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株初心者がチェックすべき経済指標は?経済指標重要度ランキングも紹介
株式投資をしていると、雇用者数や失業率など経済指標に注目したニュースを見かけます。「銘柄分析で手いっぱいなのに経済にも目を向けなければいけなくて大変だ」と感じる株初心者の方も多いのではないでしょうか。
今回は、株初心者の方に向けてチェックすべき重要な経済指標を厳選して解説します!経済指標は数多く存在していますが、すべてに目をとおす必要はありません。今回の記事で紹介した経済指標のチェックからはじめましょう!
株初心者は要チェック!注目するべき経済指標
「米国の経済指標発表を受けて日経平均株価が上昇した」のように表現されるほど、日本株は米国経済の影響を受けます。このため、日本株に投資する際にも、米国の経済指標をチェックしておいたほうが良いでしょう。
米国の経済指標は、CPIやPPIといった有名なものからマイナーなものまで含めるとかなりの数があります。すべてをチェックする必要はなく、重要度の高いものに注目しておけばOKです。
経済指標を見る際には、「雇用」「物価」「景気」「金融政策」の4つの観点に注目する必要があります。この4つの観点で株初心者がチェックするべき経済指標を下の表に整理しました。
経済指標の観点 | チェックするべき経済指標 |
---|---|
雇用 | 雇用統計 |
物価 | 消費者物価指数(CPI) |
生産者物価指数(PPI) | |
個人消費支出価格指数(PCE) | |
景気 | 国内総生産(GDP) |
ISM製造業景況指数 | |
ISM非製造業景況指数 | |
金融政策 | 政策金利(FF金利) |
それぞれ説明していきます。
雇用に関する経済指標
株初心者がチェックするべき雇用関連の経済指標として、「雇用統計」を紹介します。
経済指標 | 公表機関 | 公表時期 | 経済指標の解説 |
---|---|---|---|
雇用統計 | 米国労働省 労働統計局 |
毎月 | 米国の景気の実態がわかる、重要な経済指標のひとつです。雇用統計には複数の種類がありますが、中でも「失業率」と「非農業部門雇用者数」に注目が集まります。 |
雇用統計には複数の指標が含まれていますが、「失業率」と「非農業部門雇用者数」は重要度の高い指標です。
失業率は、数値が高くなるほど働きたくても仕事に就けない人が増えていることを表しています。米国では失業率が3%台後半にあるとき、働きたい人がほぼ全員仕事に付けている状態(完全雇用)と言われています。この水準を上回って推移すると、仕事に就けない人が増えており、景気が悪いと判断できます。
非農業部門雇用者数は、農業部門を除いた産業(サービス業など)で働く雇用者数を表します。前月比の増減が公表され、米国の雇用情勢を表す指標として注目されています。
このように、非農業部門雇用者数は雇用の強さ(経済の強さ)を表す指標ですが、状況によっては実際の経済状況を反映できていない可能性もあり注意が必要です。例えば、2024年6月の非農業部門雇用者数は20万6000人増と市場予想を上回る増加となりましたが、同時に過去の数値が下方修正されており必ずしも経済が強いとは言い切れません。
具体的には、2024年4月と5月は数値が下方修正(下のグラフではRevised lowerと表記)されました。経済指標は、必ずしも経済の状況を正しく反映するものではないので、注意しておきましょう。
出典:Bloomberg | 米雇用統計、雇用者数と賃金の伸び鈍化-失業率は4.1%に上昇
物価に関する経済指標
株初心者がチェックするべき物価関連の経済指標として、「消費者物価指数(CPI)」と「生産者物価指数(PPI)」、「コア個人消費支出価格指数(コアPCE)」の3つを紹介します。
経済指標 | 公表機関 | 公表時期 | 経済指標の解説 |
---|---|---|---|
消費者物価指数 (CPI) |
米国労働省 労働統計局 |
毎月 | 消費者が購入するモノやサービスの価格動向を表す指標です。物価が上がっているのか下がっているのかを調べる指標として使われています。 |
生産者物価指数 (PPI) |
米国労働省 労働統計局 |
