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のれんの減損とは?株主への影響をわかりやすく解説します
「のれん」については、「のれんとは?」でくわしくご紹介しているので、参考にしてください。
のれんの減損とは、貸借対照表に計上した「のれん」の金額を、本来持っている価値に書き直すことです。のれんの減損が起きた場合、損益計算書の特別損失に計上され、純利益が減少する要因となります。
このコラムでは、のれんの減損の意味や株主への影響について、株初心者向けにわかりやすく解説します。
のれんの減損とは?
かんたんに言うと、貸借対照表に書かれている「のれん」の金額を、のれんが本来持っている価値に書き直すことです。たとえば、ある企業の貸借対照表に、のれんが100億円計上されていたとします。後から、のれんが80億円の価値しかないとわかった場合、貸借対照表に載っている「のれん」の金額を80億円に書き直します。
下の図は、のれんの減損をおこなった日本郵政(6178)の貸借対照表です。
<日本郵政(6178)の貸借対照表>
(出典:日本郵政 2017年3月期有価証券報告書)
2017年に「のれんの減損」をおこなったため、2016年には4,143億円あった「のれん」の金額が、2017年には30億円まで減っているのがわかりますね。このように、のれんの減損が起こると、のれんの金額が小さくなります。
株主への影響
のれんの減損によって、株主には以下の2つの影響があります。
- 株価が下がる
- 配当金が減る
それぞれ説明していきます。
株価が下がる
先ほど日本郵政(6178)で説明したとおり、のれんの減損が起こると、貸借対照表に載っている「のれん」の金額が小さくなります。
<日本郵政(6178)の貸借対照表>
(出典:日本郵政 2017年3月期有価証券報告書)
のれんは、会社にとっては資産です。なぜなら、のれんというブランド力を使って、将来に利益を手に入れられるからです。そのため、資産が減ってしまうと、会社にとっては損失となります。損失が起きた場合、会計処理の都合上、損益計算書の特別損失に書かなければいけません。
<日本郵政(6178)の貸借対照表>
(出典:日本郵政 2017年3月期有価証券報告書)
日本郵政の場合は、のれんの減損金額がとても多かったため、会社の最終的な利益を表す「純利益」がマイナスになってしまいました。
純利益がマイナスになると、株価にも影響が出てきます。ここで、株価の計算式を確認しましょう。株価は、以下の式で計算できます。
株価の計算式
株価=純利益÷発行済株式数×PER
たとえば、のれんの減損前の純利益が100円、減損後の純利益が▲100円※1の会社があるとしましょう。発行済株式数は10株でPERは10倍で、のれんの減損前後で変わらないとします。のれんの減損前と減損後の株価を計算すると、下のようになります。
- のれんの減損前の株価:純利益 100円÷10株×PER10倍= 100円
- のれんの減損後の株価:純利益▲100円÷10株×PER10倍=▲100円※2
※1 「▲」は「マイナス」という意味です。
※2 実際には、株価はマイナスになりませんが、もともとの株価100円よりは下がります。
のれんの減損によって、株価が下がるのがわかりますね。
配当金が減る
のれんの減損によって、貸借対照表の「のれん」の金額が減ってしまいました。図で表すと、下のようになります。貸借対照表の左側だけ減ったのがわかりますね。
貸借対照表の左側は会社が持っている「資産」を、右側は「負債+純資産」を表しています。つまり、のれんの減損が起こったために、会社は“資産が50万円しかないのに、借金が100万円ある”ような状態になります。これでは、借金を全額返せません。
ここで、支払えなくなった50万円を肩代わりしてくれる人が登場します。それが、株主です。株主には、出資したお金の範囲内で、会社の借金を肩代わりする義務があります。つまり、50万円分の借金を株主が代わりに支払ってくれるのです。
株主が出資したお金は、貸借対照表の右下(上の画像の青色の部分)にある、純資産※3に含まれます。そのため、のれんの減損額と同じ分だけ、貸借対照表の純資産が減ります。純資産が減ると、株主に大きな影響があります。
※3 株主から集めた返済義務のないお金なので、借金ではありません。
それは、配当金の減少です。実は、株主に対して支払われる配当金は、純資産から切り崩しています。そのため、のれんの減損で純資産が減ってしまうと、株主に分配する配当金の額が小さくなるのです。また、あまりにも減損額が大きいと、配当金がゼロになってしまいます。
まとめ
のれんの減損が起こると、株主にとって「株価が下がる」、「配当金が減る」の2つのデメリットが出てきます。そのため、できるだけ「のれん」が少ない企業に投資するほうが安全です。
最近の日本企業は、他の企業をM&Aするケースが増えてきています。その分、のれんの減損リスクを持った企業が増えています。そのような企業に投資したい場合は、のれんの減損リスクに気を付けましょう。
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