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貸株はやめたほうがいい?メリット・デメリット、金利が高い理由や高いとどうなるのか解説
貸株(かしかぶ)とは、保有銘柄を証券会社に貸し出すことです。投資家は見返りとして、証券会社から金利を受け取れます。この金利を「貸株金利」と呼びます。
貸株には金利が受け取れる一方、“貸し出したままだと株主優待が受け取れない”といったデメリットがあります。「貸株はやめたほうがいい?」と思うかもしれませんが、うまく使えば資産形成に役立てることが可能です。
このコラムでは、貸株のデメリットを解説したのち、メリットや金利が高い理由、米国株の貸株サービスなどを紹介します。貸株サービスを使おうか迷っている方は、このコラムを読んで参考にしてくださいね。
貸株はやめたほうがいい?3つのデメリット
貸株は銀行預金を大きく上回る金利がもらえます。このため「何かウラがあるのでは?」と気になるものです。結論として、利用者をだますような「ウラ」は存在していないので安心してくださいね。ただし、貸株には3つのデメリットがあるので、利用する前に頭に入れておく必要があります。
それぞれ見ていきましょう。
①貸株返却サービスを利用しない限り配当金や株主優待が得られない
デメリット1つ目は「貸株返却サービスを利用しない限り配当金や株主優待が得られない」というものです。
貸株は、自分の保有銘柄の株券を証券会社に貸し出すものでした。この際、株券の名義は貸出先の証券会社に変わります。このため、権利確定日に貸株を返却してもらわない限り、株主名簿に自分の名前が載ることはなく、配当金や株主優待がもらえません。
証券会社では、こういった投資家の不利益を避けるために「貸株返却サービス」を用意しています。以下の3種類が用意されていることが多く、このうち「配当・優待優先コース」か「優待優先コース」を選べばOKです。
| コース | 概要 |
|---|---|
| 配当・優待優先 | 配当金と株主優待の権利を両方とも受け取りたい方におすすめ |
| 優待優先 | 株主優待の権利のみ受け取りたい方におすすめ |
| 金利優先 | 配当金や株主優待よりも金利を優先して受け取りたい方におすすめ |
このサービスを利用すると、配当金や株主優待の権利確定日に、自動的に株券が返却されます。株主名簿に自分の名前が載るため、配当金や株主優待を受け取ることが可能です。
ただし、株主優待をもらう条件として「継続保有」が設けられている場合は注意が必要となります。まれに、権利確定日以外の日に株主名簿を確定させるケースがあるためです。この場合、貸株返却サービスを利用して権利確定日に貸株を返却してもらったとしても、株主名簿に名前が載らず、継続保有の権利を失ってしまいます。
したがって、継続保有の条件が付いている株主優待を受け取りたい場合は、貸株サービスを利用しないほうがよいでしょう。もしくは、「200株のうち100株だけを貸株にする」といった運用の仕方も考えたいですね。
②配当金が「貸株配当金相当額」に変わり配当所得ではなく雑所得になる
デメリット2つ目は「配当金が『貸株配当金相当額』に変わり配当所得ではなく雑所得になる」点です。このため、株式等の譲渡損との通算や配当控除ができず、確定申告が必要になります。
証券会社に株券を貸し出している場合、投資家は配当金を受け取れません。その代わりに、証券会社から所得税(15.315%)相当額を控除した金額がもらえます。この際に受け取る金額が「貸株配当金相当額」です。
“配当金と同等のものがもらえる”点ではありがたいのですが、配当金とは異なる性質のものになってしまうため、税区分が変わります。細かな違いを下の表に整理しました。
| 配当金 | 貸株配当金相当額 | |
|---|---|---|
| 税区分 | 配当所得 | 雑所得・事業所得 |
| 確定申告 | 不要 | 必要 |
| 株式等の 譲渡損との通算 |
||
| 配当控除 | ||
| 支払日 | 各企業が定める支払日 | 配当金支払日から 5営業日前後 |
| 受取方法 | ①証券口座へ入金 ②郵便局等で受取 ③銀行口座等で受取 |
証券口座へ入金 |
私たち個人投資家にとって影響が大きいものとして、株式等の譲渡損との通算ができないことと、配当控除を受けられないことが挙げられます。また、一定の条件を満たした方は確定申告の必要も出てきます。これは貸株金利も同様です。
一定の条件とは「給与所得2,000万円以上で、貸株金利とその他の雑所得の合計が20万円以上の場合」です。この条件に当てはまる方は、確定申告をしなければなりません。
③投資者保護基金による保護の対象にならない
デメリット3つ目は「投資者保護基金による保護の対象にならない」という点です。
貸株サービスを使って証券会社に貸し出した株券は、証券会社名義に変わります。このため、証券会社が自社の資産と顧客の資産を区別して管理する「分別管理」の対象になりません。このため、投資家保護基金による保護の対象から外れてしまうのです。
したがって、万が一貸株サービスを使って株券を貸し出した証券会社が倒産してしまった場合、貸し出した株券は手元に戻ってきません。貸株サービスを使う場合は、このことも頭の片隅に入れておきましょう。
金利が高い理由は?高いとどうなる?
