、公的機関にとって最も有利な条件を提示した企業と契約を結びます。

今回は、同社の取締役CFOを務め、Twitterを活用した積極的なIR活動に取り組まれている近藤様に、事業内容中期経営計画の達成確度などをお聞きしました。

この記事では、株初心者の方がうるる社への理解を深められるよう、わかりやすい言葉で丁寧に解説します。また、最新の業績や注目すべき指標、今後の成長戦略についての説明も載せています。ぜひ最後まで読んでくださいね。

複数のサービスを展開中!うるる社の事業内容をわかりやすく解説

うるる(3979)は、“労働力不足を解決し人と企業を豊かに”をビジョンに掲げて、入札情報速報サービス「NJSS」など複数のサービスを展開している会社です。

ここでは、うるる社への理解を深めていただくために、次の3つのポイントに絞って紹介していきます。

事業内容

まずは、うるる社の事業内容について説明していきます。記事の冒頭で“入札情報速報サービス「NJSS」を展開している”とお伝えしましたが、このほかにもさまざまなサービスを展開しているのです。どのようなサービスがあるのか、一覧表にまとめました。

うるる社の事業内容
事業名 概要
NJSS
(エヌジェス)
全国の官公庁・自治体・外郭団体の入札情報を一括検索・管理できるサービス
fondesk
(フォンデスク)
月額1万円から使える電話代行サービス
えんフォト 写真販売の手間を80%以上削減できる、保育園・幼稚園向け写真販売システム
OurPhoto
(アワフォト)
写真を撮ってほしい人とフォトグラファーをつなげるマッチングサービス
BPO※2
(ビーピーオー)
DX※3・電子化・SaaS※4の裏側など、人力を活用しソリューションを提供するBPOサービス
shufti
(シュフティ)
クラウドワーカー※5と企業のお仕事マッチングサイト

※2 BPOとは、「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の頭文字を取ったものです。企業の業務プロセスの一部を、専門業者に外部委託することを指します。自社よりも優れた専門性を持つ外部企業に業務を委託することで、コア業務に経営資源を集中させられるメリットがあります。

※3 DX(ディーエックス)とは、「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の頭文字を取ったものです。デジタル技術を社会に浸透させて、私たちの生活をより良いものに変えようとする取り組みを指します。

※4 SaaS(サース)とは、「Software as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」の略語です。“サービスとしてのソフトウェア”という意味で、インターネット経由でどこからでもアクセス・利用できるサービスを指します。会計ソフトや名刺管理ソフトなども、SaaS形式で提供されています。

※5 クラウドワーカーとは、不特定多数の発注者と受注者をネット上でマッチングするサービス「クラウドソーシング」を使って仕事をしている人を指します。

うるる社は、複数のサービスを展開している企業です。分析の際は、売上高に占める割合が高いサービスを重点的にチェックしたいですよね。そこで、“各サービスが売上高のどの程度を構成しているのか”について、マネックス証券の銘柄スカウターを使って確認しましょう。

<うるる社のセグメント構成>

うるる社のセグメント構成

(出典:マネックス証券の銘柄スカウター

売上高の約半分が「NJSS」で構成されています。そして、約4分の1が祖業の「BPO事業」、残りの4分の1がその他のSaaSで構成されている形です。したがって、セグメントごとに業績を見る際は、NJSSとBPOを重点的に確認しつつ、その他のSaaS事業の伸びをチェックすれば良いでしょう。

今回は、主力のNJSSとBPOに加え、うるる社が成長に力を入れているfondeskの3つに注目します。この3つの事業がどのようなものか、わかりやすく説明していきますね。

入札情報速報サービス「NJSS」

<入札情報速報サービス「NJSS」>

入札情報速報サービス「NJSS」

(出典:NJSSの公式ホームページ

NJSSは「入札情報速報サービス」と呼ばれるものです。全国の官公庁や自治体では、民間企業に業務を発注する「入札」を実施しており、その情報を検索できるサービスとなっています。

入札情報は、各官公庁や自治体のホームページで確認できます。しかし、入札を実施している機関は日本全国に約7,700機関も存在しているのです。情報収集のために、すべての機関のホームページを確認しようとすると、それだけで1日が終わってしまいます。むしろ、1日では情報収集が終わらないかもしれません。

このような「情報収集のむずかしさ・大変さ」を解消するサービスとして、NJSSは誕生しました。

指さしひっきー

これは入札に参加したいと考えている企業にとって、とてもありがたいサービスですね!ところで、大量の情報は日々どのようにして集めているのですか?

