減損損失とは?株価への影響を解説

減損損失とは?株価への影響を解説

担当:西尾

担当・西尾

減損損失とは、「資産がってをした」ことを表す「損失」です。もう少していねいに説明すると、企業が持っている株式や工場などの価値が大きく下がったときに発生します。減損損失が発生すると、その銘柄の株価が下がります。このコラムでは「減損損失とはなにか」と、「株価にどう影響するのか」についてかんたんに説明していきます。

減損損失とは

減損損失は、「企業が持っている株式や工場などの価値が大きく下がったとき」に発生します。たとえば下の図ように、企業が、株式や工場などを買ったときの価格が「100」だとします。この資産(株式や工場)の、現在の価値が「40」に下がった場合、差額の「60」が減損損失となるのです。このようにして発生した減損損失は、損益計算書の「特別損失」に計上されます。

減損損失のイメージ

それでは、減損損失で「特別損失」に計上されると、株価にはどのような影響があるのでしょうか。

株価への影響

「特別損失」は、“突発的に起きた損失を計上する場所”です。減損損失は毎年起きるわけではなく、例えば“コロナショック”のときのように突然起きるので、特別損失として扱います。特別損失を計上する場所は、下の図のようになっています。

減損損失を計上する場所

減損損失が計上されると、まずは「税引き前純利益」が小さくなります。そして、そこから税金を引いた純利益も小さくなります※損益計算書についてしっかり勉強したい方は、「損益計算書」で詳しく説明しているので、こちらをご覧ください。

このように、減損損失で純利益が減ると、一般的には株価が下がります。なぜなら、株価は以下の計算式で表されるからです。

株価=EPS(1株あたり純利益)×PER(株価収益率)

上記の「EPS(1株あたり純利益)」とは、純利益を発行済株式数で割ったものです。つまり、減損損失によって純利益が小さくなれば、1株あたり純利益であるEPSも小さくなります。その結果、「EPS×PER」で計算される株価が下がってしまうのです。

言葉で説明するだけではわかりにくいので、数字を使って説明します。
EPS100円、PER10倍」の企業があるとしましょう。この企業の株価は「EPS100円×PER10倍=1,000円」となります。
もし減損損失でEPSが半分の50円になってしまった場合、株価は「EPS50円×PER10倍=500円」です。減損損失が起きる前と比べると、株価は半分になっています。

以上、減損損失で株価が下がるしくみを説明しました。続いて、どんな企業が減損損失のリスクを持っているのか紹介します。

減損損失が起きやすい企業

減損損失が起きやすい企業には、大きく分けて下の2種類があります。

  • ①株式をたくさん持っている企業
  • ②工場や店舗、のれん※1などの資産を持っている企業

※1 のれんとは、かんたんに言うと「企業を買収するときに、企業が持つブランドや技術の価値を上乗せして支払う金額」のことです。のれんについては「のれんとは?」で詳しく説明しています。

それぞれ、どのような企業が当てはまるのか、一例を紹介します。

①株式をたくさん持っている企業

銘柄名 備考
トヨタ自動車
(7203)
取引先である自動車部品メーカーなどの株式※2を保有
日本郵政
(6178)
関連会社であるゆうちょ銀行(7182)の株式を保有

※2 企業が持っている株式のうち、取引先企業の株式を「政策保有株式」と言います。新聞などでは「政策保有株式」と書かれている場合が多いので、余裕のある方は覚えておくと便利です。

トヨタ自動車と日本郵政は、どちらも上場企業の株式を持っています。万が一、会社が持っている上場企業の株価が下がったときは、減損損失を計上する場合があります。減損損失を計上すると、先ほど説明したように、一時的に株価が下がると考えられるので、注意しておきましょう。

企業が、どれくらい株式を持っているかは、有価証券報告書の【貸借対照表】に載っている「投資有価証券」で確認できます。余力のある方は、ぜひ一度ご覧ください。企業が持っている全体の資産と比べて大きければ、それだけ減損損失の影響が大きくなります。

②工場や店舗、のれんなどの資産を持っている企業

銘柄名 備考
ジェイ エフ イー ホールディングス
(5411)
鉄鋼メーカー。工場や土地を持っている
TDK
(6762)
電子部品メーカー。工場や土地を持っている
すかいらーくホールディングス
(3197)
ファミレス最大手。店舗や土地を持っている