貸株金利には、銀行預金よりも高い金利(1~3%程度)が設定されています。このように高い金利が設定されている理由として、次の2つが考えられます。
貸株金利が銀行預金金利よりも高い理由
それぞれ説明します。
①空売りの需要に対応するため証券会社が株券を確保しておきたいから
理由1つ目は「空売りの需要に対応するため証券会社が株券を確保しておきたいから」です。
証券会社は、投資家に対して空売りサービスを提供しています。空売りは、投資家が証券会社から株券を借りてきて市場で売る行為です。つまり、証券会社は空売りを希望する投資家に株券を貸し出すため、在庫として株券を確保しておく必要があります。
このため、貸株金利を銀行預金よりも高く設定することで、投資家から株券を貸してもらえるようにしていると考えられるのです。
なお、特定の銘柄に対する空売り需要が高まった場合、その株式の貸株金利も上昇します。したがって、貸株金利が他の銘柄よりも高い場合、「その銘柄には空売りしたいと考える投資家が多くいる」ことを意味します。
長期保有の銘柄を貸株金利目当てに貸し出す分にはよいですが、「貸株金利が高いから」という理由だけでその株式を買ってしまうと、空売りによって株価が下がり、含み損を抱える可能性があるので気を付けましょう。
なお、銘柄ごとに空売りの状況を確認したい場合は、松井証券の「日本株アプリ」が便利です。「機関投資家がどれくらい空売りしているか」を円グラフでチェックできます。詳しくは下記の記事をご覧ください。
②貸株によって投資家が被るデメリットへの対価として設定しているから
理由2つ目は「貸株によって投資家が被るデメリットへの対価として設定しているから」です。
先ほど紹介したように、貸株サービスを利用する場合、貸株金利を受け取れる一方で確定申告しなければならなくなったり、株式等の譲渡損との通算ができなくなったりします。
このような投資家のデメリットに対する対価として、貸株金利が高く設定されているとも考えられます。
貸株のメリット
ここまでは貸株のデメリットを中心に見てきましたが、「貸株金利が得られる」というメリットが存在します。
繰り返しになりますが、銀行預金よりも高い金利が設定されていますので、長期保有の銘柄を証券会社に貸し出すことで、効率よく資産形成できます。
その際、配当金や株主優待を受け取れるよう、貸株返却サービスの利用も忘れないようにしたいですね。
貸株に関する誤解
続いて、貸株に関する「よくある誤解」を解いていきます。
貸株に関する誤解
- 売りたいときに売れないのでは?
- 信用取引口座を開設しなければならないのでは?