「人力」と「Webクローラー」を組み合わせて情報収集しています!当社は大量のクラウドワーカーを抱えているので、彼らの労働力を借りて「網羅性と正確性の高いデータベース」を構築できているのが強みです。

また、“過去の入札データを確認できる”点も、NJSSが多くの顧客に使っていただけているポイントとなります。官公庁のホームページからは、一定期間が過ぎると入札情報が消されてしまうため、過去の入札データを調べることができないためです。

株式会社うるる近藤様

指さしひっきー

なるほど!“人の目”を使って情報収集している点が、NJSSの強みになっているわけですね!

BPO事業

次に、BPO事業について解説していきます。

<うるるBPO>

うるるBPO

(出典:うるるBPOの公式ホームページ

BPOとは「Business Process Outsourcing」の略であり、「企業が抱える業務の一部を外部の専門業者に委託すること」を指すと紹介しました。うるるBPOで請け負っている業務の例は、下記のとおりです。

うるるBPOで請け負っている業務の例

  • 請求書のスキャン
  • 飲料メーカーがおこなうキャンペーンの事務局代行
  • 企業の展示会イベントで発生するアンケートのデータ入力

このように、企業の「本業以外の業務(ノンコア業務)」を受託し、企業が本業(コア業務)に集中できる環境を作っているのです。

指さしひっきー

請求書のスキャンやアンケートのデータ入力をお任せできるのは、とてもありがたいですよね!特に中小企業やスタートアップでは、人手が足りません。貴重な労働力を無駄にせず、従業員それぞれが持つ力を発揮してもらうためにも、“誰でもできる業務”は外部にお願いしたいものです!

電話代行サービス「fondesk」

最後に、fondeskがどのようなサービスかを説明しますね。

<fondesk>

fondesk

(出典:fondeskの公式ホームページ

fondeskを導入するメリットは下のとおりです。

fondeskを導入するメリット

  • セールスの電話に対応する必要がなくなるため、業務に集中できる
  • 電話の内容をメールで送ったり、紙のメモを渡したりする「取次ぎ作業」をなくせる

セールスの電話対応や取次ぎ作業は、業務時間中に突然発生します。せっかく集中して仕事をしていたのに、電話対応や取次ぎ作業で集中力が切れてしまった経験は、多くの方が持っているのではないでしょうか。このような非効率性を解決できるのが、fondeskの魅力といえます。

指さしひっきー

御社は複数のサービスを展開しており、狙っている顧客層も異なります。どうしてこのような事業ポートフォリオ※6になったのですか?

※6 事業ポートフォリオとは、企業が運営している事業を一覧化したものです。

これには当社の成り立ちが関係しています。下の表をご覧ください。

株式会社うるる近藤様

うるる社の沿革
年月 できごと
2001年8月 会社を創業
2003年11月 シングルマザーや介護中の方など「外に出て働くことがむずかしいが、家の中であれば働くことができる人(クラウドワーカー)」の存在に気付き、BPOデータ入力サービスの営業を開始
2007年2月 BPOデータ入力サービスのチェック作業をしてくれる労働力を確保するため、主婦向けクラウドソーシングサービス「シュフティ(shufti)」をリリース
2008年9月 シュフティの有効活用”と“入札情報収集の非効率性改善”を目的に、入札情報速報サービス「NJSS(エヌジェス)」をリリース
2014年10月 BPOのディレクションノウハウの有効活用”と“幼稚園・保育園の写真販売の非効率性改善”を目的に、幼稚園・保育園向け写真販売システム「えんフォト」をリリース
2017年5月 シュフティの有効活用”と“企業の電話対応の非効率性改善”を目的に、コール代行サービス「フレックスコール(fondeskの前身)」をリリース
2020年12月 フォトグラファーのマッチングサービスを運営するOurPhoto株式会社の株式を100%取得し、完全子会社化

このように、自社が抱えているクラウドワーカーの労働力を有効活用して、世の中の“非効率的な部分”を解決するサービスを次々生み出していきました。その結果、複数のSaaSを運営する事業ポートフォリオができあがったわけです。

株式会社うるる近藤様

指さしひっきー

BPO事業で抱えている「クラウドワーカー」を中心に事業が広がっていったのですね!ところで、NJSSやえんフォト、fondeskといった“ビジネスの種”は、どのようにして見つけられたのですか?

