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米国株(アメリカ株)の今後の見通しと11月の振り返り(2024年4月最新)

最終更新日:2024年2月15日

米国株市場の2023年11月の振り返りと、12月の見通し、注目イベント、投資戦略についてご紹介します。

本記事のポイントは、次の3つです。

ポイント

  • 11月のダウ平均は9%高、22年10月以来の上昇率
  • 12月も堅調な展開が続く見通し
  • 年末ラリーに期待

詳しく解説しますので、11月の米国株市場と12月の見通しをチェックしたい方は、ぜひ参考にしてください。

2023年11月の米国株市場を振り返り

11月の米国株式市場は、主要3指数揃って値上がりました。

米国の優良企業30銘柄で構成される「ダウ工業株30種平均(ダウ平均)」は前月比9%高、多くの機関投資家※1が参考にする「S&P500」は前月比8.9%高、ハイテク比率が高い「ナスダック」は前月比11%高となりました。

※1 機関投資家とは、顧客から拠出された資金を運用・管理する法人投資家の総称です。例えば、「投資信託会社」や「信託銀行」、「生命保険会社」、「損害保険会社」などが挙げられます。みなさんの年金積立金の管理・運用をおこなっている「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」も機関投資家です。

ダウ平均は30日に年初来高値を更新し、月間上昇率は2022年10月以来の大きさです。

<ダウ平均(1月3日~12月1日)>ダウ平均(1月3日~12月1日)

出典:TradingViewを基に筆者加筆

S&P500セクター別の騰落率を見ると、「不動産(前月比13.8%高)」や「IT(情報技術、同13.4%高)」、「金融(同11.7%高)」などが相場をけん引しました。S&P500の11分類のセクターのうち、唯一「エネルギー(同1.4%安)」はマイナス圏に沈んでいます。

先月、市場が米国の株式に対して強気の姿勢に傾いた背景には、インフレの一服を受け、米国の中央銀行にあたる「米連邦準備理事会(FRB)」による利上げ局面が終わったとの見方が広がったことが挙げられるでしょう。

例えば、11月14日に発表された10月の「消費者物価指数(CPI)」は前年同月比の上昇率が3.2%と、市場予想を下回りました。2022年には9%超台をつけていたことから、足元では伸び率が大幅に鈍化していることがわかります。

<米消費者物価指数(%)>米消費者物価指数(%)

出典:米労働省を基に筆者加筆

インフレの一服とともに株価を下押ししてきた金利上昇圧力は和らいでいる状況です。10年物国債金利は10月に一時5%を突破していましたが、11月末時点では4.37%まで急速に低下しています。

高金利の債券を満期まで持ち続けた場合、元本は100%戻り、高い利回りを得られるため、相対的に株式の魅力度が低下し、株価を押し下げる要因の一つとなっていました。

<米10年国債利回り(%)>米10年国債利回り(%)

出典:セントルイス連銀を基に筆者加筆

2023年12月の見通し

12月の米国株式市場は、利上げ終了観測を背景に、引き続き堅調な展開が予想されます。金利低下と株高が併存する「ゴルディロックス(適温)」相場の様相を呈していると言えるでしょう。

市場ではすでに利上げ局面が終わり、2024年の「早期利下げ」観測も浮上しているほどです。米国の政策金利である「FFレート」の誘導目標は「5.25~5.50%」、市場では12月のFOMCで3会合連続の利上げ見送りが確実視されています。

<FFレート>FFレート

出典:セントルイス連銀

米金利先物の値動きから金融政策を予想する「FEDウオッチ」によると、次回12月12日、13日に開催される「米連邦公開市場委員会(FOMC)」で金利を据えおくとの見方が「ほぼ100%」です。また、2024年3月にFRBが利下げに転じる確率は「65.1%」まで高まっています。

<FEDウオッチ(2024年3月)>FEDウオッチ(2024年3月)

出典:CME Group

企業業績に目を転じると、2023年12月1日時点でS&P500採用銘柄の98%が2023年第3四半期決算を終え、1株あたり利益(EPS※2)では82%、売上高では62%の企業がポジティブサプライズとなりました。第3四半期のEPSは前年同期比+4.8%と、2022年第3四半期以来の前年同月比での増益になります。

