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円高がやばい!なぜ今円高なのか、いつまで続くのか見通しを解説

にしけい担当:にしけい

最終更新日:2023年12月22日

2023年12月7日から8日にかけて急激に円高が進み、「円高がやばい」という声や「円高がいつまで進むのか」と疑問に思う方が増えているようです。

<ドル円レートの推移>

ドル円レートの推移

(出典:SBI証券

このコラムでは、円高とは何かや株式市場に与える影響、なぜ今円高になったのか、円高はいつまで続くのかを株初心者向けにわかりやすく解説します。

ドル円の動きをチェック

円高とは?

円高とは、他の通貨に対して日本円の価値が高まることを言います。日本ではアメリカのドルと日本円を比べて、日本円の価値が高まった場合に「円高」と表現することが多いです。「1ドルを手に入れるために必要な日本円の金額」と捉えると、イメージしやすいでしょう。この際の日本円の金額は、為替レートとして「1ドル=150円」のように表現されます。

それでは、2023年12月8日時点の円とドルの為替レート(以下、ドル円レート)を見てみましょう。今回は過去3か月分のチャートを用意しました。

<ドル円レートの推移>

ドル円レートの推移

(出典:SBI証券

2023年12月初旬までは1ドル=140円後半~150円程度でしたが、12月7日から8日にかけて急速に円安が進み、1ドル=140円前半となりました。

ちなみに、1ドル手に入れるために必要な日本円が150円から140円前半まで“減った”ので、「円安」と思うかもしれません。しかし、円安や円高といった用語は「日本円の価格が高くなったかどうか」を説明するものなので、少し違います。

今回の場合、1ドルと等しい日本円の金額が150円から140円になったので、日本円の価値は高まっています。このため「円高」と表現します。逆を考えるとわかりやすいかもしれません。150円を手に入れるために必要なドルは、これまで1ドルでしたが、今後は1ドル以上支払わなければ手に入らないのです。

急速に円高が進んだ理由については、記事の後半「なぜ今円高になった?」で説明します。

円高の株式市場への影響

一般論として、円高は株式市場にプラスの影響マイナスの影響の両方をもたらします。企業は「輸出企業」と「輸入企業」の2つに分類でき、円高が進んだ場合には輸出企業にはマイナス、輸入企業にはプラスの影響があります。それぞれ説明しますね。

輸出企業の例

輸出企業は、円高が進むと利益が減るので、マイナスの影響があります。

輸出企業の例として、自動車メーカーを考えてみましょう。自動車メーカーは日本国内で自動車を販売するだけでなく、海外にも自動車を販売しています。

ここで、自動車メーカーは海外で「1台=100ドル」で自動車を売っているとしましょう。(現実には100ドルで車は買えませんが、かんたんに説明するためにこの数字としています。)

為替レートが「1ドル=150円」から「1ドル=100円」に円高が進んだとしましょう。海外で自動車を販売した場合、代金はドルで受け取ります。このため、自動車メーカーの海外売上は1.5万円から1.0万円に減ってしまうのです。

自動車メーカーの海外売上
為替レート 海外売上
1ドル=150円 1.5万円
1ドル=100円 1.0万円
差額 ▲0.5万円

したがって、円高は輸出企業にマイナスの影響を及ぼします。海外売上が減少すれば、手元に残る利益も減ってしまうため、株価を押し下げる要因になるでしょう。

輸入企業の例

輸入企業は、円高が進むと仕入れコストが減るので、プラスの影響があります。

一方、輸入企業の例として、食品メーカーを考えてみましょう。食品メーカーは海外から原材料を輸入して国内で加工し、消費者に販売しています。

ここで、食品メーカーは海外から「1kg=100ドル」で原材料を仕入れているとしましょう。為替レートが「1ドル=150円」から「1ドル=100円」に円高が進んだ場合、食品メーカーの仕入れコストは1.5万円から1.0万円に抑えられます

食品メーカーの仕入れコスト
為替レート 仕入れコスト
1ドル=150円 1.5万円
1ドル=100円 1.0万円
差額 ▲0.5万円

輸入コストが抑えられた分、食品メーカーの手元に残る利益が増えます。したがって、円高は輸入企業にとってプラスに働くのです。利益が増えれば、株価を押し上げる要因となります。

なぜ今円高になった?