創業以来、ほとんどの事業は代表の星が発案してきました。「在宅ワーカー活用を強みとしつつも、いかに労働力を創出するのか」という視点から、「人力でないとできなくて、労働力不足を解決できるニッチ事業は何だろう」と考えながらニーズを探しています。

また、星以外からも事業が生まれる組織にするため、“新規事業が生まれる仕組みづくり”をここ5年ほど実施してきました。実は「fondesk」は弊社従業員の発案から生まれたビジネスなんですよ!このほかにも、BPO事業で依頼されたり、シュフティに掲載されるお仕事からビジネスの種を探したりすることもあります。

株式会社うるる近藤様

指さしひっきー

ご説明ありがとうございます!新規事業が生まれる仕組みも作っていらっしゃるとのことで、今後どのような新規事業が生まれるのかが楽しみです!

ビジネスモデル

次に、うるる社が運営する各事業のビジネスモデルを整理していきます。決算説明資料の中でわかりやすく解説されているので、そちらを使って説明しますね。

入札情報速報サービス「NJSS」

はじめに、主力の「NJSS」のビジネスモデルを確認します。

<NJSSのビジネスモデル>

NJSSのビジネスモデル

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

NJSSでは、クラウドワーカーを使って官公庁Web等から集めた入札情報をプラットフォームに載せ、その検索サービス等を会員(利用企業)に提供します。その対価として、会員から「月額利用料」を受け取る仕組みです。

この月額利用料は、会員が解約するまで継続して支払ってもらうお金です。そのため、「LTV(Life Time Value)」と呼ばれる指標が重要になります。この指標は日本語で「顧客生涯価値」と言われ、“一定の取引期間中に企業が顧客から受け取る利益”を指します。

このLTVに契約件数を掛け合わせることで、NJSS事業の将来の売上高を計算できるのです。

NJSSの将来にわたる売上高

NJSSの将来にわたる売上高=LTV×契約件数

指さしひっきー

売上高を高めるには「LTVの引き上げ」、または「契約件数の増加」が必要です。うるる社では、四半期ごとの決算説明資料で、LTVや契約件数が開示されています。これらの指標が伸びているかを確認しましょう。

BPO事業

次に、BPO事業のビジネスモデルを見ていきましょう。

<BPO事業のビジネスモデル>

BPO事業のビジネスモデル

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

BPO事業では、企業から請求書のスキャンやアンケートの事務局代行といった業務を請け負っています。そのため、うるる社の収益は「企業から受け取る報酬」となります。

この金額は、企業から請け負った業務内容や案件の規模などによって変わってきます。そのため、NJSSのように計算式で表すことがむずかしい事業です。

指さしひっきー

決算説明資料の中で、BPO事業の売上高EBITDA※7が公表されています。BPO事業の状況を知りたいときは、この2つの数値の変化をチェックすると良いでしょう。実際にどのような推移になっているかは、後ほど紹介しますね。

※7 EBITDA(イービットディーエー、イービットダー、イービッター)とは、「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization」の略で、「法人税や利息、減価償却費の影響を排除した利益」です。このような費用を排除する理由は、国や会社によって差があるためです。会社が持つ本来の収益力を見るために、このような指標が用意されています。

市場の状況

うるる社の主力事業であるNJSSとBPO事業について、市場がどのような状況にあるのかを解説します。今後の業績を予想するときに必要な情報なので、わかりやすく説明しますね。

入札情報速報サービス「NJSS」

はじめに、NJSSの市場の状況を紹介します。

<NJSSの市場規模>

NJSSの市場

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

NJSSの市場規模は、上のスライドのようになっています。「全省庁統一資格」とは、各省庁の入札に参加できる資格です。この資格を保有している企業は、全国で約7万社あります。2022年12月現在、NJSSを使っている企業は5,398社なので、全省庁統一資格を持っている企業のたった6%しか獲得していません。成長のポテンシャルは十分です。