※2 EPSとは、「Earnings Per Share」の略で、企業の「収益力」と「成長力」を評価する際に使われる指標の一つで、1株あたりの利益がどれだけあるのかを示すものです。基本的に数値が高いほど企業の収益力は高いと見ることができます。

これらのことから、米国の企業業績は底をつけ、再び拡大していく局面に入ったと考えられるでしょう。ファクトセットによると、2024年もEPSの拡大が見込まれています。

<EPSの推移>EPSの推移

出典:ファクトセット

米国の個人投資家心理も改善傾向です。米個人投資家協会(AAII)の週間調査によると、11月29日時点で今後6か月の株式相場を「強気」とする個人の回答比率は48.8%と「弱気」の19.6%を大幅に上回りました。以下のグラフに示すように、11月初旬から強気派が増えていることがわかります。

<AAIIの調査>AAIIの調査

出典:米個人投資家協会を基に筆者加筆

注目イベント、投資戦略

FRBのパウエル議長が12月1日に出席したイベントでの発言が、市場では金融引き締めに積極的な「タカ派」姿勢が薄れていると受け止められました。ただし、「適切であれば更なる金融引き締めをする用意がある」と従来の見方も繰り返し示してもいます。

FRBが政策金利を据え置き、11月からの株高が続くのか占う上で、8日の「11月雇用統計」、12日の「11月CPI」など、雇用及び物価指標を引き続き注視する必要があるでしょう。パウエル議長は慎重な姿勢を崩しておらず、それらの結果次第では、12、13日に開催される「FOMC」が予想外の展開になり得えます。

また、12月のFOMC時に発表されるFRBの最新経済見通し、特に、FOMC参加者の金利予測分布にも注目したいところです。22日にはFRBが注視する「11月PCEデフレーター」の発表を控えています。

12月の米国株式市場は、経験的に観測できるマーケットの規則性を指す「アノマリー」的に良好な展開になることが知られています。同月は年末に向けて株価が上がる「年末ラリー」が期待できるでしょう。

<S&P500月次パフォーマンス>S&P500月次パフォーマンス

出典:ヤルデニリサーチを基に筆者加筆

ただし、バリュエーション面を見ると、S&P500の株価収益率(PER※3)は18.7倍と、10年平均の17.6倍を上回っており、5年平均の18.8倍と比べても割安感はない水準です。

※3 PERとは、「Price Earnings Ratio」の略で、株価がEPSの何倍の価値になっているかを示すものです。一般的にPERの数字が大きいほどその株は割高、小さいほど割安と判断されます。

S&P500は2023年10月27日の安値から12月1日までに約12%高となり、年初来高値更新しました。急ピッチに値を上げているため、相場全体が今後も一本調子に株価が高まるとは限らず、一部銘柄は利食い売りに押される場面も見られるでしょう。

利上げ打ち止めが株価上昇に最もつながりやすく、人工知能(AI)分野の収益化が期待される「マグニフィセン・セブン※4」を中心とした好業績銘柄が、相場をけん引していく底堅い展開になりそうです。

※4 マグニフィセント・セブンとは、GAFAM(アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズ)と呼ばれる主要5銘柄に、エヌビディアとテスラを加えた7銘柄を指します。

本来のマグニフィセント・セブンは、2016年に公開された米国の西部劇映画のタイトルです。この作品は、1954年公開の日本の映画「七人の侍」(黒澤明監督作品)を翻案した、1960年公開の西部劇映画「荒野の七人」をリメイクしたものです。

まとめ

2023年11月の米国株式市場は、ダウ工業株30種平均、S&P500、ナスダックといった主要な株価指数が全て前月比で大幅に上昇しました。この上昇は、インフレ緩和の兆しとFRBの利上げ局面の終了への期待により支えられています。

特に不動産、IT、金融セクターが強いパフォーマンスを見せた一方で、エネルギーセクターは下落しました。また、企業の業績も好調で、S&P500採用銘柄の多くが予想を上回る収益を報告しています。

今後の展開は、FRBの政策動向や経済指標の発表に注目しておきましょう。

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