毎月 | 生産者が出荷した製品や原材料などの販売価格の変動を表す指標です。CPI(消費者物価指数)と同じように、物価が上がっているのか下がっているのかを調べる指標として使われています。 |
個人消費支出価格指数 (PCE) |
米国商務省 経済分析局 |
毎月 | 消費者が実際に購入したモノやサービスの価格動向を表す指標です。米国の中央銀行であるFRBが金融政策を決める際に参考にする重要な指標となります。 |
物価に関する指標は、前月比と前年比の数値が公表されます。株初心者の方は前月比や前年比で上昇したかどうか、事前に公表される市場予想を上回ったかどうかに注目すると良いでしょう。もし物価が上昇すれば、将来的に中央銀行が金利を引き上げ、景気の過熱を防ごうとする可能性があります。金利の上昇は、株式市場全体に対してマイナスの影響があるため注意が必要です。
また、いずれの指標も「総合指数」と「コア指数」が開示されます。これらは、計算の対象となる品目の範囲が違います。総合指数は対象品目すべてを組入れて集計する一方、コア指数は価格変動が激しい食料品やエネルギーを引いて集計する仕組みです。
このため、コア指数に注目すると、価格変動がゆるやかな品目にもインフレが波及しているかを調べられます。しかし、私たちの生活において食料品やエネルギーは欠かせないものなので、現実に近い物価動向を知りたければ総合指数に注目したほうが良いでしょう。
CPIとPPIについては、当サイト内の用語解説ページ(下の関連記事)で最新情報を解説しています。お気に入り登録して、最新情報を見逃さないようにしましょう!
景気に関する経済指標
株初心者がチェックするべき景気関連の経済指標として、「国内総生産(GDP)」と「ISM製造業景況指数」、「ISM非製造業景況指数」の3つを紹介します。
経済指標 | 公表機関 | 公表時期 | 経済指標の解説 |
---|---|---|---|
国内総生産 (GDP) |
米国商務省 経済分析局 |
年に4回 | 米国内で新しく生み出された生産物やサービスの金額の総額(付加価値)で、国の経済の大きさを表す指標です。経済大国である米国のGDPは、景気関連指標として国内外の注目を集めています。 |
ISM製造業景況指数 | 全米供給管理協会 (ISM) |
毎月 | 米国の製造業の景況感を示す指標です。毎月第1営業日に発表されるため、ISM非製造業景況指数とセットで米国の景気先行指標として注目されています。 |
ISM非製造業景況指数 | 全米供給管理協会 (ISM) |
毎月 | 米国の非製造業の景況感を示す指標です。毎月第3営業日に発表されるため、ISM製造業景況指数とセットで米国の景気先行指標として注目されています。 |
景気に関する経済指標のうち、「国内総生産(GDP)」は多くの方が一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。国内「総」生産という名前のとおり、国内で生み出された生産物やサービスの金額の合計を表します。極端な例ですが、パン屋1件だけが存在する世界を考えると、1年間で1個100円のパンを10個売った場合、その年のGDPは100円×10個で1000円となります。
GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2種類があり、先ほど計算した1000円は名目GDPを表します。ここで、翌年にパンの値段が150円に上昇したとしましょう。販売個数は10個で変わらないとすると、名目GDPは150円×10個で1500円です。
この場合、物価の上昇によって名目GDPが500円増えたことになりますね。しかし、販売個数は10個のまま変わっておらず、経済成長したとは言えません。つまり、経済成長したかどうかを調べるには、物価変動を取り除いたGDPを見る必要があります。こうして生まれたのが「実質GDP」です。
実質GDPは、名目GDPをGDPデフレータと呼ばれる調整用の数値で割って算出します。今回は詳しく説明しませんが、物価変動の影響を取り除く操作をしていると考えていただければOKです。経済成長を調べる際には実質GDPに注目しましょう。