また、資格を持っていなくても“過去に落札実績があり、今後入札に参加するかもしれない会社”も顧客になり得ます。この条件に当てはまる会社は約40万社もあるので、長い目で見ても成長性が高いと考えられるでしょう。

指さしひっきー

官公庁や自治体の情報は入手しづらいので、NJSSの存在意義はとても大きいと思います。一方で、日本政府は「デジタル庁」を創設し、公的な手続きのデジタル化を推進していますよね。将来的に“NJSSがデジタル庁に取って代わられる可能性”はないのでしょうか?

リスクとして認識し動向は注視していますが、現時点で目立った動きはありません。実際にそのような事態が起こるとしても、次の2つの想定も考えられるため、しばらく先になるのではという見解です。

株式会社うるる近藤様

  1. デジタル庁がDX化しているのは「国民生活に直結する部分」が多い
  2. 自治体が各々で入札を実施しているため、国であるデジタル庁が自治体の情報を一元化することは考えにくい

指さしひっきー

確かに、デジタル庁がDX化しているものとして「マイナンバーカードを使った手続き」がありますが、企業向けというよりは国民生活の効率化に注目したものですね!

そうなんです。また、2点目についてもう少し補足しますね。入札の主体である自治体は、自治権を持っている組織です。そのため、自治体が主体となって進めている入札が、国に集約されることは果たして可能性としてあるのだろうか…と推測しています。

株式会社うるる近藤様

BPO事業

次に、BPO事業の市場の状況を説明します。決算説明資料にデータが載っていなかったため、近藤様に直接お伺いしました。

指さしひっきー

BPO事業について、現状の市場規模と今後の見通しを説明していただけませんか?

わかりました!矢野経済研究所のデータによると、2021年度の市場規模と2022年度の見通しは下の表のようになっています。

株式会社うるる近藤様

BPOの市場規模
市場規模
2021年度 4兆5,636億9,000万円
2022年度 プラス成長を見込む

指さしひっきー

2022年度もBPO市場はプラス成長が見込まれているのですね!最新決算の話になりますが、BPO事業の説明の中で「電子帳簿保存法改正※8の影響で引き合いが好調に推移」とありました。この法改正の影響も大きいのでしょうか?

※8 電子帳簿保存法とは、税務関係帳簿書類を紙ではなくデータで保存できるようにする法律です。この法律に基づく制度を使うと、経理のデジタル化が図れます。2023年12月に電子帳簿保存法が改正され、帳簿書類の電子化の事前申請などが不要になります。

そうですね!電子帳簿保存法の改正を受けて、SaaS企業が「請求書の電子化サービス」などさまざまなDXサービスをリリースしています。SaaS企業がこのようなサービスを提供する場合、裏側では“紙の電子化作業”が発生します。この部分を当社が受託しているんです。そのため、請求書の電子化サービスが伸びれば伸びるほど、当社も成長していきます。

株式会社うるる近藤様

2023年3月期第3四半期の業績は?注目すべき指標もわかりやすく解説

うるる社の最新の業績と、注目すべき指標について解説します。まずは、最新の業績から見ていきましょう。

最新の業績(2023年3月期第3四半期)

2023年3月期第3四半期の業績ハイライトを見ていきましょう。

<2023年3月期第3四半期の業績ハイライト>

2023年3月期第3四半期の業績ハイライト

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

上のスライドでは、会社全体や主な事業の評価が載っています。会社全体で見た場合、評価は「〇」と好調です。主なサービスごとに確認すると、NJSSやfondeskなどのSaaS事業は「〇」となっている一方、BPO事業は「△」となっています。この理由は後ほど詳しく紹介するので、先に全体の売上高の推移を見ていきましょう。

<売上高の推移>

売上高の推移

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

売上高は順調に増加していますね。上のスライドに載っている「前年比」の推移に注目すると、会社全体は+20.0%、SaaS事業は+22.4%と好調です。SaaS事業が会社全体の売上高の伸びをけん引しています。

ここまで、かんたんに最新業績を確認してきました。気になったポイントは次の2つです。

最新決算で気になったポイント

  • おおまかな評価として、NJSS・fondeskなどのSaaSは「〇」だが、BPOは「△」だった
  • EBITDAの3Q累計実績(全社)が1.1億円となり、通期予想の0.5億円を大幅に上回った

それぞれ、近藤様にお伺いしてみました。

BPO事業が△の理由

指さしひっきー

BPO事業の評価が「△」となっていますね。事業の調子が悪いのでしょうか?

