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DeepSeekショックでNVIDIAをはじめAI・半導体関連株が下落!今後の見通しや関連株も紹介

にしけい担当:にしけい

最終更新日:2025年1月29日

株式市場ではDeepSeek(ディープシーク)ショックが話題になっています。中国のAI開発企業がリリースした生成AIモデル「DeepSeek-R1」をめぐり、NVIDIAをはじめ世界のハイテク企業の株価が下落したできごとを指します。日本国内でも半導体関連株の株価が大きく下落して日経平均株価も下落したため、気になっている方が多いようです。

このコラムでは、DeepSeekショックの概要とDeepSeekの説明、今後の見通し、関連株を紹介します。ぜひ最後まで読んでくださいね。

DeepSeekショックでNVIDIAが大幅下落

DeepSeekショックとは、中国のAI開発企業が開発した低コストの生成AIモデル「DeepSeek」で、高性能な最新モデル(DeepSeek-R1)が発表されたことを受けて、世界のハイテク企業の株価が下落したことを指します。

米国ではAI関連銘柄の代表格であるNVIDIA CORP(NVDA)の株価が前日比▲16.86%と大幅下落しました。

NVIDIA CORP(NVDA)の株価チャート>

NVIDIA CORP(NVDA)の株価チャート

今回のショックについて詳しく説明する前に、DeepSeekとはどのような生成AIなのかを解説します。

DeepSeekとは

DeepSeekとは、中国のAI開発企業が開発した生成AIツールです。

<DeepSeekのトップ画面>

DeepSeekのトップ画面

(出典:DeepSeek

1月20日には研究開発やソフトウェア開発で活用できるほどの高い性能を持つ「DeepSeek-R1」という最新モデルを発表しました。

同社は創業から1年余りの新興企業でありながら、OpenAIが開発している「ChatGPT」やAnthropicが開発している「Claude」といった世界トップクラスの生成AIに匹敵するモデルを、わずか8億円の予算とたった2か月という短期間で開発したことで、世界中から注目を集めています。

少し専門的な話ですが、生成AIの学習効率の高さも話題です。生成AIを開発する際、GPU※1と呼ばれる装置を大量に使います。今回リリースされたDeepSeekは、ChatGPTの開発で使用したGPUの数の5分の1しか使わなかったそうです。この点でも、DeepSeekがいかに革新的であるかがご理解いただけると思います。

※1 GPUとは、「Graphics Processing Unit」の略です。画像や映像を処理するための装置を指します。

株式市場の反応

DeepSeek-R1の登場を受けて、1月27日はハイテク株を中心に株式市場が下落しました。半導体メーカーのNVIDIA CORP(NVDA)は前日比▲16.86%と大幅に下落しました。

NVIDIA CORP(NVDA)の株価チャート>

NVIDIA CORP(NVDA)の株価チャート

米国株式市場全体も下落し、NASDAQは前日比▲3.07%となりました。

<NASDAQのチャート>

NASDAQのチャート

東京株式市場でもDeepSeekのショックが波及し、アドバンテスト(6857)は27日に前日比▲8.61%、翌28日は前日比▲11.14%と下落しています。

アドバンテスト(6857)の株価チャート>

アドバンテスト(6857)の株価チャート

日経平均株価も押し下げ、27日は前日比▲0.92%、28日は前日比▲1.39%となりました。

<日経平均株価のチャート>

日経平均株価のチャート

株式市場が下落した理由

株式市場が下落した理由について、さまざまな見方があるようですが、大きく分けると下記の2つが挙げられます。

株式市場が下落した2つの理由

  1. 米欧などのAI関連企業の業績成長が阻害される可能性がある
  2. 低コストでのAI開発により巨額投資が不要になる可能性がある

①米欧などのAI関連企業の業績成長が阻害される可能性がある

ChatGPTやClaudeといった既存の高性能AIと並ぶDeepSeek-R1が普及した場合、米欧などのAI企業が優位性を奪われる可能性があるからです。

AI関連企業には、AI開発会社の以外に半導体メーカーや半導体製造装置メーカー、半導体材料メーカーなどが存在します。中でも半導体製造装置や材料の分野では、関連する日本企業も多いです。

DeepSeek-R1の台頭によって、AI企業の業績にマイナスの影響が及ぶと考えられたため、投資家が株を売ったと考えられています。

②低コストでのAI開発により巨額投資が不要になる可能性がある

DeepSeek-R1は、低コストで高性能なAI開発が可能であることを世の中に示しました。

先ほど紹介したように、生成AIの学習に必要なGPUの数が減る可能性があります。必要なGPUが少なくなれば、その分だけ半導体メーカーの出荷数が減るため、業績に下押し圧力が加わると考えられます。

また、これに関連して生成AI関連の巨額投資が削減されるのではとの思惑も広がりました。データセンターや電力設備などの関連設備への投資が縮小すれば、関連企業の業績にもマイナスの影響が及ぶかもしれません。