1つ目の誤解について解説します。貸株サービスを利用した場合、貸し出した保有株が手元にない状態となります。このため「売りたいときに売れなくなるのではないか」と心配になりますが、貸株サービス利用中の銘柄であっても「いつでも売却可能」です。安心して貸株サービスを利用してくださいね。
2つ目の誤解について解説します。先ほど、貸株サービスで貸し出した株券は、他の投資家が空売りに利用すると説明しました。信用取引との関連があるサービスであるため、「信用取引口座を開設しないといけないのでは」と気になっている方が多いようです。貸株サービスは信用取引口座を持っていなくても使えるので、気軽に貸株をスタートできます。
貸株におすすめのネット証券
貸株におすすめのネット証券を表にまとめました。貸株サービスを利用する際の参考にしてください。
| 証券会社名 | 貸株金利 | 金利1%以上 銘柄数 |
貸株コース | 株式売買手数料 |
|---|---|---|---|---|
| SBI証券 | 0.10~10.00% | 546銘柄 | ①配当・優待優先コース ②優待優先コース ③金利優先コース |
無料 |
| 楽天証券 | 0.10~3.75% | 466銘柄 | ①金利優先 ②株主優待優先 ③株主優待・予想有配優先 |
無料 |
| GMOクリック 証券 |
0.10~4.00% | 634銘柄 | ①優待優先コース ②金利優先コース |
無料 |
| 松井証券 | 0.20~4.00% | 63銘柄 | ①貸株金利優先 ②株主優待優先 ③権利取得優先※1 |
取引金額50万円以下 無料 |
| マネックス 証券 |
0.10~15.00% | 80銘柄 | ①配当金自動取得サービス ②株主優待自動取得サービス |
99円~ (取引金額に 応じて変動) |
※1 株主優待の有無にかかわらず、権利確定日前に必ず貸株を解除し、株主優待と配当金の両方を受け取れるようにする設定です。
各証券会社では、ざっくり分けて「①貸株金利の獲得を優先するコース」、「②株主優待の獲得を優先するコース」、「③配当金の獲得を優先するコース」の3つを用意しています。どのコースにすればよいか迷うと思いますので、各コースの説明と適性を紹介しますね。
①貸株金利の獲得を優先するコース
1つ目は「貸株金利の獲得を優先するコース」です。SBI証券と楽天証券、松井証券、GMOクリック証券が用意しています。マネックス証券は、各種自動取得サービスを申し込まない状態が、金利優先コースに該当すると考えてよいでしょう。
このコースでは、株主優待の権利確定日であっても証券会社に株式を貸した状態になります。株主優待を放棄し、配当金ではなく配当金相当額を受け取ることになります。株主優待が設定されていない銘柄や、とにかく金利の獲得を優先したい方におすすめです。
なお、SBI証券と楽天証券の「金利優先コース」を選ぶと、権利確定日にボーナスとして金利を上乗せしてもらえます。
| 証券会社名 | 権利確定日の 金利上乗せ |
備考 |
|---|---|---|
| SBI証券 | あり | 権利確定日に貸株状態になっている場合、貸株金利1日分(権利確定日分)に対してボーナス倍率が適用 |
| 楽天証券 | あり | 権利確定日は貸株金利が通常の5倍に |
| 松井証券 | なし | - |
| マネックス証券 | なし | - |
| GMOクリック証券 | なし | - |
権利確定日には貸株の返却が多く、空売りの在庫が不足すると考えられます。権利確定日の上乗せ金利は、その日に株式を貸してくれたことに対するお礼と言えるでしょう。
金利の獲得を優先したい方は、SBI証券か楽天証券の利用を考えてみてくださいね。
②株主優待の獲得を優先するコース
2つ目は「株主優待の獲得を優先するコース」です。各ネット証券が用意しています。このコースを選ぶと、権利確定日に貸株を返却してもらえます。株主優待の取得を優先しつつ、権利確定日以外で貸株金利を受け取りたい方はこちらのコースを選びましょう。
ただし、「①貸株返却サービスを利用しない限り配当金や株主優待が得られない」で説明したように、継続保有が条件になっている株主優待を狙う場合は、そもそも貸株サービス自体を使わないことをおすすめします。
③配当金の獲得を優先するコース