調子が悪いわけではありません!BPOの案件は順調に獲得できていますが、たまたま“原価率の高い案件”を受注したため、EBITDAが計画よりも大幅に遅れてしまいました。このため「△」を付けています。

なお、BPO事業の原価率は大口顧客様の案件によって左右されます。これについては受注してみないとわからないので、一概にどのような案件だと原価率が高くなるかは説明がむずかしいです。実際、BPO事業の業績推移を見ていただくと、案件の原価率次第でEBITDAが凸凹しているのがわかります。

株式会社うるる近藤様

<BPO事業の売上高・EBITDAの推移>

売上高の推移

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

実際にBPO事業の売上高とEBITDAの推移を見ると、四半期によってEBITDAの数値が大きく動いている様子がわかります。繰り返しになりますが、受注した案件の原価率が高ければ、EBITDAは減少、もしくは赤字になります。「前四半期比で減少、もしくは赤字だから不調だ」とすぐに考えるのではなく、決算短信や決算説明資料をよく読んで判断したいですね。

EBITDAが通期予想を大幅に上回った

指さしひっきー

全社のEBITDAは、3Q累積実績が1.1億円と通期予想の0.5億円約2倍になっていますね。この状況でも通期予想を据え置いている理由として、「4Qに積極投資をする」と説明されていますが、具体的にどのような投資を予定されていますか?

「fondesk」への投資を予定しています。fondeskはコロナ禍のテレワーク需要の影響で企業への導入が進んだのですが、最近は「DX化」の文脈で大企業への導入が増えています。このため、4QにテレビCMタクシー広告を流して導入件数をさらに増やして行こうと考えています!

株式会社うるる近藤様

注目すべき指標

次に、うるる社を分析するときに注目すべき指標を説明します。同社は売上高の7割近くがSaaS事業で構成されているので、全社の売上高やEBITDAだけでなく、「各SaaSの指標」も合わせて確認するのがおすすめです。

同社ではNJSSやfondesk、えんフォトなど複数のSaaSを提供しています。「いきなりすべてのサービスをチェックするのはむずかしい」という方は、売上高への影響が大きいNJSSと、成長投資を加速させているfondeskに絞って確認していきましょう。

注目すべき指標
事業 注目すべき指標
NJSS LTV、ARPU、解約率、有料契約件数
fondesk 有料契約件数、解約率

同社の決算説明資料で、これらの指標がグラフで開示されています。実際にどのように推移しているのか紹介しますね。

NJSSの注目すべき指標①LTV

<NJSSのLTVの推移>

NJSSのLTVの推移

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

NJSSのLTVの推移を見ると、2022年3月期3Qにピークをつけたあとに減少しています。その後はゆるやかに回復傾向にありますが、最新決算である2023年3月期3Q時点のLTVは231.8万円と、ピーク時の233.7万円と比べて少なくなっていますね。

本来、LTVは“増加している”状態が望ましいです。理由は、将来にわたる売上高が下の計算式で求められるためです。

NJSSの将来にわたる売上高

NJSSの将来にわたる売上高=LTV×契約件数

それでは、NJSSの最新決算時点のLTVが、1年前と比べて減っているのはなぜでしょうか。この理由を探るため、LTVをさらに分解して考えます。

LTVの計算式

LTV=ARPU※10×平均契約期間※11×粗利率
=ARPU×(1÷解約率)×粗利率

※10 ARPUとは、「Average Revenue Per User」の略です。日本語では「1ユーザーあたりの平均売上」となります。SaaS企業でよく出てくる指標なので、この機会に覚えておきましょう!