残りの「ISM製造業景況指数」と「ISM非製造業景況指数」は、製造業とそれ以外の景気を示す指標です。企業にアンケートを取り、その結果を集計して指数にしています。指数は0~100%で表され、50%を上回る場合は景気が良いとみなされます。
金融政策に関する経済指標
株初心者がチェックするべき金融政策に関する経済指標として、「政策金利(FF金利)」を紹介します。
経済指標 | 公表機関 | 公表時期 | 経済指標の解説 |
---|---|---|---|
政策金利 (FF金利) |
連邦準備制度理事会 (FRB) |
FOMC後 | 米国の民間銀行が資金を融通する際の金利(短期金利)のことです。米国の中央銀行(連邦準備制度理事会/FRB)がおこなう金融政策の誘導目標金利となります。年に8回開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)という会議後に公表されます。 |
政策金利は別名「FF金利(Federal Funds金利)」とも呼ばれ、FRBがこの金利を上げ下げして景気を調整しています。政策金利が変わると株式市場にも大きな影響が及ぶため、市場からの注目度も高くなっています。具体的に、どのような影響が及ぶのでしょうか。政策金利と株式市場への影響を整理すると下のようになります。
政策金利 | 株式市場への影響 |
---|---|
引き上げ | 下落 (金利が上昇すると、お金が借りづらくなり、消費や投資が減って景気が悪くなるため) |
引き下げ | 上昇 (金利が低下すると、お金が借りやすくなり、消費や投資が増えて景気が良くなるため) |
政策金利と株式市場への影響については、以下のページで詳しく説明しています。こちらのページも合わせてご覧ください。
経済指標重要度ランキング
今回紹介した経済指標は、すべて重要度の高いものです。このため、重要度ランキングを付けるのはかなりむずかしいのですが、筆者の独断かつ2024年現在の重要度ランキングを付けるとしたら、下のようになります。
経済指標重要度ランキング
- 失業率(雇用統計)
- コア個人消費支出価格指数(PCE)
- 消費者物価指数(CPI)
- 生産者物価指数(PPI)
- ISM製造業景況指数
- ISM非製造業景況指数
- 国内総生産(GDP)
- 政策金利(FF金利)
2024年現在では失業率が上昇傾向にあり、米国経済が景気後退に突入するリスクが高まっています。もしかしたら、すでに突入しているかもしれません。今後も失業率が上昇するようであれば、景気が悪化してFRBが利下げを検討するシナリオもあるため、最も注目度の高い経済指標と考えています。
2~4位は物価に関する経済指標を挙げました。経済の温度調整をおこなうFRBは、インフレ動向に注目して政策金利を決めています。このため、FRBが最重要視するインフレ指標であるコア個人消費支出価格指数を2位にしました。CPIとPPIはPCEよりも重要度は低いと考え、3位と4位にしています。
5~7位は景気に関する経済指標です。景気が悪化した場合は政策金利に影響を与えるため、政策金利よりは高い順位付けとしました。
最後の8位は政策金利です。このランキングでは最下位となっていますが、政策金利の水準は株式市場や景気に大きな影響を与えるため、重要度は決して低いわけではありません。ただし、政策金利を決めるFRBは景気や物価などの動きを参考にしているため、他の経済指標を見ておけば、政策金利の動きを何となく予想できます。
以上の理由から、このようなランキングとなっています。あくまで筆者の独断で付けたランキングなので、参考程度にご覧ください。
まとめ
株初心者が注目すべき経済指標について解説してきました。「雇用」「物価」「景気」「金融政策」の4つの観点で、バランスよく経済指標をチェックしましょう。慣れてきたら、今回紹介した経済指標以外にも注目できると良いですね。
「経済指標が見やすいおすすめのツールやアプリはある?経済指標の見方も合わせて解説」では、経済指標が見やすいおすすめのツールやアプリを紹介しています。一次情報は英語で書かれており読み解くのが大変なので、これらのツールやアプリをうまく活用して情報収集していきましょう!
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