自社株買いを発表すると、株価にはどう影響しますか?
以前、ソフトバンクグループ(9984)が自社株買いを発表して、突然株価が上がりました。会社が株を買うことと、株価が上がることが、どう繋がるのかわかりません。どのような仕組みになっているのでしょうか?
ソフトバンクグループ(9984)は、米国同時株安の影響を受けて2018年12月末ごろに株価が下がりました。米半導体企業のNVIDIAなどに、積極投資していたためです。具体的な数字を出すと、2018年12月3日の高値9,780円から、2018年12月26日の安値6,803円まで30%以上も下がっていました。株価が戻らないことに危機感を覚えたソフトバンクグループ(9984)が、自社株買いを発表したというわけです。株価は、自社株買い発表前の8,462円から、わずか5日間で11,035円という、30%もの値上がりに繋がりました。
「自社株買い」とは、企業が市場に流通している株式を買い取ることです。自社株買いをおこなうメリットの1つに、株主還元があります。代表取締役の孫正義さんは、「株価が安すぎるため」に自社株買いをすると明言しました。つまり、今回は株価を上げて株主還元するために自社株買いをしたということがわかります。
自社株買いが株主還元に繋がる理由は、『PER(ピーイーアール)』が下がって割安になるからです。PERとは、株価が割安かどうかを測る指標で、数字が小さいほど割安になります。当然、株価が割安と判断されれば、株を買いたい人が増えます。それが、今回のような急激な株価上昇に繋がったのです。※PERの詳しい解説は、「PERを知る」をご覧ください。
PERは、「株価」を「1株あたりの利益」で割って算出します。例えば、以下の同業種の2社は、どちらの株が割安と判断できるでしょうか?
- ソフトバンク(9434) 株価1,393.5円÷1株利益87.7円=PER15.8倍
- NTTドコモ(9437) 株価2,627.5円÷1株利益200.9円=PER13倍
この場合、PERが低いNTTドコモ(9437)のほうが割安と判断できます。
では、ソフトバンクグループ(9984)を例に、自社株買いをしてPERがどのように変化したかを見てみましょう。
※本来、PERは決算期の予測値で計算しますが、同社は当時2019年3月期の予測を出していなかったので、便宜的に前期の業績をもとに計算します。
PERを見るには、1株利益を計算する必要があります。1株利益は、「純利益」を「発行済み株式数」で割って出します。まずは、自社株買いをする前の1株利益を計算してみましょう。
自社株買い前の1株利益
純利益1兆389億7,700万円÷発行済み株式数11億株=1株利益944円
自社株買いをする前の1株利益は944円でした。
ソフトバンクグループ(9984)は、5,000億円を上限に自社株買いをすると発表しました。発行済み株式数の14%に相当します。自社株買いは1株利益にどんな影響を与えるでしょうか?自社株買いをする前と、自社株買いをした後の1株利益を比べてみましょう。
自社株買い前後での1株利益の比較
- 【自社株買い前の1株利益】純利益1兆389億7,700万円÷発行済み株式数11億株=1株利益944円
- 【自社株買い後の1株利益】純利益1兆389億7,700万円÷発行済み株式数9億2,400万株(11億株の14%引き)=1株利益1,124円
1株利益は944円から1,124円に上がりました。
それぞれの1株利益がわかったところで、自社株買い前と自社株買い後の、PERの違いを見てみましょう。
自社株買い前後でのPERの比較
- 【自社株買い前のPER】株価8,462円÷1株利益944円=PER9倍
- 【自社株買い後のPER】株価8,462円÷1株利益1,124円=PER7.5倍
自社株買いをした後、PERは9倍から7.5倍に下がり、割安になりました。
しかし、今回の発表で株価はすぐに上がり、11,035円の高値をつけました。PERはどう変化したでしょうか。
株価上昇後のPER
株価11,035円÷1株利益1,124円=PER9.8倍
PERが7.5倍から9.8倍まで上がりました。
このように、自社株買いのような好材料が出ると、投資家が素早く反応し、あっという間にPERは同水準まで上がります。自社株買いの発表が出た後に株を買おうとした場合、発表前のPERを目安として、いくらまで上がると適正なのかを把握しておきましょう。
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投資歴18年目の株初心者アドバイザーです。2005年からの投資成績は+2億円を突破しました!2009年に発売した著書『はじめての株1年生 新・儲かるしくみ損する理由がわかる本』は、累計59,000部のロングセラー。その他、数多くの金融系メディアにも寄稿しています。