※11 平均契約期間は、「1÷解約率」で求められます。

LTVは上の計算式のように、3つの要素に分解できます。このうち、粗利率はNJSSの場合「90%固定」なので、残りのARPUと解約率の推移を追いかければ、LTVが減ってしまった理由がわかります。

NJSSの注目すべき指標②ARPUと解約率

<ARPUと解約率の推移>

ARPUと解約率の推移

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

左側の棒グラフが「ARPU」、右側の折れ線グラフが「解約率」を表しています。左側のARPUは、LTVがピークをつけた2022年3月期3Qを境に下がり“横ばい”となっています。したがって、LTVが減少した理由は「ARPUが横ばいになったため」だと考えられます。

指さしひっきー

ARPUが横ばいになった理由は何でしょうか?

いままでは、新規顧客に値上げした単価を提示してきました。それが一巡したため、「ARPUが横ばいで推移するフェーズ」になっています。

ARPUについては、件数と売上高のバランスを見て成長させる方針です。いまは“件数を伸ばす”マネジメントに変えて、多少の値引を組み合わせつつ売上高を伸ばしていきます。

株式会社うるる近藤様

続いて、解約率をチェックします。2023年3月期3Q時点の解約率は1.42%と、過去最低水準になっています。解約率が低くなればなるほど、そのサービスを長く使う顧客が増えていくため、LTVの構成要素となる「平均契約期間」が長くなります。過去最低水準の解約率となっているのは、とても良い傾向でしょう。

指さしひっきー

解約率が過去最低水準となっていますが、優良SaaSの条件と言われる「1%」を上回っています。やはり「解約率の引き下げ」が課題になるかと思われますが、何か対応策は考えていらっしゃいますか?

CS(カスタマーサクセス)※12の強化UI・UX※13の継続的な改善機能の追加などによって解約率の改善を図っていきます。

例えばNJSSでは、過去のCSは契約更新をするかどうかの確認が主な業務でしたが、1年未満の短期間契約を原則廃止して顧客と接触を持てる期間を延ばし、「顧客が案件を落札するためにどうすれば良いか」をサポートするように変更しています。

株式会社うるる近藤様

※12 CS(カスタマーサクセス)とは、日本語に直すと「顧客の成功」となります。具体的には、サービスを利用している顧客が目的を達成し、成功するために導く行動を指します。

※13 UI(ユーアイ)とは、「User Interface」の略です。Webサイトのデザインやフォントなど、ユーザーの触覚に触れる情報をまとめて表します。一方、UX(ユーエックス)とは、「User Experience」の略です。製品やサービスを使って、ユーザーが得る体験を表します。

指さしひっきー

すでに解約率を低下させるための取り組みを実行されているのですね!その結果、過去最低水準の解約率を達成しているので、引き続き解約率の低下に期待したいです。

NJSSの注目すべき指標③有料契約件数

<有料契約件数の推移>

有料契約件数の推移

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

NJSSの有料契約件数は、右上がりで増えています。2023年3月期3Q決算時点では、前年同期比で+20.5%と高い成長となりました。

有料契約件数の増減率と増減数
前年同期比の増減率 前年同期比の増減数
2022年3月期3Q +19.5% +731件
2023年3月期3Q +20.5% +918件

上の表で、有料契約件数の前年同期比の増減率と増減数を整理しました。これを見ると、最新決算時点の増減率・増減数ともに前年を上回っています。NJSSの注目すべき指標②ARPUと解約率で紹介したように、「契約企業における価格の見直し」が影響しています。

指さしひっきー

NJSSを追いかける際は「①有料契約件数が伸びているか」、「②ARPUを引き上げられているか」、「③LTVが増加しているか」の3つのポイントに注目しましょう!

fondeskの注目すべき指標①有料契約件数

<有料契約件数の推移>

有料契約件数の推移

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

fondeskの有料契約件数も、右上がりで増加しています。2023年3月期3Q時点では前年同期比+25.5%と高い成長を見せました。業務効率化に取り組む企業が増えており、fondeskの有料契約件数が増加したのです。

ちなみに、2020年から2021年にかけて有料契約件数が急増しています。これは、コロナ禍のテレワーク特需の影響です。会社に出社する人が減ったため、会社に掛かってくる電話対応を外注する企業が増えたわけですね。

指さしひっきー

2021年以降の有料契約件数の増加は、「企業の業務効率化」が原動力とおっしゃられていましたね。この流れは今後も続くのでしょうか?