2023年12月7日から8日にかけて、急速に対ドルで円安が進みました。理由は、日本銀行(以下、日銀)の植田総裁がマイナス金利※1解除など、金融政策の修正を示唆する発言をしたためです。

※1 マイナス金利とは、銀行が日本銀行に預けているお金に対して付く金利がマイナスになる状態をいいます。

これによって日本とアメリカの金利差(日米金利差)が縮小すると考えられ、円が買われて円高になりました。

<ドル円レートの推移>

ドル円レートの推移

(出典:SBI証券

金利差と為替レートの関係

ドルと円など、2国間の為替レートを変動させる要因のひとつに「両国の金利差」が挙げられます。日本とアメリカを例に考えてみましょう。

2023年12月初旬までは、日米金利差が大きく開いていました。理由は、世界で進むインフレ※2への対処方法が、日米で異なっていたためです。

※2 インフレ(インフレーション)とは、継続的に物価が上がる経済状態のことを指します。

アメリカはインフレを抑え込むため、中央銀行であるFRB※3が政策金利を引き上げていました。一方、日本でもインフレは進んでいましたが、日銀はマイナス金利を続けていたのです。

※3 FRB(エフアールビー)とは、アメリカの中央銀行のことです。「The Federal Reserve Board」の略で、日本語では「連邦準備理事会」と言います。

日本とアメリカ インフレへの対処方法の違い
国名 中央銀行の金融政策
日本 日銀はマイナス金利を継続
(=金融緩和
アメリカ FRBは政策金利を引き上げ
(=金融引き締め

このように、2国間の金利差がある場合、投資家は金利の高い通貨に投資するため、円を売ってドルを買う動きが生まれました。以上の背景から、円安ドル高になっていたのです。

しかし、12月7日に日銀の植田総裁がマイナス金利解除を示唆する発言をしたため、投資家は今後日本の金利が高まると考えるようになりました。これまでとは反対の、円を買ってドルを売る動きが強まったため、急速に円高が進んだと考えられます。

円高が進んだ背景には、別の要因も絡んでいると推察されます。2023年11月後半に、FRBの高官から利下げを示唆する発言が相次ぎました。アメリカが利下げをすれば、日米金利差が縮小するため、円高の材料になるのです。

円高はいつまで続く?見通しを解説

日米金利差が縮小するにつれて、円高も進んでいくと考えられます。しかし、いつまで続くかを正確に予測することは困難です。また、日本がスムーズに利上げできるとは限らない点にも注意が必要です。

今後の見通しを考える際のポイントは、以下の2つあります。

今後の見通しを考えるポイント

①アメリカの金利動向

アメリカでは、政策金利の引き下げが織り込まれています。市場の予想どおりになれば、日米金利差は縮小する可能性が高いでしょう。

FedWatchというサイトを見ると、市場が予想したFRBの利下げペースをチェックできます。これによると、2024年に5回の利下げが織り込まれているようです。

市場参加者の金利見通し

出典:FedWatch Tool | CME Group

アメリカ経済は急ピッチな利上げの影響で悪化してきています。2024年に控える大統領選挙に向けて景気を良くするためにも、利下げをおこなう可能性は高いと考えられます。

②日本の金利動向

日本では長らくマイナス金利政策が取られてきましたが、日本国内でもインフレが進んでおり、景気の過熱を防ぐために利上げがおこなわれると予想されています。

<全国消費者物価指数(CPI)>

全国消費者物価指数(CPI)

(出典:マネックス証券)

予想どおりに利上げが実施されると、日米金利差が縮小していくため、円高が加速すると推察されます。

しかし、2024年にはアメリカが政策金利を引き下げ、EUなど他国も同じように利下げに転じるかもしれません。そのような中、日本だけが利上げを続けるのはむずかしいでしょう。筆者個人の予想としては、マイナス金利の解除まではあるものの、アメリカのようなペースでの利上げはないと見ています。

まとめ

2023年12月7日から8日にかけて急速に進んだ円高の理由や、今後の見通しなどを説明してきました。日米金利差が縮小すれば、それに合わせて円高も進むと考えられます。日米金利差は日銀とFRBの金融政策に左右されるため、日銀の金融政策決定会合※4FOMCに注目していきたいですね。

※4 金融政策決定会合とは、金融政策の運営に関することを審議・決定する会議のことです。

ドル円の動きをチェック

にしけい

この記事の執筆者

にしけい 

社内の余裕資金を運用するファンドマネージャーです!当サイトで上場企業のIR取材記事やコラムを執筆しています。企業分析と経済分析が趣味で、BSテレビ東京『マネーのまなび』や日経ヴェリタス、日経マネー等への掲載歴があります。日本証券アナリスト協会検定会員補(CCMA)、簿記2級、FP2級の資格を保有しています。

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