売上高営業利益率の低い会社はどうして危険なの?
「売上高営業利益率が低い会社は危険」と聞いたのですが、どうして危険なのかイメージがつかめません。
先に結論をお話しすると、売上高営業利益率(以下、営業利益率)が低い会社は、売上高が減ったときに赤字になりやすい傾向があります。そのため「危険」と言われていますが、少し言い過ぎなので、「注意しておいたほうがいい」くらいに思っておくとよいでしょう。
理由を説明する前に、営業利益率からおさらいしておきます。計算式は以下のようになっています。
売上高営業利益率
営業利益÷売上高×100
計算式に入っている営業利益は、売上高から商売にかかった費用(売上原価と販管費)を差し引いたものです。売上原価と販管費は本業に必要な費用なので、これらを差し引いた営業利益率は、「本業の稼ぐ力」を表す指標と言えます。
以上をまとめると、売上高営業利益率が低い状態は、裏を返せば“本業に費用がたくさんかかっている状態”です。こう考えると、「売上高が減ると大変なことになりそうだ」というイメージが持てるのではないでしょうか?
しかし、一概に営業利益率が低い会社には注意すべきだとは言えません。なぜなら、売上高が減っても赤字になりにくい会社があるからです。
ここで、売上高と費用に注目して会社を分類してみましょう。かんたんに分けると、次の2つに分類できます。
- 売上高の変化に合わせて費用も変化する会社
- 売上高の変化とは関係なく、一定の費用がかかる会社
まずは、「①売上高の変化に合わせて費用も変化する会社」です。この会社は、売上高が減っても赤字になりにくいと言えます。
例を出すと、卸売業と呼ばれる業種がこれに当たります。チケットの卸売をおこなうぴあ(4337)の場合、費用のほとんどは“チケットの仕入代金”です。少し会計のお話しが入りますが、この仕入代金は売上高と連動しているため、売上高が減れば費用が減ります。そのため、赤字になりにくいのです。
実際に“ぴあ”の業績推移を見てみましょう。
売上高(青色の棒グラフ)に合わせて、売上原価(水色の折れ線グラフ)が動いているのがわかります。そのため、営業利益(赤色の折れ線グラフ)は一定の水準で推移しているのです。

(出典:マネックス証券)
なぜ仕入代金と売上高が連動するのか、かんたんに説明しておきます。知らなくても問題はないので、苦手な方は読み飛ばしてもかまいません。チケットを販売する場合、チケットが売れたときに売上高が計上されます。それと同時に、チケットを売るのにかかった費用も計上されるしくみです。そのため、「売上高が減る=チケットの売れた枚数が減る」ので、計上される費用も減ります。
対して、「②売上高の変化とは関係なく、一定の費用がかかる会社」は、売上高が減ると赤字になりやすいです。
例を出すと、売上高に対して販管費が多くなりがちな、IT企業などが該当します。料理レシピサイトを運営するクックパッド(2193)の場合、費用の大部分は正社員の人件費です。正社員の人件費は売上高によって変わるわけではなく、毎年一定の金額がかかります。そのため、売上高が減っても販管費が減らず、赤字になりやすいのです。
クックパッドの業績推移を見てみましょう。売上高(青色の棒グラフ)が減っているのにもかかわらず、販管費(黄色の折れ線グラフ)が増え、営業利益(赤色の折れ線グラフ)が減っているのがわかります。

(出典:マネックス証券)
★営業利益率が低い企業は、売上高が減った時に赤字になりやすいので注意が必要です。ただし、企業ごとに性質が違うので、自分が投資している企業が赤字になりやすいか判断するときは、「費用が売上高に連動するかどうか」をチェックしましょう。
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投資歴19年目の株初心者アドバイザーです。2005年からの投資成績は+2億円を突破しました!2009年に発売した著書『はじめての株1年生 新・儲かるしくみ損する理由がわかる本』は、累計59,000部のロングセラー。その他、数多くの金融系メディアにも寄稿しています。