そうですね!最近は大企業を中心に導入が進んでおり、この流れは続くと考えています。例えば、富士通コンポーネント様は、下記の課題をfondesk導入で解決しました。

株式会社うるる近藤様

fondesk導入前

  • セールスの電話で業務への集中力が途切れてしまう
  • 電話がテレワーク移行の障壁になっていた
  • 電話の取り次ぎで無駄な作業が発生していた

fondesk導入後

  • テレワーク下でのスムーズな電話対応ができた
  • 特定の人に電話負担が集中しなくなった
  • メール通知で対応すべき人がすぐにわかるようになった
  • 不要な営業電話を受けずに済むようになった

このように、大企業の業務効率化需要はまだあるため、今後も有料契約件数を伸ばせると考えています!

株式会社うるる近藤様

指さしひっきー

ご説明ありがとうございます!4QにはテレビCMやタクシー広告を展開予定ですし、有料契約件数の伸びに注目ですね!

fondeskの注目すべき指標②解約率

<解約率の推移>

解約率の推移

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

fondeskの解約率は、上のスライドの右側にある折れ線グラフです。順調に低下しており、2023年3月期3Qは過去最低水準の解約率1.5%となりました。継続的なプロダクト・サービス改善が、解約率の低下に影響したようです。

指さしひっきー

NJSSと同じように、fondeskの解約率が低下するかに注目です!

注目のトピック

最後に、2023年3月期3Q決算の注目トピックを2つご紹介します。

注目のトピック

  • BPO事業の「徳島第三センター」を設立
  • 「nSearch(エヌ・サーチ)」を運営するブレインフィード社を買収

BPO事業の「徳島第三センター」を設立

<徳島第三センター設立>

徳島第三センター設立

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

うるる社では、徳島第一・第二センターに隣接した場所に、徳島第三センターを設立しました。このセンターは、2023年3月の稼働開始を予定しています。センターを増やした理由は、電子帳簿保存法改正による電子化ニーズの拡大などに対応するためです。スキャン業務の受け入れ体制が強化されるので、受託件数の増加にも十分対応できるでしょう。

また、徳島第三センターの他にも、投資を検討されているとのことです。続報に期待したいですね。

「nSearch(エヌ・サーチ)」を運営するブレインフィード社を買収

<株式会社ブレインフィードを買収>

株式会社ブレインフィードを買収

(出典:うるる社の2023年3月期第3四半期決算説明資料[PDF])

2023年1月4日、入札情報検索サービス「nSearch(エヌ・サーチ)」を運営するブレインフィード社を買収しました。このサービスは、うるる社が運営している「NJSS」の競合にあたるサービスです。

指さしひっきー

“低価格版NJSS”ともいえる「nSearch」を運営する企業を買収されましたね。買収の目的や買収後の「nSearch」の立ち位置などをお聞かせください。

nSearchを運営するブレインフィード社を買収した狙いをまとめると、下のようになります。

株式会社うるる近藤様

nSearchを買収した狙い

  • サービス価格帯拡充によるマーケット規模とシェアの拡大
  • 入札データベース構築の効率化
  • 付加価値の高い領域へのプロダクト投資

最も大きい理由は、マーケット規模とシェアの拡大です。NJSSとnSearchは同じ入札情報を扱うサービスですが、情報収集の方法価格帯に違いがあります。

株式会社うるる近藤様

NJSSとnSearchの違い
nSearch NJSS
情報収集方法 Webクローラーのみ Webクローラー+人力
営業組織 なし インサイドセールス
フィールドセールス
カスタマーサポート 必要最小限 カスタマーサクセス
価格 10,000円※14 35,000円※15

※14 買収前の定価です。

※15 NJSSのARPUです。

nSearchはWebクローラーのみで情報を収集し、人手を使っていません。そのためNJSSよりもコストが少なく、低価格で提供できています。そのため、これまでNJSSがアプローチできなかった顧客層を抱えているのです。

また、nSearchよりも上位の機能を使いたくなった顧客に対しては、NJSSの利用を提案できます。長期的には顧客単価も引き上げられる可能性があります。

株式会社うるる近藤様

指さしひっきー

なるほど!これまでアクセスできなかった顧客層を買収で手に入れられるなら、効率が良いですね。
ところで、“買収された側の従業員が、買収した側の企業文化になじめず辞めてしまう”という話を時々耳にするのですが、御社ではそのような心配はないですか?