3つ目は「配当金の獲得を優先するコース」です。SBI証券と楽天証券、松井証券、マネックス証券が用意しています。このコースを選ぶと、配当金の権利確定日に貸株を返してもらえます。配当金の獲得を優先したい方は、こちらを選びましょう。
国内株の貸株サービスはSBI証券がおすすめ
貸株金利が高く、金利1%以上の銘柄数が多く、コースが充実しており、株式売買手数料が無料という観点で考えると、国内株の貸株においてはSBI証券が最もおすすめです。
当サイトでは現在、SBI証券との限定タイアップキャンペーンを実施中です。SBI証券と住信SBIネット銀行の口座を同時開設し、2万円以上の入金・SBIハイブリッド預金の設定をするだけで、もれなく現金2,500円と、オリジナルレポート「株初心者でも見つかる株の選び方」がプレゼントされます。
まだSBI証券の口座を持っていない方は、この機会に口座開設しておきましょう。
口座開設料・年会費などは一切かかりません。
SBI証券・住信SBIネット銀行・SBI新生銀行のキャンペーンまとめ
米国株の貸株
最後に、米国株の貸株サービスについてかんたんに説明します。
ここまでは日本株の貸株サービスを中心に解説してきましたが、実はSBI証券と楽天証券は米国株の貸株にも対応しています。米国株を中心に投資している方は、ぜひ活用してみてくださいね。
ただし、SBI証券と楽天証券では、貸株の申込から貸出スタートまでの期間が異なります。楽天証券の貸株サービスでは、貸株申込と受理を毎営業日おこなっているため、申込の翌営業日から貸株がスタートします。
一方、SBI証券の貸株サービス「カストック」では、貸株申込が受理されるのは毎月25日12:00であり、貸株がスタートするのは毎月25日20:00からです。したがって、すぐに貸株を利用したい方は、楽天証券の利用がおすすめとなります。
| SBI証券 (カストック) |
楽天証券 | |
|---|---|---|
| 対象銘柄 | 原則、全銘柄※2 | |
| 取引口座 | 特定口座・一般口座 | |
| 貸出期間 | 原則、無期限 | |
| コース | コース選択なし | ①配当優先コース ②金利優先コース |
| 貸株申込締切 | 毎月25日12:00まで | 毎営業日6:00まで |
| 貸株開始時期 | 毎月25日20:00から | 申込の翌営業日から |
| 貸株金利の受取通貨 | 米ドル | 米ドル・日本円 |
※2 対象銘柄は原則全銘柄となっていますが、OTC銘柄(店頭取引銘柄)や各証券会社が定める銘柄が対象外になっている場合があります。
また、参考情報としてSBI証券と楽天証券の米国株取引コストの比較結果を紹介します。どちらの証券会社も売買手数料・為替手数料ともに同じです。
| 証券会社 | 取引コスト | ネット証券 詳細情報へ |
|
|---|---|---|---|
| 売買手数料 (税込) |
為替手数料 (1ドルあたり) |
||
| SBI証券 | 0.495% (最低0米ドル※3) |
無料 | |
| 楽天証券 | 0.495% (最低0米ドル※3) |
無料 | |
※3 約定代金が2.22米ドル以下の取引なら、売買手数料は0米ドル(無料)になります。
総合的に考えると、米国株に投資しつつ貸株サービスの利用を検討している方は、すぐに貸株をはじめられる楽天証券がおすすめです。まだ楽天証券の口座を持っていない方は、ぜひ口座開設してくださいね。
口座開設料・年会費などは一切かかりません。
まとめ
貸株サービスを利用すると、証券会社に貸し出した株券に対して銀行預金よりも高い金利がもらえます。資産形成をより効率的にできるので、長期保有を目的として投資している銘柄がある方は利用を考えてみるとよいでしょう。配当金や株主優待をもらい損ねないよう、貸株返却サービスの利用も忘れないようにしたいですね。
ただし、貸株を利用することで株式等の譲渡損と通算できなかったり、配当控除が受けられなかったりするデメリットもあります。また、継続保有の条件が付いている株主優待をもらいたい場合は、権利確定日と株主名簿に名前が載る日が異なるケースがあるため、念のため貸株サービスは利用しないほうがよいでしょう。
貸株のメリットとデメリットを考慮して、うまく活用していきたいですね!
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