このように、低コストで生成AIが開発できるようになれば、半導体だけでなく電力設備など関連業界にもマイナス影響が及ぶでしょう。幅広い業種の銘柄が売られた背景には、このような理由があるのです。

ハイテク株の割高感も下落に拍車をかけた可能性

このほか、ハイテク株全体に割高感があったことも、株価下落に拍車をかけた可能性があるでしょう。

S&P500の予想PERは21倍台となっており、過去3年間の平均値19倍を上回っている状態でした。DeepSeek-R1の台頭で企業業績が下方修正されれば、さらにPERは切り上がってしまいます。このような割高感から売りが出やすかったのかもしれません。

DeepSeek株の買い方

「低コストで高性能なDeepSeek-R1を開発したDeepSeek社に投資したい」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、DeepSeek社は上場しておらず、株を買うことはできません

また、インターネットで「DeepSeek 株」などと検索すると、DeepSeekの仮想通貨が出てきます。こちらは詐欺のようですので、買わないようにしてくださいね。

DeepSeekショック関連株

DeepSeek-R1の登場は、マイナスとプラス両方の影響があります。

マイナスの影響としては、市場が危惧しているようにDeepSeek-R1の普及によって、米欧のAI関連企業の業績にマイナスの影響が及ぶことです。

一方、プラスの影響としては、米国でAI開発がさらに加速することや、低コストのAIモデルによってAIの普及が加速し半導体需要がさらに高まることが挙げられます。

トランプ大統領は、DeepSeekに対して「これは我々への警鐘であり、勝つための競争に集中しなければならない」という趣旨の発言をしました。中国のAI開発に負けないよう、米国企業に喝を入れているので、今後は米国内のAI開発が加速するかもしれません。

以上をまとめると、短期的には株式市場にとってマイナスの影響が及ぶと考えられますが、中長期的にはプラスの影響が大きくなるかもしれません。

マイナスの影響を受ける銘柄

DeepSeekの登場で短期的にマイナスの影響を受けるかもしれない銘柄として、下記の5銘柄を紹介します。AI半導体に関連した銘柄が中心です。

マイナスの影響を受ける銘柄
銘柄名
(クリックで最新株価)
事業内容
ソフトバンクグループ(9984) 孫正義氏率いる世界的なIT投資会社。2025年1月にはトランプ大統領との共同記者会見で、米国でAI開発向けのインフラ構築を発表した。
フジクラ(5803) 電線御三家の一角。電力設備向けのケーブルなどを製造しており、AI関連銘柄に名を連ねている。
アドバンテスト(6857) 半導体試験装置の大手メーカー。生成AIの開発に必要な半導体関連の銘柄として注目されている。
東京エレクトロン(8035) 半導体製造装置やFPD製造装置の製造販売をおこなう会社。世界ランキングはアプライドマテリアル、ASMLに次ぐ3位を誇る。
ディスコ(6146) 半導体製造装置メーカー。「切る・削る・磨く」に特化している点が特徴。半導体シリコンウェハーの切断装置・研削装置・研磨装置は世界トップ。

プラスの影響を受ける銘柄

続いて、DeepSeekショックによってプラスの影響を受ける銘柄をご紹介しましょう。2025年1月27日と28日の株式市場を見ると、下記に紹介するような内需関連銘柄が上昇していました。資金の逃避先として、海外の需要に影響を受けにくい銘柄が好まれたようです。

プラスの影響を受ける銘柄
銘柄名
(クリックで最新株価)
事業内容
東日本旅客鉄道(9020) 首都圏・東日本を地盤とする、日本最大手の鉄道会社。不動産賃貸やエキナカ物販事業も展開している。
良品計画(7453) 『無印良品』や『MUJI』ブランドで知られる衣料品メーカー。スキンケア商品などの生活雑貨も取り扱っている。
任天堂(7974) 家庭用ゲーム機『Nintendo Switch』やゲームソフトなどの世界的メーカー。代表的なソフトは『スーパーマリオ』、『ポケットモンスター』、『どうぶつの森』、『スプラトゥーン』がある。
三井不動産(8801) 総合不動産会社。オフィスビルや商業施設の賃貸、マンションの分譲、不動産の管理などを手掛けている。

まとめ

DeepSeekショックについて解説してきました。ChatGPTに並ぶ高性能かつ低コストな生成AI「DeepSeek-R1」の登場によって、さまざまな懸念と期待が飛び交っています。

短期的には米欧日のAI関連、半導体関連銘柄には逆風かもしれませんが、低コストAIが普及することで半導体の需要がさらに高まり、中長期的には半導体関連銘柄にプラスの影響が及ぶ可能性があるでしょう。

にしけい

この記事の執筆者

にしけい

社内の余裕資金を運用するファンドマネージャーです!当サイトで上場企業のIR取材記事やコラムを執筆しています。企業分析と経済分析が趣味で、BSテレビ東京『マネーのまなび』や日経ヴェリタス、日経マネー等への掲載歴があります。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)、簿記2級、FP2級の資格を保有しています。

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