幸いなことに、そのような問題は起きていません!nSearchはエンジニアの少数精鋭チームだったのですが、「エンジニアとしてバリューを出したい。そのフィールドがあるのであれば、我々はどこでも活躍できる。」と考えている方たちだったので、スマートに入社してくださいました。

株式会社うるる近藤様

指さしひっきー

素敵なエンジニアさんですね…!

また、優秀なnSearchのエンジニアの方たちには、nSearchよりも客単価の高いNJSSのプロダクト開発に関わってもらう予定です。これによって、いままでよりも付加価値の高いプロダクトを生み出せそうです!

株式会社うるる近藤様

今後の成長戦略は?中期経営計画の達成確度もお伺いしました

続いて、うるる社の今後の成長戦略をご紹介します。同社は中期経営計画を立てており、2024年3月期がこの計画の最終年度です。

<中期経営計画>

中期経営計画

(出典:うるる社の中期経営計画(修正版)[PDF])

上の表は、うるる社の中期経営計画で設定されている、売上高とEBITDAの計画値です。最終的に、2024年3月期に売上高「58億円」、EBITDA「15億円」を掲げています。

指さしひっきー

いよいよ来年度は中期経営計画の最終年度ですね。最終年度に向けて、どのような投資を計画・進められていますか?

中期経営計画の4年目である今期は、人件費広告宣伝費システム関連委託費を合わせて28.9億円程度投資する予定です。売上高の目標が48.5億円なので、約60%を投資に充てる計画ですね。

株式会社うるる近藤様

指さしひっきー

ちょうど4Qにも広告宣伝投資を予定されているとお話されていましたね。3Q時点では順調に進んでいるようですが、中期経営計画の達成確度はどのように捉えていますか?

低い目標ではないので「絶対に達成できる」とは言い切れませんが、ここまでは計画どおりに来ているので、この勢いのまま来期も売上高の成長を継続させます。投資を中期経営計画期間5年間のうち4年間続けてきたので、来期は投資を抑えて利益を出す予定です。

そのあとの計画については、現在経営陣の間で話を進めています。話が固まり次第発表するので、しばらくお待ちいただければと思います。

株式会社うるる近藤様

指さしひっきー

これまでの実績を踏まえて考えてほしいということですね!わかりました。中期経営計画のその後についても、続報をお待ちしております!

個人投資家へのメッセージ

指さしひっきー

最後に、個人投資家へのメッセージをお願いいたします!

来期は、2019年に開示しました5か年中期経営計画の最終年度を迎え、これまでの投資期間を経て利益を生み出す1年となります。是非、投資家の皆様にその進捗状況をお届けできればと考えています。

また、同中期経営計画以降の方針についても、経営陣で議論を深めているところです。方針が固まり次第、合わせてご報告いたします。

株式会社うるる近藤様

指さしひっきー

この度は取材へのご協力ありがとうございました!

うるる社の取材は以上となります。複数のサービスを展開しているおもしろい企業です。主力のNJSSはもちろん、企業のDX化で導入が進むfondesk、電子帳簿保存法改正が追い風となっているBPO事業など、今後の動向に注目したいですね。

また、今回の取材にご協力いただいた近藤様は、Twitterでの情報発信にも力を入れていらっしゃいます。ぜひ近藤様のTwitterをフォローして、最新情報を見逃さないようにしましょう!

指さしひっきー

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ディスクレーマー

当記事では、筆者独自の見解を述べることがありますが、証券およびその他の金融商品の売買や引受けを勧誘する目的ではなく証券およびその他の金融商品に関する助言や推奨をするものではありません。また、個別企業の業績予想や株価予想、投資推奨を提供する予定はありません。投資判断等は、自己責任でお願いいたします。

やさしい株のはじめ方編集部

この記事の執筆者

やさしい株のはじめ方編集部 

FP2級や証券外務員二種、日本証券アナリスト協会検定会員補を持つ複数のメンバーが「株初心者の方に株式投資をわかりやすく理解していただく」をモットーに、記事を執筆しています。

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