上記の企業は、工場や店舗、土地などの資産をたくさん持っており、その資産を使って商品やサービスを提供しています。工場の操業停止や店舗の休業をおこなうと、商品やサービスの提供ができず、収益が減ってしまいますこのように、資産を使って収益が生み出せないときは、「資産が持つ現在の価値が下がった」と判断するため、減損損失が発生するのです。

また、企業が多額の「のれん」を持っている場合も、注意が必要です。のれんを一言で説明すると、「ブランド力や技術の価値」で、企業を買収するときに発生します。そのため、買収した企業の工場や店舗が休業するなどした際に、減損が発生する場合があります。投資先や、これから投資を考えている企業が、「のれんをたくさん持っていないか」をチェックしておくのがおすすめです。

工場や“のれん”などを、どれくらい持っているかは、有価証券報告書の【貸借対照表】に載っている「固定資産」でチェックできます。

減損損失の事例

実際、過去に減損損失を計上した企業と、その株価の推移を紹介します。減損損失が起きたときにどういう影響があるかを考えるためにも、過去の事例を知っておくのが大切です。

①保有株式の減損(トヨタ自動車)

2019年2月6日に決算発表をおこなったトヨタ自動車(7203)は、2019年3月期第3四半期の決算で、「保有株式の評価損」を約3,600億円計上しました。その分、トヨタ自動車の純利益が減るため、EPSも小さくなります。株価は「EPS×PER」で計算できるため、EPSが小さくなった分だけ株価も下がってしまうのです。

実際に、トヨタ自動車(7203)の株価チャート※3を見てみましょう。

トヨタ自動車の株価推移

(出典:SBI証券

※3 決算発表直後の株価の動きを見やすくするため、SBI証券の分析ツール「分析の匠」の中にある「予想PER推移」のチャートを使っています。

株価の動きを見ると、決算発表前日の株価6,752円から、決算発表を受けて6,430円まで、5%ほど下げましたしかし、その後の株価は右肩上がりになっています。企業が持っている株式の減損が起きても、株価が下がるのは一時的と考えて良いでしょう。

②のれんの減損(東芝)

東芝(6502)は、日本を代表する総合電機メーカーです。2017年に、買収したアメリカの原発事業会社の「のれん」で巨額減損が発生し、経営危機に陥ったのを覚えている方も多いのではないでしょうか。トヨタ自動車と同じように、当時の株価を見てみましょう。

LIXILグループの株価推移

(出典:SBI証券

巨額減損がニュースになったのは、2016年の年末からです。左側の株価が最も高いところが2016年の年末で、株価が暴落する直前の株価は443円※4でした。巨額減損がニュースになってから株価は下がり続け、一時は183円まで約60%も下がりました。その後は、じわじわと株価が戻っています。

株価が急落したのは、巨額減損だけでなく、上場廃止が懸念されたのも原因です。その後は株価が回復しているので、のれんの減損は、株価にとって一時的なマイナス要因だったと考えて良いでしょう。

このように、減損損失によって、株価は一時的に下がってしまいます。これから投資しようと考えている企業や、すでに投資している企業について、減損損失のリスクがないか確認しておくと良いでしょう。

※4 当時の株価と株価チャートの株価に10倍の開きがありますが、これは2018年10月に「10株を1株にする株式併合」がおこなわれたためです。

まとめ

減損損失は、企業が持っている株式や工場などの価値が、大きく下がったときに発生する「損失」です。減損損失が発表されると、このコラムで説明したように、株価が下がると考えられます。株式投資をする際は、最悪の事態を想定して、「減損損失が発生する可能性があるのか」を、チェックしておくのがおすすめです。そうすれば、非常事態が起きても、あせらず対応できます。

このコラムを書いている2020年4月時点では、新型コロナウイルスの感染拡大による株価の暴落や、工場の操業停止などが起きています。今後、減損損失の発表が相次ぐかもしれません。

万が一、減損損失が発表されたときは、減損損失が起きた理由を調べましょう。コロナショックのように一時的な理由であれば、ショックが過ぎると業績が元に戻るので、株価も上がっていくでしょう。しかし、事業の失敗など、一時的ではない理由であれば、業績が元に戻るとは考えにくく、株価も上がらないと考えられます。あせらず、「どうして減損損失が起きたのか」を見極めましょう。

西尾のプロフィール

・やさしい株のはじめ方の資産運用担当
・ファイナンシャルプランナー2級、証券外務員の資格あり
・年間200銘柄以上を分析中

Twitter「@kabuotaku758」でも情報発信中です!